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編集部2017年4月25日

マダイ釣り/大ものの宝庫 高知県須崎市

マダイ 魚種別釣りガイド

マダイといえば沖釣りの花形魚。だが全国には手つかずのマダイスポットがまだまだある。ポテンシャルは高いのにサオをだせる船がない。南国土佐は須崎の海もそうだった。と、過去形なのは2016年より釣り人を誘う新たな試みが始まったから。

おすすめ時期:4~5月

丸山 剛◎写真と文 取材協力◎ANA、南国生活技術研究所

魔法の球形、鯛ラバの釣り方は単純明快。アタリから食わせるまでのスリルがやみつきになる

マダイといえば沖釣りの花形魚。だが全国には手つかずのマダイスポットがまだまだある。ポテンシャルは高いのにサオをだせる船がない。南国土佐は須崎の海もそうだった。と、過去形なのは2016年より釣り人を誘う新たな試みが始まったから。坂本龍馬が何度も見つめた大海原に繰り出せば、ドラグをジージーかき鳴らす大型マダイの宝庫である。やるなら鯛ラバ。食わせるまでの駆け引きの妙、マダイ独特の三段引きの快感がシンプルに味わえる。そんな鯛ラバトラベル、いいじゃない!

この記事は『つり人』2016年6月号に掲載したものを再編集しています。

須崎の海のポテンシャル


 マダイは日本各地でさまざまな釣法でねらわれている。そんなマダイ釣りに一石を投じたのが鯛ラバである。もともとは、鯛カブラという九州や瀬戸内で行なわれていた伝統的な釣法に端を発している。鉛のヘッドにエサやビニール等を巻き付けてマダイを誘って釣るのだ。そこに、さらにゲームフィッシング性を高めたのが、鯛ラバである。エサを使わず、ルアー感覚で手軽に楽しめるうえ、マダイとの駆け引きがとても面白く、また大型マダイが釣れることが鯛ラバの人気だろう。

116-121_02 海面に赤い魚体が映えた時の興奮ときたらもう! 面白過ぎるゾ


 今回、鯛ラバ釣り場として高知県須崎市の海のポテンシャルの高さに目を付けたのが、黒笹慈幾さんである。もともと東京で出版社に勤務していた黒笹さんは、釣りバカ日誌の浜ちゃんのモデルになったといわれる超が付く釣りキチ。釣り好きが高じて、リタイアを機に家族で高知県高知市に移住し、日々海釣りや渓流釣りを楽しんでいる。そして今では高知新聞にコラムを連載し、高知大学の特任教授を受け持ち、行政と川のあり方などに取り組んでいて、現役時代よりも忙しい日々になってしまったとか。

116-121_04 須崎の海のポテンシャルの高さに魅了された黒笹慈幾さんは、退職後に高知に移住。釣りバカ日誌の浜ちゃんのモデルといわれる


 須崎市は高知県のほぼ中央にあり、人口2万4000人の小規模の市である。太平洋に面する大きな入り江があり、カツオをはじめ、ブリ、カンパチ、マダイ、イセエビ、サバ、ハモ、ウツボなど、水揚げされる魚の種類は豊富である。別の湾内には「海援鯛」という高級ブランドのマダイを養殖しているが、主に関西方面に出荷するためのものである。

116-121_05 須崎沖は手つかずの鯛ラバポイント。乗合船もチャーターボートのシステムもできていない当地では漁船での釣りがメインになる

 天然のマダイは少ないのかといえばさにあらず、むしろ魚影は濃いのだが、マダイより効率よくとれる魚が多いので、漁師が専門にねらうことはなかったそう。磯のメジナ釣りの外道で時おり掛かる程度で、いわば須崎の海は天然マダイの処女地なのである。

 この海のポテンシャルの高さに驚いている人がもう1人いる。隣の香川県在住の赤澤康弘さんである。赤澤さんは、瀬戸内海で10年前から鯛ラバをやっている先駆者のひとりで、瀬戸内海の全域、九州にも遠征に行っているが、須崎のマダイのポテンシャルの高さは日本屈指だという。

116-121_06 鯛ラバに魅了されている香川県在住の赤澤さん。瀬戸内海で鯛ラバを覚え九州にも足を運ぶ。そして60cmオーバーをゲット! 須崎のポテンシャルに驚嘆

116-121_01 赤澤さんのサポートを受けて取材チームに60 オーバーがズシン。尾ビレの長さは黒潮育ちの証だろう

60cmオーバーが次々と浮上


 高知県の空の玄関口、高知龍馬空港から高速道路を使えば、約1時間で須崎市に着く。

 須崎港の須崎市観光漁業センターから出船した。須崎湾を出ると、左に養殖筏の並ぶ野見湾が見える。さらに沖に出ると、目の前は太平洋の大海原が広がった。須崎のマダイポイントは、フラットが基本だそうだ。普通は根周りがポイントになるように思えるのだが、ここのマダイは何もない所で釣れるのが特徴なのだ。多分フラットの中にも、実際にヒットするのは少しの窪地がある所とか、ちょっとしたカケアガリとかなのだろう。潮の動きも日によって、東方向に流れる上り潮と西方向に流れる下り潮があり、これまでの経験からいえば、下り潮がいいという。この日は東方向に流れる上り潮なので、ちょっと苦戦しそうだという。しかも前日に降り続いた雨で、海に少し濁りが入っている。

116-121_13 この日お世話になったのはベテランプロ漁師の国澤さん。気さくで優しい

 ポイントの水深は、魚探表示がヒロで表示されていて30ヒロ前後のポイントなので、約45mくらいだろうか。確かに底には何も映っていない。それでも船長の国澤浩一さんは、マダイが釣れるポイントは、魚探の映りが少し違うんだよという。底に2次反射が出るというから、少し硬い場所なのだろう。この海に通い詰めている岡田進一さんは、最近釣れているポイントは、沖で大きな船がアンカリングしている場所だという。大型船のイカリなどで地形が少し変化しているポイントにマダイが居着きやすいのかもしれない。

 最初のアタリは取材チームに来た。底から5回転くらいでアタリが来たが、そのまま巻き続けたらバイトが止まってしまった。すかさず、スプールをサミングしながら、止め落としした途端にサオ先が入ったのだ。サオの曲がりからしてかなり大きそうだ。

 ドラグが悲鳴を上げる。鯛ラバでマダイが掛かった後のやり取りは、ロッドの位置を平行からやや下目に保ったままリーリングする。ロッドを煽ってしまうと、戻しでハリが外れてしまうことがあるからだ。果たして、水面に上がってきたのは60㎝を超えんばかりの大ダイである。慎重にタモ入れする。62㎝、5㎏の乗っ込みのオスである。いきなりのロクマル超えに興奮が冷めない。さすがにマダイ処女地である。

 2尾目も取材チーム。今度はノーマルな巻きアワセでフッキング。やはり60㎝近いマダイである。これは色が美しいメスだった。その後は外道のエソやガンゾウビラメ、ホウボウなどがお目見えし、再び元のポイントに戻るとアタリが出始めた。私も2尾ゲットし、岡田さんも小さいながらも本命をゲット。豪快な送りアワセで60㎝マダイをヒットに持ち込んだ赤澤さん。1日目の最後にドラマを見せてくれた。

 この日は岸寄りのエリアに赤潮が発生し、水温も一気に2℃近く下がり、かなりの渋い状況だったそうだが、それでもこの釣果である。ごくごく一部の人たちが半年ほど前から攻めはじめたばかりであり、季節によるポイントが解明され、鯛ラバ船が確立されれば、もっと面白い釣りができるだろう。なにしろ、鯛ラバだけでなく、マダイを釣る文化そのものがなかった処女地なのだから。

 なお、現地には今のところマダイの遊漁船がない。今後、市をあげて鯛ラバで釣り客を呼び込みたいとのことで、釣行の際には須崎市観光漁業センターに連絡してみてほしい。

116-121_07 須崎市の職員である岡田進一さんも美形マダイをゲット。「ハリに乗った時の衝撃がたまりませんね」とこの笑顔

116-121_10 小生にもいいマダイが食ってきた。スカートがワームタイプのラバーの実績が高かった

116-121_11 今回の釣行では6尾のマダイがほほ笑んだ。ゴールデンウイークのころは汗ばむくらいの陽気になり、乗っ込みの好機も終盤戦に突入だろう

116-121_08 こんな良型のイトヨリダイもお目見え

116-121_09 高級魚のガンゾウビラメも鯛ラバに反応する

116-121_12 今回の釣行で最大魚となった62cm、5㎏の乗っ込みのオス

鯛ラバの基本テクニック


 シマノのフィールドテスターでもある赤澤さんに、基本的な鯛ラバの釣法をレクチャーしてもらった。タックルは、ロッドは穂先が巻き上げる時に跳ね上がらないような粘りがあり、感度が高いもの。リールは軽くて、1 日使用しても疲れないもの。オススメのタックルは、シマノ炎月BB B-69M-S、リールは同社の新アイテムstile。外海の場合、ラインはPE0.8 ~ 1 号、リーダー3~5号を3~ 4.5 m。

 ロッドは尻側を脇でしっかりと挟むようにして、リールは手に包むようにしてガッチリと持つ。巻き上げノブを親指と人差し指で滑らないように握る。船の流れに対してロッドだけを動かさず、身体全体で動かすようにする。つまり、ロッドの先端がいつも正面にくるように、身体が常に正対するように構えるのである。ドラグは、650gくらいの緩めにセット。鯛ラバが着底したら、1秒に1回転のスピードで巻き上げるのが標準。船の動きに合わせて巻き上げスピードを変える。風と潮の流れにまかせて船を流すドテラ流しの場合はゆっくり巻き上げるとよい。

 巻き上げスピードに関していえば、瀬戸内海は遅めの巻き上げで、須崎や外海では少し速めの巻き上げスピードがよいという。巻き上げ回数は、15 ~ 30 回転、水深でいえば瀬戸内海の場合、底ベタにマダイがいることが多いので、底から5 ~7m、外海の場合は、底から10 ~ 15m が目安となる。須崎は外海なので、誘うタナを広くしたほうがいいのである。

 鯛ラバのヘッドの重さは水深や潮の速さで軽いものから重いものを用意しておいて、チョイスする。できるだけ軽いヘッドを使うほうが、渋い食いの時でもアタリが出やすくなるという。ヘッドの色やスカートの色は、状況に合わせるのは難しく、いろいろ試しながら、模索するとよい。

 アワセは、基本的には巻き上げ続けながらの向こうアワセだが、赤澤さんは、アタリを感じながら巻き、穂先を下げて行ってスプールを押さえてアワセにいくのも手だという。実際、巻き上げ速度がアタリの途中で変化してしまうと、マダイが離してしまうケースが多いという。巻き上げ速度を変化させずに穂先を下げて行けば、一番食い込んだ状態でアワセが入れられるようだ。

116-121_a-5 鯛ラバ着底後から1秒に1回転のスピードで巻き上げるのが標準。後は船の動きしだいでスピードを変える。風と潮の流れにまかせて船を流すドテラ流しの場合はゆっくり巻き上げる

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116-121_a-1 鯛ラバのオモリ部分。ヘッドは80 ~ 100gが中心。カラーは赤、金、オレンジがベースになる

116-121_a-2 ラバーの主な種類はカールタイプ、ワームタイプ、タコベイトタイプ。もちろん多彩なカラーバリエーションがある。写真はシマノ『炎月集魚ネクタイ』シリーズ

116-121_a-3 リーダーは4 号3 mが基本。赤澤さんの愛用品は『炎月 真鯛LEADER EX FLUORO』。PE とリーダーの接続に便利な『ボビンワインダーライトタイプ』。ボビンノットを楽に行なえる

116-121_a-4 鯛ラバ用のフック各種。主にマダイバリやチヌバリが使われる

116-121_a-6 愛竿は『シマノ炎月BB』リールはボートゲームに特化した『Stile』



旨いもんから温泉まで須崎市観光そぞろ歩き

マルキョー醤油 116-121_b-2 4代目若女将の竹中佳生子さんは笑顔が素敵

街の中にあるマルキョー醤油は、大正時代創業の醤油醸造場で、創業以来地元から愛されてきた。カツオやメジカと呼ばれるマルソウダガツオの新子( 幼魚) 等の赤身に合う醤油、「さしみしょうゆ」が人気だ。橋本食堂の鍋焼きラーメンにもマルキョーの醤油が使われている。実際に店でカツオの刺身を「松甘」「小桜」「桐」といった3 種類の濃い口醤油で味比べさせてもらった。それぞれ風味が微妙に違い、魚の種類によって使い分けると美味しさをいっそう引き出せそうだ。マルキョーの看板娘の若奥さん、竹中佳生子さんは、東京から家を継ぐために家族を連れてU ターンしてきた。そんなやり手の4 代目若女将は、須崎沖の鯛ラバで70 ㎝をゲットしている。

鍋焼きラーメン 116-121_b-1 土鍋の中にシンプルラーメン。とにかく熱くてホフホフ食べる。平日でも行列ができる深い味わい

須崎市のゆるキャラは、新荘川のカワウソをイメージした「しんじょう君」。新荘川は、日本で最後にカワウソが見られた場所として有名だ。しんじょう君の頭には、須崎名物の鍋焼きラーメンが乗っている。鍋焼きラーメンは昭和20 年代に路地裏にあった谷口食堂が発祥といわれ、現在市内では35 店舗が提供している。土鍋の中に鶏ガラダシに醤油ベースのスープ、細めのストレート麺、具材は青ネギ、ちくわ、生卵とシンプルなラーメンなのだが、とにかく熱い。卵をいつ崩すかに食べる人のこだわりが現われるそうだ。最後はご飯を入れて雑炊にしても美味しい。今回は、橋本食堂の鍋焼きラーメンをいただいた。メニューはシンプルで普通、大、特大の3 種類しかない。平日でも行列ができる名店である。

梅原晴雲堂 116-121_b-3 地元食材を使いたいと店主の梅原朗さん

醸造工場の斜め前には、大正時代から続く甘味屋、今は洋菓子店の「梅原晴雲堂」がある。店内はケーキやクッキーなどの洋菓子が並ぶ。その中でもマルキョー醤油の「桐」を使った醤油カステラが人気だ。店主の梅原朗さんが地元のものを使いたいという気持ちから生まれた傑作である。甘い中に醤油独特の香りがあり、なんともいえない味わいである。

まちかどギャラリー 116-121_b-4-1 豪商屋敷を改築したまちかどギャラリー

116-121_b-4-2 スタッフの松村忠男さんと竹本翠さん。須崎は魚がなにより美味しいという

街のほぼ中心部、古市通りと本通りがぶつかる角に「まちかどギャラリー」がある。かつての豪商屋敷を改築した建物は、しっとりとした佇まいである。今は須崎市の所有で、アートギャラリーや結婚式、イベント等に活用されている。ギャラリーの企画や案内をしているスタッフの松村忠男さんは、大阪に住んでいたが、須崎が大好きになって移住してしまったそうだ。酒と魚が美味しいのがお気に入りだとか。地元出身のスタッフ、竹本翠さんもやっぱり魚が美味しいのが一番だそうだ。

そうだ山温泉 116-121_b-5-1 源泉かけ流しの風呂にどっぷりと浸かる

須崎の宿は、山側にある「そうだ山温泉」にお世話になった。桑田山( そうだやま) から湧出するミネラルイオンの湯は、湯量も豊富で良質の泉質が人気。源泉掛け流しの露天風呂や岩風呂、内湯があり、旅の疲れをいやしてくれる。地元産の豊富な食材を使った料理が自慢の宿である。社長の高橋和久さんは、「女性に人気のある美人の湯系の泉質なんですよ」と語ってくれた。

山崎鮮魚川端店 116-121_b-6-2 116-121_b-6-3 116-121_b-6-4 116-121_b-6-1
街中の魚屋に立ち寄ってみた。さすがに海の豊かさが分かるほど魚種が多い。これでも天候不良で水揚げが少なくて、種類が少ないそうだ。見事なタチウオは指5 本の太さだ。ヒラスズキやコノシロ、メジナ、イトヨリダイ、ウツボ等の地元ならではの魚が並べてあった。


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船釣りの問合先
●須崎市観光漁業センター
所在地:高知県須崎市浜町1丁目5-8
℡:0889-42-1478

観光の問合先

●須崎市観光協会
所在地:高知県須崎市西糺町4-18
℡:0889-42-2575

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2017/4/25

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