グレは賢くハリスを見破る能力も高い。こと釣り人の姿が絶えない人気釣り場や、潮の動きが乏しい地磯&堤防ではハリスが太いと食わせきれない魚が多い。そこで試してみたいのが「魚に見えないピンクフロロ」だ。いわばグレ釣りファンの永遠の理想をカタチにした製品。効果のほどを東伊豆の人気地磯で検証してみた。
グレは賢くハリスを見破る能力も高い。こと釣り人の姿が絶えない人気釣り場や、潮の動きが乏しい地磯&堤防ではハリスが太いと食わせきれない魚が多い。そこで試してみたいのが「魚に見えないピンクフロロ」だ。いわばグレ釣りファンの永遠の理想をカタチにした製品。効果のほどを東伊豆の人気地磯で検証してみた。
写真と文◎編集部(サトウ)
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魚には見えない色がある
ハリスを細くすると魚の食い方が激変する釣りのひとつが、グレ(メジナ)のウキフカセ釣りだ。2号のハリスで釣り始めると最初は勢いよくウキを消し込む素直なアタリが出る。ところが同じように釣れ続くことは稀。やがてモゾモゾッとウキがわずかに沈むだけのもどかしいアタリに変わりフッキングに至らなくなることが多々ある。そこでハリスを1.5号、1.25号と細くすると途端にウキが消し込まれる。こと地磯や堤防で育ったグレは釣り人の仕掛けをよく学習している。水中のようすを観察すると寄せエサに乱舞しても付けエサだけ避けるように食べたり、エサを吸い込んでもすぐさま吐き出したりする光景はよく見られる。
ちなみに私は地磯のグレ釣りが大好き。沖磯とは違い時間制限がなく日の出から日没までみっちりと釣り込める。また船頭任せではなく釣り場選びの段階で自己完結できる潔さも魅力だ。スレた魚を相手に釣りを組み立てるのも面白く、老獪な40cmオーバーを手にした時の喜びは非常に大きい。そんな私が最近気になっていた製品がデュエル「魚に見えないピンクフロロ」である。
デュエルの同製品の紹介動画ではメバルが24号の極太ハリスに頭をぶつける映像からスタートする。メバルはその目の大きさから視力の高い魚とされる。そのラインカラーは「ステルスピンク」と名付けられ、人間にはよく見えるが魚には見えない。
太陽光に含まれる可視光線 (目に見える光) は大きく7色 (赤・橙・黄・緑・青・藍・紫) に分けられる。人間が目で見ることができる光の波長は380~700nm(ナノメートル)。波長の長い光は赤色に見え、波長の短い光は紫色に見える。近年の魚類網膜を利用した測定および分析によると、海水魚54種類のうち赤色(600nm以上)に感受性を持っていた魚はごくわずか。ほとんどの魚種は青色と緑色 (440~570nm)の感受性しか持たないことが分かった。
魚が感知する特定の範囲の波長を幅広くカット(吸収)すればラインが見えなくなる。さらにシルエットが際立たないように透明性も兼備したのが「ステルスピンク」である。こうした科学的根拠に基づき産み出された「魚に見えないピンクフロロ」は膨大なフィールド検証もされているそうで、その効果を純粋に実感してみたくなった。
5月上旬、私サトウは磯釣りにずっぽりのめり込んでいる副編集長のナガシマを連れて東伊豆の地磯、城ヶ崎は寺下を訪れた。
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太ハリスでもスレたグレは釣れるのか?
グレ釣りの盛期は大きく分けて厳寒期と梅雨である。クチブトメジナの産卵期は場所によっても異なるが東伊豆の場合は2月下旬~3月といわれる。1~2月は産卵前の丸々と太ったグレが浅場の岩礁帯に群れなし大型が有望になる。また水温低下によってエサ取りが減り本命にエサが届きやすいのもこの時期だ。一方、5月下旬から6月にかけての梅雨時はエサ取りが多くなるが、産後の荒食いが期待できる。活性の高いグレの数釣りが楽しめる好機とされる。
例年なら5月に入れば産後のグレも元気が出てくる。ところが今シーズンの東伊豆・城ヶ崎エリアのグレは産卵期が遅れていたようで4月中旬まで抱卵したメスが釣れ盛ったという。我々が訪れた5月上旬は今まさにハタいたばかりという可能性もあり、ハリスの威力を試す前に食い気のある魚が磯に付いているのか不安だった。
魚に見えないかどうかを検証するなら、なるべく魚が濃密な状態が望ましい。可能であれば透明ハリスと「魚に見えないピンクフロロ」の釣果比較もしてみたいところだが、今回はスレッカラシの多い地磯で最低限の太ハリスでどこまで釣果が伸ばせるかを試してみた。
寺下の磯は伊豆海洋公園の南にある蓮着寺の側にある。グーグルマップにも表示されているメジャーな地磯で人気実績ともに高い。駐車は海洋公園を利用。境内の脇にある磯に通じる道から磯場に下りる。
午前8時。背負子にオキアミ2枚(計6㎏)と配合エサやパン粉(6㎏)を積んで磯に向かう。この日は午後から大雨になる予報である。おまけに向かい風となる北東風が8mと強くなる。
「午前中で結果を出そう」
とナガシマを奮起させて寄せエサを混ぜる。この時点で汗が吹き出し身体がカッカと燃えてきた。出来上がったエサを一撒きすると水面を突き上げてくる魚がいる。どうやら小型のオナガメジナのようである。
仕掛けを張る。私は2号のハリスを10m取ってその中に00号のウキを通した全遊動仕掛けである。ナガシマは0号ウキを使った半遊動仕掛けで釣果差を見るためにも1.75号のハリスを張った。
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クチブトの良型はどこにいる?
北からのそよ風が吹き、サラシが斜め右に伸びている。私は寺下の磯を釣るのは初めてではない。過去には30mほどの位置にある沖のシモリをねらい40cmオーバーのオナガもクチブトも手にしたことがある。風の影響を考えミチイトが風の影響を受けにくい一段低い釣り座に立つ。沖に仕掛けを投げ込んでみると潮は左に向かって流れ、サラシは右方向に伸びている。沖の潮に仕掛けが乗ってもサラシによってミチイトが潮の流れと逆方向に膨らむ。これでは仕掛けが馴染みにくい。数投して沖を釣るのは難しいと判断し、立ち位置を左の磯との境目付近に移した。ここから伸びるサラシは真っ直ぐ沖方向に延びており、沖でもミチイトが膨らまずに仕掛けが馴染みやすい。
自分の右隣に立ったナガシマはサオ一本のウキ下でスタート。そして仕掛けが馴染むか馴染まないかという時にひったくられるようにウキが消し込みコッパオナガが宙を舞った。
ナガシマがコッパオナガを食わせた!
高水温期の寺下の磯はオナガの幼魚が湧きやすく、どこを投げてもサイズが上がらず撃沈することもある。今回はサイズを問わず釣果をどれだけ持続させられるかも検証のひとつなのでコッパの連発も大歓迎だ。しかし、甘くはない。連発ヒットに導く要素はハリス使いに限らない。タナ合わせ、寄せエサと付けエサの同調、ハリの大きさ、ウキの抵抗、仕掛けの馴染ませ方など釣り人の技術が複合的に絡んでくる。当然、海の状況も単調ではないから一投毎に状況を見極め、抵抗なく食わせられる投入点やコース、寄せエサと付けエサを合わせる位置を考慮しなくてはならない。またサイズアップには、コッパやエサ取りをかわすコマセワーク、良型が群れるタナや根をイメージするのも重要だ。釣りの組み立て方が何通りもあるのもウキフカセの醍醐味であり奥深さなのだ。
その後もナガシマはポツポツと〝コナガ〟を掛けた。私も2号ハリスはそのままにウキ下を浅くした半遊動仕掛けに替えてみると同サイズは食った。特に寄せエサと同調させやすい近距離の浅ダナはコッパばかり。型を出すにはやり方が違うとタナを無段階に探れる沈め探り釣りの仕掛けに再び替えた。ウキが深く入り過ぎてもアタリが遠のく。00号のウキを0号に換えて浅ダナでジワジワと沈むようなセッティングにした。
右のサラシと左のサラシがぶつかる辺りにいい感じの潮目ができた。そこにウキを入れて寄せエサをかぶせる。仕掛けが馴染むとウキがゆっくりとシモって見えなくなる。今度はミチイトに視線を移してアタリを見る。「し」の字を描いた弛みがスーッと直線に伸び、オープンベールで指にかけたミチイトにグッと重みが乗った。アタリだ。合わせるとズシッと重量感がある。根に突進する引きを受け止め、しっかりとサオを絞る。魚が暴れ過ぎないようにレバーブレーキでイトを出しつつやり取りをしてサオの角度を保つ。2号ハリスを張っているので安心感はある。やがて浮いてきた魚は40cm近い。産後と思しき痩せ気味の個体であったが明らかに長さがあるクチブトメジナだ。
「一安心ですね」
とナガシマも喜んでくれる。
ピンクフロロの効果か⁉
ここで連打をできればハリスの効果をもっと実感できたのだが技術及ばず。潮目は消えてアタリも遠のく。そのうち冷たい風が吹き始め雨粒が落ちてきた。本降りになったところで向かい風が強くなり極めて釣りづらい状況になった。が、サラシは広がりグレの活性は高まった。ナガシマは1ヒロ半ほどの浅ダナで33~35cmクラスを連発。やがてバッカンの中に水溜まりができるほど雨脚が強まりエサが水浸しになった。限界である。
実際のところ今回の検証はハリスの効果で魚が食ったか分からない。しかし「魚に見えない」という科学的根拠が釣り人に与える安心感は大きい。1日で結果が出ずとも使い込めば効果は実感できるはず。間もなく梅雨グレの盛期、激戦区の地磯通いが楽しみだ。
「魚に見えないピンクフロロ」は魚が感知する特定の範囲の波長を幅広くカット(吸収)するだけでなく、透明性も兼ね備えた独自のカラーフィルター機能搭載ライン。人には良く見えるが魚には見えない!
※このページは『つり人 2024年7月号』を再編集したものです。