去年の夏は休みのほとんどをアユルアーに費やしたが、やればやるほど面白い釣りだと実感。そして強く感じたことは石の小さな川で巻く釣りよりも、しっかり石が入った川でナワバリアユを挑発する釣りが面白いということ!
サンスイ渋谷店Part1 勤務の林さんは去年の夏、休みのほとんどをアユルアーに費やしたという。
文◎林悠一 写真◎編集部
イライラをMAX まで
福島県いわき市を流れる鮫川へ釣行してきた。鮫川は鮫川漁業協同組合管轄の河川で、今回は同漁協組合管轄内の支流「四時川」へ入った。渓相は岩盤と大きな岩が点在する、まさに渓流。トロ場や瀬肩・瀬尻、瀬とポイントになるいたるところでアユのハネがあり最高の雰囲気である。
私は前日にも下見に来ており、鮫川水系の各所を大まかに見て回ったが、しっかり釣りをするのは当日が初だった。
細かい石がメインの川と違い、大小の石の差がハッキリしている今回のような釣り場はナワバリ意識が強いアユが多く、キャストして巻くといった釣りが通用しないことが多くある。
このような場所はポイントの見極めとヤル気のあるアユがいるかいないかを見極める必要がある。
当日も瀬尻と瀬の中には群れアユが多く、これをキャストして巻いて釣れても再現性がなく数が伸びない。ヤル気のある個体は瀬肩や流れが強く当たりすぎない大きめの石に多くいる。
アユルアーは所詮偽物。本物のアユには到底敵わない。なので、いかに喧嘩っ早い個体を多く見つけるかが釣果を大きく左右する。
まずはよさそうなポイントへ上流からルアーを流し込み、ポイントに定位させる。瀬肩であれば瀬肩をロッドワークで左右へ行ったり来たりさせる。石であれば上流の位置から左右に岩を舐めるようにロッドワークで行ったり来たりさせる。この時に長いロッドが役に立つ。当日使用したロッドの長さは9ft10inで、この操作が非常にやりやすい。
喧嘩っ早い個体がいればこの時点でルアーの周りでギラッギラッと威嚇して光る。かなり喧嘩っ早い個体であればすぐに掛かる。威嚇してこないでギラギラしないポイントは見切り次のポイントへ移動する。
逆に、一回ギラッとした個体は、ほぼ間違いなく掛かってくるので15分でも粘る。すべてのポイントを15分使っていたらあっという間に日が暮れてしまうので見極めが重要だ。
ギラッとしてしまえばこちらのもの。あとはいかにイライラをMAXまでもってくるかだ。
一定の動きの行ったり来たりではイライラをMAXまで持っていくことはできない。ルアーを上流方向へ一気にポイントから大きく離してからまた接近させたり、ルアーを流れに乗せてキックバックさせたり。そうすることでルアーの周りがしきりにギラギラし始める。イライラが最高潮に達している証拠だ。
そこまでイラつかせてしまえば、また元の行ったり来たりの作業をするだけで簡単に掛かってくる。これをやるかやらないかで全く違う結果になる。
エリアは友釣りファンと共有のため、こうしたオーバーハングの下の石は絶好のサオ抜けになっている。実際、こうした釣りにくい場所にできたナワバリほど執着するアユが多い
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流れに合ったルアーをチョイス
スイッチが入ってるか入ってないかはルアーが見えていないと話にならない。だから私は必ずルアーの背中はサイトがしやすい蛍光イエローやオレンジのカラーを使用する。ナチュラルカラーでも目印となるシールを背中に貼り見やすくしている。
ルアーの30cm横でギラッギラッとしていても、それは違うアユに威嚇しているだけであって自分のルアーに威嚇しているわけではない。自分のルアーに威嚇している場合は真後ろや真横と超至近距離でギラッとする。
この時に重要なもう一つの要素がルアーだ。ルアーによって得意な流れの強さがあり、速い流れを得意とするものや緩い流れを得意とするものもある。
基本はボトム付近をキープしながらこの誘いをするのだが、強い流れが得意なルアーに緩いポイントを攻めさせようとしてもルアーが浮き上がってしまいまともにレンジをキープできない。逆もしかりで、緩い流れが得意なルアーに速い流れを攻めさせればルアーが暴れすぎてしまい水面から飛び出して制御不能になる。
流れの強さに合ったルアーの選び方はかなり重要になる。今、各メーカーから発売されているアユルアーはかなり優秀で釣れないルアーはなく、それぞれに得意な流れの強さがあるので、それを見極めることが重要だ。
流れが緩すぎてどうしてもルアーが浮き上がってしまう場合やポイントが深い場合には専用のシンカーを使用する。流れが速すぎてシンカーを使うことはしない。今発売されているルアーで対応できないほど速い流れは、そも そもアユのポイントにふさわしくないことが多い。
逆に、流れが緩すぎてどうしても制御しきれない場合にのみ私はシンカーを使う。今回の釣行では0.9〜2gを使用した。流れに合わせてフワ〜と浮き上がるくらいの設定にしたい。
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ねらうはナワバリアユ
そして、私が最も気を使うのがフックだ。ルアーを完璧に制御してもフックがダメなら全く意味がない。
まず、フックの形状以前にフック交換の頻度が大事だ。アユ釣りはハリの鋭さが命なのだ。
アユルアーを経験した方なら分かると思うが、根掛かりをするのも2パターンあり、ルアーが岩にスタックしてしまう根掛かりと、フック自体が岩等に引っかかってしまう根掛かりがある。
2パターンの見極めとしては、ルアーがスタックしている場合は軽くロッドを煽ると全く動かない。フックが根掛かりしている場合は煽ると「ビヨ〜ンビヨ〜ン」とルアーだけ動く感覚がある。このフックが根掛かってしまった場合は迷わずフック交換をおすすめする。私も最初はそうだったが、ルアーマンの考えだと、とりあえず指先に当ててみて「尖ってるから大丈夫じゃん」と思ってしまうが、アユはルアーを食いにきているわけではなく、アタックしてきた魚体にハリが触れるだけで刺さらなくてはいけないので、それほど鋭くなくてはいけないのである。ハリの線径もルアーで使用するフックと比にならないほど細いので硬い石に根掛かりしたら鈍るのも当然だ。とにかく替えバリはたくさん常備したい。私は根掛かりしていなくても3尾掛けたら交換するようにして常にハリ先は鋭いことを意識している。
フックの種類は大きく分けて「イカリバリ」と「チラシバリ・ヤナギバリ」の2種類になる。イカリバリの特徴としては、一ヵ所のハリの数が多く、とにかく掛かりが早いということ。号数は6.5号、7号、7.5号がメイン。大きくなれば掛かりもよくなるが、自然と重くなるので流れが緩くなれば重いほど根掛かりも増えるので最初は中間の7号がオススメ。
チラシ・ヤナギの特徴は基本3本のシングルのアユバリを等間隔で結んでいる。イカリより掛かりの早さは劣るものの、群れアユやルアーの後ろをウロついたりジャレついてくるアユを掛けやすく、1本がしっかり刺さるのでバラシが少ない。ハリ自体が軽く、流れで浮き上がりやすいのでイカリより大きめの7.5号、8号、8.5号がメインになってくる。
私はしっかりと追わせて掛けていきたいのでイカリバリを多用する。オーナーばりから発売されているイカリバリ「鮎ルアーのフック」はハリ先がストレートタイプの掛かり重視モデルと、ハリ先がカーブポイントのバレが少ないキープ重視モデルがあるので状況に合わせた使い分けがしやすい。
いずれにしても、フックは大きければバレは少なくなるが、大き過ぎると根掛かりが増える。小さければ根掛かりは減るがバレが多くなる。だから状況に合ったフックのサイズを見極めることが重要だ。
根掛かりも大抵は無理に引っ張らずにラインを緩めてルアーを下流側に送り込めば自然と外れるが、石と石の隙間に完全に入り込んでしまうと外せなくなりルアーを回収しに行かなくてはいけなくなるためポイントを潰してしまう。釣果のためにもフックのためにも極力根掛かりは避けたい。
立ち位置はポイントの上流側に立ち、上流からピッチングか手前からラインを送り込んでポイントへ流し込んでいく。
基本的にキャストの釣りをしないのでポイントまでの距離は10m以内。
群れアユは人間の気配を感じるとすぐに逃げるが、ナワバリ意識が強いアユはそう簡単には逃げずにナワバリに居続ける。かと言って接近し過ぎてはさすがにポイントを潰してしまうので、ルアーが目視できて容易にコントロールできる距離感がベストだ。
ピンポイントでルアーを泳がせてアユをイラつかせて、任意のタイミングで掛けるアユルアー。再現性が出てくるとポイント一つ一つにワクワクが止まらなくなる。
自分の中でのルアーの使い分け。上に行くほど流れが速い釣り場にマッチし、下に行くほど流れの緩い釣り場にマッチ
イカリバリの基本の長さは指4 本分。追いがよくルアーの下腹をしきりにボディブローしてくる個体が多い時は指3 本の短めのセッティングにすると掛かりがよい
しっかりと追わせて掛けていきたいのでイカリバリを多用する。少しでも甘くなったら即交換するのが絶対
私がシンカーを使うのは流れが緩すぎてどうしても制御しきれない場合にのみ。今回は0.9 〜2 gを使用。流れに合わせてフワ〜と浮き上がるくらいの設定にする
※このページは『つり人 2024年10月号』を再編集したものです。