ニューフェイスが集まりニューロッドを駆使してニューエリアで楽しんだのは都心の運河の新たな主役になりつつあるクロダイだ
新たな顔ぶれで挑むTOKYO の黒鯛
写真と文◎編集部
常に変化し続ける釣り場
隅田川や隅田川につながる運河筋でヘチ釣りを楽しむ人が増えている。理由はいくつか考えられるが、「①ここ20年で一気にクロダイの生息数が増えたから、②ヘチ釣りが楽しめる親水護岸や遊歩道が増えたから、③ルアー釣りや投げ釣りが規制されているところもあるから、④クロダイのエサが増えたから」と推察するのはYouTube チャンネル「餌の大和屋」の配信者として知られる東辻雄平さん。なんと2023年は1年間で640尾のクロダイを釣り、その大半は都内の運河筋での釣果というから驚く。
「かつてイガイの絨毯だったような東京湾内の沖堤防で付きが悪くなっているなか、都内の運河ではイガイに類似したミジガイがビッシリと付着して、昨年もハイシーズンには1日に20尾以上ヒットするような爆釣が何度かありました。おそらく今年も期待できそうです」
そう語る東辻さんのホームグラウンドである中央区にやって来たのは、大山健二さん。大山さんも湾奥エリアの釣り場に詳しく、特に荒川から市原市にかけての京葉エリアに精通している。
「正直、中央区のような都心までヘチ釣りに来ることはありません。去年の取材でやったのが初めてで今回で2度目ですが、またまた親水護岸が新設されていてびっくりしました」
と、いまだ高層マンションや商業施設の建設ラッシュが続く変化する街並みに舌を巻く。
もうひとり、ヘチガール・サトミンこと梶原さとみさんも駆けつけた。
「私はこの辺りに自転車でよく釣りに来ていますが、この前までなかったところに橋が架かり、食事を楽しめるお店が水辺にできていて来るのが楽しみです。そうした都会と自然が同居する江戸前っていいなあと思います」
そんな3人が新作ロッドを携えて、まずは朝潮運河親水公園へ向かった。
左から黒鯛師THE ヘチリミテッドいぶし銀 本調子255、黒鯛師THE ヘチリミテッドBB4 ZERO ZERO T225、黒鯛師THE ヘチリミテッドBB4 ZERO ZERO T255、黒鯛師THE ヘチリミテッドBB4 ZERO FUKASE T285
クロダイパラダイス!
2023年10 月号のつり人でも紹介した朝潮運河親水公園だが、左岸の最下流部がさらに拡張。その背後には新たな商業施設のららテラスHARUMI FLAG が開業。ますます便利に、そして賑やかになった
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風と濁りに合わせて2本の運河を往復
中央区晴海は隅田川下流の派川である朝潮運河と晴海運河に挟まれており、どちらもかつて釣り場はほとんどなかった。それが、マンション建設が進むにつれて晴海運河側に晴海臨海公園が整備され、その数年後には下流に晴海緑道公園が完成。いずれも長大なヘチ釣り場になった。さらに朝潮運河もかつては岸釣りのできるところはごく一部だったが、黎明橋から下流の両岸が次々に親水公園に整備され、毎年のように拡大している。
「隅田川本流にも釣り場はたくさんあります。ネックは都心ならではの駐車料金の高さですが、朝8時までなら数100円という夜間料金を利用したり、最大料金が良心的なところを探して利用しましょう。それか、さとみさんのように自転車を使ったり、公共交通機関が発達しているので地下鉄やバスを利用すれば好きな時間に楽しめますよ」
当日も早朝5時に集合し、潮位の高い朝マヅメをねらって朝潮運河最下流の左岸から釣りを開始。潮回りは中潮で満潮6時10分、干潮13時19分。1日前まで降っていた雨の影響で水潮の可能性もあるが透明度はかなり高く、イサザアミの群れがたくさん見える。
時期的にはまだ底ねらいが堅いとのことだったが、満潮間際にカニを潰された大山さんは2ヒロのタナで食われたという。エサは3人ともにイソガニ。運河では通年使える万能エサだ。
カニは通年出番がある。当日は3 人ともチヌR 3号にハリスを吹き流し、そこにガン玉1~2号を打った。東辻さんはイソガニを上州屋東陽町店や餌勝商店葛西橋店で50 ~100 匹と多めに購入。通気性のよい木のエサ箱にキッチンペーパーを敷き、その上からバーミキュライトを少量まぶしてからカニを入れる。冷蔵庫で冷やしておいた海水を振りかけ、冷蔵庫の野菜室に入れて保管。「隠れ場所があるのでカニ同士で喧嘩もしないし、乾いたら適宜海水をかけてあげれば3週間くらいは元気ですよ」
都内の運河は雨後に水潮でパタっと食わなくなることがあるため不安もあったが、口を使うようでまずは安心。
下げ潮に変わった6時50分、ついに大山さんが黒鯛師THE ヘチリミテッドいぶし銀 本調子255 でアワセを決める。
「張りがあるのに魚を掛けると軟調子で気持ちよく曲がります。ためていればそのまま魚が浮いてきました」
大山さんがまずは42cmをキャッチ。
今度は少し上流へ移動すると、昨年までなかった黎明小橋を渡って右岸へ移動。右岸側の多くはまだ開放されて間もない親水護岸で、昨年までは左岸側にあった浮き桟橋が右岸の勝どき側に新設されており、覗けば良型のクロダイが桟橋直下で何かをむさぼっている。条件がよければ連発することも珍しくないというが、この日は透明度が高すぎてこちらの気配が伝わるようで3人の落とすエサは全無視。
これは風が当たる晴海運河側のほうが潮も濁って期待できそうだと移動を開始。その道すがら、「この土管の下はいい魚がいることが多いです」と東辻さんが探りを入れると「ほら、いました!」と黒鯛師THE ヘチリミテッドBB4ZERO ZERO T255 を手もとから曲げる。
ZERO ZERO を開発した山下正明さんや郡雄太郎さんがテストサンプルのサオを曲げているところを何度も見ていた東辻さんは発売を心待ちにしていたと言い、満月のような曲がりをすでに何度も体験している。
「このサオを使うようになってミチイトもハリスも1号と細くなりました。細イトだからアタリが増える。細イトなのに切られない。だからとにかく楽しい。特に都内の運河は垂直護岸なので無理に寄せる必要はないんで1尾1尾のファイトを存分に楽しんでいます」
と傷ひとつない美形の40cm台後半を玉網に導く。
その後、風表になる晴海緑道公園に向かうと、すぐに大山さんが1尾を追加し、サイズアップにも成功した。
4 度目のアタリをとらえたのは大山さん
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年無しキャッチ!
釣り開始から3時間、「私はまだアタリもないです(笑)」とさとみさん。焦りが出てきたかと思いきや、「でもこの周辺はさとみポイントと呼んでいる相性がいいエリアなんです」と丁寧に落とし込んでいく。
そこへすでに4アタリで2尾を釣った大山さんが「こっちは風も当たって潮も濁っているしクロダイも浮いている。丁寧に底まで探るのもいいけれど、2ヒロまでの浅ダナに絞って横方向をスピーディーに探ったほうがいいよ」とアドバイス。オモリも底対応のものから浅ダナ対応のガン玉1号にチェンジ。このあたりは水深が10mほどあるため、底まで沈めようとすればオモリは重くなり、釣りの展開もスローになることを指摘したのだった。
その直後だった。ヨリモドシまでゆっくり沈めた矢引のハリスを水面下で潮になじませたのち、さらにサオ先を下げてタナを刻もうとしたところ、黒鯛師THE ヘチリミテッドBB4 ZEROFUKASE T285 のチタン穂先を通じてクロダイのアタリを察知したさとみさん。すっとサオを立てると「うわあ、おっきそうです」と満面の笑みでファイトを開始。
安全柵が高いため、タモ入れの際は目いっぱいつま先立ちをしないと海面の魚の位置が分からないが、まったく危なげなく年無しを誘導。なんとこれが今日イチの54cmだった!
まさにヘチガールの真骨頂。これまでの自己記録である53cmを1cm上回るレコードフィッシュを取材中にカメラの前で釣りあげてしまった
※このページは『つり人 2024年7月号』を再編集したものです。