春は魚たちがいっせいに動きだす季節。 最近はブーム的な人気もあって、タナゴ全盛の感もあるものの、つぶらな瞳の他魚にも劣らぬ魅力がある。 小もの釣り入門者の『つり人』編集長が、肩肘張らない癒しの釣りをご案内。
おすすめ時期:周年
つり人編集部=写真と文
春は魚たちがいっせいに動きだす季節。最近はブーム的な人気もあって、タナゴ全盛の感もあるものの、つぶらな瞳の他魚にも劣らぬ魅力がある。
小もの釣り入門者の『つり人』編集長が、肩肘張らない癒しの釣りをご案内。
この記事は『つり人』2016年4月号に掲載したものを再編集しています。
大人のエゴを脱してみれば
編集長という職責を担うことになっておよそ3ヵ月。肩書からすれば、あらゆる釣りに精通したエキスパートでなければならない……のだが、格好を付けても仕方がないのでここで告白すると、そんな理想の姿は甚だ遠い。それでも、70年という長きにわたって発行されてきた小誌のバックナンバーを、時間を見つけてはつらつらと読み返すうち、あることに気付いた。
それは、少し前の時代まで、釣り雑誌にもずいぶんのんびりとした記事があるということ。たとえばウミタナゴ。現在、世の中に出ている釣り雑誌の中で、ウミタナゴの釣りを格好よくグラビアで紹介しているものがあるだろうか? 取材時に釣れたとしても、「ああ、ウミタナゴですね~(苦笑)」と興味も示されずにリリースされることが大半だろう。だが、三浦半島の磯場にウミタナゴを求めて大勢の釣り人が繰り出し、ノベザオを並べて楽しそうに春を謳歌している姿が、一時代前には華やかに掲載されていたりする。
ウミタナゴ転じてタナゴの話をすると、ある週末、2つの釣り場のどちちにタナゴ釣り修業に行こうかと迷っていたら、横の娘がクチボソのアタリがうるさくやめようかなと思っていた池のほうを指定して、「あっちなら一緒に行きたい。連れてって」と言った。彼女にしてみれば、クチボソこそが小もの釣りの楽しさを味わわせてくれる、愛すべき存在というわけだ。
霞ヶ浦の一歩手前
牛久沼をホームグラウンドに小もの釣りを長年楽しんでいる鈴木清さんと、鈴木さんに小もの釣りの魅力を教わって以来、この釣りにすっかりはまっているという大和田耕二さんを訪ねて牛久沼を訪れたのは2月上旬。
小もの釣りベテランの鈴木さん(右)は近くの利根町在住。牛久沼には毎日のように足を運んでいる
「小もの釣りは道具を自作できるのが何より楽しいです」という大和田さんは、仕事をリタイアしてからタナゴ釣りにはまった。釣り場でも仲間の分までコーヒーを入れたりしながら日々マイペースで楽しんでいる
2015年のつり人12月号において、秋の小ブナ釣りのフィールドとして牛久沼を紹介していただいた鈴木さんに、「最近、のんびり雑魚釣りができる川や池が少ないですよね」といった話をしたら、「それならまた牛久沼に来ればいいじゃない。フナはもちろん、他の魚たちもすっかり元気だよ」と誘っていただいた。
鈴木さんも大和田さんも仕事はすでに引退しており、今はコツコツとサオや仕掛けを自作しては、牛久沼に繰り出すのが何よりの楽しみだ。「ボソだって馬鹿にしちゃ~いけないよ。ここのはすっかりスレているからね」という。最近、フナやタナゴを求めて訪れる人がすっかり増え、場所によってはクチボソですら小バリの先のエサをチョチョイと突つくだけでプイッと踵を返すらしいのだ(それは本当だった!)。
牛久沼は東京方面から向かうと水郷・霞ヶ浦のちょっと手前にある。周囲は都心のベッドタウン化が進んでいるが、それでも縦横にホソの引かれた水田は茨城県の中でも有数の穀倉地帯だ。その環境が小さな魚たちを育てる。牛久沼には主な流入河川が3本あるが、釣り場となるのはおもに西谷田川と谷田川の周囲にあるホソや本流からホソに水を引く機場の周辺だ。
ホソでねらうタナゴ&クチボソ
この日使用したタックルは鈴木さんからお借りしたオーソドックスなタナゴ仕掛け。サオは50㎝ほどの短ザオ。斜め通しのトウガラシウキとシモリを組み合わせてトップバランス(ウキの頭がちょっと水面に出るバランス)に板オモリの量を調整してある。
水面を覆う枯れたアシの隙間から水の中をのぞいていると、小さな魚たちが陽だまりで日光浴をするかのように泳ぎだしてきた。水は濁っている場所もあるが、場所によっては高い透明度で魚の種類もはっきり見える。
アシの隙間に現われた多数の魚影。思わず目が止まる良型オカメの姿も
牛久沼につながる機場の取水口。もう少しシーズンが進むとタナゴも釣れるらしい
タナゴねらいの場合、まずはハリにエサ(鈴木さんはマルキユーの「グルテン5」を愛用)を付け過ぎないこと。グルテンエサは手で持っていると乾きが早いので、鈴木さんは自作のエサホルダー(竹製)を貸してくれた。ペットボトルのフタを使う人もいる。
連日釣り人がエサを見せているタナゴは予想以上に神経質!ウキに集中してやっと1尾
タナゴは姿が見えるとつい「見釣り」してしまうが、あくまでウキでアタリを取るようにするのがコツだ。そのうえで、浅い場所でもその日の「よくエサを食うタナ」はあるので、魚の姿が見えるならエサへの集まりぐあい自体は目で効率的に判断し、より反応のよいウキ下に調整すると成果が出る。
機場まわりで小ブナ
水深の浅いホソでタナゴをねらったあとは、機場まわりの深みでフナねらいに変更
いろいろな小ものを釣ってみようというこの日は、小ブナも追いかけた。フナが多いのは本流から水を導入する機場の周辺。本格的にフナ釣りに興じるなら1mくらいの小ものザオにシモリウキを複数並べた2本バリのフナ釣り仕掛けがおすすめだが、タナゴやクチボソのついでにチョイ釣りするなら、タナゴ用の仕掛けのままでも充分楽しめる。タナゴ仕掛けのままフナをねらう場合は、オモリを重めにして親ウキもすべて水中に入れるのがコツだ。エサはアカムシでもグルテンエサでもよい。
機場周辺は水深があり、さらにフナは底近くにいることが多いのでウキ下は長め。底トントンもしくは少し底から浮かせるくらいがよい。底でフナがモソッとエサをくわえるアタリを取るので、シモリは見える範囲で下に寄せ水中のミチイトの動きを見る。
この日の釣りはお昼前後の短時間。周囲はまだまだモノトーンで、一見すると枯野のような殺風景だが、水の中はすで生命の躍動にあふれていた。風が吹くとかなりの砂埃が舞うのはちょっとキツイが、それも風裏や土手下などうまく場所を選べばクリアできる。
つぶらな瞳の小ものたちを相手に、たまにはのんびりペースの五目釣りはいかがだろう?
仕掛けをフナ用に替えた大和田さんは元気な小ブナを連発!
大和田さんのフナ用仕掛けは、小型の親ウキとシモリの先にさらに桐製の水中ウキを付けて底でエサをくわえるフナのアタリを取りやすくしたもの
機場周辺には早くも大勢のフナ釣りファンの姿があった
タナゴ仕掛けのままエサをアカムシにして小ブナがヒット!
フナは春の日差しがとても似合う
オカメの間にじっとするのはカマツカ。フナねらいの際のゲスト
●交通:常磐自動車道・小田部ICから西谷田川の上岩崎周辺まで約分
2017/2/24