アジングというジャンルの最先端を行く藤原真一郎さんは人々の注目を集める前にそれを体験している。そして情報の発信源になっている。鳥取港のボートアジングも早くから通い込んでいたひとりだ。
アジングというジャンルの最先端を行く藤原真一郎さんは人々の注目を集める前にそれを体験している。そして情報の発信源になっている。鳥取港のボートアジングも早くから通い込んでいたひとりだ。
写真と文◎藤原武史
鳥取のアジング事情
鳥取のアジングが注目を浴びたのはやはりデカアジの存在だろう。30~40cmのメガアジはもちろん、40~50cmのギガアジがポンポン釣れるとなれば注目を浴びない訳がない。
鳥取港の遊漁船『F.ROAD』の水戸口船長によれば、「だいたい年中ねらえるのですが、1月から4月いっぱいは海が荒れて船が出せないことが多いです。5月の連休あたりから釣りが成立しだします。8月だけ尺までは出ますがギガアジは釣れません。それを除けば12月までコンスタントにギガサイズがねらえるのが魅力ですね」
鳥取港内の直売処で売られていたアジ。港のすぐそばにある定置網で捕獲したもので軒並み35cm を超えている。これよりも巨大なアジが釣れるという。
そんな鳥取ボートアジングをいち早く楽しんでいたのがおなじみの藤原真一郎さんだ。
「鳥取って砂丘のイメージが強いから、サーフが広がっていてアジは釣れないように思えますが、岸からそんなに離れていない沖合の所々に根が入っていて大きなアジが寄り付く場所になっているんです。鳥取港沖もそんな場所のひとつで、デカアジの聖地・壱岐から対馬海流に乗って日本海に流れてきたデカアジが接岸するのが鳥取あたりではないかと考えています」
ニコニコ顔の藤原さんがビール片手に説明してくれた。実はこの日は取材予定だったものの悪天候で1日延期になってしまい、ならばと居酒屋にて事前に鳥取アジング事情のインタビューを行なったのだ。
しかも、このアジングを行なうのは鳥取港の中というから驚く。桧原湖などで盛んなスモールマウスバスのシューティングスタイルから水戸口船長がヒントを得て、魚の群れを船で追いかけながら釣っていくスタイルを確立したという。水深も 10mほどなので2~3gのジグヘッドにワームというジグ単で行なう
「この釣りで重要なことはメインラインをエステルにすることです。そのラインを張らず緩めず操作できるロッドが必要になってきます。そのロッド操作ができるかどうかで釣果は大きく変わってきます。特にギガアジを釣るにはボトムをしっかり取って、ボトム付近で誘っていかないとダメですね」
と水戸口船長は言う。ドテラ流しのボートでラインを張らないようにするのはかなり難易度が高く、ボトムも砂地なのでロッドの感度が悪いとボトムも確実に取れない。
「とにかくリグが浮かび上がってしまうと豆アジしか釣れません。かといって、ジグヘッドを重くしすぎると今度は張らず緩めずの操作でボトム付近を漂わせる感じが出ません」
そこでエステルのラインが重要になってくる。他のラインも使えるが、船長が考える理想の漂わせる演出がしやすいのはエステルなのだそうだ。
藤原さんも「わりとテクニカルですが、得られるメリットは大きく、習得しておいて損はありません」と言う。
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実釣前に知っておきたいこと
釣り雑誌などでもよく見る「張らず緩めず」という表現。言葉としては理解できるが、具体的にどのような状態なのかふたりに何度も聞いた。
水戸口船長の説明はこうだ。
「要は、ラインを流れに同調させてしまうんです。ラインが張った状態だとボートも流されているのでリールで巻いているのと同じ現象が水中では起こることになります。そうなるとラインが張ってリグは上ずってきますよね。それだとボトム付近で誘うことができません。そのため浮き上がらないように沈めないといけません。けれどもフリーフォールで沈めるとボトムを擦ってしまいます。リグを流れに任せて流していけば、リグが上ずってくるのを抑えることができます。ラインを張っていないのでジグヘッドは沈もうとしますがラインが流れを受けているのでボトムに落ちてしまわないのです。その状態をキープしてさらにゆっくりとしたアクションを入れてあげます」
大きく頷きながら藤原さんが言葉を足してくれた。
「もう少しラインを張ったらジグヘッドの重さを感じるというギリギリのところまで張らないことが重要です。実は、この感覚をマスターすると鳥取のボートのみならずオカッパリも含めてアジングそのものが飛躍的に上手になりますよ」
ボートからのティップランや渓流のミャク釣りに通じるところがあるように思えたがいかがだろうか。
使う頻度の高いワームは宵姫スリムワームボックスLE505-1にこうして収納しておくと便利。ワームは宵姫エクボ2.2インチ、宵姫トレモロAJ2インチ、宵姫トレモロAJ2.6インチ、宵姫ノレソレ3インチ
今回のボートアジングで大活躍した宵姫エクボ2. 2インチ(ラグゼ)
ジグヘッドやスナップは宵姫スリムジグヘッドボックスLE506-1に収納。磁石が付いているのでジグヘッドがケースの中で動かず、ハリ先が買った時のままに保たれ、なおかつ取り出しやすい
宵姫AJカスタムTGラウンドタイプ(ラグゼ)。タングステン製で比重が大きく体積は小さいのに沈みが速い
上は宵姫AJカスタムTGラウンドタイプ2gで、下は宵姫AJカスタム2.2g。ほぼ同じ重さなのだが鉛とタングステンではこれだけシルエットが変わる
宵姫ランディングネット2.0 LE808。SとMの2サイズがある。グリップの下にゴムが付いており腰からぶら下げた状態からそのまま魚がすくえるようになっている。折りたたむこともできて便利
宵姫アルミフィッシュグリップ22cmLE127は大きなアジもしっかりホールドするフィッシュグリップ
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港外ならアウトの悪天候
朝、船着き場で準備をしているとパラパラと雨が降ってきた。朝5時に出船した船は沖堤防の内側を走り回って魚群探知機で群れを探す。海面近くにベイトは見つかったが、肝心のアジの群れが見つからない。雨は段々強くなっていく。さらに横風も強まり状況はさらに悪くなっていく。これで港外の釣りであればアウトだろう。
船長は懸命にアジの群れを探す。周辺の漁師の船もアジを探して迷走しているようだ。「明るくなってくれば入ってくると思います」と自分に言い聞かせるように船長が説明してくれた。
お世話になったのはフィッシングガイド&スクールF.ROAD
ここ鳥取港でのボートアジングはマヅメとデイでの釣りになる。
「基本的にデカアジは夜になると港から出て行ってしまいます。夜に居残っている個体もありますが釣りはデイを主体でやっています」
集魚灯で魚を集めてという釣りはせず、あくまでも探すことにこだわりがあるという。
小さいながらも群れが見つかり、藤原さんはジグ単を落としていく。ヒットしたがサバの群れだったため、また最初から探し直しだ。
雨が降っているので空が明るくなるのが遅れたが、周りの景色がはっきり見え出した時、船長がこの辺りからアジが入って来るはずと言っていた場所に大きな群れを発見した。
周りの景色がやっと見え始めたとき、船長がアジの大きな群れを発見した。アジの群れが入ってくるならここからだろうと言っていたポイントだった
その一投目で藤原さんが本命らしき魚を掛けたが切られてしまった。サバを何尾か釣っていたのでラインに傷が入っていたのだろう。その後、ギガアジとはいかなかったが20cm後半のアジが釣れる。藤原さんも船長も次々とアジを掛けていく。
宵姫アルミフィッシュグリップでホールドした尺アジ。このサイズよりふた回り以上デカいアジに出会える釣り場だ
が、今日のアジの群れは移動が早いとのことで長くは続かず、バイトが遠のいたらまた群れを探して船を走らせては釣っていき、確実に数を伸ばしている。
最終的には船長が釣った37cmが最大で、そのほかは尺アジが2尾で残りは20cm台半ばから後半のアジが20尾ほどという釣果で、期待のギガアジには出会えなかった。
「これだけ状況の悪い中で数が出たのは恩の字かもしれませんね。風が強く、魚の移動も速くて難易度的にはかなりのものだったと思いますよ。藤原さんでなければ成立していなかったかも。普通のお客さんだったら手ごわすぎてクレームものでした(笑)」
釣れたアジを神経締めをしながら船長は笑う。
今回は穏やかだった三連休あとの急激な天候の変化で魚が港内から抜けてしまったタイミングでの釣行だった。下手をすると魚が戻ってきていないかもしれないし、そもそもボートが出せるかギリギリの状況だった。
しかし、タイミングとして秋はギガアジねらいのベストシーズンという。20cm台後半がアベレージサイズだが、しっかりボトム付近を漂わせる釣りができれば、高確率でギガアジが口を使ってくるという。
※このページは『つり人2024年1月号』を再編集したものです。