サケのルアー釣りを水中から見てみた。「収められたバイトシーンは私が想像していたものと全く違っていました」と撮影者は言う。
サケのルアー釣りを水中からみてみると……?
解説=佐々木俊祐
捕食行動が下手⁉
サケが掛かる瞬間、水中ではどうなっている? 気になった私は、バイトシーンを動画に収めたいと思い、水中カメラでの撮影を行なうようになった。するとそこには、これまで私が全く想像していなかった映像が映っていた。 「コツコツ」や「モゾモゾ」といった前アタリを我慢して、サオがグーッと重くなってからアワセを入れるのが、サケのウキルアー釣りのセオリー。これは、「前アタリ時のサケはルアーをつついているだけで、合わせてもフッキングしない」と考えられていることが大きな理由だろう。しかし、実際のところはどうなのだろうか?
サケが後方から追尾している。「コツコツ」や「モゾモゾ」といった前アタリはこのときに感じると思われる
ルアーに対して横方向からバイトしたサケ。この場合は一発でフッキングすることが多い
開いた口の間を、ルアーが何度も通過。こうして見ると、もどかしくもどこか愛らしい姿だ
口の面積が広いオスのほうがフッキング率は高い気がする
晩秋のオホーツク海は、エサ取りのフグに悩まされる。エサの消耗が激しいブッコミ釣りよりもウキルアーが無難。写真はブッコミ仕掛けに群がるフグの群れ
水中カメラが気になり、食いつこうとするサケ。威嚇行動によるものだろうか?喉の奥まで丸見えだ。実際の映像は、佐々木さんのYouTubeチャンネル『SHUNKE GOGO』で視聴できる
ハリはチヌバリの10号で、背中合わせのダブルフックを自作。サケがどの方向から食いついてもフッキング率が高い
水中映像を確認すると、サケは動く物に対する捕食行動がうまくないように思えた。大きく口を開くものの、ルアーが上アゴと下アゴの間を何度も通過し、なかなか口を閉じない。私がこれまで想像していた「鼻先でツンツンとルアーをつつく行為」は一切見受けられず、そこにはバイトに至るまでの何とももどかしく、愛らしい姿が映っていた。ところで私は、ブッコミやフカセで釣れるサケは捕食行為の側面があると考えている。たとえばフカセ釣りで、サケが自分の仕掛けに食いつく瞬間を目撃したことがある人は少なくないだろう。その際サケは、漂うエサを前アタリなくパクッと口に入れているはず。さらに私は、喉の奥までハリを飲み込んだ個体を釣った経験が何度もある。よほど食い気があったのだろう。
一方のウキルアー釣りでは、サケは動くルアーに興味を示して追ってくる。これは定説どおり、威嚇のため(視界に入ったルアーを排除しようとしている)と思われる。もしくは捕食が下手な分、口を大きく開けることでとらえやすくしようとしているのかもしれない。ただし、なかにはルアーの進行方向に対して横や手前からバイトするサケもいて、この場合は一発でハリ掛かりすることが多い。
待たない勇気も必要
映像を見る限り、ルアーがサケの口の間を何度も通過していたことは前述のとおり。そのため私はフッキング率を上げるべく、背中合わせのダブルフックを自作。主観だが、シングルフックは直線的なバイトこそ掛けやすいが、全方位に対応しにくい気がする。
自作に使用するハリは、剛性が高く貫通力のある『チヌ鈎』(がまかつ)10号を愛用。大小さまざまなフックを試してきたが、最終的な軍配はチヌバリに上がった。
撮影した数々のシーンを確認すると、サケがルアーに追いついているのに気付かず、あるいは前アタリと勘違いして、タダ巻きを続けているうちにサケが離れてしまう場面が多々あった。
私の友人は、このときに「一瞬イトがふける」と言う。彼はそのわずかなタイミングで躊躇なくアワセを入れ、圧倒的な釣果を叩き出している。要するに、完全な食い込みを待たずにフッキングしているのである。サケからの微細なコンタクトを見逃さないためには、サオ先の違和感やラインテンション(一瞬のイトフケや、ラインが小さく踊ることがある)に敏感になることが大切。そして前アタリを〝我慢しない勇気〞
※このページは『North Angler’s 2023年10月号』を再編集したものです。