型の春、数の秋ともいわれるクロダイの旬。すなわち遭遇率が最も高い好機が今だ。房総半島南東端に位置する千倉周辺では、子ども連れでも安心の足場のよい港内で銀鱗が何度もサオを絞るチャンスとなる。
おすすめ時期:9~10月
編集部◎文・写真
庄司さんファミリー。左の有紗ちゃんは「パパが釣ったらご褒美をくれると言っていた」と喜びいっぱい。長男の有喜くんはクロダイの真似をしているらしい。奥様の多紀さんは庄司さんと一緒に釣りをすることはほとんどないが、たまに港のピクニックを楽しむのだとか
型の春、数の秋ともいわれるクロダイの旬。すなわち遭遇率が最も高い好機が今だ。房総半島南東端に位置する千倉周辺では、子ども連れでも安心の足場のよい港内で銀鱗が何度もサオを絞るチャンスとなる。
この記事は『つり人』2016年11月号に掲載したものを再編集しています。
落ちの時期でも浅場がねらいめ
落ちクロダイとは水温が低下する冬に深場に落ちるクロダイのこと。だが、南房千倉周辺のクロダイは必ずしも落ちの行動を取らないと庄司光浩さんは言う。
精悍な風貌のクロダイは堤防釣りでは憧れの的
「南房の海は遠浅なんです。沿岸部に急に落ち込む深場がないせいか、冬場でも港内にクロダイが多く水深1・5m程度の浅場でもクロダイが釣れます。例年9月下旬からカイズの数釣りが楽しめ水温が低下すると良型がヒットする確率が高まります。1月でも2月でも船揚場のスロープ付近で釣果が見込めるんですよ」
子どもと一緒の短時間勝負でもサオを曲げてくれる可能性は高い
南房には千倉港と平舘港、乙浜港といった大規模港がある一方、ひなびた小さな港も点在する。中でも庄司さんのお気に入りが白子港である。
「車が横付けできるスロープ付近で実績が高いんです。子どもを連れて釣りを楽しむのにも最適です」
白子港は沖を前に左側の堤防と右から伸びる堤防があり、風向きに応じてサオをだせる。カイズ釣りで実績が高いのは左側で好条件になるのは北東風が吹く時だ。風を背にしてサオをだせ沖から潮が入りやすい。海面が波立ちやすいのもクロダイの警戒心を解く要素になる。
白子港のスロープ周辺が好釣り場。北東の風が吹く時は左の堤防が釣りやすく高実績
南房の港内でカイズ、クロダイが接岸しやすい時合は満潮前後。浅場ゆえ潮位が高いほうが魚は入りやすいのだ。
この日の潮回りは中潮で満潮時刻は午前6時と18時。庄司さんは朝の満潮に合わせ6時に白子港の左の堤防に釣り座を構えた。船揚場のスロープの切れ目を前に仕掛けを準備する。立ちウキにハリス1・5号を1ヒロ(1・7m)。ウキ下を2mも取ればエサが底を這うような場所である。
「クロダイのタナは基本的に底です。浅場ほどきちんと底をトレースしてください」
庄司さんは底取りオモリを使って水深をしっかり測り、1m程度の遊動幅にウイリーウキ止メを調整した。
庄司さんの愛用アイテム 底取りオモリは必需品のひとつ。潮位に応じてきちんと底ダチを確認したい
ミチイトが傷つかないように庄司さんはウイリータイプのウキ止メを愛用
ハリはオーナー『カットチヌ』0.5~ 2 号を愛用。この日は1 号をメインに使った
港内にマッチする立ちウキはB、2B、3B、0号のMサイズもしくはS
ミチイトが傷つかないように庄司さんはウイリータイプのウキ止メを愛用
ハリはオーナー『カットチヌ』0.5~ 2 号を愛用。この日は1 号をメインに使った
港内にマッチする立ちウキはB、2B、3B、0号のMサイズもしくはS
立ちウキの使い方
庄司さんは寄せエサのオキアミを砕かない。粒のまま残すのはワケがある。クロダイ釣りのエキスパートの多くは比重の重い配合エサにオキアミを細かく砕いて混ぜ込む。そのほうがエサのまとまりがよく飛距離が出る。また沈下が速いためだ。ところが浅場を探る場合はポイントの中層にもオキアミが漂っていたほうがアピール度は高いと庄司さんは考える。そして付けエサのオキアミを食わせるためにも、寄せエサに粒のオキアミがあったほうが付けエサを紛れ込ませやすく、クロダイが違和感を抱かずに食べやすいという。
庄司さんのエサ使い これで半日分の寄せエサになる。粒子が粗く沈下や色の異なる5 種類の麦が入ったマルキユー「チヌパワームギスペシャル」に、粒子が細かく粘りを出してまとまりをよくする「チヌパワースペシャルMP」とオキアミ3 ㎏を混ぜ合わせる
オキアミは砕かずツブのまま混ぜる。浅場では一気に底に沈めるよりも層を漂わせる。付けエサのオキアミを違和感なく食わせる目的もある
エサ取り対策に練りエサも用意。付けエサ用のオキアミはL サイズ
オキアミの付け方 庄司さんは捕食変化を分かりやすくするため頭を残す
エサ取りが多い時は頭を取って、頭側からハリ先を入れて尾羽根に向かって通し刺す
オキアミは砕かずツブのまま混ぜる。浅場では一気に底に沈めるよりも層を漂わせる。付けエサのオキアミを違和感なく食わせる目的もある
エサ取り対策に練りエサも用意。付けエサ用のオキアミはL サイズ
オキアミの付け方 庄司さんは捕食変化を分かりやすくするため頭を残す
エサ取りが多い時は頭を取って、頭側からハリ先を入れて尾羽根に向かって通し刺す
「港内は目立った水の変化がないように見えて時間によって場所によって流れ方は全く異なります。ウキの動きを見ればよく分かります」
ねらいは寄せエサが溜まる場所。つまり流れの影響を受けにくいスポット。庄司さんのポイントはまさにそのような場所であり、立ち位置やウキの投入位置を変えて好場所を探り出した。
立ちウキはトップの下の目盛りが2つ分沈んだくらいの位置に浮力を調整する。目盛りの色の変わり目に浮力を合わせるとアタリが分かりやすい。
「波でウキは上下します。ウキをすべて消し込むような分かりやすいアタリもありますが、微妙なものも多い。目安は1目盛り沈むかどうか。特に多いのは1目盛り下がったウキが再浮上せず押さえ込むような当たり方です」
と庄司さん。そして開始数投でウキを鋭く消し込む明確なアタリが出た。合わせると小気味よく引く。手のひらサイズのチンチンがハリを飲んであがってきた。幸先のよいスタートだ。
親子でカイズ釣り
それから2時間ほど経つと下げ潮が効き始め庄司さんは再びアタリをとらえた。浅場で掛けたクロダイはよく引く。魚は底を這うようにノッシノッシと走った。穂先を叩くような強烈な3段引きをかわすと35㎝はあろう銀鱗がゆらりと浮上。このタイミングで庄司さんの奥様である多紀さんと5歳の有紗ちゃん、3歳の有喜くんが駆け付けた。
タモ入れの瞬間に胸躍る庄司さん一家
「クロダイだあ(笑)」
と言う有紗ちゃんは、庄司さんが釣った魚を食べるのが大好き。子どもたちを交えて庄司一家はワイワイとにぎやかになる。子どもたちはお菓子を食べつつサオを持ち、横でお父さんがサポート。
正午すぎ、有紗ちゃんの同級生の吉田虎次郎くん一家がやってきた。吉田さん一家は千倉の大川港の側に自宅があり、長男の龍馬くん(7歳)が大の釣り好き。毎日のように港に行っては漁師さんと仲良くなり海のことや魚のことを教わっている。クロダイはこれまで釣ったことがない。
庄司さんが仕掛けをセットしエサを作ると龍馬くんは「投げたい」と言って手慣れたサオさばきを見せてくれた。波間にたゆたうウキを真剣に眺めるうちヒョイと消し込んだが、これは小メジナ。干潮から上げ潮が利いてきた14時過ぎ、にわかに海が騒がしくなった。シロギスやフエダイ、サンバソウがヒットして子どもたちを楽しませる。
「夕方の満潮前後はクロダイ、カイズが絶対当たると思うんです」
そう庄司さんは力強く言って子どもたちも真剣。しかし15時を回ったところで雲行きが怪しくなる。風上にあった暗雲が流れ瞬く間に白子港は雨に煙った。ここで釣りを諦めて吉田さん一家と庄司さんの奥様と子どもたちも帰路につく。
しかしチャンスタイムに帰る手はないと粘るのは庄司さん。何度もオキアミが残ってくることから本命との遭遇率は高いとにらむ。横殴りの雨の中で釣り続けると、ウキが派手に消し込み、次の瞬間には磯ザオ1号が満月になった。
「やっぱり来ましたね」とやり取り開始。だがすぐにふっとテンションが抜けてしまった。ハリがすっぽ抜けたのである。この反応を最後に庄司さんもサオをたたむ。
「秋のカイズは群れをなします。1尾釣れるとバタバタ当たって、それこそ子どもたちでも簡単に釣れるようになるんです。もう少し水温が下がってからがシーズン本番ですね」
10月に入れば天候も安定し北寄りの涼しい風が吹き始める。爽やかな季節に穏やかな港内でイトを垂れれば、格好のよいカイズや大型のクロダイが子どもでも釣れる。
フエダイの幼魚と思しき魚を手に「カイズだと思ったのに~」と悔しがる龍馬くん
サンバソウ(イシダイの幼魚)は夏の港でよく掛かる外道
「タカッパ」ことタカノハダイの小型を釣りあげた虎次郎くん。庄司さんの長女、有紗ちゃんの同級生だ
海底を這わせてねらうのが基本のウキ下。時にはシロギスもヒットする
コッパメジナも定番の外道。将来は「漁師さんになる」と言って毎日のように釣りをしている龍馬くんと母親のあゆみさん
秋が深まればチンチンが群れなして釣れ盛るが、この日のアタリは単発だった
問合先:釣具屋あどう
(℡ 0470・44・4980)
●交通:富津館山道路・富浦IC で降り、R127 を南下。館山市街を千倉方面に進み、県道188 号から県道187 号を南下しR410からさらに沿岸道路に出て白子港
2018/9/25