編集部2021年7月21日

美味しい鮎の味わい方!「和良鮎」で体感!

アユ 美味しい鮮魚料理 月刊つり人ブログ PICKUP

夏の川を代表する味覚といえば鮎。中でも「清流めぐり利き鮎会」で4度のグランプリを獲得し、注目を集めているのが岐阜県和良川(わらがわ)の「和良鮎」だ。6月上旬、世界的なソムリエの田崎真也さん、人気アングラーの秋丸美帆さん、秦拓馬さんをゲストに迎え、鮎の魅力や美味しい食べ方を体感する会を実施。新鮮な驚きも広がったその模様をお伝えしたい。

月刊「つり人」創刊75周年特別企画

つり人編集部=まとめ


 夏の川を代表する味覚といえば鮎。中でも「清流めぐり利き鮎会」で4度のグランプリを獲得し、注目を集めているのが岐阜県和良川(わらがわ)の「和良鮎」だ。6月上旬、世界的なソムリエの田崎真也さん、人気アングラーの秋丸美帆さん、秦拓馬さんをゲストに迎え、鮎の魅力や美味しい食べ方を体感する会を実施。新鮮な驚きも広がったその模様をお伝えしたい。



◆この記事は月刊『つり人』2021年9月号に掲載したものを再編集しています


特別企画の模様はつり人チャンネルで公開中!ぜひご覧ください!


「清流めぐり利き鮎会」で4度グランプリを獲得している和良川の鮎


鈴木 今日は和良川にお集まりいただきありがとうございます。

秋丸 こちらこそ楽しみです。でもどうして和良川なんですか?

鈴木 「清流めぐり利き鮎会」というイベントで、最多となる4度のグランプリを獲得している唯一の河川なんですよ。そんな川は全国でも他にありません。
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田崎 その時は一人何匹くらいの鮎を食べるんですか?

鈴木 鮎はあらかじめ数切れに分けてあって、食べられる人はいくつでも食べるという方式ですね。

田崎 すると食べるパーツが毎回変わるわけですか。鮎は尻尾と頭だと相当味が違いますから、ある意味で難しいところですよね。

秋丸 味の違いの一番の理由は何ですか? やはり川の環境なんでしょうか。

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秋丸美帆(あきまるみほ)
1987年生まれ。福岡市出身。2008年にダイワの創立50周年記念スペシャル企画として実施された「ダイワ スーパーフレッシュアングラーズオーディション」で全国から選出。地元の九州を拠点に堤防のアジングから船のGTまで、釣りは「楽しく!おいしく!」をモットーに活躍している


大澤 和良川は上流に「蛇穴」などの鍾乳洞があって、そこから地下水が湧いています。川底から新鮮な湧き水が出ている場所も多くて、昔から鮎は美味しかったんです。

鈴木 実は利き鮎会も、元々は天然遡上の川の鮎が当然美味しいだろうということで始まった経緯があるんです。ですから、途中にダムがある和良川とか馬瀬川がグランプリというのは、主催者からするとある意味で誤算だったんですね。でも、このあたりは昔から鮎釣りをしていても水もいいし石もよかった。鮎の味に影響を与える苔もよかった。
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美味しい鮎を育む和良川の流れ

田崎 いずれにしてもそうした審査方法の中で、4度も優勝しているというのはすごいですね。鮎を焼く料理人さんも複数いらっしゃれば、それによる味の違いも出るはずですし。優勝を重ねられるのには何か理由があるはずです。

鈴木 そうですね。また今回は世界的なソムリエでいらっしゃる田崎さんにお越しいただけましたので、鮎と合わせるお酒についてもぜひうかがいたい。実は今年の別冊「鮎釣り2021」では、鮎を愛した文豪・文士たちの作品について取り上げています。そのうちの一人である獅子文六は「私のように、塩焼きばかり、ムシャムシャ食うのだったら、或いは、冷たい白ブドー酒が、最適といえるかも知れない」と言っているんですね。実際のところ、白ワインと鮎は合うのでしょうか? 

田崎 まずお伝えしておくべきは、食べ物はどんなものでも〝美味しい〟の基準が難しいということですね。ワインもそうですけれど、人には好みがあります。ですので今回に限らず、「これのほうが美味しい」という言い方はしないようにしています。そうではなく、そのものの特徴を言うようにしている。このお酒はこういう香りがします。この鮎はこういう味がします。それなら……という言い方ですね。

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田崎真也(たさきしんや)
1958年生まれ。東京都出身。1995年第8回世界最優秀ソムリエコンクール優勝。国際ソムリエ協会会長を務めた後、2016年2月から日本ソムリエ協会会長。中学時代に海釣りの楽しさに目覚めた。その後、多忙な仕事の中で釣りの楽しさを再発見。その経緯はインタビュー集『釣人かく語りき』(つり人社)に詳しい


 でも、まずは田崎さんと同じ空間で、同じものを食べられるということですよね。すごく楽しみです。

秋丸 本当にそうですね。

大澤 今日は編集部さんからのリクエストもあって、3種類の鮎をご用意します。1つが3日前の特別解禁で釣れたまだ若い今年の和良鮎です。もう1つが今日スーパーで購入してきた養殖鮎。そしてもう1つが2019年に開催された第22 回大会に出品してグランプリを獲得したものと同じ鮎ですね。

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和良町の名所を訪ね「和良鮎」を食した今回の座談会は、YouTube「つり人チャンネル」でも特別コンテンツを公開中。伝説の鬼の首、岩の下に集まる希少なオオサンショウウオなど、驚きの内容も盛りだくさん。ぜひご覧ください。

鈴木 それはすごいですね。このあとは大澤さんの焼き方についても皆さんに見ていただきますが、鮎の味は焼き方が占める部分もかなり大きいですよね。昔、鮎釣りの名人として知られる大西満さんから聞いたことがあります。長良川の上流の民宿に1時間かけて鮎を焼くおばあちゃんがいて、それが絶品だ、一番旨いのだと。串を手に持って、脂が垂れそうになったり、焦げそうになったりしたら回す。それで外側は油で揚げたようにカリカリになると。残念ながら僕はそれを食べられていないのですが。

田崎 焼き鳥屋さんも同じですよね。パタパタとあおぐのは温度をコントロールしている他に、煙を回して燻製効果を高めるためです。ウナギもそうですけれど、火に置きっぱなしにすると表面が300℃とか400℃になってしまう。そうすると焦げてしまうわけですが、160℃以下ギリギリだと、焦げずに醤油煎餅などに感じる香ばしい状態になる。

鈴木 おばあちゃんはそれを体験的に知っていたわけですね。

(一同、外に出て大澤さんの鮎焼きを見学)


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美味しさを引き出す締め方と焼き方


大澤 これが今年の若鮎と、グランプリ獲得の年の8月に保存した成熟した鮎になります。8月は卵を持つ少し前のシーズン、脂が乗って一番美味しいタイミングの鮎ですね。

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右手前がこだわりの処理を経て2年前に冷凍保存したグランプリ鮎。まるで今日釣ったような鮮度を保っている

  めちゃくちゃくきれいですね!

大澤 グランプリ鮎は2年経っていますが、マイナス20℃で特殊な冷凍をしていて、それを解凍しているので、見ていただいても生と全く違いがないと思います。新鮮な鮎は体の表面がヌルヌルしていますが、この2年前の鮎もヌルがある。ヌルを落としてしまうと、保存した時に水を吸って身が傷んでしまいます。鮎釣りをする人は、最後に鮎が入っている引き舟の水をパッと切って、その中で鮎を跳ねて暴れさせてから氷水に入れて締めますが、それだとヌルが落ちてしまう。その日のうちに食べてしまう分にはまだいいんですけれどね。この鮎の香りもぜひ嗅いでみてください。

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大澤克幸(おおさわかつゆき)
1972年生まれ。岐阜県和良村(現郡上市和良町)出身。和良川で幼少から鮎釣りの腕を磨き、2006年には30代で主要な全国大会の一つである「ダイワ鮎マスターズ」全国3位に入賞。近年は地元の鮎の美味しさを知ってもらうためこだわりの「五面焼き」を習得。2021年和良川漁協組合長になる


 ソムリエの田崎さんの前ではコメントしにくいですが、めっちゃ上品な香りがしますね。ウリっぽい、キュウリっぽい。

大澤 ちょっと山奥にいるような香りがしますでしょう。先ほど言ったヌルが取れない締め方をしたうえで、専用の機械を使って水の分子を電磁波で振動させながら冷凍しているんですよ。すると細胞を壊さずに冷凍できるので、解凍してもこの状態になるんです。

田崎 2年前の鮎にこの青い香りが残っているのはすごいですね。

大澤 締め方については、釣ってもらった鮎を生きたまま漁協の受付に持ち込んでもらい、すぐに電気で締めて仮死状態にしています。そこからすぐに冷凍するので、暴れてヌルが取れないんです。

田崎 それは全国的にやられているものなんですか?

大澤 うちだけだと思います。自分でいろいろと試して作った装置ですが、水の中も通る100ボルトの交流電流を掛けることで一時的に鮎を仮死状態にします。それを水に触れないよう、細かく砕いた氷の上に乗せて冷やしてから、先ほどの特殊な冷凍を掛けます。仮死状態の鮎は何もしないで放っておけばまた生き返ります。ですので、その時点で死んではいないんです。

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田崎 それってコンクールの結果にものすごく影響しているはずですね。魚へのストレスが全然違う。脳死状態になっているわけですから。魚は暴れまわると悪い乳酸、疲労物質が出てしまうので、それが腐敗しやすさや劣化の元になってしまう。旨味の元のアミノ酸になる成分も少なくなってしまう。魚を締めるというのはそれを避けるためですからね。

秋丸 鮎を串に刺すやり方も全然違いますね。私も年に2回くらいは鮎釣りをしていて、食べるのも好きなので自己流でやっていたんですけれど。

大澤 口から串を刺すと、焼いた時に美味しい部分がそこから落ちてしまいます。お腹に川の新鮮な苔がパンパンに入っているので、そこをなるべくこぼさないように焼きたい。ですので、私は目の下から串を入れて、背骨を巻くように刺しています。

田崎 炭も片側に寄せてあって、先ほどの話と同じで、頭に火がよく当たるようになっていますね。

大澤 はい。「五面焼き」と言っていますがこだわりの焼き方です。鮎の大会に出ていた頃から、各地のオトリ屋さんやお店のやり方を見るようにしていて、一番美味しいと思ったところの焼き方がこの方法でした。コツとしては、一面目でとりあえずあらかた焼いてしまいます。あまり頻繁にひっくり返さないほうがいいですね。遠赤外線で中までしっかり熱を通しますが、ひっくり返し過ぎると余計に水分が抜けてしまいます。

秋丸 焼き色もきれいですごく美味しそうです。

大澤 鮎は焼く人によっても味が全く変わります。上手に焼けた鮎はハラワタがウニのようになりますよ。この状態であと40分くらい掛かりますね。

鈴木 では、一度室内に戻って今しばらく焼き上がりを待ちましょう。

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鮎釣りと『月刊つり人』の歴史


鈴木 今回は皆さんのお生まれの年の「つり人」もご用意していますが、これが昭和21年(1946年)の創刊号の表紙です。

 スタートが鮎なんですね! 実は僕、昭和56年の6月1日生まれなんですよ。ですので今日がちょうど自分の40周年。そんな日に月刊つり人の75周年記念企画に出演させていただくことになるとはまさか思ってもいませんでした(笑)。

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秦拓馬(はたたくま)
1981年生まれ。長野県出身・大阪育ち。大学時代は全日本学生釣魚連盟・連盟長を務め、独創性あふれるアイデアから生み出す数々のテクニックやこだわりのタックルで多くのムーブメントを巻き起こす。現在は琵琶湖畔を拠点にしながら、メディアへの出演やプロガイドとして多忙な日々を送る

一同 お誕生日おめでとうございます!(笑)。

鈴木 「つり人」を創刊したのは佐藤垢石(こうせき)という人で、鮎の友釣りを全国に広めた功労者といわれています。昔、鮎釣りといっても、都会の旦那衆がやるのはドブ釣り(毛バリ釣り)、田舎の人はサクリなどとも呼ばれる引っ掛け釣りというのが主流で、友釣りというのは漁師さんの釣りでした。でも佐藤垢石は、その漁師さんの釣りが面白いと。それを全国に広めようとした人物なんです。ちなみに大変な酒飲みでいろいろなところで失態も犯した。元新聞記者で、つり人社も一度は潰しそうになっています。それを立て直したのが竹内始萬(しまん)という人でした。いまの日本友釣り同好会なども作った人で、やはり鮎釣りが大好き。私が入社した時の社長でした。とても格好いい人で、戦中は大陸の新聞社で編集主幹もやった人です。私も2年間一緒に仕事をしました。それで私も鮎釣りが好きになったんですね。現在も発行している「鮎釣り」も創刊しましたし、スパイラル釣法など、時代ごとの流行りも作ってきました。現在の佐藤編集長も上田弘幸さんのボルダリング引きなどを紹介しています。「つり人」と鮎釣りは切ってもきれない関係なんです。

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鈴木康友(すずきやすとも)
1949年生まれ。東京都出身。月刊つり人編集長、つり人社社長を経て現在会長。江戸前のハゼ釣り、渓流フライフィッシング、ヘラブナ釣りなど多くの釣りに精通。編集者時代は「鮎釣り」「フライフィッシャー」「バサー」なども次々に創刊する。毎年夏になると鮎を求めて全国各地を飛び廻る


秋丸 でもこうして見てみると、全体的に写真を含めて今とあまり変わらないなと思うところもたくさんありますね。

鈴木 秋丸さんが手にしているイシダイを手にした表紙の女性は、中尾彬さんの奥さんの池波志乃さんです。私が取材に行った時に房総で本当に釣ったんです。今、釣りガールなんていいますけれど、当時も「日本女性の釣りの会」っていうのがあって、100人もメンバーがいました。そのお手伝いにもずいぶん行かされたものです。

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秋丸さんの生まれ年の表紙の池波志乃さん

田崎 私は中学1年の時に釣りを始めたのですが、全磯連のイシダイのバッチがあって、それがとても格好よくて倶楽部に入りたかった。けれども電話したら高校生じゃないとだめだというんですね。でもなんとしても入りたくて、「つり人」を見ていて見つけたのが、当時の北区磯釣り倶楽部でした。それで電話して、最初から高校1年ですと嘘をついて、3年さばをよんで入会しました(笑)。実際には釣りを始めたばかりで知識が全くないので、つり人のバックナンバーなどを3年分取り寄せて徹底的に読み込んだんです。おかげで25歳になるまで、周囲からはずっと実際より3年上だと思われていましたね。高校進学の時、父親に水産高校から水産大学に行って五島列島でマダイの養殖をやりたいと言ったら、そんな夢みたいなことできるわけがないと。当時、マダイはまだ養殖されていなくて、でもどうしても水産がやりたくて、一度入った高専を自主退学して船員学校に移りました。夏休みは伊豆諸島の新島でアルバイトをして、そうしているうちに今度は「船に乗るのが自分の目的だっただろうか?」と思い、実は釣りをして海が好きだったのは、釣った魚を両親に食べさせて美味しいと言われたり、それがよかったんだと気が付いたんです。それでガラッと方向を変えて料理のほうに行こうと。ですから、ソムリエになったのも釣りが関わっていますし、「つり人」に載っていた北区磯釣り倶楽部のおかげなんですね。

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田崎さんは「北区磯釣り倶楽部」の広報に再会

 「バサー」の創刊告知もありますね。

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「バサー」の創刊告知と秦さん

秋丸 歴史を残しつつ、新しい釣りにも挑戦するというのは理想的だと思います。

大澤 私も子どもの頃から「つり人」を見ていました。これからも頑張ってほしいですね。

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2尾の鮎が躍るつり人創刊号。描いたのは日本画家の岸浪百艸居


香りを味わう鮎の食べ方


大澤 お待たせしました。まずは今年の若鮎になります。

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 芸術品みたいになっていますよ!

大澤 こちらがスーパーで売られている養殖鮎ですね。まずこの2つを食べ比べていただいて、熟成鮎はそのあとにお出しします。

鈴木 ここでぜひ田崎さん流の鮎の食べ方のお話をうかがいたいですね。

田崎 鮎というと、普通、頭や背中から行く人が多いじゃないですか。でも、先ほども申し上げたように、鮎は場所によって味が全然違うんですね。ですので、僕の場合は、頭は最後に食べる所。味が濃いし、咀嚼時間が長いので、頭から食べると濃い味がずっと残ってそのまま淡泊な所を食べることになります。すると味が分かりにくくなってしまうので、骨は逆向きになってしまいますけれど、僕は尻尾から行きたい。すると段々味が濃くなっていくんです。おかしいですかね?

大澤 確かに鮎は部位によって味が変わって来ます。僕らは頭から行って最後に尻尾の香ばしい所……というのが普通ですね。

田崎 それだと味の濃い所が最後まで残るので、身の味が一番分かる薄い所からというのが今回ご紹介する方法なんですね。一般的なものとは逆ですよね。

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田崎さんから「香りを鼻に抜く」鮎の食べ方を教わる

鈴木 田崎さんは舌が違うんですよ(笑)。今日はぜひ田崎流で食べてみましょう。

 若鮎と養殖鮎は、どっちから食べるのがいいですかね?

田崎 それは若鮎からがいいと思います。お尻があるじゃないですか。お尻から味が変わってきて、ここに内臓があるので、まずお尻からその手前までの鮎の一番淡泊な所を味わいます。

秋丸 なるほど。

田崎 そして噛んでいる時に少しだけ空気を吸って、その吸った空気を鼻から出す時に、香りを意識して嗅いでみてください。

一同 ほぉ。

田崎 自然にですよ(笑)。口から吸って鼻から抜くと分かります。特に皮が付いている所の香りをよく覚えておいていただいて、この部分を噛んでいるうちに、苔の香りがすると思います。ほんのり青い香り、海苔のようなですね。

 うーん、今、頭の中に映像が浮かんでいます。

田崎 いいですね。四万十川の「青さのり」とかあるじゃないですか。

 感じます! 今、頭に浮かんでいます。

秋丸 あ、香りが分かります!

田崎 それを意識して食べると分かります。慣れてくればどこの鮎か、天然か養殖かどうかも分かります。

 この段階で養殖鮎も行きたいですね。この香りがするのかどうか。

秋丸 そうですね!

田崎 こちらは青い香りがあまりなくて……

 というよりもこれは身の味ですね。

田崎 それと皮の下の香りが、何を想像すればいいかというと、ピーナッツが入っている落花生があるじゃないですか。あの落花生の殻の所をイメージしてもらうといい。ナッツっぽいというか、ピーナッツパターのような感じ。油脂を感じますね。

大澤 確かに脂肪分ですね。

田崎 そうなんです。焼き鳥の鳥皮ってあるじゃないですか。あれの塩焼きを食べた時も同じような香りがします。この食べ方をすると海の魚でもマダイが養殖かどうか分かりますよ。あとは尻尾からだんだん内側に入っていって、はらわた混じりで背ビレの所まで。ここは背ビレの下の脂が美味しい所ですね。

 はい。食べている時の景色がもう違いますね。

田崎 今度ははらわたの香りが含まれて来るんで。

秋丸 水分も適度で美味しいです。

田崎 ワタの苦味も残っていますけど、香りを意識していただくと、もっと青さのりの香りが強い。緑茶のだしがらくらいの青い香りがすると思います。

 もう、1オンスのテキサスリグを投げたい感じです!

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田崎さんから「香りを鼻に抜く」鮎の食べ方を教わる

鈴木 それはどういうこと?

秋丸 秦さん、全然分からない(笑)。でもお茶の残ったあとの香りというのはすごく分かります。

田崎 緑茶はイメージですけれど、そうした香りが残ります。けれど養殖鮎の同じ所を食べてみると違います。こちらはさらに脂が多くなってきますので。

秋丸 ササミを食べている感じがします。

 うん、メタルジグしゃくっている感じがする。

秋丸 それ全然分からない!

 いやいや、浮かんでくる情景の話ですよ。最初はスピナーベイトでよかったけれど、今はクランクじゃなきゃあかんみたいな。ちょっとウイードをかわしていかないと……というくらい、和良川の鮎の時は「ウイード(藻)」を感じたんですよ。

鈴木 そういうことか(笑)。

 最初はシンカーを1オンスにしないと入らないくらいの、一面のウイードジャングルを感じたんですよ。すみません!

秋丸 通じる方には通じる。

鈴木 なるほど、養殖鮎はそのウイードが薄くなってきている。

 はい。今はだいぶ中層でメタルジグをしゃくっている感じです。

田崎 そういうことですか(笑)。でも、こうして香りを意識して食べると魚の味を利けますよ。もうちょっと進んで、エラの手前の苦玉があるところの手前までで食べてもらうと、青さのりの香りがもっと凝縮しています。

 そういうことなんですね。

田崎 いい藻を食べているものなら非常にいい香りがする。鮎を食べていても、これを意識して食べている方はほぼいませんよね。

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秋丸 いや、すごいです。

鈴木 これは普段、ワインの時でも一緒なんですか?

田崎 ワインも多い時は600種類とか800種類とか飲むんですよ。当然、普通に飲めないわけです。でも、飲めないけれど香りというのはだいじで、特に飲んだあとの風味ってすごく重要なんです。それを飲まずにやるために、「スゥーッ」って音を立てて口に含んで、歯の隙間から空気を入れる。すると空気が螺旋状になって入って来て、香りを巻き込んで肺に入り、それを鼻からフッと抜くんです。それで息を吐くと、飲んで美味しいなという感じを一瞬にしてチェックできる。日本酒の利き酒やこうしたテイスティングも全部そうですね。だからスーッと吸いこんでペッと吐き出すという作業をしている。その時は吸って吐くだけでなく、鼻から出さないと意味がないんです。

 テクニックですよね。

田崎 それにしても和良鮎は香りがいいですね。キュウリみたいな香りは揮発性が非常に強い成分なんで、普通は焼くと飛んでしまうんですけれども、ワタと皮の下にはこうやってしっかりいい香りが残っている。比較して食べると、養殖の鮎も決して不味くはないんですけど、これだけを食べれば、香りを意識すると秋丸さんが言ったようにササミっぽいですよね。最後は頭を丸ごとガブッと行って。

 うーーーーん!

秋丸 美味しい!

田崎 ですので、たとえば鮎にワインを合わせようとする時に、大きく分けるだけでも尻尾の所だけ、ワタがらみ、あとこの頭と3段階で全然違いますので、真剣に合わせようとすると、白ワイン、ロゼワイン、赤ワインと用意して、今の順番で最初に白ワイン、ワタのところはロゼワイン、香ばしい頭のところは軽い赤ワインを飲んで、1匹の鮎で3種類のワインを合わせるという感じになりますよね。

鈴木 すごいですね。

鮎によく合うお酒は!?


田崎 とはいえ多くの人は頭から鮎を食べると思いますし、すると苦味が残りながら一匹を食べ終わります。また、苦味自体が鮎のだいじな味わいのひとつですから、それと塩味と上品な旨味というのが、鮎の持つ基本的な味のバランスだとすると、日本酒はワインと比べてずっと甘く、また柔らかい旨味がありますので、鮎の苦味をマスキングしながら、苦みを甘くまろやかにしながら食べていけるという特徴があります。ですから苦味をもっとまろやかに、ふくよかにしながら食べるという考え方で行くなら、日本酒と合わせたほうがいいわけです。

鈴木 なんだか日本酒が飲みたくなってきますね(笑)

田崎 でも今日は1本、鮎に合わせやすいタイプのワインをもって来ましたので、このあと最後の熟成鮎で試してみましょうか。

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熟成鮎は田崎さんおすすめのワインで味わった

秋丸・秦 楽しみですね!

大澤 これまでは若鮎でしたけど、こちらは2年前のグランプリを受賞した時のものです。どうぞ召し上がってください。

(田崎さんが各人のグラスにワインを注ぐ)

 このワインはどこで買えるんですか?

田崎 ニュージーランドのワインなんですけれど、白ワインでソーヴィニヨンブランというブドウの品種を使ったものです。セブンアンドアイホールディングス傘下で売っているお手頃ワインですが僕が監修しています(※「セブンプレミアム カープーカー ソーヴィニヨンブラン」)。まずワインの香りを感じてもらいましょう。すごく爽やかな香りがしますでしょう。フルーツのグァバという表現もあるんですけれど、同時に柑橘類ですが黄色ではなくて、スダチとかライムとかの緑っぽい香りがあります。そうした香りが感じられる特徴を持ったブドウの品種であり、それがニュージーランドのワインの特徴なんです。鮎の塩焼きは蓼酢を合わせますよね。あれを合わせるというのは、元々は毒消しみたいな感じもあったと思いますが、もう一つ、鮎を焼くと表面のスイカのような香りはどうしても飛んでしまう。そこでそれと似たような香りを持つ、青い香りを持つものを合わせて再現しているという部分もあるはずなんです。

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一同 そういうことですか。

田崎 ですから、鮎をまた尻尾から食べていただいて、香りを意識して飲みこんでいただいたあとに、このワインを飲んでいただく。それが鮎の風味にどうフィードバックしてくるかという相性を見ていただければと。これが食べ物とワインとの相性チェックです。

 すごいですね! 

(しばし熟成鮎を味わう)

田崎 うん、こちらは青い香りがさらに強いですね。2年経っているのに、尻尾のところだけでも香りが全然飛んでいない。保存が完璧です。

大澤 ありがとうございます。そして初めて尻尾から食べましたけれど、すごく美味しいですね。香りがよく分かるとういか、すごく川にいる感じがします。

田崎 尻尾は身が繊細なので、爽やかな香りが一番分かりやすい。

一同 うんうん。

田崎 この香りが終わったところで、ワインを普通に飲んでいただくと、青い香りがもっと爽やかになる……ということなんですよ。

 ウイード、生えてましたね~

秋丸 生えてましたか、やっぱり(笑)

 うん、一日クランクベイトを投げたボートのデッキに残っているウイ―ド。あの感じが……

一同 (笑)

田崎 タイ料理にレモングラスってあるじゃないですか。ああいうふうに表現する人もいるので。ちょうどハーブを添えるようなイメージでもあるんですね。ワインというのは、相性を考える時に、ワイン自体を飲む調味料や飲むスパイスとして想像して合わせていくんです。その魚を、今回ならこの鮎をどういうふうに料理として引き立てて行こうかなと。もっとパンチを利かせたような味わいに変えていこうと思ったら、また全然違うタイプのワインになってきます。

 そうなんですか。

田崎 だからはらわたでコクのある味わいが混ざってくると、もうこれではなくなってしまうので難しいんです。鮎の苦味を重視するなら、山梨の甲州っていうブドウがありますよね。それで作ったオレンジワインというスタイルの、皮とかタネとかと漬け込んで作るスタイルの白ワインがあります。少し苦味が出る白ワインなんですが、それがすごく合うと思います。
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一同 なるほど。

田崎 それにしても素晴らしい香りですね。緑茶を使って家でほうじ茶に仕立てて行く時の香りみたいです。秦さんはどう表現するんですか?

一同 (笑)

 さっきからですね、どこで息を吐いていいのかが分からなくて、陸上にいながらちょっと溺れかけました、一瞬。

田崎 8月の成熟した鮎も骨が逆でも気にならないですね。

鈴木 大澤さんの焼き方も素晴らしいからでしょうね。

大澤 最後はカワハギでいうところのキモパン状態、ここが一番美味しいところなので、ぜひ味わってください。

田崎 腹の所に入るとすぐに苦味が広がるんですけれど、若鮎はその苦味が単体でちょっと鋭角的なんですね。対してこちらの熟成鮎は苦味がコクになっているというか、全体的にまろやかな印象が加わっていてさらに美味しい。この頭だけのことを考えれば、軽い赤ワインでも美味しいですよ。

鈴木 田崎さんが仰っているのを聞くとなるほどと思いますが、僕らにはなかなか表現できないですね。

秋丸 本当にそうですね。

 すぐ〝テキサスリグ〟って言ってしまいますから。

田崎 釣りをしている時も、自然の中で何らかの香りを嗅いでいるんですね。秦さんがルアーに引っ掛かってくる藻とか、デッキに上がった藻類とかを想像しているという時も、すごく面白い表現をするなと思ってうかがっていました。僕らは普段物を食べる時に、あえて香りを意識しながら食べますが、それは記憶をするためなんです。そうしておけば、実際にその物がなくても、あそこの鮎とだしたらこのワインを組み合わせられるなといったことが分かる。

鈴木 いやさすがですね。こういうお話ってなかなか聞けないですよね。私ももう50年以上鮎釣りをしてきて、それで鮎は背中からガブッと齧るのが一番美味しいとずっと思っていました。でも、今日のお話を聞いて目からウロコ、新しい鮎の楽しみ方が発見できたなと思います。

秋丸 いつもただ美味しいで、食べ比べようという意識はなかったんです。けれども今日の鮎は本当に美味しかった。お酒も普段はほとんど飲まないんですけれど、ワインが合うという経験もできてよかった。

 これまではそのまま〝魚を食べる〟ということをしていました。でも今日、初めて魚を食べながら、「いろいろな情景を思い浮かべる」ということをしてみたんです。これって新しいことじゃないですか。軽く旅をした感じがするんです。それは新たな発見であって、今後もそうしていこうかと思いました。

鈴木 本当に田崎さんにお礼ですね。そして大澤さんの美味しい鮎の焼き方、また冷凍の仕方も素晴らしいです。皆さん、今日は本当にありがとうございました。

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