発展途中であるアユのルアーフィッシング。専用ルアーはまだまだ豊富とは言えないが、ルアーセレクトやチューニング次第で、ねらえるポイントは確実に広がっている
発展途中であるアユのルアーフィッシング。専用ルアーはまだまだ豊富とは言えないが、ルアーセレクトやチューニング次第で、ねらえるポイントは確実に広がっている
100%天然遡上のアユを釣ることができる高知県物部川
昨年から一気に注目度が上がったルアータックルを使ったアユ釣り。昨年と比べてルアーの使用が許可された河川が全国規模で増えてきていて、高知県を流れる物部川もアユをルアーでねらえる河川のひとつだ。
物部川は杉田ダムを境に上流部と下流部に分けられ、上流部は7月1日に解禁するが下流部は全国的に見ても少し早い5月15日が解禁日となっている。6月を待てないアユ釣りファンが全国から集う一級河川だ。また、物部川の下流部はアユの放流を行なっておらず、100%天然遡上のアユを釣ることができるのも魅力のひとつとなっている。上流部はダムをアユが遡上できないため放流が主体。渓流相のアユ釣りが楽しめる。
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
ルアーと流れで2タックルを使い分け
5月下旬、そんな物部川の下流部を訪れたのは和歌山県在住の木森直樹さん。全国各地のアユをルアーで釣ってきたアユイングのパイオニアだ。
この日用意したタックルは2種類。どちらもベイトタックルでロッドはネオステージAY(ダイワ)だが、硬さが異なる。ひとつはオールラウンダーな90ML、もうひとつは強い流れや重いルアーを扱える93MH だ。最初は強い流れをねらうため、93MH を選択。ラインはPE0.4号にリーダーはフロロカーボンの0.8号を1ヒロほど。フックはキープの7号3本イカリでハリスの長さは指3本からスタートした。
「前日に友釣りの大会があったようでいかにも釣れそうなポイントのアユは抜かれていると思います。簡単じゃない状況だと考えてピンスポットをねらっていきます」
アユイングミノー94SF(ダイワ)を使ってひとつひとつサイトでじっくりねらっていくと時おりルアーのそばでキラッとするものの掛からない。朝の9時ではまだアユも本調子ではないようだ。「少し置いてまた後でねらってみましょう」と言い、90ML に持ち替えて橋の上手にある緩く浅い流れに移動した。
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
緩い流れはロール系のルアーで
ルアーはオトリアユと違って流れがある程度ないと泳がない。そのため、既存のルアーでは緩い流れを攻略するのは難しかったが、木森さんが今回用意したアユイングミノーSS(ダイワ)は緩い流れを得意とするニューアイテムだ。リップの大きいミノータイプと比べると動きはかなりおとなしいが、緩い流れでも動きやすいロールアクション主体でアユにアピールする。使い方は基本どおりダウンの釣りだ。スローシンキングなのでルアーが潜らないと底石に当たらず釣りにならないということもない。
アユイングミノーSS はリップが控えめでロール主体のアクション。カラーは4 色で、上からアデル黒サビアユ、アデルナチュラルアユ、アデルギラギラアユオレンジベリー、アデルチャートバック縄張りアユ
一般的なルアーとは違い、ルアーとフックの間にハリスを介しているこの釣りでは流れが緩い場所ほどフックが垂れ下がってしまい底石に引っ掛かってしまいやすいが、アユイングミノーSS ではその対策としてテール部にハリスキーパーが付いている。
ハリスをそこに挟み込むことでフックの位置を高くすることができ、根掛かりを軽減することができる。
開けた流れを釣り下って広く探っていくが反応はなく、木森さんは最初のポイントへ戻った。
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
強い流れを泳がせるアゴリグチューン
ロッド2本分程度しかラインを出さず、サイトで石の際にルアーを留めるようにしてひとつひとつ丁寧に誘っていくとガツンと手ごたえがあったが、あえなくフックアウト。流れが絞れて強くなり出す石の際を探ってヒットしたものの、激流に乗って下られてしまったようだ。
「やっぱり友釣りではねらいにくい場所にいい魚が残っていました。取れるかどうかは別としてルアーを石の際に置き続けてみたら来ましたが、この流れに乗られてしまうとどうしようもありません」
やはり釣りにくいポイントに追い気のあるアユが残っているようだ。同じポイントで粘っているとすぐにヒットして今度は引き抜きに成功。タモに入ったのは小ぶりながら美しい天然溯上のアユだ。
使っているルアーをよく見てみるとリップ根元のアイにシンカーが付いている。
「これはアゴリグチューンといってシンカーを装着することでノーマルの状態では探れない強い流れでもしっかり泳ぐようになります」
エギングで行なわれるチューニング方法で、エギングが得意な木森さんがアユイングでも使えそうだと思い試したそうだ。使用しているシンカーはアゴリグシンカーⅡ(ダイワ)でワンタッチで取り付けられる。
アゴリグチューンは単純にウエイトを重くして沈めるというよりも、ルアーの重心を下にして暴れを抑えるという意味合いで使っていると木森さんは言う。そのため、極端に重くする必要はなく、一番軽い0.5gを使っても流れに強くなるそうだ。
アゴリグを使う場合は流れが強いことがほとんどなのでロッドは硬めの93MHの使用がおすすめで、90MLだとロッドが負けてしまってルアーポジションの調整など細かい操作ができなくなってしまうとのこと。
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
石のどこをねらうのか
手前の黒い石の際をねらい見事にヒットさせたが、流れに乗られてバレてしまった。生きたオトリを使う友釣りでねらうのは難しいポイントもルアーならねらいやすい
後半戦は車で移動して戸板島橋の上流でサオをだす。すでに友釣りが何人か入っているが、苦戦しているようすだ。丁度サオを畳んだ人がいたのでその区間の瀬を探ることに。流心を丁寧に探りながら釣り下っていくが反応はない。そこで木森さんは作戦を変更し、流心ではなく少し外れた流れを中心に探っていく。すると早速ロッドが曲がった。
「流れのしっかり効いているポイントよりもその周辺の少し弱い流れにアユが残っているみたいです。それでも丁寧にめぼしい石をひとつひとつ探ってルアーも長めに見せないと反応してくれません」
やはり人がねらっていない流れを探るのがこの日は当たりのようだ。パターンをつかんだ木森さんはテンポよく釣り下り、数を伸ばしていく。木森さんは石のどのあたりをねらっているのだろうか。
「今日は石の左右にルアーを置くようにすると反応がいいです。石の後ろでは流れが弱くてルアーが泳がないですし、石の上ではルアーが暴れてしまいます。石に当たって左右に分かれた流れの強いほうからねらい、反応がなければ石の上を通して反対側へ置きます。反応がなければ次の石をねらうといった感じです」
この日のアベレージサイズは15cmほどだったが17cmクラスも混じった。季節が進めばさらに成長していろいろなポイントにアユが散らばる。適材適所なルアー選びとチューニングでアユルアーを楽しんでほしい。
※このページは『つり人 2023年8月号』を再編集したものです。