今やエリアトラウトの定番と言えるエステル。トーナメンターの森田健太郎さんはエステルを使う釣りが9 割だと言う。そのメリットと活用法を教わった。
今やエリアトラウトの定番と言えるエステル。トーナメンターの森田健太郎さんはエステルを使う釣りが9 割だと言う。そのメリットと活用法を教わった。
写真と文◎編集部
情報を集めて分析する釣り
エリアトラウトと一言で言っても各地にあるエリアにはそれぞれ特徴がある。気候や池の地形、水質はもちろん、同じニジマスであってもどの養魚場で育てられた魚かでも行動が異なるそうだ。誰でも始めやすい釣りではあるが、1尾を争うエリアトーナメントでは魚の性格さえも考慮してアプローチも変わってくるほどシビアな世界も併せ持つ。視覚や手もとに伝わる感覚から情報を集め、その時に合ったルアーを選択してヒットに結び付けるのがこの釣りの面白さのひとつだ。
そんなエリアトラウトを中学生の時から始め、10年以上続けている26歳の若手トーナメンター、森田健太郎さんがこの釣りで主に使うラインはエステルだと話す。
「小さなアタリを取る必要があるこの釣りでは圧倒的に感度のいいエステルが欠かせません。今では僕の釣りの9割でエステルを使っています」
ポリエステルのモノフィラメントであるエステルラインはアジングでもよく使われている。伸びが少なく高感度なのが最大の特徴で、エリアトラウトでも主流になってきている。
ボトムからの巻き上げにエステルは必須
11月下旬、森田さんは静岡県にある東山湖フィッシングエリアを訪れた。東山湖は湖の全域が釣り場となっており、周囲は1km近くと国内最大級の広さ。加えて豊富な魚種と放流量で多くのアングラーが足を運ぶ人気のエリアだ。大会の会場になることも多く、森田さん自身もたびたび足を運んでいるという。
「東山湖ではスプーンをボトムから巻き上げるのが鉄板パターンです。この時期だと特に朝は底を意識しているはずなので、まずはその釣りからスタートしてみたいと思います」
森田さんは1.5gのスプーンを遠投してフリーフォール、着底したら早めにリトリーブしていく。スプーンがレンジキープではなく上昇していくイメージだ。するとすぐにヒット。何度か繰り返してこの日のようすを探っていく。何回リールを巻いたところでバイトしてきたのか覚えておくことでレンジを把握し、その巻き数を越えて反応がなければまた底まで落として巻き上げていくことを繰り返す。どうやらこの日は沖のボトムに反応が集中しているようだ。
「この釣り方には絶対にエステルです。特に東山湖のような広くて魚との距離が離れていることが多い場所で小さなアタリを拾うのであればラインの違いが釣果の差に直結します」
高感度が効果的であるならPEも選択肢に入りそうだが、森田さんによればイト鳴りによって魚にプレッシャーを与えやすくなるそうだ。特にロッドアクションの多いボトムの釣りで顕著で場荒れしてしまいがちだという。
バリバスからリリースされているエリア用エステルラインはスーパートラウトエリア スーパーエステルとスーパートラウトエリア ES2 の2 種類。スーパーエステルは感度を最優先して魚の反応はもちろんルアーの動きまで伝わってくるエキスパート仕様で、ES2 はしなやかで扱いやすさを重視しておりライントラブルが起こりにくいラインとなっている。どちらも魚が警戒しにくいナチュラルと視認性の高い色付き(スーパーエステルはネオオレンジ、ES2 はレモニー)が用意されている
0.4 gのマイクロスプーンを使い、サイトフィッシングでヌシのような大ヤマメを見事ヒットさせた。森田さんの場合、小さなアタリの多い低水温期ではスーパーエステル(バリバス)を主に使っているが、このような軽量スプーンや表層での釣りにはしなやかでクッション性があるES2(バリバス)を使う
ナイロンリーダーという選択肢も
エステルの高感度はただアタリを大きく伝えてくれるという意味ではない。
「アタリの大きさによって魚が反転して食ったのか、ついばんだのか、触れただけなのかという見分けがつきます。アタリ以外にもルアーがどう動いているかなど水中のようすがわかることで、次は何をすればいいのかということも判断しやすくなります」
ただし、エステルだからといってすべてのアタリが手もとに伝わってくるわけではない。エステルであっても手もとに伝わらず、ラインだけに出るアタリも多いため、視認性は大切。一般的にはエリアトラウトでは魚が嫌がりにくいクリアライン一択と言われることが多いが、森田さんいわく、見えないようであれば無理せずにカラーラインを使ったほうがいいとのこと。底まで見えるような透明度の高い池でなければ影響は少ないそうで、アタリを見逃してしまうほうが問題と言える。
伸びが少ないということは当然デメリットにもなる。エステルの弱点は瞬間的な衝撃に弱いことと擦れに弱いことなのでエステルを使う場合はショックリーダーの接続が必須となる。ちなみに森田さんによるとリーダーを付けない直結の状態だと10倍くらい切れるようになるそうだ。
リーダーにはフロロカーボンを20~40cmほど接続するのが定番だが、最近はナイロンを使う人も増えてきているという。森田さんもその一人で、エステル+フロロカーボンでは弾いてしまうときにナイロンリーダーにすることでクッション性が増して掛かるようになることも多いそうだ。その場合、リーダーの長さは1ヒロにしているとのこと。森田さんはトリプルサージェンスノットで結束している。
長らくリーダーはフロロカーボン40cm が定石だったが、最近は長めにとったナイロンリーダーを使う人もいる。「実はクッション性が増すだけでなく、ルアーの姿勢を変えるのにも一役買っているんです」と森田さん
スーパートラウトエリアVSP(バリバス)はVSP 製法によって同じ号数であっても1 ランク上の強度を実現した強力なフロロカーボンリーダー。0.4、0.5、0.6、0.8、1 号とエリアフィッシングにピッタリのラインナップだ
森田さんは使うラインの太さを釣れる魚の大小や使いたいルアーによって変えている。スプーンの時はラインの影響で動きが大きく変わるため細めにしていて、プラグの時は影響を受けにくいため強度重視で太めにするそうだ。エステルとリーダーの組み合わせは次のとおり。
・エステル0.25号+フロロカーボン0.4~0.5号(ナイロン3.3lb)
・エステル0.3号+フロロカーボン0.5~0.6号(ナイロン3.3lb)
・エステル0.4号+フロロカーボン0.6~0.8号(ナイロン3.5lb)
ボトムでもクランクでも活躍
朝一番は無風で釣りやすかったが、日が昇るにつれて横風が出てきた。イトがふけてアタリも分かりにくくなるはずだが、高感度なエステルであれば問題なくアタリが伝わる。加えてエステルはある程度比重が高いため、一度着水させてしまえば水に馴染みやすく、ラインが風に取られにくいのもメリットのひとつと言えるだろう。
巻き上げの釣りへの反応が落ち着いたところでバイブレーションを使ったボトムの釣りを試す森田さん。早いテンポでルアーをモジモジさせると反応がよいようだが、同じロッドアクションでもPEとエステルでルアーの動きに差が出るという。比重の低いPEはルアーが高く跳ね上がりやすくなり、ナイロンとフロロの中間くらいの比重であるエステルではあまり跳ね上がらなくなる。どちらがいいというのは一概に言えないが、反応が変わることは大いにあるそうだ。この日はエステルを使って跳ね上がりを抑えた動きに好反応だった。
ボトムに反応がなくなってきたので中層を探るためにクランクを投入。スローリトリーブを多用するクランクでもエステルが効果的だと森田さん。
「スローな釣りはアタリも小さなことが多く、フッキングが悪いです。アワセが必要になるのですが、エステルだと力が伝わりやすいのでアングラーが楽になります」
そう話すとおり、スローなクランクの釣りでもしっかりアワセが決まり連発となった。朝に話していた通り、ほとんどの釣りで森田さんはエステルを使っていた。
エリアトラウトのあらゆる釣法で主役となりつつあるエステル。森田さんの使い方はあくまでも一例で、さまざまな使い方や効果的なシチュエーションがあるはず。エステルを使いこなすことができるようになれば、今まで以上の釣果を得ることもそう難しくはないはずだ。
森田健太郎さんのタックル
(右)スプーン用
ロッド:エリアドライブTS ARD-62T-DTS(バリバス)
リール:イグジストLT2000S-P(ダイワ)
ライン:スーパートラウトエリア スーパーエステル0.25 号(バリバス)
リーダー:スーパートラウトエリアVSP0.5 号もしくはスーパーティペット
マスタースペックⅡナイロン6.5X(バリバス)
(左)クランク&ボトム用
ロッド:エリアドライブTS ARD-62T-DTS(バリバス)
リール:スティーズtype1(ダイワ)
ライン:スーパートラウトエリア スーパーエステル0.4 号(バリバス)
リーダー:スーパートラウトエリアVSP0.8 号(バリバス)
この日主に使用したルアー
森田さんは東山湖のような広いエリアでは1.5 gのスプーンを基準としている。クランクベイトはディープレンジを探れるロングリップのものに反応がよかった。左下はボトムの釣りに使ったバイブレーション
※このページは『つり人2024年2月号』を再編集したものです。