日本でも有数の美味ワカサギ釣り場にして有数の空バリ釣り場である芦ノ湖で使ってみたい仕掛けを紹介しよう
数釣りマイスターも納得の400尾オーバー
写真と文◎編集部
空バリで釣れるのが魅力
ワカサギがエサを使わない空バリでも釣れることはご存知だろう。
「不思議ですよね。ワカサギ釣り場ならどこでも空バリで釣れるかというとそうではありません。透明度の高さとプランクトンの量が関係しているそうですが、自分のホームの山中湖もそうですしワカサギ釣りのメッカである福島県の桧原湖も透明度は高いですが空バリはあまり効きません」
そう語るのは山中湖『フィッシングハウスなぎさ』のスタッフで、山中湖レコードの2511尾という驚愕の釣果を叩き出した尾崎渚さんだ。
そんな数釣り名手が7月下旬の真夏に向かったのは神奈川県箱根町の芦ノ湖。「空バリといえば芦ノ湖」と言われるくらい昔から空バリの釣りが盛んで、そのワカサギは天皇家に献上されるほど美味しいことでも知られる。山上湖とあってシーズンインは早く、毎年夏から秋の高水温期によく釣れ、本誌発売直後はまさに空バリハイシーズン。紅葉の頃まで釣れ続く。
そんな芦ノ湖の空バリの釣りに効果を発揮するのが、この日尾崎さんが用意した『ワカサギ連鎖ファイバーケイムラ金鈎5本仕掛』だ。
きらめきの強い金バリにはケイムラ加工が施されたファイバーが巻かれている。ケイムラとは目に見えない紫外線を可視光線に変換して発光する特殊塗料で、可視光線が届きにくい暗い場所や視界の悪い場所でも広範囲の魚にアピールできる
ハリサイズは1 号、1.5 号、2 号の3 種類。当日は良型中心とあって2 号がマッチした。すべて全長は短ザオで扱いやすい64㎝。ロッド長や魚の活性に合わせて2 連結あるいは3 連結にするのもアリだ
袖の金バリとケイムラファイバーのダブルの輝きで魅了する
仕掛け投入からしばらく経った置きザオ状態でも空バリに食ってくるのはケイムラファイバーによるエサっぽさだろう
「空バリの中でも特に効果的と言われるのが袖の金バリで太陽光を受けてキラキラとよく光ります。さらに紫外線を受けてケイムラの青白い光でもワカサギを誘いますので非常に効果的です。前日の試し釣りでも半日ちょっとで200尾以上釣れました」
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電動二刀流スタイルで挑む芦ノ湖
芦ノ湖のワカサギ釣りといえば10本以上の多点バリ仕掛けがよく使われ、サオの長さによっては2連結で20本以上の多点仕掛けを使うケースもあるなか、尾崎さんが用意したタックルは山中湖と同様の電動二刀流。穂先は電動用としてはロングとはいえ30cmちょっとしかない。
「僕にとってワカサギ釣りはこのスタイルですから。当然、20本バリなんて扱えませんが5本バリならとても使いやすくて手返しが向上します。慣れた人なら2連結して10本バリくらいまでは使えるでしょう」
たしかに、これだけ電動二刀流が普及した今、芦ノ湖であってもこのスタイルでワカサギ釣りがしたいと思う人は多いはず。なんといってもこちらはワカサギを釣るための専用タックルである。対して芦ノ湖ではヘチザオ、フライロッド、ルアーロッド、キスザオなどなど流用タックルが一般的。専用タックルで存分にワカサギのアタリと引きを楽しみたいと考えたとき、全長64cmの5本バリ仕掛けというのは非常にありがたい存在だ。
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尾崎さんも太鼓判の美味ワカサギ
前日は2人乗りのローボートにハンドコンタイプのエレキを装着して非常に釣りやすかったというが、翌日の取材日は記者も同船することから、4人乗りエンジン付きボートを利用。船が大きい分、風の影響を受けやすい。しかもこの日は南西風が非常に強まる予報だ。
「風があると釣りにくいですが釣れます。風がないと釣りやすいですが釣れませんから」
そう言うと、元箱根の芦ノ湖フィッシングセンターおおばの桟橋を離れてわずか数分の沖合で魚探を見ながら「あ、いたいた」と言ってギアを後進に入れる。ボートの構造上、前進で群れの上に入ると風に対して船首が振られやすいため後進でなるべく群れの真上にステイする時間を多くしている。
着底後すぐに穂先が激しく叩かれる。モーターによる巻き上げを開始すると穂先は魚の重みで直下に曲がる。1、2……5尾! パーフェクト!?
「いやいや仕掛け2連結の10本バリです。それにしてもサイズがいい!」
と、10cm超えをズラリと揃えて朝から満面の笑みだ。夏のワカサギのお味も気になるところだが「山中湖のワカサギ釣りは9月に始まって6月に終わるのですが、ここ芦ノ湖は夏からよく釣れますよね。そして気になるお味は……脂がたっぷり乗って美味! さすが献上ワカサギ、大きくても骨が全く気になりませんでした」と絶賛。
今の水深が14m。昨日も13mより深いと大型が揃ったそうで、12mより浅いところでは5㎝クラスがメインになるという。また、太陽光の関係か20mよりも深いと空バリの釣りは効きにくくなるという。
「空バリというと群れの先頭目掛けて仕掛けを素早く正確に投入するシューティングゲームのイメージが強いですが、この仕掛けはケイムラのファイバーが効いているんだと思いますが、着底後しばらくしてからでも群れの回遊に当たれば多点掛けできますので、そこまで群れと追いかけっこをしなくてもいいと思います」
こうして朝の2時間は桟橋に近い湖尻湾の中でコンスタントに釣果を重ねていった。
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食い渋ったらベニサシも併用
食いが落ちたタイミングで湖尻湾を出て箱根園側へ向かったものの群れが10m以浅に多くサイズもひと回り小さかったことから再び湖尻湾に戻るも、朝のような多点掛けではなく、1尾2尾の拾い釣りに転じる。さらに昼前から風が強まり、流し釣りがしにくくなったタイミングでアンカーを投入。群れの先頭というよりも群れが頻繁に回るコース上と思しきところで回遊を待つ釣りになる。
「朝夕の高活性時なら回遊待ちの釣りでも空バリでいけますが、この時間になるとエサも併用したほうが釣果は伸びます」
と、10本バリなら3ヵ所、5本バリなら2ヵ所にエサをセットする。エサはベニサシがいいという。
「アカムシのほうが装着しにくいしエサ持ちもよくない。そうした苦労があんまり報われないのに対してベニサシはエサ付けしやすくて食いも悪くないし体液によるコマセ効果が実感できます。特にアンカーで固定するときには〝場所を作る〟ことができ、時間の経過とともに尻上がりによく釣れます。シロサシでもいいんですが体色が体液の色と同じなので減りぐあいがわかりにくい」
たしかに、ボートを流しながらエサも装着して風や反応に対してボートの向きを調整するのは至難の業だ。芦ノ湖イコール群れを追い掛ける流し釣りと決めつけず、食いが渋ったらエサの力も借りて腰を据えた釣りを試してみるのが尾崎さんのおすすめの釣り方である。
「全部のハリにエサ付けするとまた手返しが落ちます。せっかく空バリが効く釣り場なので、5本なら3本は空バリで釣って、空バリにも問題なく食うようなら4本を空バリにしてみるのも手です」
当日は強風に苦しめられたものの、桃源台港前の馬の背の周りの14mラインでスランプの時間もなく、終始、良型を掛け続け、目標にしていた前日の倍の403尾、重さにして1740gという好釣果を叩き出した。
※このページは『つり人2023年10月号』を再編集したものです。