エリアトラウトはライトなタックルを用いてニジマスをはじめさまざまなマス類をねらう人気ジャンルだ。その抜群のゲーム性に多くのアングラーが魅了され、各地で数を競うトーナメントが盛んに行なわれている。そんな凄腕が凌ぎを削るトーナメントシーンで昨年頂点に立った杉山代悟さんが、ビギナーが苦戦しやすいクリアポンドで有効なルアーローテーション術を披露した。
エリアトラウトはライトなタックルを用いてニジマスをはじめさまざまなマス類をねらう人気ジャンルだ。その抜群のゲーム性に多くのアングラーが魅了され、各地で数を競うトーナメントが盛んに行なわれている。そんな凄腕が凌ぎを削るトーナメントシーンで昨年頂点に立った杉山代悟さんが、ビギナーが苦戦しやすいクリアポンドで有効なルアーローテーション術を披露した。
写真と文◎伊藤巧
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状況把握の1gスプーン
「エリアトラウトはビギナーでもそこそこ釣れるので人気ですが、エキスパートとの間には大きな差が生じます。とりわけクリアポンドでは顕著で、アタリが途絶えがちなビギナーに対して、エキスパートは次々と魚を掛けていきます。食わせのテクニックは難しいにしても、ルアーのローテーションはすぐ実践できます。確実に釣果アップするのでぜひ参考にしてください」
11月24日、杉山さんは静岡県焼津市の『アルクスポンド焼津』を訪れた。遠州灘特有の強い北西風と透明度の高さが特徴の管理釣り場で、ニジマスのアベレージが30~35cmと大きくて引きも強く、幅広い層のファンが足しげく通う。杉山さんがエントリーしたのは午前9時前。すでに開場から2時間近く経過しており、上ずっていた魚たちが落ち着いてきたところでのスタートとなった。
「エリアトラウトの醍醐味は、刻一刻と変化する魚の状況を読み取りながら、より釣れるパターンを探していくことにあります。朝イチから徐々に警戒心が高まってくるタイミングですが、ここからヤル気のある魚を探していくのも楽しいですよ」と池のようすを伺う。透明度が高いだけに足もとを泳ぐ魚も丸見え。水面下20~30cmに浮いている個体が目立つので1gのスプーン『リクーゼ』をセット。まずは上から刻みながらレンジを探っていくことにした。
「釣り場を知っているので1gですが、初めて訪れるフィールドなら1.5~2gのスプーンをおすすめします。1.5gあれば表層から底まで手早く探ることができるので、効率よく魚を見つけられますよ」
最初に結んだスプーンのカラーは裏面がシルバーのオリーブ。無駄にプレッシャーを与えないようサイズ感に気を使いつつ地味めのカラーでローテーションさせていく。朝イチはオレンジなど派手めのカラーが定番だが、すでに陽射しが照り込んでおり、クリアポンドを踏まえてのカラー選択でもある。
「ニジマスは上層から底近くまで広く散らばっていますが、どのレンジでも釣れるわけではありません。まずはスプーンを使って反応の多いレンジを探し、ある程度絞り込んだところでレンジをキープしやすいプラグに切り替えて集中的に探るのがセオリーです。この基本パターンにカラーローテーションを加えることで、より多くの魚をキャッチすることができます」と、まだ比較的活性が高い時間帯ということもあってかキャストして上層をスローに引いてくると、元気なニジマスが立て続けにヒットした。上々の出だしに見えたが、杉山さんは今ひとつ掛かりが浅いと感じてすぐにカラーを変更。似たような色味だが、裏面につや消しを噴いて若干アピールを抑えてあるとのこと。
「クリアポンドの魚はわずかな色合いの違いでも反応が大きく変わります。見切りが早くて瞬く間に反応が鈍くなりますから、素早くローテーションして対応していくことが大切です」
杉山さんの言ったとおり、キャストすると先ほどよりアタリの頻度が増して掛かりどころも安定。キャッチするテンポもアップした。
まずは「リクーゼ」(使用ルアーはすべてティモン)を結び、表層から2カウントずつレンジを下げながら反応のよいレンジを探す。上のオリーブから始めて、程なくしてツートンカラーに切り替えた
ルアーが状況に合っているかどうかは、アタリの頻度と掛かりどころでおおよそ判断できる。状況にマッチすると高確率で口の脇に掛かるのでリリースも手早く行なえる
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再現性のクランクベイト
杉山さんは程なく小粒のクランクベイト『ちびパニクラ』のシャローランナーに交換した。「ある程度スプーンでレンジを把握したら、潜行深度を合わせたクランクベイトに交換しましょう。一定のレンジをトレースできるのでスプーンよりも再現性に優れ、ビギナーの方でも簡単に釣れますよ」と軽くキャスト。魚の反応も上々で次々とヒットする。
上層での反応がよかったので「ちびパニクラSR」に交換。小粒なのでプレッシャーが抑えられ、同系色でローテーションさせて連続ヒットとなった
ここでも手早くカラーローテーション。パールを噴いたレッドグローから始め、反応が渋くなりかけると濃いめのレッドグローに交換してアタリが復活。この後もパールの薄いレッドグローやオリーブなど、類似カラーでローテーションさせて連続ヒットを演じる。見た目にほぼ同じ色味ながら明らかに反応が変わるのは驚きだ。
時間が経過して太陽も高くなり、魚が沈みだしたと感じた杉山さんはクランクベイト『パニクラ』のディープランナーに交換した。ロッドの穂先を水中に突っ込み、少しでも早くボトムに到達するようにリーリング。素早く潜らせてボトムノックでようすを伺う。ボトムからの浮き上がりで数尾キャッチしたが反応が今ひとつだったので、すかさずディープランナーのハイフロートに交換。ロッドを水平に構えて見えている魚の少し下をゆっくり通してみる。シェイクしながらツンツンと小刻みに引いてくるとアタリが連発した。
入れ掛かりを味わっていたが、弾かれる頻度が高くなってきたところで繊細なソリッドティップのロッドに持ち替えてボトムスプーニング専用スプーン『ティーグラベル』に交換。ボトムスプーニングに関しては底質にカラーを合わせるのが鉄則とのこと。ステイやシェイクを織り交ぜながらボトムのズル引きを展開し、周囲が沈黙するなかで連続ヒットとなった。「どんなルアーを使っていても必ず魚はスレてくるので、交換するタイミングを見誤らないことが肝要です。粘らず素早く見切って次なる手段を講じていきましょう」と、次々とルアーを交換して釣果を伸ばした。
エリアトラウトではドラグの設定が重要。トーナメントにおいてラインブレイクは致命的なので、杉山さんはリールを早巻きするとルアーの引き抵抗でゆっくりスプールが滑るぐらいに設定している
リアクションのサーフェイス
昼近くになると魚のヤル気は失われ、納竿するアングラーもちらほら。ここでミノーライクなニョロ系クランクベイト『ペピーノ』のミディアムランナーに交換してリアクションに訴える。デッドスローで水面直下をクネクネと泳がせるとキャッチしていく。
水面直下でヒットするのでシャローランナーに交換すると、一段と激しくアタックしてきた。足もとに浮いている魚まで食ってくるので、このままアタリが途絶えないようカラーを矢継ぎ早にローテーションさせて一気に数を伸ばした。
「クリアポンドでは基本的にナチュラルを意識してゲームを組み立てていきますが、プレッシャーに晒されて魚が食い渋ったら、強い波動とカラーでアピールします。大勢の人で賑わう週末の日中などは特に有効ですよ」
と、まさしく入れ掛かりを演じたペピーノだったが、さすがに30分もすると魚がスレてきた。ヒットするペースが落ちてきたので、最後に高浮力のクランクベイト『デカミッツドライ』に交換。水面に浮かべてチョンチョンと動かすと、辺りに見えている魚が次々に口を使ってきた。再びキャストごとに魚がヒットするラッシュに突入。「クリアポンドは魚がプレッシャーを感じやすいがゆえに意外と水面が手つかずだったりします。特に午後は魚が再び水面を意識しだすので必ず試してみてほしいです」と手際よく数を伸ばし、お昼過ぎまで楽しんだところで満足してロッドオフとした。
この日の釣りを大まかに振り返ると、スプーンでヒットレンジを探してシャロークランクで数を伸ばし、反応が鈍ったらディープクランクとボトム用スプーンで底を釣る。警戒心が高まった昼中は大きな波動を生むニョロ系クランクで水面直下を探り、最後はトップウォーターで締めくくるという流れだった。このローテーションを念頭にゲームを組み立てていけば、クリアポンドでも楽しい一日を過ごせるはず。ぜひ杉山さんのパターンを参考にしてエリアトラウトに挑戦していただきたい。
クリアにパールを噴いた「デカミッツドライ」をトップウォータープラグとして使う。強い風が吹いているときはロッドを寝かせ気味に操作する。風に対してロッドを倒す方向で水絡みが異なるので当然魚の反応も変わる
小さなスプラッシュを立てるようにチョコンと動かすと、近くのニジマスが反転して一気に食ってきた
リアクションに訴えるニョロ系「ペピーノ」が、動きの鈍った魚たちのスイッチを入れて入れ掛かりとなる。左から右へと6カラーをローテーションさせた。同じようなアプローチを2回繰り返して反応が芳しくなければ、迷わず釣り方やカラーを変える
ミノーもレンジキープが容易なので欠かせない。随所で3月発売予定のミノー「TC レイゲン」をキャスト。軽いトゥイッチからの浮き上がりに好反応を示した
タックルの使い分け
ロッドはティモンの『ティーコネクション』を使用。開始直後は、活性の高い魚を手早く釣っていくためミディアムライトパワーのTCA-S61MLでスタート。時間の経過とともに弾かれるアタリが増えてきたのでウルトラライトパワーのTCA-S60UL-E に持ち替えた。ソリッドティップのTCAS55LML-ST も活躍。パニクラDR を結んだ際は素早く潜らせられるミディアムパワーのTCA-S62M-ST を手に取る。張りがありながらもソリッドティップなので掛かりは上々だった。魚の反応を伺いながらタックルを使い分けることは、数を伸ばすためには欠かせない。メインラインは感度に優れるエステルの0.4 号。エステルは魚にプレッシャーを与えにくくクリアポンドでは特に有効。加えて比重がナイロンとフロロの中間に位置するので、軽いルアーのコントロール精度に優れる
※このページは『つり人2024年2月号』を再編集したものです。