S字系ルアーはトラウトフィッシングにも有効です。イトウやアメマス、ブラウン、ニジマスなど幅広く効果的。このルアージャンルの使い方やチューンまでを釣具店の方に聞きました
トラウトフィッシングにも有効です
解説=佐々木大
「ジョイクロ」が牽引
本誌でビッグミノーやビッグベイトを使い、多魚種をねらう釣り方を紹介して20年近く経とうとしている。そのなかでもビッグベイトというカテゴリーで一際異彩を放つのが、S字系ビッグベイトだろう。皆さんもご存じのとおり、ブラックバスやシーバスで一世を風靡したルアーだ。
昔、バス雑誌やテレビ番組を見て、そのデカさとインパクトのあるアクション、集魚効果の高さに息を呑んだアングラーは少なくないはず。そしてS字系ビッグベイトと聞き、真っ先に頭に浮かぶのが、ガンクラフト『鮎邪ジョインテッドクロー』 に違いない。たしか発売されたのは今から19年前の2004年と記憶している。「ジョイクロ」の愛称で親しまれていて、我々トラウトアングラーをも魅了した。「あの大きさで釣れる?」、「どんなタックルで投げる?」、「食うトラウトは相応のサイズ !?」と使う前から妄想がふくらむ。しかし大人気ゆえ品薄で、本州ですらなかなか購入できないのが実情。北海道で手に入るはずもなく、しばらくは指をくわえているしかなかった。
その後、ジョイクロのおかげでS字系ルアーの認知度が上がり、ようやく道内でも手に入る時代になったが、どこのメーカーの商品も店頭在庫になるほどの入荷数はなく、いつでも買えるルアーになるまでかなりの年月がかかった。
ちなみに私が初めて手にしたS字系は、エバーグリーン『エスドライブ』。初めて釣ったS字系も同社『シードライブ』だった。やっとの思いでジョイクロを入手できたのは10年ほど前。時間はかかったが、集魚効果の高さは噂どおりだった。
S字を大きく描きながらアクションするタイプは、小規模河川なら上流と下流にキャストしてねらえば、立ち位置側から対岸にかけて探れる。このような場所では対岸の浅瀬にルアーが入った瞬間、食ってくることが多い。○はバイトスポット
S字アクションは障害物に対し、近づいたり離れたりを繰り返す。アクションすることで魚に「今、捕食しないと!」と思わせることができる。同じポイントを探る場合でも着水位置を変えながらねらいたい
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投げて巻くだけだが……
今一度おさらいするとS字系アクションのルアーは、リップ付きミノーのようにブリブリとウオブリングや、ヨタヨタとローリングするわけではない。一般的にSの字を描くように大きく、ゆったりと蛇行しながらアクションするものが多い。その幅はメーカーやサイズ、リーリングスピード、ロッドの硬さによりかなり異なる。よく行くフィールドの川幅、流速に合わせて使い分ける楽しさがある。
また一口にS字系といってもスラローム系、S字スラローム系、ニョロニョロとジョイントミノーのように細かく激しいS字を描くタイプもあり、呼び方やアクションの違いに個体差がある。この辺りは各メーカーのとら方、アングラーの使用感によるところも大きい。ここではS字系という大きなくくりで進めたい。
これだけ注目されてきたS字系ルアーだが、まだ半信半疑の方は多い。「バスやシーバスには効果的でもトラウトには実際どうなの?」。興味はあっても気軽に買える価格帯ではないだけに、今でも躊躇する方は少なくない。
少なくない。しかし使い方はいたって簡単、スプーンやミノー、スピナーと同様、投げて巻くだけ。極端にスレている釣り場でなければ、巻くだけでちゃんと釣れてくれる。ただスプーンやミノーと同じようにタダ巻きだけで食わない状況は多々。そこはアングラーの腕の見せ所と言える。
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釣りたい!最初の一本は?
現在、トラウト用ルアーは圧倒的にシンキングタイプの需要が高い。ビッグベイト、とくにリップをもたないS字系ルアーも、トラウトねらいではシンキングを購入する方が大半だ。とはいえ、いろいろなシチュエーションに対応するのは、実はフローティング。沈下してしまうとリップがないことが仇になり、腹部から着底して根掛かりが多発する。フローティングで探れば障害物を回避しやすいのも利点。沈めたいなら板鉛などを貼ってシンキングにするとよい。一方、シンキングをフローティングにするには相当な浮力体を付けなければならない。それなりの浮力体を付けると泳ぎの妨げになるほか、見てくれも悪くなる。最初の一本にはフローティングを推奨したい。
写真ではアゴの下に貼っているが、貼る位置により動きやストップ時の姿勢は大きく変わる。ウエイトチューンもS字系ルアーを使う面白さ
ガンクラフトでも同社ルアーに貼るウエイトチューン用のアイテムをリリースしている。『シンキングヘルパー・N』は、白色のウエイトで目立たないのがうれしい(写真下)。がっちりチューニングしたい方は0.3mm、0.5mm、1mmと厚さが異なるタイプがあるアクティブ『鉛シール』がおすすめ
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口を使わせる一手
基本的にはタダ巻きで充分釣りになるが、アクション変化や食わせの間、ポイントへのアプローチに気を遣うことでバイトチャンスは増える。リールを巻くときに強弱をつけることでS字アクションはよりクイックになり、水中をあまり大きく移ると絡んでしまう……。
シングル派の方からよく相談を受けるが、私もS字系ルアーを使い始めた当時、同じ悩みを抱えていた。現在は、両方のフックのループ部を極端に長くした自作品を使用することで、フッキング率の向上と絡みにくさを両立できるようになった。ループなしの市販フックを使う場合は、フック同士が絡まないギリギリの長さ、かつ刺さりのよいフッ素コートタイプを選んでいる。
道内でも愛好者続々!
私の周りにはS字系ルアーでトラウトをねらう方が多いが、大半を占めるのはイトウをメインターゲットにしているアングラーだ。
以前、道東の目黒航基さんに同行いただいたときのこと。この日、イトウのバイトは5回、ランディングしたのは3尾。そのうち2尾はジョイクロシフト183での釣果だった。1尾目は私ならスルーしそうな、とても浅い倒木の絡むポイント。圧巻だったのは2尾目。目黒さんは対岸にへばりつくように隠れているイトウを発見。立ち位置はイトウを上流に置き、アップクロス気味にキャスト。ゆっくりとしたS字を描きながら魚の鼻先に差しかかり、素早くヒラを打たせるようなS字アクションに変化した瞬間、胴体をあまり動かさずに食ってきたのは90cmオーバーだった。
道北の平間祐逸さんもジョイクロを多用する一人だが、やはりシフトが使いやすいと話す。釣るまでに時間はかかったそうだが、簡単に釣れるよりルアーの特性やリーリングスピードを考えて操作するのが楽しいという。口が大きいイトウに対し、丸のみされにくいサイズ感のルアーを使うことで、魚へのダメージが少ないのもS字系を含めたビッグベイトのよいところだと考えている。
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とにかく体験したい方に
S字系ビッグベイトは平均40g 以上の重さ。ビッグミノーやビッグベイトを使ったことのある方なら、それなりのタックルを持っているだろうが、普通に考えたらMAX50g を超えるロッドを川で振り回すのは特殊だろう。
まずは手持ちのトラウトロッドで扱えるジョイクロ70や、ダイワ『レイジーファシャッドJ100』を試してほしい。70〜100 mmで4〜14gのルアーなら、渓流の20cmに満たないトラウトでもしっかり反応してくれる。もちろん本流や湖でも活躍する。このサイズ感からスタートして釣れたら、自信をもってサイズアップしていこう。
私もまだ発展途上だが、S字系は操作の楽しさ、自らコントロールして釣ったという充実感、そして好みにチューニングする満足感と自分色に染める面白さのあるルアーだと思う。同じようにアクションしているように見えて微妙に違う各メーカーのS字系ルアー。泳がせるだけでもワクワクする。イトウに限らずブラウン、ニジマス、アメマスも普通に釣れる。秋は大ものと出会うチャンス。S字アクションで2 023年を締めくくってはいかが?
※このページは『North Angler’s 2023年11月号』を再編集したものです。