魚の主食が昆虫類になる盛夏は、虫トップを思う存分楽しみたい。ここでは虫パターンのパイオニアD-3カスタムルアーズ代表 福士知之さんのライン選びを紹介します
ナイロンかPEか、強度や長さは?
アップで自然に流す
渓流の虫トップで釣果を上げるには、ルアーとアプローチが重要だ。福士さんはトラウトのトップウオーター黎明期、『福蝉』や『バッタえびせん』を生みだし、これまで多くのトップファンを魅了してきた。
そんな福士さんの渓流における基本的なアプローチは釣り上がりのアップ。トラウトは流れに対して頭を向けて定位し、エサが流れてくるのを待ち構えている。だとしたら真っすぐにキャストする直線的なアップが、魚にとって捕食しやすいのは明らか。アップとダウンでは魚の食い方が異なり、前者のほうが「フッキングは断然いい」と話す。
そしてルアーが着水した後は、できるだけ自然に流す(=ナチュラルドリフト)ことに徹する。時折、軽くシェイクして波紋を出すのは有効だが、あくまで基本はナチュラルドリフト。ルアーのポテンシャルを引きだし、水面でナチュラルドリフトを行なうのに、ラインの果たす役割はとても大きい。
メインラインの使い分け
【小渓流の基本ライン】
スーパートラウトアドバンス サイトエディション
視認性と強度を重視したナイロンライン。小渓流の虫トップで信頼を置いている。その場合、強度は4lb(1.0号/DIA 0.165mm)を使うことがほとんど。これ以上太いと見切られることが多くなるそう。天候や条件にかかわらず見やすいライトニンググリーンカラーが特徴
【見切られるシーンが多いとき】
スーパートラウトアドバンス ビッグトラウト カッチイロ
大型トラウトに対応する強さと、適度な伸びを併せ持つナイロンライン。魚に悟られにくい赤褐色のカッチ色を採用。『サイトエディション』を使っていて、ラインの存在で見切られると感じたときに有効。ラインナップ中、一番細いのは8lb(1.5号/DIA 0.205mm)
【大型ブラウン&ニジマスねらい】
マックスパワーPE X8 ライムグリーン
完全8本撚りマックスパワー原糸を素材に採用し、強さと細さを兼ね備えたPEライン。独自の非フッ素コーティングにより、滑らかさと耐久性の高さを実現。このラインカラーは状況を問わず視認性が高いという。0.6号(MAX 14.5lb)、0.8号(MAX 16.7lb)を使用
【大型ブラウン&ニジマスねらい】
スーパートラウトアドバンス エクストリームショックリーダー
しなやかさと強度を追求したトラウト専用リーダー。厳寒期でも硬くなりにくく、トラブルを最小限に抑えてくれる。カラーはカモフラージュ性の高いブラウンを採用し、魚に警戒心を与えにくい。8lb(2.0号/DIA 0.235mm)~12lb(3.0号/DIA0.285mm)を使用
小渓流はナイロン
水面での釣りになるため、メインラインは比重の小さいナイロンまたはPEの2択になるが、小渓流で福士さんが多用するのはナイロン。強度は4ポンド(1号)。進化した最近のナイロンは強く、小渓流なら強度面に心配はないという。細いナイロンは小型スピニングリールに収まり、ショートロッドとのマッチングがよいのも魅力。
それよりも重視するのは視認性(=ラインカラー)。昼でも暗い鬱蒼とした小渓流において、ダークカラーは視認性が悪いのが難点。福士さんは小渓流で釣果を上げるのに「1投目で決めること」を強調する。
木に引っ掛けたり、ボサ際にミスキャストをすると、たちまち魚は警戒してしまう。そこで頼りになるのが見やすいカラー。天候や状況を問わず視認性が高い『スーパートラウトアドバンス サイトエディション』を愛用している
とはいえ、渇水時などは魚に見切られたと感じることがある。そんなときは、ダークカラーの『スーパートラウトアドバンス ビッグトラウト カッチイロ』がマッチする。漁網に使われている赤褐色を採用したカラーは、タフコンディションに適しているようだ。ただ、ラインナップは8ポンド(1.5号)からになり、細い号数がないのが残念。主に一般的な渓流域のニジマス、ブラウン、アメマスねらいで使用している。
PEが適したシーン
PEをメインにするのは、大型のニジマスやブラウンにねらいを定めるとき。そんなシチュエーションでは、飛距離の出るセミルアーを軸にする。水量が多いとアップのキャストでとおすのは難しく、複雑な流れのなかで流心をまたいで探る必要にも迫られる。その場合、PEの細くて強いというメリットが活きる。またフルキャストして遠くで掛けたとき、感度のよさがフッキング率アップに貢献する。
PEは0.6~0.8号で、やはり視認性を重視し、ライムグリーンカラーの『マックスパワーPE ☓ 8』を愛用。リーダーは比重の小さいナイロンで、魚にプレッシャーを与えにくいブラウンカラーの『スーパートラウトアドバンス エクストリームショックリーダー』8~12ポンドを使用ロッドやリールに合わせて選んでいる。水面での釣りはラインが太いと流れの抵抗を受けやすく、ナチュラルドリフトがしにくくなる。可能な限り、細いラインを選ぶようにしている
またリーダーの長さはロッドの長さに合わせて調整するが、おおむね50cm~1m。「6フィートクラスまでなら50~60cmで充分」と言う。リーダーが長すぎるとドラグが掛かりやすくなり、細いPEを用いる利点が半減してしまうからだ。
※このページは『North Angler's 2023年8月号』を再編集したものです。