レイクショアジギングのやりかたや魅力をご紹介します
レイクショアジギングの全容を紹介
文章◎古川慎也
遠浅の地形ゆえ
道東でサケのシーズンが終盤を迎える頃、私にとって一年の締めくくりというべき釣り”レイクジギング“がスタートする。メインとなるフィールドは、国内屈指のカルデラ湖の一つである屈斜路湖。手つかずの雄大な自然が残るロケーションは素晴らしく、盛期になると道内のみならず全国からアングラ—が訪れる。水温の低下とともにショアからのキャスティングで届く範囲内をニジマスが回遊し、例年10月中下旬から釣れ始める。
今でこそ屈斜路湖に足しげく通っているが、十数年前まで、秋/冬はもっぱら湿原河川で釣りを楽しんでいた。理由は明快。「湖は釣れない」と思っていたからだ。いくらロケーションがよくても、アングラーである以上、やはり釣行時は魚に出会いたいもの。
転機になったのは、かつて本誌で掲載していた湖のジギング記事。その舞台になっていたのは、道内有数のメジャーレイクである支笏湖。私の住んでいる地域からは遠くても、”ヒン卜“を得られた。屈斜路湖は一部のインレットを除いて遠浅な地形が目立つだけに、ジグとのマッチングがよいのではないかと思ったのだ。
海アメ&海サクラマスのジャンルでは、ほぼジグオンリ—の私。だが昔、湖でジグを投げる発想は全くなく、7~8フィートのミディアムクラスロッドを相棒に、20g未満のミノーやスプーンを投げていた。湖には大ものが潜んでいるのは疑いようがなく、「いつの日かロッドが大きく絞り込まれるのでは……」という期待感とは裏腹に、満足な釣果を得ることはできないでいた。それが、ジグを使うようになると劇的に状況が変わった。
ジグがハマる理由
なぜ、ジグが有効なのか。比較的魚の付きやすいインレットは例外として、湖の釣りは回遊している魚のバイトを待つスタイルになりがち。とくに回遊性の高いニジマスはなおさらだ。そして回遊するコースはカケアガリ(=ブレイクライン)が中心。前述のように、遠浅のポイントが多い屈斜路湖において、沖めに形成されるカケアガリに届けられるジグの遠投性の高さは強力な武器になる。
次にジグの形状。見てのとおりシンプルな形状ゆえ、縦(水深)にも横(面)にも対応する。広大な湖では、ルアーの存在を見つけてもらわないことには始まらない。その点、サーフェス&バーチカルという立体的な組み立てのできるジグの優位性は際立つ。
天候については、風が吹いて波立っている条件で圧倒的に実績が高い。波により水中酸素が撹拌されることで魚の活性を上げ、かつ警戒心が薄れるのだろう。しかし、そうした悪天候時はキャストやリトリーブがしにくいのがネック。「釣れるけど厳しい……」。このトレードオフな関係性を打破するのにも、シンプルで高比重なジグの持ち味が活きる
形状による操作の違い
ジグを選ぶ際、皆さんは何に重きを置いているだろうか?私が重視するのは「スローのスキル」である。ゆっくりと巻いてもアクションしながら泳ぎ切る最低値……すなわちスローリトリーブヘの対応力だ。
高活性時はファーストリトリーブでバイトしてくることもある。ただ速巻きの場合、水流や水圧などにより、大概は暴れながら動く。それをアクションと一括りにするのはどうかと思ったが、ひとまず暴れながらでもアピールしていることにしよう。
一方で、スローはどうか。ジグによっては全く動かず、リアが垂れ下がった状態のまま水平移動していると思われる。気温、水温の低下する季節柄、どちらかというとスロー域でヒット率が高く、そのスピードでのスイミングアクションが試される。
基本的な操作はタダ巻き。この場合は、メインベイトとなっているワカサギに近い、スリム&ロング形状のジグを選ぶ。縦の誘いが発生しないタダ巻きによるリサーチでは、いかに平面上を広範囲に探れるかが重要。このことから遠投性が高く、ナチュラルなウオブリングでアピールするリアバランスの出番。反面、アクション主体のメソッドなら、立体的に攻略することが可能。この場合、ロッドアクションに追従した動きを出しやすいセンターバランスを選ぶ。
ウエイトはシルエットやバランスを問わず30g前後。シルエットはなるべくベイトに合わせても、ナチュラル系カラーはほとんど使わない。魚に見つけてもらうことを最優先にアピール系をチョイスする。私のルアーケースはアカキン、ピンクベースばかり(笑)。
スピンリーフ。センター寄りのバランスで、ウオプリングよりもロールが強く、その名のとおりスピンするような動きでアピールする。そのため、比較的縦の動きに対してよく反応するアメマスのヒット率が高い
レンジは水温で変わる
ジグをそろえたら、後は実釣だ。いろいろと書いたが、晩秋/初冬、最も実績が高い操作は表層のタダ巻き。間違いなく一番釣れると感じる。表層で釣れるのは、ニジマスの適水温が関係していると思う。この時季、表層の水温はニジマスの好む10~15℃の範囲になりやすい。であるなら表層にねらいを定めるのが理にかなっている。
タダ巻きでのリトリーブスピードはスローが中心だが、使用ジグの形状などにより若干異なる。確実にジグがアクションするスピードを見極め、いかにスロー域の最低値まで寄せられるかがキー。
一方、まだ水温が高めに推移している時季や、逆に水温が低くなる冬期は、適水温を求めてトラウトの回遊レンジは下がる。その際は、バーチカルな縦の誘いが効き、操作法は以下のような感じ。①ジグをポトムまで一気に落とす、②着底→ジャーク1回、③→リトリーブ5巻きを繰り返して徐々にレンジを上げる。なお、ボトムレンジのみを探るなら、ボトムハンピングのイメージで、軽くジャークして跳ね上げる→リトリーブ5~10巻き→フォール→着底という流れでねらう。
縦の誘いで留意すべきは、着底(ボトムタッチ)したらすぐにジグを跳ね上げること。オフショアのジギングにも同じことがいえるが、フォール時にチェイスしていたとすると、着底後すぐに動きを与えないと魚に見切られやすいと思う。
湖流にも注目してほしい。海サクラなどショアの釣りと同様、やはり流れが利いている状態が好ましい。全く利いていないスカスカな日もあるが、そんなときはラン&ガンし、少しでも手もとに重みの伝わるポイントを探すしかない。
湖流は横(面)だけでなく、縦(水深)でも変化がある。表層は利いていなくても、カウントを刻んで各レンジを探ると違いが分かるはず。この際にもジグは頼りになる。シンプルな形状ゆえ、湖流がないと手もとに引き抵抗を全く感じない。反面、湖流があると雑味なく素直に伝わってくる。フォールに優れる特性から、縦の湖流変化にもいち早く気づくことができる。
タックルで重視すべき点
タックルは海アメ&海サクラマスと同じでOKだが、湖はオーバーハングなどでバックスペースの取りにくいポイントが少なくない。あまりにロングレングスのロッドだとキャストフィールの低下を招き、存分にポテンシャルを発揮できない。通常は10~11フィ—卜、取り回しを考慮すると9フィート前後が扱いやすい。リールはスプール径が大きいほうが、わずかでも飛距離が伸びる。ロッドのレングスを問わず4000番前後を組み合わせている。
いろいろと書き綴ったが、私の釣りに対する座右の銘は「一期一会」。相手(魚)ありきで成立する趣味であり、結局のところ「魚がいるかいないか」、「活性が高いのか低いのか」が一番釣果を左右する要素だ。年中魚と戯れていると、ターゲットの釣れぐあいやシーズンのインアウトから、意識せずとも季節の移り変わりを実感できる。しかし近年、そのサイクルが変化している。地球温暖化の影響と一言では片づけられないのではなかろうか。持続可能な釣りのため、環境問題にもしっかりと向き合っていきたい。®
※このページは『North Angler's』を再編集したものです。