近年のイカメタルフィールドで熱視線を集めている三陸。スルメやヤリに加えケンサキも回遊するようになった昨今、今シーズンはどうなるのか?釜石市の小白浜港「健勝丸」に通い込む宮城在住のエキスパート大槻辰也さんに3種のイカのメソッドと三陸の海の魅力を聞いた。
近年のイカメタルフィールドで熱視線を集めている三陸。スルメやヤリに加えケンサキも回遊するようになった昨今、今シーズンはどうなるのか?釜石市の小白浜港「健勝丸」に通い込む宮城在住のエキスパート大槻辰也さんに3種のイカのメソッドと三陸の海の魅力を聞いた。
写真と文◎編集部
三陸のイカメタル
親潮と黒潮の境目となる三陸沖は世界三大漁場のひとつといわれる。スルメイカ、ヤリイカの好漁場であり、近年は初夏から夏にケンサキイカも回遊している。大船渡から宮古にかけてはイカメタルを楽しめる船宿も多く、週末は満船の活況を呈す。釜石市小白浜港の遊漁船「健勝丸」の千葉健太郎船長は言う。
「私が遊漁船を始めたのは6年前です。その頃は春から初夏といえばサクラマスジギングがよく釣れていましたが、近年はサクラマスが低調で代わりにケンサキイカが湧いてきました。イカメタル人気も後押しして夕方からの便と深夜から明け方までの2便を出して営業するくらい賑わっています」
昨年はゴールデンウイークの終わり頃からケンサキイカが釣れ始めていたが、今年は6月半ばまで海水温が14℃台と低く不安定のまま推移。ケンサキの姿は確認できていないそうだ。要因として考えられるのは黒潮大蛇行の終息だという。
千葉船長によれば「今年の冬は水温がしっかり下がってワカメの生育もよく、ウニも多く獲れています。従来の三陸の海が戻ってきた感じもしますね。一方、これまで黒潮の影響で入ってきたケンサキイカの姿は見られません。今年の回遊がどうなるかまだ予測ができない状況です」と話す。
ケンサキイカはいなくとも三陸の海のポテンシャルは高い。6月上旬からムギイカ(小型のスルメイカ)の接岸は始まっている。例年7月以降になればスルメイカサイズが三桁超と凄まじい釣果が出る。
10月以降はヤリイカの本格シーズンを迎え、これまた奥深い釣趣が人気。そんな三陸のイカメタル事情に精通する宮城県在住のエキスパート、大槻辰也さんに当エリアの釣りの勘所を聞いた。

三陸イカメタルのタックルと仕掛け
大槻さんは八郎潟を中心にバス釣りを楽しみ、オフショアの三陸ロックフィッシュにも熱い。イカメタルを始めたのは6年前。ヤリイカの時期にスタートして「出ないアタリをいかに取るか」という繊細さに魅せられた。
「遊漁船の多い大船渡から宮古の船宿は概ね水深60~90mの湾内にアンカーリングして夜焚きをします。潮は概ね緩く8~30号まで用意しますが20号のメタルスッテが主力です」
ロッド
そう話す大槻さんは2本のタックルを用意する。20号のメタルスッテには柔軟性のあるロッド、25号のメタルスッテにはやや張りが強めのロッドである。大槻さんが今冬のヤリイカシーズンから愛用しているのはプロトロッドのエクリプス「アクシアトラックATIC-654M-S」。携帯性に優れた4ピースのモバイルロッドながらバットには張りがあり、操作性は高い。蛍光イエローのティップが見やすく目感度に優れる。
またケンサキ、ムギ・スルメのシーズンはキビキビとした操作がしやすいマルイカロッドの「KEINON TEUTHIDA N155」を活用。疲労感の少ない5フィート5インチのロッドで張りがしっかりありながら、ティップは繊細で軽快に使えるという。

リールとライン
リールはカウンター付きの小型ベイトリール。PEラインは0.4号。リーダーはエステル3号を80~90cm取り、幹イトもエステル3号、ドロッパーの枝スはエステル4号で長さ5~7cm。伸びの少ないエステルを随所に組み込んでいるのは繊細なイカのタッチを感知するためである。
メタルスッテとドロッパー
基本はメタルスッテと浮きスッテの2段仕掛けで釣る。乗る色が定まっていない時や底潮が速く重いメタルを使いつつもゆっくりとフォールさせたい時は浮きスッテや小型のエギを2つ付けた3段仕掛けにする。

浮きスッテのドロッパーの枝スの長さも重要。潮がかっ飛んで速い時は長くし、ムギイカやスルメイカねらいでキビキビと動かしたい時は1cm以下に短くする。三陸の海で揃えておきたいスッテやエギのカラーを聞いてみると「ピンク、黄色、紫」とのことである。

誘い方が異なる3種のイカ
続いて大槻さんの釣り方の概要をイカの種類別にまとめていく。
ムギイカ・スルメイカ
三陸では6~8月がシーズン。「スルメは縦に群れが散らばる」と言いボトムから水面下10mまでの全層を探ってアタリダナを見つける。
「ステイの時間は短く、ピッチの速いシャクリで追わせて追わせて乗せることが多いです。ロッドのリフト&フォールで探ることもありますが、リールをデジ巻きする小刻みな誘いもムギイカねらいでは多用します。疲れにくく効率的にタナを探れておすすめです」

スルメイカの性格は獰猛だ。穂先をグイと締め込むほど明確なアタリが出やすいため、ヤリやケンサキに比べタナを当てるのもイージーである。
「ムギイカはベイトに誘われ水面まで浮いてくる群れもいますが、見えているイカを乗せるのは難しい。乗るのは水面下10mくらいまで。時には仕掛けが落ちないくらい濃密な群れがいます。200パイという凄い釣果も出るイカで引きも強いので腕がパンパンになりますよ(笑)」

ケンサキイカ
三陸では6~7月がシーズン。全層を探るのはスルメイカと一緒だが、水面直下でも乗ってくる。スルメイカよりはピッチはゆっくり。上げのアクションで誘いフォールで乗せる。
「ゼロテンフォールを意識して織り交ぜ、10秒くらいのステイもよくします。抱かせの間をしっかり作ってやるのが重要です。スルメよりはおとなしめの誘いを心がけてください。時にはサイトフィッシングもできるのがケンサキです。浮いたイカを釣る時はメタルスッテを8号まで軽くしてチョイ投げし、カーブフォールで乗せます。胴長40cmのダイケンが水面直下で釣れたこともよくあります。ムギやスルメの泳層とケンサキの泳層は異なることが多く、日並によって群れの入り方も違います。私は2日連続で釣りをすることもありますが、スルメばかりだった日の翌日にケンサキしか釣れないことも多々あります。初夏から夏はどちらのイカが回遊するのか分かりません。ケンサキイカは突然入って突然消えます。私がイカメタルを始めた当初はポツポツと混じる程度だったのが、3年前から大量に乗るようになりました。今夏の回遊は水温の上がり方しだいで分かりません」
ヤリイカ
三陸では10~1月がシーズン。ボトムから離れにくくタッチも繊細なのが特徴だ。「ボトム中心に探ってタナは上げても底から6mないし10mまで。タナがとてもシビアでたとえば64mの水深で62mラインでしか乗らないこともあるんです。タナが数mズレただけでビタッとアタリが消えるくらい泳層が限定される。
12月以降の後半戦はパラソル級もよく混じり、強い引きが味わえます」
イカメタルで最重要項目はタナ合わせである。カウンター付きリールを活用し、ラインの水深マーカーを覚えておくのはもちろん、周囲との情報共有もするとよい。周囲とタナを合わせることで群れがバラつかず濃密になり釣果も持続しやすくなる。
「三陸沖ではどのイカも比較的ボトム付近で釣れやすいと感じます。タナが分かりやすいのでビギナーでも釣果を出しやすい。7月には水温も安定してイカの群れも安定します。シンプルで奥深い。美味しいイカがたっぷりと釣れる三陸の海をぜひとも味わって欲しいです」
※このページは『つり人 2025年8月号』を再編集したものです。