国内外の魚を対象としたTULALA(ツララ)はマニアックなラインナップと汎用性の高さでエキスパートを中心に人気のロッドメーカーだ。そんな人気かつ実用的なロッドの開発に携わっている藤原康仁さんにシーバスロッドとしてのツララの魅力を聞いた。
国内外の魚を対象としたTULALA(ツララ)はマニアックなラインナップと汎用性の高さでエキスパートを中心に人気のロッドメーカーだ。そんな人気かつ実用的なロッドの開発に携わっている藤原康仁さんにシーバスロッドとしてのツララの魅力を聞いた。
写真と文◎編集部
魚種に囚われないロッド
国内のみならず世界中の魚をターゲットにするルアーロッドブランドのツララは2010年にスタートして以来、オールジャンルロッドの先駆け的存在となり、愛用者も多い。とりわけ1種類の魚を専門にねらうよりもさまざまな釣りをその時々で楽しむようなアングラーに人気で、不測の状況や大物にも対応できる懐の深さが特徴だ。ただし、いわゆるどんな場所や魚でもこれ一本でそつなく対応、というような万能ザオではなく、たとえば港湾部で小さいルアーを使うシーバスだったり、磯からねらうタマンだったりと大手メーカーでは作れないような局所的なニーズに応えた実用的なロッドが多い。ユーザーがスペックから判断して別の釣りでも使えることを発見する場合も多々あるそうで、今ではビッグベイトシーバスで人気のコローナ80XHは元々ブラックバスを想定していたものだったそうだ。
実験室とも称される所以はユーザーやテスターからの意見を会社に併設された工房ですぐに反映することから。細かい調整を繰り返し行なうことでよりよいものができていく
ツララのロッドは一般的なロッドにあるような魚種の指定やパワークラスの表記がないものが多い。それはメーカーが謳うスペックに縛られずに使ってほしいというツララの想いによるものだ。もちろんカタログにはキャストウエイトなどが書かれているがあくまで目安。状況の急変により大きいルアーを投げる必要が出てきたり、想定外の大物がヒットしても安心してやり取りできる対応力がツララの魅力と言えるだろう。
曲がって丈夫な旧素材
ツララのロッド開発に携わる藤原康仁さんは国内を釣り歩いており、オカッパリからウエーディング、磯まであらゆるフィールドでツララのロッドを使いシーバスも手にしてきた。そんな藤原さんは最近のシーバスロッドのトレンドにはやや食傷気味のようだ。
「最新のカーボン素材は軽く強いため、高感度で飛距離の出るロッドができると思います。ただ、ツララのロッドは想定外の魚がヒットした時にいかに優位に立てるかを念頭に置いて作られているため、比較的丈夫でしっかり曲げ込める旧素材を採用しています。もちろんヒットするまでに必要な感度や飛距離はグリップのバランスやガイドセッティングで補っています」
藤原さんの言う旧素材とは少し前に主流だったカーボンのこと。近年主流のカーボンは従来よりも樹脂量が少なく軽いものが多いが、その分小さな傷でも破損に繋がりかねない。ツララのロッドは比較的樹脂量の多いカーボンが使われているため、最新ロッドと比べればやや重くなるものの破損のリスクは格段に抑えられるそうだ。ハードな道のりのポイント開拓にも気兼ねなく持ち込めるし、ロッドを曲げ込んだ時の気持ちの余裕は主導権を譲らないファイトに繋がるはず。ちなみにツララのロッドエンドはほぼすべてがラバー素材となっているのは緊急時には杖としても使えるようにということだそうで、その強度への自信がうかがえる。
ストローセッティングならPEでもトラブルレス
藤原さんいわく、ガイドセッティングでもロッドの使いやすさは変わるという。
「今のシーバスフィッシングは99%メインラインにPEを使用すると思いますが、PEを使う釣りであればストローセッティングしかありえないと考えています。そう断言できるほどライントラブルが起きません」
ストローセッティングとは一般的なロッドと異なる独自のガイドセッティングで、ツララが前田製作所とコラボして誕生したものだ。標準的なセッティングと比べて小さめのガイドが数多く使われていることが特徴。このセッティングによるメリットは大きく3つあると藤原さんは言う。
・ティップに絡むなどのライントラブルが起きにくい
・キャスト時のイトフケが少なく飛距離も風に左右されにくい
・めいっぱい曲げ込んでもロッドが折れにくい
一つめのメリットはガイドの間隔が狭いからだけではなく、口径が小さいこともトラブル減少に一役買っている。ツララではストローセッティング時における一番根本のガイドをエントランスガイドと言い、その次をバットガイドと呼んでいる。このエントランスガイドによってリールから放出されたラインの暴れは抑えられ、バットガイドを通るころにはほぼ真っすぐの状態でラインが通っているのでライントラブルが起きにくいのだ。一般的なガイド径だとラインの抜けはいいが暴れが残っているため、風の影響やラインセッティング次第ではトラブルが起こりやすくなる。
二つめはスピニングタックルでもベイトタックルでキャストした時と同じような弾道で投げられるということ。イトフケが少ないため、着水後すぐにルアーを動かすことできる。無風状態では一般的なガイド配置と比べるとやや及ばない飛距離だが、その飛距離が横風、向かい風でも安定して出せるため、飛距離が伸びると感じているユーザーが多いというのも面白い特徴だ。
三つめの曲げ込んでも折れにくいというのはガイドとは関係ないように思えるかもしれない。しかし、藤原さんはガイドを関節ととらえており、関節が多いほうがよりしなやかに曲げることができるため、ロッドは折れにくくパワーロスも抑えられるのだそうだ。実際にストローセッティングで掛けた魚のほうが同サイズでも早く寄ってくると言う。
一般的なガイド配置ではラインの暴れが残ったまま先端に向かっていく。これがライントラブルの原因
ストローセッティングではエントランスガイドを抜けたラインが一直線に暴れることなく通っていく
インターラインの利点をアウトガイドで実現
勘のいい人は気付いたかもしれないが、ストローセッティングのメリットはインターライン(中通し)のロッドとほぼ同じ。中通しのメリットをアウトガイドで実現しようとしているのだ。インターラインのロッドは内部に水が入るため、メンテナンスが大変だが、ストローセッティングであれば一般的なアウトガイドのロッドと同じようにすればよい。
デメリットとして考えられそうなのはガイド数が増えることによる先重りだが、当然グリップなどでバランスを取っておりガイドも小さいため、実際の重量も軽くて先重りを感じることはない。たとえばどちらのガイドセッティングも用意されているグリッサンド77の場合、一般的なガイドセッティングでは9個、ストローセッティングでは15個となるが、持ち比べても違和感はない。
スペック表記がない、ターゲットを謳わないことからエキスパート向けのイメージが強いツララのロッドだが、自分の通うフィールドや釣り方が明確になってきたシーバス中級者にとってグッとくる1本があるだろう。また、ハイシーズンである秋はシーバスをねらうが他の季節には違う釣りを楽しむ、そんなマルチアングラーであれば活躍してくれる機会はたくさんあるはず。魚種を問わずユーザーの思うままに使えるオールジャンルロッドを手に取ってみてはいかがだろうか。
シーバスにおすすめのTULALA ロッド3選
M.M.A United 83M
ストローセッティングのエントリーモデルとして挙げられたのがパックロッドのM.M.Aシリーズ。なかでも83M はレギュラーテーパーで10 ~ 40 g程度のルアーが扱いやすく、ガイシステムに慣れるという意味合いでもおすすめとのこと。このM.M.A シリーズは釣り好きで知れる格闘家の武蔵さんがプロデュースしたロッドとなっている。全長:8 フィート3インチ。目安キャストウエイト:10~ 40g。価格:4 万6800円+税
Glissando77
軽量ルアーを使うバチ抜けから13cm クラスのミノーやスピンテールジグまで幅広く扱える強めの港湾 シーバス向けロッド。バイトが乗りやすくフッキングしやすいため、理想のロッドと言うファンも多い。全長:7フィート7インチ。目安キャストウエイト:1.8~45g。価格:4万2800 円+税(ストローセッティングは5万5400 ~ 5万5800 円+税)
Harmonix Staccato810MSS-HX
流れの強いポイントでも負けずにルアーを操作して掛けた魚を取り込めるパワータイプのロッド。M.M.A の83M に張りを持たせたイメージで、シャープな操作感が魅力。一般的なシーバスロッドの感覚でストローセッティングを試したい人におすすめ。全長:8フィート10インチ。目安キャストウエイト:7~ 40g。価格:6万3000円+税
使用するラインやリールに合うガイド径をオーダーできる新システム
リールやリーダーの太さに応じたストローセッティングを4 パターンのうちから選べるセミオーダーシステムがロングセラーのグリッサンドシリーズである72、76、77 の3 モデルでスタートしている。この3機種はオールジャンルロッドの代表的なものとして人気を博しており、シーバスはもちろん、チニングや中型青物まで幅広く使える。公式オンラインショップ限定の受注生産だが、3 機種ながら12 通りのロッド選びが可能となった。4 パターンの内訳は以下のとおりだ。
●リール:# 2500 /リーダー:20lb.
●リール:# 2500 /リーダー:30lb.
●リール:# 4000 /リーダー:30lb.
●リール:# 4000 /リーダー:40lb.
※このページは『つり人 2023年12月号』を再編集したものです。