滋賀県・安曇川はアユの密度の高さが魅力の人気河川。「釣り人が多い河川では丁寧にサオ抜けポイントを探ることこそがさらなる1 尾を手にするためのカギ」と語る友釣りの名手・谷口輝生さんに意識するべきポイントを教えてもらった。
滋賀県・安曇川はアユの密度の高さが魅力の人気河川。「釣り人が多い河川では丁寧にサオ抜けポイントを探ることこそがさらなる1 尾を手にするためのカギ」と語る友釣りの名手・谷口輝生さんに意識するべきポイントを教えてもらった。
写真と文◎編集部
ルアーを追わせる楽しみ
安曇川は京都府京都市左京区・丹波高地の百井峠付近から発し、京都府、滋賀県を経て琵琶湖の湖西に注ぐ一級河川。琵琶湖から遡上する追い気の強い天然アユが充満する名川だ。3つの漁協が管轄するなかで下流の廣瀬漁協ではアユルアーを早くから認可している。
6月上旬、安曇川の廣瀬漁協管内の釣り場に訪れたのは京都府京都市在住の谷口輝生さん。小学生の頃にアユ釣りを始め、2005年に行なわれた「G杯争奪全日本アユ釣り選手権」と2022年に行なわれた「第53 回報知アユ釣り選手権オーナーカップ」で頂点に立った友釣りの名手だ。最近はゲーム性に惹かれ、アユルアーも楽しんでいる。
「アユルアーの魅力は『ルアーを追わせ て掛けた!』という達成感を味わえる点にあると思います。現状、アユルアーで友釣りに釣り勝つことはほとんどできませんが、ルアーにはオトリを入れられないサオ抜けポイントをねらえるという強みもあります」
琵琶湖産のアユは追い気が強くしつこくオトリやルアーを追うため、とにかく数が釣れるというのが一番の魅力だ。解禁3日後のこの日も多くの友釣りファンでサオの林になっていた。今回はそんな人気河川で釣果を伸ばすためのポイントの探し方と誘い方のコツを解説してもらった。
流れの中で高活性の個体をねらう
解禁前の大水によって石に付着していたアカはほとんど飛んでいる状況だった。平坦で弱い流れのポイントで複数のアユが跳ねているのが見えたが谷口さんはそこを見送り、流れがきつい瀬の中にエントリーした。
「アユはアカが飛んでいる状況ではナワバリを作らずに弱い流れの中で群れている場合が多いです。しかし、ルアーはある程度の流れがないとアクションしませんし、友釣りならできる群れアユに馴染ませるような使い方はできません」
広い範囲をやみくもに探るよりも瀬のほうがポイントを絞りやすい。瀬の中で残りアカを食んでいる活性が高い個体の付き場を丁寧に探すほうが効率よく釣果を伸ばせる。
この日のようにアカが飛んでいる状況ではアカが残りやすい大きな石の裏側や流れが緩い箇所にある石や護岸などがねらいめ。分かりにくい場合は相対的に見て大きな石が入っている場所、石の色が茶色っぽくなっている場所を目安に探ってみるとよいそうだ。
サオ抜けポイントを丁寧に探る
残りアカのスポットは限られており、そこには先行者も多くナワバリアユが抜かれているケースもよくある。また、廣瀬漁協管内ではアユルアーと友釣りの区間が共通している。目ぼしいポイントに入れない場合は友釣りファンが見落としているサオ抜けポイントやルアーでしかねらえないポイントを探すことが釣果アップのキモとなる。代表的なのは次の4つだ。
1つ目は釣り人が立ちやすい位置。
オトリやルアーを入れられていない場合が多いため魚が残りやすいだけでなく、渇水時のアカ腐れのタイミングではタビで川底が磨かれているため新鮮なアカが付きやすい。
2つ目は草や木が覆い被さったオーバーハングの下やヘチ。
友釣り用の長いサオではねらいにくいポイントとなるが、ルアーロッドであれば寝かせた状態でルアーを流し込むことができる。
3つ目は分流やヘチに見られる浅い流れや細い流れ。
多くの人が見落としがちなポイントであるため思わぬ良型と出会えることもある。手返しよくルアーを通して手早くサーチするとよい。
4つ目は瀬の中にある大きな石の裏。
一見流れが強そうに見えても流れが巻くポイントであるためアカが残りやすい。また、遊泳力が低い小さなアユや活性が低いアユが溜まりやすいのも特徴。群れの中にルアーを馴染ませるイメージで誘うとよい。
流れの筋を縦に切るイメージで誘う
谷口さんは手前の筋からルアーをダウンに流し込んでいく。ラインを5~10mほど出したらロッドを寝かせてゆっくりと上流側に50㎝ほどさびき、石へのコンタクトや流れの変化を感じたらステイさせる。
「筋を基準に流れを細かく分け、立ち位置を変えながらひと筋ごとにゆっくりとした動作で誘います。ルアーがゴリゴリと常に底石を叩き続けているのはNGです。1~2秒に1回底を小突く程度の速さで丁寧にさびきます。ステイの最中にルアーに体当たりをされたような感覚があったらしつこくそのポイントに留める、ハリスを短くしてみるなどの手を試してみてください」
小さなスポットを丁寧に誘うには感度が高く繊細なルアー操作がしやすいロッド選びが釣果に直結する。こう考える谷口さんが安曇川で愛用しているのはラグゼの「舞香S96M -solid」だ。
「細かいルアー位置の調整のしやすさや野アユがまとわり付く感触、底石のようすなどを感じ取れる感度の高さに魅力を感じています。バット部分にパワーがあるためやり取りや引き抜きも快適です」
黄色いアユが宙を舞う
太陽が真上に上がったころ、気温は約30℃まで上がり川の中にいてもじっとりと汗ばむ陽気となった。周囲には友釣りファンが増え、待ちに待った解禁を堪能しているようすだ。
谷口さんは両台橋周辺にエントリーし、ヘチやオーバーハングの下、足首くらいの水深のチャラ瀬、深瀬のなかの大きな石裏などを探っていく。リップ付きのミノーは潜行深度をオートマチックに決めてくれるという強みがあるが使用するルアーに合った適正な水深や流速でないとルアーが底に突っ込みすぎてしまう、しっかりと底を取ることができないなどのデメリットがある。多様な水深、水流のポイントを手返しよく探るにはオモリを付け替えるだけで自在にレンジを操作できるリップレスタイプのルアーが活躍する。
「安曇川の場合は0.8、1、1.5、2号のオモリを用意しておくとよいです。1号を基準とし根掛かりが多いようであれば軽くします」
ロッドは水平よりもわずかに立て気味で操作し、ルアーではなくオモリを石にコンタクトさせる感覚でさびくのがキモだ。
「アユルアーは友釣りに比べてやり取りが長くなりがちなのでハリはバラシが起こりにくい太軸のキープタイプを愛用しています。アユの活性が高い時はくるくるV錨を使用しますが、今日のような活性が低い日は広角パワーチラシが有効です」
流れ込み付近のヘチを探っているとロッドが強く絞られた。鮮やかな引き抜きでルアーの後から水面を割ったのは黄色く色付いた天然アユだ。手に乗せた艶々の魚体からは夏を感じさせる爽やかなスイカの香りが漂った。その後もコンスタントにロッドを曲げ、計12尾の美形アユをキャッチして納竿した。
これからの時期、水温が上がっていくにつれてアユの追い気はもっと強くなっていく。高感度かつ操作性に優れたロッドを使った丁寧なアプローチを実践すればさらに釣果が上向くこと間違いなしだ。
やぐち・てるゆき 京都市在住の46 歳。小学生の頃にアユ釣りを始め、2005 年に行なわれた「G杯争奪全日本アユ釣り選手権」と2022 年に行なわれた「第53 回報知アユ釣り選手権オーナーカップ」で優勝。豊富な友釣りの経験をアユルアーにも活用しているアカが飛んでいる厳しい状況でも12 尾を揃えた
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。