アユルアーマニアで知られる仲谷聡さんが初挑戦したのは木津川。アユは石を釣るのがまさに定石だが砂利底で押しの強いこの川ならではの釣法があるようだ。
アユルアーマニアで知られる仲谷聡さんが初挑戦したのは木津川。アユは石を釣るのがまさに定石だが砂利底で押しの強いこの川ならではの釣法があるようだ。
写真と文◎編集部
細マッチョでパワフルな 木津川アユ
木津川は三重県、京都府を流れる淀川水系の支流。京都と大阪の県境付近で宇治川、桂川の二川と合流し(三川合流地点)淀川となる。
今から450年ほど前の安土桃山時代、木津川のアユのなかでも特に大河原産は『瀧の鮎』と呼ばれ太閤秀吉公へ上納されていたという
「そんなブランドアユを復活させたい」
そう話すのは木津川漁協の石井真人さん。木津川での川遊びで育った生粋の木津川っ子だ。昨年(2023年)からアユルアー許可区域が大幅に拡大されたのも、もっと木津川のアユの魅力を多くの人に知ってもらいたいとの思いからだ。
「木津川は天然遡上河川として知られアユの量は多いんですが、海産は釣るのが難しいとよく言われます。でも、皆さん口を揃えるのは、引きがワンランク強いと。海からここまで数十㎞も遡上したパワフルなアユですから」
道から川を見ると、一見、ゆったりとした流れに見えるが、底質が砂利で平らなため流れが速く押しも強い。
「木津川のアユは肩がイカった筋肉質とかではなくて、スリムな細マッチョなんです。20㎝にも満たないサイズでも、力強い抵抗でなかなか引き抜けません」
と話す石井さんはいくつかのアユルアーロッドを試したが、木津川では物足りなさを感じていた。そんな時、ゴールデンミーンスタッフの仲谷聡さんと知り合った。
「関西でアユルアーができる河川はほとんど行ったんですが、昨年、木津川でできることを知って連絡したんです。で、昨日(取材前日の6月5日)、石井さんに案内してもらって初めて釣ったんです。状況的には大増水後で、まだ+20㎝の高水でしたが、濁りもほぼ取れてアユもチラホラ見え始め、『これでも解禁(6月1日)からは一番いい状況』と石井さんから教えてもらいました。天気がよかったんで水温が上がった夕マヅメにバタバタっと連続ヒットしたんです。サイズは13〜14㎝でしたけど引きは確かに強い!」
仲谷さんも木津川アユに一瞬でハマってしまったようす。
使用したロッドはアユルアー専用に開発した『ブレインストーム鮎』(ゴールデンミーン)。このロッドは緩い流れから激流までルアーの泳ぎに追従し激流下でも泳ぎ切れるように柔らかいカーボンソリッドティップを搭載。
この釣りは基本的にボトムをねらうため、ボトムまでルアーを到達させ、さらにボトム付近で泳がせ続けないといけない。その際、ティップの柔軟性が低いと強く引っ張ってしまってルアーを浮き上がらせてしまうし、その前段階の潜り込ませる段階で泳ぎを破綻させやすい。また、柔軟なティップならアタリを弾きにくく、ルアーにジャレつくアユも掛かってくるほどだ。
「初めての木津川は確かに流れの押しが強くてあまり前まで立ち込めませんでした。そして釣ったアユは大きくはなかったんですが引きが強く、大アユも想定してバットを強くしてある『ブレインストーム鮎』でちょうどいいと感じました。レングスも各地でテストをして一番使いやすかったこの9ftが木津川でもちょうどよかったですね」
「僕もこのロッドを今回初めて使わせてもらったんですが完全に木津川に合っていると思いました。このくらいパワーがないと、ここのアユは寄せられないし抜き上げられない。だから、使ってて安心ですしすごく頼もしい」
ふたりのロッドへの意見もぴったりシンクロ。繊細かつ敏感なカーボンソリッドは、ハリ先やルアーがちょっとでも石や魚に当たると手もとへその振動を伝達してくれるから、アタリならすぐにアワセが入れられ、石だと根掛かりを回避しやすい。そして強めのバットは操作性も高く追い気のあるアユへの誘いもかけやすい。
「ドリフト時に掛かってくることもありますけど、大半はねらいのスポットでルアーをステイさせて誘っている時に掛かってくる。待って反応がなければ、ロッドを動かしてルアーをステイさせる位置やレーンを替えますが、トゥイッチは入れません。だから、流れを受けて自発的にイレギュラーにスライドアクションしてくれるミノーがオススメです」
左は石井さんのスピニングタックル。ゴールデンミーン『ブレインストーム鮎BSAS-90』に1000 番のスピニングリール。ラインはPE0.5 号にフロロ0.8 号を約2.5m。右は仲谷さんのベイトタックル。『ブレインストーム鮎BSAC-90』にアンバサダー2500C。ラインはPE0.5 〜0.6 号。FG ノットでフロロリーダー2号を2.7m 弱介し、ここへアユ用目印をセット。目印はアタリを取る目的のほかに抜き上げの際のライン巻き取り量の目安にしている
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レーンを探れ
木津川アユ初挑戦の仲谷さんは、石井さんから木津川の特徴を聞いており、前日にそれを実践して釣果を得ることができたという。
その特徴とは、木津川のアユは釣れるレーンがある程度決まっているというものだった。レーンとは流れの筋。一般的には、アユは石を見て釣るものだが砂利底が多い木津川では石よりも筋が重要になるという。
木津川は大きな石がゴロゴロしているエリアは少なくフラットな砂利底が多いため、一見すると変化のない流れに見えるが、それでも流心がありその脇には緩い流れがあり、いくつかの流れの筋で構成されている。
「アユの群れはひとつのレーンで上下しており、水温や時間帯などのタイミングしだいで釣れます。ひとつのレーンの幅は2mほどでアユがギラギラとコケを食んでいたり跳ねているところが分かりやすい。ロッドを水平に動かしてみて、そのレーンの中でルアーを上下に探ってみる。すぐに反応がなくても何かのタイミングでバタバタと釣れるっていうのがよくあるんです。組合員なので釣れたポイントの情報が集まってくるんですが、並んで釣っていても探っている筋が違うと釣果も全然違うんです」
そのレーンは大水が出て地形が変わらない限り変わらないという。それが縦のレーン。さらに、大型が出る横のレーンもある。
「上流から下流に伸びる縦のレーンに対して、不思議と大型が連発する横のレーンがあり、その横と縦がクロスするところは意識して覚えるようにしています」 と石井さんが話すレーンがクロスする中流域の泉大橋下流のポイントで仲谷さんは前日に13〜14㎝を連発した。
当日も朝から同じ場所を探ったが、水がまだ冷たく、アユの姿は確認できたがルアーを追うほど活性は高くない。
「今日も夕方に期待したいですが、予報では午後から曇りですから……どうかな」と2人とも期待半分、不安半分。反応が薄いことから、上流域に移動してみることに。
数ヵ所回ってみて、午後になると白砂川の橋の上からアユがコケを食んでいるのを確認。2人は俄然テンションを上げて、すぐに入水。石井さんが1尾掛けたが後が続かない。空には厚雲が広がり肌寒さを感じる。結局、朝の泉大橋下流へ入りなおす。
「昨日も16時から急に釣れ始めたんですけど、昨日は暑かった。でも今日は寒くて水も冷たいまま……」と石井さんと仲谷さん。
そして、16時半を回って石井さんに13㎝の天然アユがヒット。さらに立て続けに同じレーンからヒットし、時合かと期待したが、釣れたのは「これは僕の最小記録です(笑)」とミノーより小さな6㎝。それでもレーンは合っているようだ。
「木津川は天然遡上の川なんで基本的にはスロースタートで例年7月中旬くらいからエンジンが掛かってくる。10月いっぱいは20㎝オーバーも掛かってきますから、今年もすごい引きを味わえるはずです。昨年は支流の和束川で11 月4日までルアーで釣れていますから今後に期待してください」
そんな石井さんの言葉に、7月中旬か らの力強い大型の引きをイメージした仲谷さんは「その頃から通います」と決意したのだった。
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。