1つ目は都市部の水辺に注目が集まったこと。ハゼ、テナガエビ、ウナギ、シーバスは、コロナ禍でより一層人気が高まったアーバンフィッシングの主役たち。また、都心周辺の河川や運河に急増中のクロダイ・キビレも人気者になりつつある。特にチニングと呼ばれるルアー釣りが盛り上がりを見せる。チニングは10年ほど前から西日本を中心に人気を博していたのだが、今後は東京湾周辺でさらに加熱しそうな勢いがある。
アーバンフィッシングに注目が集まる
『つり人』編集長サトウ=文
2021年もうれしいことに溢れるほどの釣り人で多くの水辺が賑わった。コロナ禍の影響による入門者の増加は、2020年に比べると落ち着いたようすだが、新たな釣り人が定着してきたともいえる。さまざまな釣りに挑戦してステップアップを目指す人が増えている。一方で残念なのは釣り禁止場所が増えていること。ゴミのポイ捨て、立入禁止場所への入釣など釣り人のマナー不足が叫ばれているのも事実。釣り場を守るには言わずもがな個人の心がけが大切。「マナーも腕のうち」という姿勢で深く釣りに親しんでほしい。
さて、小誌『月刊つり人』は全国版の釣り総合誌である。各ジャンルの最新動向を記せば枚挙にいとまがないので目立ったトピックをいくつか挙げたい。
1つ目は都市部の水辺に注目が集まったこと。ハゼ、テナガエビ、ウナギ、シーバスは、コロナ禍でより一層人気が高まったアーバンフィッシングの主役たち。また、都心周辺の河川や運河に急増中のクロダイ・キビレも人気者になりつつある。特にチニングと呼ばれるルアー釣りが盛り上がりを見せる。チニングは10年ほど前から西日本を中心に人気を博していたのだが、今後は東京湾周辺でさらに加熱しそうな勢いがある。いずれの釣りも息詰まるようなコロナ禍に、身近な水辺で楽しめる釣りが求められた結果であろう。小誌では都市部の子どもたちにとって、釣りの原点になりうる身近な釣りものを本年も積極的に取り上げていく予定である。
都市河川で大型クロダイがルアーで釣れる
2つ目はアユについて。アユは年魚であるがゆえ毎年状況は変わるのだが、2021年は東日本の多くの河川が遡上も少なく元気がなかった。シーズンを通じて人気が集中したのは遡上が増えた九頭竜川や良型に沸いた長良川。どちらの漁協もアユ釣り名手が組合長に新任し、釣り人目線の川づくりが今後もますます楽しみな川だ。最も印象に残ったのは、大水害から復活を遂げた球磨川のアユ。河口まで例年の十倍という数の天然アユが遡上し汲み上げ放流がされた。さまざまな名手が訪れてこの川の復活をアピールしたのも印象深い。アユ釣りは遠征を厭わない釣り人が多い。素晴らしい川に育ったアユは、地方創生の足掛かりになるほど人を集める価値があると私は思う。というわけで「いい川、いいアユ」の新鮮な情報を今年もしっかりお届けしたい。
球磨川応援のために訪れた野嶋玉造さん
3つ目はタナゴ釣り。2021年はタナゴの釣り堀がいくつかオープンした。さまざまな要因でタナゴ釣り場が激減している現在、宝石のように美しく愛らしいタナゴとまずは触れあう機会が必要だ。そういう意味でも釣り堀は今後のタナゴ人気を支えてくれそうな場所である。
野田幸手園にもタナゴ釣り堀がオープン
4つ目は勢力を拡大しているタチウオ。船釣りの人気ターゲットだが、数年前から福島に宮城と東北のオカッパリでも目覚ましい釣果があがり始め、2021年も好調だった。また東京湾の乗合船でタチウオ人気に拍車をかけたのが関西発祥のテンヤ釣法だ。圧倒的に大型が釣れると脚光を浴び、一気に広まった感がある。海水温の上昇によるものか、オフシーズンが不明瞭になったという声も少なくない。海水海の変化はタチウオだけでなく、サワラ、ハタ、オオニベといった南方系ルアーターゲットの勢力拡大にもつながっている。これらの魚種は今後ますます存在感を強め、新たな釣法や釣り場が生まれる可能性も高い。
東京湾のテンヤタチウオが人気沸騰
最後に小誌は2021年7月に創刊75年を迎えた。世界一歴史のある月刊釣り総合誌として、今後も変化していく水辺を敏感に見つめ、多彩で奥深い釣りの世界をお届けしたい。