都内のふ頭や運河で年々存在感を増しているのがクロダイ、キビレだ。遊歩道の整備で釣り場も拡大中ながら、キャスティングが規制されているのも事実。というわけで壁沿いに落とし込むヘチ釣りの人気も高まっているがラインの変化でアタリを取る釣りのため夕マヅメを前に帰宅していく。実はその後に明確なアタリでルアーを急襲する壁チヌが楽しめることをご存じだろうか
都内のふ頭や運河で年々存在感を増しているのがクロダイ、キビレだ。遊歩道の整備で釣り場も拡大中ながら、キャスティングが規制されているのも事実。というわけで壁沿いに落とし込むヘチ釣りの人気も高まっているがラインの変化でアタリを取る釣りのため夕マヅメを前に帰宅していく。実はその後に明確なアタリでルアーを急襲する壁チヌが楽しめることをご存じだろうか
写真と文◎編集部
壁チヌ一問一答
そもそも壁チヌってどんな釣り?
「壁チヌはテクトロと落とし込みを融合させた釣りで、垂直護岸なら港湾部でも河川や運河の遊歩道など、あらゆる壁で成立させることが可能です。ロッド1本分ラインを出して壁際にGEMを落とし込み、5歩テクトロしたら5秒止まってフォールさせる。これが基本です。足場の高さや水面までの距離によってラインの長さやテクトロする歩数・スピード・止まる秒数は微調整しますが、基本はこれだけです」
テクトロとの違いは?
「テクトロは歩くことでルアーをアクションさせて魚を誘います。でも、壁チヌは歩きを止めたあとのフォールで食わせます。歩いている最中のGEMは横方向へアクションさせているというよりも次の落下開始点までの移動で、歩きを止めたあとのフォール中のバイトがほとんどです。カーブフォールをメインに、ロッドで追従するテンションフォール、ラインテンションを抜いてしまうフリーフォールを使い分けて状況にアジャストさせます。また、魚が上ずっていれば最初のロッド1本分のストロークの落とし込みの最中に食ってくることもよくあります」
アタリはどのように察知するの?
「通常の日中のヘチ釣りのようにわずかなライン変化でアタリを取ってアワセを入れる釣りではありません。手もとにガツっと金属的なバイトが伝わり、そのときにはチヌの口にフックが刺さっていることが大半です」
なぜアタリが明確なの?
「日中の垂直護岸で特に足場が低い所ほどこちらの影や気配がプレッシャーになって魚も警戒しますが、夜は影もラインなどの存在感も消してくれるから警戒心が薄れ、壁際にチヌがたくさん寄って貝や甲殻類を大胆に食う傾向が強くなるのでアタリも明確になるのだと思います」
GEMはどんなルアー?
「まさに壁チヌ専用プラグです。10年前から小型のプラグを使った壁チヌでバンバン釣っている人もいて、自分もやり込んでいったんですが、そもそも投げて使うことを前提に作られたルアーですからフォール姿勢がよくても強度がなくて数回チヌに嚙まれるとボロボロになったり、余計なリップがあったり、壁から離れるようにスライドフォールしてしまうなど不満がありました。だから壁沿いを落とし込むことだけに特化したルアーをイチから作りました。最大のキモはフォール姿勢ですから、シンカーはボディーに内蔵させるのではなく前方に露出させることでしっかり水を噛ませ、安定したフォール姿勢を実現。テクトロでの横移動も壁から離れにくく、耐久性にもこだわったためクロダイやキビレの強力な歯でも噛み砕かれることはありません」
GEMは何を模しているの?
「シルエット的にはカラスガイのようであり、カニのようにも見える美味しそうなもの。そのどちらにも見える共通のサイズが55㎜であり、4.5gという重さです。そして風の強いときや深場のときには5.5gが重宝します」
シルエットはカラスガイのようでありカニのようにも見えるGEM。全長は55㎜で自重は4.5 gと5.5 gの2 種類
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年間1810尾のチヌを釣る男と実際に釣りに行った
クロダイが多いことで知られる兵庫県姫路から都内ベイエリアにやって来たのは柴田孝紘さん。柴田さんはチヌ=クロダイのルアー釣りを通年楽しんでおり、しかも、昼も夜も、ハードルアーもソフトルアーも、そしてキャストして探る釣りもするが、今回は壁チヌの楽しさを伝えに東京へやって来たという。
「チニングという言葉は、ある特定の釣り方を連想させてしまうこともあって好きではなく、ルアーでのクロダイ・キビレ釣り=チヌゲームと呼んでいます。10 年前にやり始めたときはMリグやチヌ専用ラバー系でのズル引きをナイトゲームでやってました。それでも釣果は出ましたが、それを遥かに上回る釣果を当時から出していたのがこの壁チヌでした。基本的にキャストしませんから根掛かりロストは皆無ですし、落として歩くだけで釣れちゃうんです」
ちなみに柴田さんは、フリーリグをメインにしたボトムの釣りもすれば、ポッパーなどのトップウォーターの釣りも得意。なんと多い年には1810尾ものチヌを釣り、壁チヌでも年間500尾ほど釣っている。
「壁チヌが一番多く釣れるハイシーズンは4~8月の高水温期のナイトゲームです。その条件なら迷わず壁チヌ一択です」
そう言い切るのは、キャストして牡蠣瀬などの底をズル引く釣りやハードルアーで底付近を探る釣りは根掛かりも多くロストなどでタイムロスがあるためだ。その点、壁チヌならほぼトラブルなく効率よくヒットを重ねられるという。
そんな壁チヌに特化した専用ルアーがGEM(ジェム)だ。
カラーは全9 色。魚をモチーフにしたグリキンコハダ、ウミタナゴ、パーチのほかマット系やクリア系、フラッシングが強いものまですべて実績がある。クロダイ、キビレ以外にもシーバスやカサゴなどのヒットも多い
【ロッド】APIA/GRANDAGE VICE
この春にAPIA から発売されたチヌ専用ロッドのGRANDAGE VICE は決して壁チヌ専用ではない。ボトムゲームもトップゲームも楽しむ柴田さんからの「1 本で何でも対応できるロッドが欲しい」という要望から生まれた。 ベイトモデルのC75ML、スピニングモデルのS74ML の2 機種がラインナップ。釣法や時間帯によってロッドを使い分ける必要がないオールラウンダー。 メインマテリアルをTORAYCA® 第三世代カーボンで構成されたブランクは、スピニング・ベイト共に美しいベンディングカーブを描き、リグやルアーのウエイトを感じやすく、一般的なチヌロッドよりもレングスは短い設定ながら、ロングロッドと遜色ない飛距離を生み出す。 ともにチューブラティップを採用して、ファーストテーパーならではの快適な操作性と高感度を実現している。価格はともに4 万5000 円+税。
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日没と同時に開始のゴング!
日没前のぐるり公園にはヘチ釣りファンの姿も多かったものの、やり取りをしている光景は一度も見なかったが、完全に太陽が沈んだあと、東京タワーを一望できる先端寄りから釣りを開始した柴田さんの一投目、テクテクと数歩進んで止まった数秒後に「あ、食った!」の声。「食うとは思っていましたが、いきなり食ってきたもんで『え?』と身体が硬直してしまいました(笑)』と柴田さん。
台風1号が発生した直後のタイミングで波風が強く、また、想像以上に水深があることから4・5gから5・5gにチェンジするとまたも明確なバイトがあるも、フッキングに至らず。
正直、本当に食ってくるのかと半信半疑だったが豊洲大橋までの直線だけで3発も当たった。うち、1度はフッキングもしてやり取りののちのバラシ。「うわあ、やってもうた。すいません!」としきりに謝る柴田さんに対し、こちらは「次々に口を使わせてる。すごい!」と目を丸くしていた。
その後、いよいよ波風が強まり、水深の深い豊洲ぐるり公園よりも川幅が狭くて水深も浅い晴海の朝潮運河のほうが釣りやすいと考え移動してみると、またも一投目でヒット。しかし今度はタモ入れ寸前でバラしてしまった。しかも今のはかなりの大型だった。
「うわあ、またや。すいません!」
と謝る柴田さん。「うわあ、また食わせた」と驚嘆する記者。このやり取りが何度か続いたが、ついにがっちりとフッキングが決まった。柴田さんのフェイバリットカラーであるソリッドオレンジのGEM5・5Gを咥えたきれいな40㎝オーバーだった。
壁チヌが楽しくなる季節はまだ始まったばかりだ。
ソリッドオレンジカラーのGEM5.5Gでキャッチした1尾に感無量だが、今日のアタリの半分もヒットさせられたら爆釣といっていいだろう
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。