編集部2020年10月5日

『つり人』連載「魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う」がいよいよ核心部に

環境レポート 月刊つり人ブログ

発売中の月刊『つり人』2020年11月号にて、東京大学の山室真澄教授による連載「魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う」がいよいよ佳境を迎えます。これまでは生態系や物質循環など魚からは少し遠ざかった内容でしたが、今回は宍道湖のワカサギやウナギ、シラウオなどの漁獲量の変化から、山室先生が魚類減少の原因をネオニコチノイド系殺虫剤と断定した根拠に迫ります。

魚類減少の原因をネオニコチノイド系殺虫剤と突き止めた根拠に迫る

つり人編集部=文

 発売中の月刊『つり人』2020年11月号にて、東京大学の山室真澄教授による連載「魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う」がいよいよ佳境を迎えます。これまでは生態系や物質循環など魚からは少し遠ざかった内容でしたが、今回は宍道湖のワカサギやウナギ、シラウオなどの漁獲量の変化から、山室先生が魚類減少の原因をネオニコチノイド系殺虫剤と断定した根拠に迫ります。

 この連載を執筆していただいている山室先生は島根県・宍道湖の魚類の減少にネオニコチノイド系殺虫剤という農薬がかかわっていることを明らかにした研究者です。その研究成果は2019年11月、世界で最も権威のある学術誌のひとつ『Science』に掲載されました。

◆研究の概要は産業技術総合研究所のリリースで読むことができます
ウナギやワカサギの減少の一因として殺虫剤が浮上(産総研プレスリリース)


 この研究は、環境問題に取り組む研究者だけでなく、釣り人をはじめ水辺の環境に関心をもつ多くの人たちの間で注目を集めました。水辺の将来を考えるうえで間違いなく重大な意味をもつ研究成果です。

 そこで編集部では、宍道湖で明らかになった事実の表面的な部分だけでなく、環境の中で何が起きていたのかを読者のみなさんと一緒に学んでいけるような記事の執筆をお願いしていました。

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連載第5回『つり人』2020年11月号p148より、宍道湖におけるワカサギ・ウナギ・シラウオの年間漁獲量の推移のグラフ。ワカサギとウナギの漁獲量が学っと減っている1993年は宍道湖集水域でネオニコチノイド系殺虫剤の使用が始まったタイミングと一致するが、因果関係を証明するには生態系の中で何が起きていたかも調査しなければならない。シラウオの漁獲量が減っていない理由とは?

 これまでの連載では中学3年生の読者でもついていける内容を念頭に、難しい学術用語の解説も入れながら生態学を基礎から解説いただいてきました。

 たとえば第2回(2020年8月号掲載)では水辺の生態系における食物連鎖の特徴を解説。また、続く第3回(同9月号掲載)では、生態系の変化の原因を理解するうえで欠かせない「物質循環」の概念を解説していただくなど、私たち編集部を含め生態学を学んだことのない人でもイチから学べる内容になっています。

●これまでの記事一覧
第1回(2020年7月号):宍道湖のシジミ研究とネオニコチノイド系農薬
第2回(2020年8月号):カギを握る「食物連鎖」と宍道湖の生態系
第3回(2020年9月号):ミジンコのエサは減っていたのか? ~水辺の有機物と物質循環の概念~
第4回(2020年10月号):「動物プランクトン」「エビ類」「オオユスリカ」の同時期の激減
第5回(2020年11月号):容疑者をネオニコチノイド系殺虫剤に絞り込んだ根拠

 もしかしたら、もっとセンセーショナルに「農薬が魚を減らした! 水辺に忍び寄る恐怖!」などと煽ったほうが、世間の注目が集まり雑誌ももっと売れるのかもしれません。ですが、それをしていないのは、宍道湖の研究事例のうわべだけが伝わってしまい「農薬=悪」という軽率な意見が独り歩きしてしまうのを、編集部も山室先生も危惧しているからです。

 このブログでも繰り返し書いていますが、ここで取り上げているネオニコチノイド系農薬は、農家の皆さんの大切な作物を害虫から守り、私たちの社会に恩恵をもたらしている存在でもあります。

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画像はイメージ

 その農薬がなぜ害虫だけでなく魚類も減らすに至ってしまったのか。私たち釣り人にはなにができるのか。それを考えるには魚類を取りまく食物連鎖の仕組みや、ひと口に農薬といってもいろいろな種類があるなかでのネオニコの特徴なども正しく理解しておく必要があります。

 簡単に答えが出せる問題ではありませんが、幸いにも私たちは釣りという遊びを通じて、業界や専門分野や立ち場の違うたくさんの人が同じ方向を向いています。それぞれの視点を活かして議論を重ねていけば、将来へ向けて前向きな提案ができるかもしれません。

ここで、先生の原稿の一部を引用します。連載第1回『つり人』2020年7月号p152より……
 ペルム紀末の大量絶滅は、もしその時代に人類がいたとしても止められなかっただろう。けれど今魚たちが直面している危機の原因がネオニコチノイド系殺虫剤であることが確かになれば、人類はきっと、魚を減らさないような殺虫剤を創り出すことができる。人間が作った物が原因であれば、改良するだけのことだから。

 本連載最大の目的は、日頃、水際で魚に親しんでいる釣り人の読者に魚が減った原因を見極めるコツを伝え、子や孫の代まで豊かな水辺が日本に残るように日本の農業を変えていく原動力になっていただきたいことにある。

引用終わり


 できるだけたくさんの釣り人にこの連載を読んでいただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

連載第5回掲載の『つり人』2020年11号はこちらからどうぞ!
tsuribito2011
定価:本体1,000円+税
B5判180ページ

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