アジングするなら鯵の糸。なんとも頭に入りやすく覚えやすいネーミングのこのシリーズに、異なる魅力の新作2種類が登場した。ラッシュアワーとワンモアの特徴や上手な使い分け方法を藤原真一郎さんが直伝!
アジングするなら鯵の糸。なんとも頭に入りやすく覚えやすいネーミングのこのシリーズに、異なる魅力の新作2種類が登場した。ラッシュアワーとワンモアの特徴や上手な使い分け方法を藤原真一郎さんが直伝
文◎藤原真一郎 写真◎編集部
鯵の糸の進化の変遷
今回、フルモデルチェンジとなって新登場した『ワンモア』と、少し先行して発売された『ラッシュアワー』は、どちらもサンラインの『鯵の糸』というアジング用エステル素材のシリーズです。
もともと後発的にアジング用エステルラインをラインナップしたサンラインでは、その分、コンセプトを明確にした2種類を商品化しました。
ひとつめは当時、急激な負荷が掛かると切れやすく、その硬いイト質からライントラブルを引き起こしやすいというイメージもあったエステルラインを誰でもストレスなく扱えアジングを楽しめるようにとシリコンを付加し、しなやかで使いやすいラインを実現しました。
そのときのネーミングとして、私と同じくサンラインフィールドテスターである武田栄さんが発案されたのが「鯵の糸」という名前でした。
聞いた瞬間に「いい名前!」と直感。
ソルトルアーのジャンルにあって日本語のこのストレートな表現はインパクトがあり、覚えやすく親みやすく、発売後すぐに好評となりました。
続いてふたつめの開発に取り掛かりました。
今度は、モノフィラメントラインの中にあって伸度が低いというエステルの特徴をより前面に打ち出した、操作性や感度を重視したモデルです。
送られて来たプロトタイプを初めて使ったときの感触は未だに覚えています。ジグヘッドで深場をねらうアジングに使ったのですが、細やかでレスポンスのよい操作性、小さなアタリも拾える感度にフッキング時の手応えと非常に楽しいもので、その場ですぐにサンラインの担当の方に電話しました。
「これを作ったシェフを出してくれ!」みたいに。(笑)。
『鯵の糸エステル ナイトブルー』と名付けられたこのモデルにはもうひとつギミックが盛り込まれました。それが、紫外線に反応して発光するというもので、UVライトを当てることで透明のイトがネオンのように青白く光ります。
ケイムラなどの紫外線発光タイプのワームやグロータイプのワームを蓄光させるUV ライトはもはやマストアイテムであり、同時にラインを発光させられるので便利である
やや張りのあるイト質も、UVライトを当てることでラインの状態が暗闇でのゲームでも確認でき、エステルの扱いに不安のある方でも感度や操作性を高めた刺激的なアジングが楽しめるものとなりました。
ラッシュアワーとワンモアの特徴
そうして得た信頼を、さらに扱いやすさとゲーム性の両面において洗練させたのが今回の『ラッシュアワー』と『ワンモア』です。
しなやかで扱いやすさを重視した『ラッシュアワー』、感度と操作性を突き詰めた『ワンモア』。鯵の糸シリーズの基本コンセプトは引き継ぎつつ、細かくパラメーターを設定し煮詰め、さらなるクオリティを目指した2つのモデルになっています。
両者に共通する特徴として、使ってもらえればすぐに実感していただけると思いますが、表面を触ったときのツルツルスベスベ感です。
またその質感は長く維持されるため、潮の付着やゴワゴワ感も抑えられ、非常に気持ちのよいキャストフィールで釣りに集中できます。
この感触はガイド抜けのよさであり、太い号数で軽いジグヘッドを扱うような難しいアプローチでも充分な飛距離を確保し、ストレスを感じることなくできてしまいます。
サイズねらいの太号数での釣りはより幅広く、細号数はさらに軽快に。新しくなった『鯵の糸』を介してアジングがいっそう愉しく刺激的なものになると思います。
伸度の違いで上手に使い分け
『ラッシュアワー』と『ワンモア』の特徴は伸度の違いによって引き出されています。しやなかで扱いやすい『ラッシュアワー』に対して『ワンモア』は伸度を低く設定することで感度や操作性、フッキングレスポンスなどを高めています。
その伸度の差自体は2.5%ほどで数値ではわずかに思えますが、30m先では75cmほどの伸びの差となります。
また伸度には初期伸度という「イトが5%伸びるまでの負荷」を数値化したものがあります。つまりこれは軽い負荷時の伸び率と言えますが、それぞれの比較では『ワンモア』のほうが50%近く初期伸度を抑えた設定にしています。
ソフトエステルの『ラッシュアワー』は港内など近距離主体で、扱いが難しいとされる軽量なジグヘッドを初心者の方でもトラブルレスに使用できます。
対して伸度を抑えた『ワンモア』はウエイトのあるジグヘッドの遠投や深いレンジでの操作に長け、よりダイレクトに扱えます。また軽量ウエイトのジグヘッドで大型のアジをねらうといったときにも素早くフッキングパワーを伝達できるという特長を持ちます。さらなる1尾を求めるエキスパートにも応えられる、まさにその名に相応しい性能になっています。
ワンモアもラッシュアワーも、表面を触ったときのツルツルスベスベ感が大きな特徴で、これがガイド抜けのよさに直結している
UVライトとの相性と効能
UVライトに反応してネオンのように光るこの『鯵の糸』の機能はナイトゲームを強烈にアシストしてくれます。
手もとに照射すればスプールのラインの弛みやドラグノブへのラインの被りなどが生じた際もすぐに気付くことが可能です。
ティップの方向を照らせば万が一ガイドの絡みが発生したとしてもすぐにわかりますし、ラインの軌道も見てとれますので風の影響の強さやラインのメンディング状態を視認することも可能です。
リーダーとの結束時もメインラインとの見分けが付くため間違ってカットしてしまうといったトラブルをなくせます。
ライトに関しては、白色LEDの点灯では魚を散らしてしまいますが、UVライトはその影響を感じることはなく、点けっぱなしで釣りをすることが可能です。
鮮やかに発光しますが蓄光ではないため、UVライトの光が届く範囲以外は通常のラインと何ら変わりはありません。つまり、魚へのプレッシャーという点でも問題がなく、とても便利な効能となっています。
非常にしなやかでライン同士の結束もしやすく、また、UV ライトで発光するため結束時に間違ってメインライン側をカットしてしまう失敗もない
今回の壱岐取材におけるライン選択
今月号の巻頭記事での取材先は長崎県壱岐ということで、魚のサイズと幅広いシチュエーションへの対応を考えて『鯵の糸エステル ワンモア』を巻いた2タックルで挑みました。
デイではこの時期によくあるデカアジのパターンで、見えないボトム周辺にナーバスな群れが溜まっていることを想定しアプローチをしました。
ジグヘッドがくるくると回ってしまうスパイラルフォールを抑えてスローにフォールさせていく釣りなのですが、ワンモアの0.5号という強度に余裕のあるセッティングで0.4〜1gの軽量ジグヘッドを使い分け探りました。
ちょうど1月に公開したサンラインのYouTubeチャンネルでやっている釣りです。
夕マヅメは活性の高いパターンとスローでそぉっと食ってくるようなパターンのどちらにも対応できるように、0.35号を巻いたリールのほうに1〜1.5g、0.5号を巻いた2000番のリールに2、3gというセッティングで待ち構えました。
豆アジ、小アジが釣れ始めるなか、手応えのあるファーストヒットは0.35号にリーダー1号、1.5gのタングステンジグヘッドに2.2inのワームというセッティングでした。
いいところに掛かっていたのでそのまま抜き上げた尺アジ。それを皮切りにしばしの連発を堪能しました。
何かとライントラブルに見舞われやすいマヅメの時間帯もトラブルなく扱えるため、もう1 尾、さらにもう1 尾と数を増やすことができる
天候と状況によりポイントが限られるなか、慌てがちなマヅメの釣りも、日中の活性の下がったアジへの繊細なアプローチも、少しのライントラブルもなくリズムよく楽しむことができました。
ラインの進化はキャストを含めて釣りを心地のよいものに。
トンビの声も聞きながらのんびりとしたアジングのひととき、最高でした。
伸度を抑えたワンモアはウエイトのあるジグヘッドの遠投や深いレンジでの操作に長け、素早くフッキングパワーを伝達できるという特長を持つ
ワンモア0.35 号にトルネードV ハード1号で1.5gのタングステンジグヘッドに2.2in のワームというセッティングで抜き上げた尺アジ
※このページは『つり人 2024年5月号』を再編集したものです。