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編集部2020年4月25日

猛者ぞろいの大会で次々に頂点に立った小澤剛さん初の書下ろし著書/アームチェアフィッシングの部屋 第16回

月刊つり人ブログ アームチェアフィッシングの部屋

肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。


『友釣り無双』/小澤 剛

つり人編集部/佐藤俊輔

肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。
 
◎今回の紹介者
つり人編集部/佐藤俊輔

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1980年6月6日生まれ。神奈川県出身。映像系専門学校を卒業後、助監督として映画の現場を綱渡りしながら映画以上に釣りに熱中。2007年から月刊つり人編集部の一員になる。特に好きな釣りはアユ、磯、渓流。



アユ友釣りはイトの張り加減がすべて


 月刊つり人編集部に入って初めて手掛けた単行本はアユ釣り競技会で史上最強と称される名手、小澤剛さんの著書『友釣り無双』でした。「本を書いていただけませんか」と小澤さんに依頼をしたのは2010年。小澤さんがダイワ鮎マスターズで初優勝を果たした年です。その前年にも小澤さんはシマノジャパンカップ、G杯アユ、バリバスカップ、スポニチ名人位と猛者ぞろいの大会で頂点に立ち、まさにアユ釣りファンの注目の的。その小澤さんが赤裸々にテクニックや考え方を書き下ろしてくださったのが本書でした。当時の小澤さんは40歳。ちなみに私は30歳でした。すでに10年が経ちましたが、この間にも小澤さんはさまざまなビッグタイトルを勝ち取っています。

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 アユ釣り競技のメジャー大会は各地の予選会をトータルすると3000人超が参加します。しかしお立ち台に立つ、もしくは最終的な全国大会に勝ち上がる選手はかなりの割合で毎年同じような顔ぶれです。つまり実力がなければ勝てない世界。何度も頂点に立つには、当然ながら「運」では不可能なのです。本書には「運という言葉が嫌いである」という章があります。
 「友釣りでは1にポイント、2にオトリ、3に仕掛けという言葉をよく耳にします。1はいかなる名人もアユがいなければ釣れないということです。たしかにポイントは大事です。入選順位を決めるくじ運によっては、入れるポイントも限定されます。しかし一体何を競っているのでしょう。運? ポイント? オトリ? トーナメントで本気で勝ち上がりたいのなら、こういう考えは捨てましょう。川にまんべんなくアユがいる状況で『みなが同じポイントに立った』と考えれば釣技や仕掛けのほうが重要になり、1にポイントという意識はなくなります。同じポイントに入った時に釣り負けない技術や精神力を高めることこそ重要です」

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 本書のまえがきで「オトリ任せの友釣りをやめる」と小澤さんは書いています。オトリを弱らせない、優しくソフトに扱うことだけ意識していると釣果は伸びません。ルアーフィッシングを引き合いに出し、ルアーが操作しなければ釣れないようにオトリも操作して常に攻めの意識を持ち続けること、と説くのです。とはいえ引っ張り続ければオトリは死にます。だから友釣りのキモは「イトの張り加減がすべて」と小澤さんは言います。この言葉に私は衝撃を受けました。もちろんアユ友釣りは川見、仕掛け、引き抜き、手返しなどのさまざまな所作が釣果に直結します。それが「イトの張り加減」にこそ核心があると言い切られたことで、この釣りの面白さがさらに深まったと感じました。生きたオトリを操作するには、流れの強弱やポイント形状、オトリの体力を考慮しながら張り加減を調整します。すなわち条件は常に変わります。そして小澤さんの技術の凄さは、条件に合わせて精密機械のようなテンションコントロールができることです。小澤さんの構えといえばテンビン持ちですが、サオの握り方は極めてソフト。指の上に乗っけたサオを転がすようにしてイトの張り加減を調整しています。

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 小澤さんは結果の出た仕掛け、ハリ、川相、石色、操作のイメージなど些細な事柄も書き留めておくことが大切と説きます。そして「結果がすべて」と言うのです。前述のイトの張り加減は個人差のある極めて感覚的な要素ですが、たとえば「オトリの鼻をくすぐるようなイメージ」とか「オトリの鼻を1cmくらい持ち上げるイメージ」というぐあいにメモしておきます。そうして「自分の釣りに基準をつくる」ことこそ安定した釣果をあげるために重要というのです。これはあらゆる釣りに精通する上達のキモだと思います。

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 アユ釣りは不定常変とは村田満さんの言葉ですが、「これだ!」 という釣り方に開眼したとしても、それが翌年にはもう通用しないのがアユ釣りです。 昨日は釣れたのに、同じように同じ場所を釣っていても通用しない。だから小澤さんは先入観にもとらわれないようにします。この夏はどんな解禁になるのか? 新型コロナによる影響も懸念されていますが、こんな時こそ名手の確固たる釣りの考え方や技術をおさらいしておくのもよいかもしれません。

『友釣り無双』
単行本: 143ページ
出版社: つり人社
発売日: 2011/3/1






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