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編集部2025年5月22日

意外と簡単!釣り竿のガイド交換!

ブランク、ガイド、グリップを組み合わせこだわりの自作ロッドを仕立てるロッドビルディングの世界。まずは愛竿のガイドを新しくしてみることから始めてみては?

写真と文◎編集部

ガイド交換の意義

 既製品にないこだわりのロッドが欲しいとなると、ブランク、ガイド、グリップをパーツから揃え、自分で組み上げるロッドビルディングの世界の門をたたくことになる。
 筆者(つり人編集部・アライ)は、高校生のころからこの世界に手を出しており、ガイドの取り付けなどひと通りはできる。その話を聞きつけた副編集長のナガシマがロッドを改造してほしいと言ってきた。なんでも愛用のロッドに不満があり、ガイドを付け替えたいのだとか。よい機会なのでそのようすを紹介しよう。必要な道具とパーツ類さえ揃えれば意外と簡単にできることを知ってもらえると思う。
経験で学んだコツなども参考にしていただければ幸いだ。
 ロッドの進歩とともにガイドセッティングもまた進歩してきた。それはより軽量であったりライントラブルの少ない形状であったりするガイドが登場したからでもあるし、ラインの主流がモノフィラからPEに移り変わってきたのもその理由だ。旧式になったロッドでもガイドを交換することで、今どきの釣り方に合った使用感にブラッシュアップすることもできるのだ。
 たとえば今回のナガシマのロッドは、ソルト用の6フィート5インチでMLパワーのスピニングロッド。遠征に便利な3ピースのモデルで、いろいろなターゲットをこの一本で楽しめるように、というコンセプトのモデルだ。ナガシマはボートシーバスで使用しているのだが、比較的大きめなリング径ガイドでガイド同士の間隔も広いためか、横風のなかPEラインでキャストしているとガイド間でラインが膨らみ絡むトラブルが多いという。
 そこで、ガイドをオリジナルよりも小口径化しつつ数も増やして、ガイド間の弛みを少なくしたい。
さらにオリジナルではステンレスフレームのガイドだったところ、せっかくなのでチタン製に替えて軽快な振り感にもしたいという要望だ。
 それでは作業のようすを順に紹介しよう。

 

 

必要なもの

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①ガイド
②スレッド
③ 2 液性エポキシコーティング剤
④ 2 液性エポキシ接着剤
⑤ PE ライン(1 号前後)
⑥デザインナイフ
⑦カッター
⑧筆(使い捨て)
⑨プラスチックカップ(なるべく小さいもの)
⑩燃料用アルコール
⑪アルコールランプ
⑫ティッシュ
⑬フィニッシングモーター
⑭油性サインペン
⑮マスキングテープ
⑯瞬間接着剤
⑰定規
⑱プライヤー
⑲耐水ペーパー(# 400 〜800 前後)
このほか敷き紙(チラシ、メモ用紙など)と、雑誌も数冊あると便利

 

 

 

作業手順

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ガイドの足の部分のスレッドをカッターで削るように切っていく。刃がブランクに当たらないように必ずガイドの足の上を削る

 

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ガイドの足の大部分が露出したら、手でガイドを外す

 

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残ったスレッドをプライヤーで剥いていく。全周にスレッドが残っている部分は、スレッドの端を指で摘まんで引っ張っていくとコーティングとともに剥げていく

 

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ブランクに残ったエポキシを取り除いてきれいにする。爪で剥ければ簡単だが、使われているエポキシの硬さはロッドによって違い、硬い良質なエポキシが使われている場合は破片が爪の隙間に刺さって痛い。エポキシは熱で柔らかくなるので、乾いたタオルなどで激しく擦って摩擦熱をかけ、定規のようなエッジのあるプラスチックで削っていく。ブランクを傷つけないように慎重に根気よくやるのがコツ

 

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トップガイドは、スレッドを除去したらパイプ部分の接着剤に熱を加えてプライヤーで引き抜く。ブランクを傷めるので直火は使いたくないが、接着剤の質もロッドによって違い、どのくらいの熱で外れるかはやってみないとわからない。慎重を期すなら熱湯→ドライヤー→ライターやアルコールランプなど直火をくぐらせる→直火であぶる(目安:2 秒未満)の順で試すとよいだろう。熱しすぎはブランクを傷めので注意

 

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まずはブランクの円周上のどの向きにガイドを並べるかを決める。ブランクは曲げる向きによって反発力にばらつきがある。カーボンシートを筒のように丸めて作られているブランクは、巻き始めと終わりが重なる部分の反発力が強くなるためだ。これをスパインといい、スピニングロッドならスパインと逆側に、ベイトロッドならスパインの上にガイドを乗せるとロッドパワーを最大限に生かせる。パワーを抑えたいときは逆にすることもある。今回は取り外したガイドと同じ側に並べればよい。写真は曲げながら回してスパインを調べているところ

 

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長さ方向のガイドの位置を決める。今回はオリジナルより小径軽量化して数を増やしたい(8 個→ 10 個)ので、参考ガイドスペックをもとにティップ側からだんだん間隔が広くなるよう、定規で長さを測りつつ、細く切ったマスキングテープでマーキングしていく。長さ、パワー、アクションとガイド個数が似ているバス用ベイトロッドが参考になった

 

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印に沿って、細く切ったマスキングテープでガイドを仮止めし、イトを通して曲がりをチェックする。ここではベンドカーブの要所に均等に力がかかっているように見えればOKとする。ロッドビルディングでは「不満があればやり直せる」のトライ&エラー精神が最も重要だ

 

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2 液性エポキシ接着剤でトップガイドを取り付ける。接着剤のA剤とB剤を等量出してよく練り混ぜる。説明書に従い換気のよいところで行なう。分量を誤ると硬化不良となるが、メモ用紙の罫線を目安にチューブから押し出すとミスが起きにくい

 

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2 液性エポキシ接着剤をティップ先端に適量塗り、回しながら差し込む。はみ出た接着剤はアルコールをしみ込ませたティッシュでふき取る。最初に決めた向きにガイドが向いているのを確認したら、硬化するまで安置

 

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ここから仮止めしたガイドの足にスレッドを巻いていく作業。まずPE ラインで作った長さ5㎝ほどの輪(抜き輪)を2 ~ 3 個用意しておく

 

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重ねた雑誌にスレッドを挟んで引き出す。こうすることでボビンを手で持たずともテンションを掛けながら巻くことができる。テンションの強さは乗せる雑誌の数で調整する。『つり人』は取り回しのよい大きさでほどよく厚みもあるので使い勝手がよい

 

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ガイドの足の先端から2 ~ 3mm のところでスレッドをクロスさせ巻き始める。滑ってしまう場合は、スレッドの端を少し離れたところにマスキングテープで仮止めしておく

 

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隙間がないように巻いていく。あらかじめガイドの足の先端を耐水ペーパーなどで削ってなだらかにしておくと、スムーズにスレッドを足に乗せられる。ある程度巻いたら、スレッドの端を短い長さにカット

 

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ガイドがスレッドだけで止まっている状態まで巻けたら仮止めしていたマスキングテープをはがす

 

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巻き終わりまで5㎜ほど残したところでPEラインの輪を挟む

 

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巻き終えたら、テンションが緩まないようにしながらスレッドをカットして、端をPEラインの輪(抜き輪)に通す

 

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抜き輪を引き抜けばスレッド巻き完了。このときスレッドの下へわずかに隠れるところで抜き輪を引くのをいったん止め、スレッドの端をギリギリの位置でカットして引き抜けば、抜いた位置から端が飛び出さない。飛び出してしまったときは、切れ味のよいデザインナイフを隙間から入れて、ブランクを傷つけない力加減でカットする。飛び出した繊維が残っているとエポキシでコーティングした際に突起になってしまう

 

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すべてのガイドにスレッドを巻き終えたらガイドがまっすぐに並んでいるかをチェック。昼間の明るい時間帯に窓に向けてチェックするとわかりやすい。ズレているガイドは指で横から押して位置を微調整、その際ガイドの足が斜めになるのでブランクと平行になるようにつまんで直す

 

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エポキシコーティングの前に、アルコールをしみ込ませたティッシュでスレッドを拭く。手の脂がついているとエポキシの乗りに悪影響があるため

 

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ロッドをフィニッシングモーターにセットする。5 ~ 10 秒で一回転する低速のモーターで、硬化するまで回転させ続けることでエポキシが偏るのを防ぐアイテム。チャックで挟んで固定するが、傷が入らないようつかむ位置をマスキングテープなどで保護する。台座はマスキングテープなどで机に固定すると硬化中に倒れてしまうトラブルを防げる。また、モーターがついていないほうの台は適当なものでかさ上げして少し高くするとよい(理由は後述)

 

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コーティング用の2 液性エポキシを混合する。決められた混合比を正確に守るのが重要。さもないといつまでも硬化せずベトベトなまま釣りをするはめになる。ジャストエース「エポキシコート JEC-40」はシリンジが付属しているので計量が簡単かつ正確

 

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使い捨てのプラカップに主剤と硬化剤を入れたら、筆を使いなるべく気泡が入らないようによく混合する

 

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モーターのスイッチを入れ、回転させながら筆でエポキシを塗っていく。余分はカップで受け止めるが、念のため下に紙を敷いておく。賃貸で床に垂らすと敷金が失われる可能性があるため

 

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アルコールランプの炎でエポキシの気泡を飛ばす。ここでも直火を当てるのはNG なので、炎の側面でエポキシをなでるようにジワリと温めていく。するとエポキシの粘度が下がり気泡が抜けるとともに、スレッドによくしみ込んでいく。ヒートガンがあればより安全に作業可能

 

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粘度が下がった余分のエポキシが垂れてくるので、筆で受け止める。表面張力を利用して均等な厚みになるよう筆で誘導すると見た目が整う。このときエポキシがガイドフレームに沿って垂れてきて、最悪の場合ガイドリングをふさいでしまうことがある。台を高くしてティップ側を上げているのはエポキシが垂れる方向を誘導するため。スレッドに乗せるエポキシの量の塩梅は難しく、強度・見た目・軽量を考えると、硬化後にスレッドの質感が浮き出ない範囲でなるべく薄く盛られている状態が理想。手間を厭わないなら1 度目はスレッドにしみ込むくらいで薄く塗り、硬化後に2 度目で仕上げ塗りするのが確実だが、早く釣りをしたいので1 度で仕上げたいのが人情だ

 

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完全に硬化するまでひと晩~ 1 日回し続けて完成。手などについたエポキシはアルコールで拭き取る。床に垂れてしまったものも同じように拭くが、フローリングのワックスがアルコールでダメになるものだった場合、敷金が失われる可能性があるので注意

 

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さっそくボートシーバスで使用したナガシマ。スムーズなキャストフィールでトラブルがなくなり、さらにガイドの数が増えたためブランクのパワーが上がったように感じたという

 

 

ガイドとスレッドについて

ガイドはスレッドと呼ばれるイトでブランクに巻きつけられたところにエポキシ樹脂のコーティングで固められて取り付けられている。スレッドはさまざまなカラーのものが販売されており、エポキシをしみ込ませると透けてガイドの足が見えるもの、透けずにそのままの色が発色するものがあるので好みで選べばよい。ガイドの種類、サイズ、数を決めるには、富士工業が公開しているカタログの参考ガイドスペックを参照してみよう。対象魚種とロッドの長さごとに標準的なガイドの取り付け位置、サイズ、型番がわかる。はじめのうちはそれをもとに必要な個数とサイズを決めるのがよい。あるいは手持ちの既製品で似たパワーと調子のものがあるならそれも大いに参考になる。一般に発売されている富士工業のガイドのフレーム素材はチタンとステンレスから選べる。軽量化を求めるならチタンだが価格が割高だ。ステンレスは安価だが重い。ただし、重いのが必ずしも悪いわけではなく、ロッドの反発スピードを抑えキャスト時のリリースタイミングをつかみやすくするためにあえてステンレスガイドを乗せて組むこともある。 ガイドリングの素材は、チタンフレームではSiCとトルザイトがある(ステンレスはSiCのみ)。どちらも宝石のように表面が滑らかでラインに優しく、石英やステンレスよりも硬いのでフックや砂粒がこすれても削れることのない優秀な素材だ。より高級なロッドに使われることが多いのはトルザイトで、そのメリットはSiCより厚みが薄く、ラインが通る内径が同じならガイド全体がより小さく、その分軽快なロッドに仕上がるため。一方、SiCは放熱性に優れているので、摩擦熱によるラインのダメージを抑えられる。ラインテンションが常にかかり続ける釣りで選ぶとその恩恵が大きい。

 

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