登山靴の名門が考えた渓流釣りのための渓流シューズKR-MSF_WIDE(キャラバン)のインプレッション記事です。暑い夏でもウエットスタイルで釣り上がれば快適です。
暑い夏でもウエットスタイルで釣り上がれば快適です。
写真と文◎編集部
登山靴の名門が考えた渓流釣りに最適な渓流シューズ
渓流釣りファンからの要望に応えた釣りに最適な渓流シューズがKR-MSF_WIDE。本製品の一番の特徴は排水パーツを取り付けたり、ミッドソールには穴をあけているため、非常に水はけ性能が高いこと。キャラバンの沢靴はどれも軽量だが、水から上がって陸を歩く場合の足取りは驚くほど軽い。
また、ロングセラーのKR-3XF はステッチ(縫い目)があり、使い込んでいくとステッチ切れが起きてしまっていたが、樹脂プリント補強溶着を採用しステッチをなくしたことで擦れに強くなっている。
さらに、伸縮性のある履き口は履きやすさだけでなく、足首のフィット感も良好でどんな姿勢でも足首の負担を低減。それでいて足首周りがTPU 補強で保護されているので岩に押し当てるような体勢になっても痛くない。
沢登りを主体とした源流釣行ならKR_3XF やKR_3XR、釣りがメインの行程や日帰り釣行、ウエーダーを履く釣りならKR_3XF WIDE と使い分けたい。
●価格:2 万4200 円(税込)
KR_MSF WIDE の特徴は排水性能がかなり高いこと。側面の水抜き穴のほかにミッドソールにもスリットが入っていてソールからも水が抜けだして足取りが軽くなる
タンはつながっており、小砂利や砂が靴の中に入ってこない。細部のちょっとした工夫が快適な釣りをサポートする
樹脂プリント補強溶着によってステッチをなくしたことで耐久性が向上。擦れにも強い
伸縮性のある履き口は履きやすくフィット感も良好。EEE の幅広仕様で窮屈な感じはしない
落差のある渓を遡行する場合や沢登りメインであればKR_3XF がおすすめ
KR-MSF_WIDEを履いて釣りに行ってきました!
編集長、満を持してフライフィッシングを体験
「最近フライフィッシングをしっかり経験してみたいと思っている。今度教えてくれよ」
7月初旬、天気が不安定で予報も当てにならない日が続く中でサトウが提案した場所は長野県の開田高原だ。高原の冷涼な気候で夏でも気分爽快、魚の反応も期待できる。開田高原一帯は末川や冷川など木曽川漁協管轄の数多くの支流が流れているため、魚の活性が悪くても移動先に困らないのもうれしい。ナガシマもサトウも開田高原には行ったことがなかったため情報を集めるとフライをするなら西野川が外さないとのことだった。テレストリアル(陸生昆虫)パターンのフライを多めに用意して西野川へ車を走らせた。
豊かな渓畔林の中で好反応なイワナたち
西野川の最寄りインターチェンジは中央自動車道の伊那ICだ。と言ってもここから川まで一般道で30㎞は走る。中山道を経由して長良川、揖斐川と並ぶ木曽三川のひとつ、木曽川を渡り、黒川沿いのR361を登って新地蔵トンネルを抜けるとようやく開田高原に到着した。
西野川沿いを進んで川のようすを見てみると、集落の間を抜ける下流側は頭上に障害物がほとんどない里川のようだが、上流域は渓畔林が生い茂っていて渓流らしくなる。水の冷たさをダイレクトに感じられるウエットウエーディングスタイルで上流域から釣りを開始。
集落の上流は渓畔林に覆われ段差がある流れだ
まずは手本を見せてくれ、ということでナガシマが釣り上がっていく。思ったより水は冷たいが、水量は多すぎずフライフィッシングが快適に楽しめる渓相だ。ロッドは8フィート1インチの#3で、リーダーは9フィートの4X、ティペットは6Xを1ヒロ強。結んだ#12のエルクヘアカディスをポイントに投げ込むとすぐに魚が飛び出してきたがフッキングしない。
パイロットパターンはエルクヘアカディスを選んだ。夏の定番であるアントパターンも好反応
めぼしいポイントに投げ込むたびに突き上げてくるが、どうもフライを咥えていないようで掛からない。フライを#14に落とし、水面に張り付くようなパターンにしてようやく小ぶりなイワナを釣ることができた。
なかなかフッキングしなかったのは魚が小さかったのだろうか。オレンジ色の朱点がとても鮮やかだった
日が高くなると魚の活性が高くなってきたのか7寸クラスを立て続けにキャッチ。昼を回ったので一旦退渓する。車で移動して下流側に再入渓したところでサトウにバトンタッチ。
高活性なイワナがたくさん飛び出してきた
良型も釣れた
水はけのよいシューズで長距離でも楽々釣り上がり
今回サトウとナガシマが履いているのは「渓流 KR_MSF WIDE」というキャラバンの渓流シューズだ。登山靴の名門であり、沢登りファンからも根強い人気があるキャラバンから今年リリースされたもので、釣りを意識して作られている。ソールのフェルトは沢靴譲りのグリップ力で耐久性も高い。中でも一番の特徴は水抜けのよさだ。シューズの側面に配置された水抜き穴だけでなく、ミッドソールにもスリットが入っており、ソールからも水がすぐに抜けていく。川から上がって河原や林道を歩くとき、一番気になるのは靴の重さだ。特にフェルトソールだとフェルト自体も水を吸うので余計に顕著に感じられる。しかし、渓流 KR_MSF WIDE は水をシューズ内に蓄えることがないので足取りはかなり軽い。実際、退渓時に歩いてもあの重さは感じられず、脱いだ後に手で持ってもかなり軽かった。高巻きが多いような渓でもその恩恵は得られるだろう。
ミズが生えていた。こうした道でも足取りは軽い
屈曲性があるので斜面や大岩も登りやすい。また、足先や踵は登山靴のように硬く保護されているので石の隙間に足を入れたりぶつけたりしても痛くない
ウエットウエーディング時の足回りはシューズ、ソックス、ゲーターがあればOK。ニーパッドがあると膝をついても痛くなく、怪我も防げる。
今回ナガシマが使用したアイテム(すべてキャラバン)
ニーパッド:渓流 ニーパッドプロ
ゲーター:渓流 スパッツプロ_ Ⅱ
ソックス:渓流 CR ソックス3mm
渓流シューズ:渓流 KR_MSF WIDE
サトウは普段から慣れ親しんでいるテンカラの要領でキャストをしていく。テンカラもフライもラインの重さで毛バリを投げるという原理は同じ。ラインの長さが随時変えられ、その分左手の動きが必要になるのがテンカラと違う感覚だ。「キャストが決まるとつい安心して左手がおろそかになる、久々に感じるもどかしさが楽しい」とサトウ。
流心と対岸の緩流帯をピンポイントでねらうサトウ編集長。慣れないキャストにもどかしくなりつつも本気モード全開で釣り上がる
時々魚が水面を割ってくるのだが、上流域同様になかなかヒットしない。足取りが軽いおかげかあっという間に1㎞ほど釣り上がった。西日に傾いてきたので車まで戻ると堰堤下でライズするイワナを発見。慎重にキャストをして流していくとパシャッと飛び出した。アワセが決まりついにランディングに成功! 納竿直前のラストチャンスをものにしたサトウは、フライタックルで釣った初めてのイワナに興奮冷めやらぬまま帰路に着いた。
サトウ編集長もフライでイワナをキャッチ。この後イブニングタイムではこのサイズが連発となった
歩き回る渓流釣りでは快適な装備が欠かせない
渓流釣りの中でもフライやテンカラ、ルアーはとにかく歩き回る釣りだ。大場所でない限り一つのポイントで釣れる魚は一尾が基本。それゆえ次のポイントをねらうためにどんどん釣り上がっていく。
渓流域を丸一日釣り上がれば疲労もでてくるだろう。充実した一日を実感させてくれるだけならいいが、酷いと怪我など事故の原因にもなりうる。普段なら跨げるのに疲れて足が上がらなくて引っかかった、ちょっとした踏ん張りに力が入らなくて滑った、などで転倒して怪我をしてしまってはせっかく楽しかった休日も台無しになってしまうだろう。
怪我は大げさだとしても、装備の軽さは快適な釣りをサポートし、疲労を減らす大切な要素だ。特にシューズは重さやホールド感がそれぞれで違いも分かりやすい。ウエーディングシューズの選択肢にKR_MSF WIDE が増えた今、用途や好みに合うシューズを改めて見つけてみてはいかがだろうか。
※このページは『つり人 2024年9月号』を再編集したものです。