永い夏の暑さから解放されて利根川のシーバスも本格的な秋のシーズンを迎える。この川に長年通いこんできた川上靖雄さんは、積み上げた経験値と理論を駆使してどのように挑むのだろう
多彩なベイトに惑わされるな
写真と文◎浦 壮一郎
利根川のリバーシーバス開幕!
最近の気候でいうと9月はまだ真夏であるらしい。10月に入ってようやく秋めいてきたが、まだ夏のように暑い日があったり、そうかと思えば10月を通り越した晩秋のような寒い日もある。そんな状況なので秋の釣りも難しい状況に遭遇するだろう。それでも、ようやく本格的な秋のシーバスシーズンに突入し、数々の釣果が聞こえ始めた。
千葉県内を中心に河川から磯まで年中シーバスを追い求めている川上靖雄 さんと利根川へ向かったのは10月初旬。真夏から忽然と秋に様変わりした その夜は、まだ本格的な秋のシーバスシーズンとはいえない状況。蒸し暑さ が和らいだのは幸いながら、雨と風が邪魔をする悪条件の釣行となった。
利根川のシーバス・フィッシングといえば利根川河口堰周辺がもっとも有名だが(上下流110mは禁漁)、シーバスが荒食いを始める秋のトップシーズンともなればそうしたポイントに入れるとは限らない。訪れるアングラーたちが集中することになるからである。利根川を熟知している川上さんが選んだのは河口堰からおよそ10㎞も下流のオープンエリアだった。
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イナッコパターンで通す一夜
雨まじりの暗闇のなかウエーディングを試みる。河口堰や橋脚のような大きな目印もなく、ただただ広大な流れが目の前に広がっている。たとえばビギナーにこのエリアを薦めたとしても、何をどうすればよいのか分からないかもしれないな……そう思えるようなポイントだった。
右岸側のウエーディングポイントはあいにく向かい風。水面が多少波立っていることから潮目を目視することも難しい。満潮からの下げ潮のタイミングながら、ベイトは確認できないでいた。
「利根川に関して言うと、秋のトップシーズンはイナッコパターン1本で考えていいと思うんです」
もちろん利根川の規模ともなればイナッコ以外にも多くのベイトがいる。それでも秋はイナッコを強く意識した釣りに徹するのだと川上さんは言う。
「最初は向かい風を覚悟の上で右岸から釣り始めましたが、風を避けて左岸に移動した際、イナッコのほかサヨリも目視できました。目視できるというのは情報としてありがたいのは確かなんです。でも、いろいろなベイトが目に入ると、むしろ利根川という広大なフィールドでは混乱しやすい。惑わされずにイナッコパターンで通したほうが、釣果に結びつきやすいと思います」
イナッコだけを意識してキャストを続けるのは最も個体数の多いイナッコが秋の利根川ではメインのベイトになってくるからだ。
表層にイナッコがいればモニカ125F などのシャローランナー、状況が悪かったらシンペンのワイゾン77 Sを結ぶという
シャローランナーはモニカ125F ジェットブースト(シマノ)をチョイス。重心移動ウエイトを貫通シャフトとバネで支える構造により、安定したロングキャストと速やかな泳ぎ出しを可能にしている。秋のハイシーズンには欠かせないルアーだ
シンペンのワイゾン77 Sジェットブースト(シマノ)。モニカと同様にバネを使った重心移動システムを採用し、小さなリップを搭載することによりねらったレンジを安定して泳がせることができる
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流れが緩んだ時にランカーがヒット
ここで重要になるのが流れを読んだリトリーブである。ここに、川の釣りならではのおもしろさが集約されているといえる。
「流れに対してアップクロス気味にキャストして、ドリフトで釣っていくのが基本ですね。それは上げ潮でも下げ潮でも変わりません。バチの釣りではないのである程度アクションを加えたものにバイトしてくる。そのため、ルアーがしっかり動くよう流れを加味したリトリーブスピードにしないといけません。あまりにも流れが速い場合、ややリトリーブスピードを速めにしてあえてルアーを動かしてあげる。ドリフトに巻きも少し入れてあげる感じですね。逆に流れが緩かったらドリフト中心のスローリトリーブでいいと思います」
ではルアーのチョイスはどうだろうか。川上さんはこの日、シャローランナーのモニカ125Fジェットブースト(シマノ)とシンキングペンシルのワイゾン77Sジェットブースト(シマノ)の2つを選択。主にワイゾンを多用する一夜となった。
この日は盛期とはいえない厳しい状況でイメージしていた秋の荒食いとはかけ離れていた。結論から先に述べると釣果を得たのは干潮の潮止まり。流れが緩んだ時間帯にワイゾン77Sでワンバイト。80㎝ジャストのランカーシーバスがロッドを絞り込んだのだ。
「ランカーが釣れるのって流れが緩む、または流れが走るタイミングのどちらかだと思うんです。今回は流れが速かったなか、流れが緩んだ・止まった時間帯で釣れたという感じですね。リバーシーバスでいうとセオリーどおり。だからあの時間帯は特に集中していました」
この日はジャスト80cm のランカーが出た
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風で沈んだイナッコ
実は前日に同じポイントに入っていたという川上さん。だが、状況は一変していたそうだ。
「前日はベイトがもっといっぱいいました。今日もいたとは思うんですが、風で目視はできませんでした。ただ、ルアーを引いているときは何回か当たっていたので、風の影響でベイトが沈み気味なのだと考えました。前日は表層にいたけれども、当日は風で水面が波立った関係でボトムに沈んでしまったのだと思います」
そこでシャローランナーよりもシンペンが有効だと考えたのだ。実際、シャローランナーをキャストしたのは数回程度。ほとんどの時間をシンペンで費やした。予想は的中し、ランカーに出会うことができたというわけである。
「この時期、どのレンジにベイトがいるのかを探る意味でも最初はフローティングをまず投げてみます。それでダメ、ベイトにすら当たらなかったらシンキングに変えます。シンキングだといろいろなレンジを探れますからね」
利根川の秋は「惑わされずにイナッコパターンで通した方が釣果に結びつきやすい」と言う。10cm 以上のイナッコに対してサイズ感は違うもののワイゾン77 Sは効果的
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リップがもたらす恩恵
「この釣りではレンジとルアーのスピード、そしてアクションが重要になります。ただ、ハイシーズンならそのうちの1つか2つ合っていればバイトが出る可能性もゼロではないです。でも渋い時はすべてを合わせないと口を使ってくれない。その意味でルアーローテーションはとても重要になりますね」
ヒットルアーのワイゾン77Sはリトリーブスピードやフォールさせる時間次第でレンジを幅広く刻むことができる。しかも小さなリップを搭載したワイゾン77Sは特にレンジキープさせやすいシンペンだという。
「一般的なリップのないシンペンはリトリーブすると浮き上がる傾向があります。そうすると知らぬ間にねらいたいレンジから(上に)外れていることがあるんです。また、引き抵抗を感じにくくてシンペンは使いづらいというビギナーが多い。ワイゾン77Sはリップが付いていることで浮き上がりを抑え、引き抵抗を感じやすく、流れの強弱が分かりやすくなっています」
この時期はイナッコのサイズが10~15㎝くらいと大きい。サイズ的に合っているのはモニカ125Fだが大きさは関係ないのだろうか。
「実はこれ、小さいルアーにしか反応しない状況を考えたサイズなんです。これで釣れなかったら、もういないよね、みたいな感じで使える喰わせ仕様なのでいろいろなシーンで出番が多いと思います」
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ハイシーズンこそシャローランナーが活躍
今回は風の影響でベイトが沈んでしまったが、これが無風あるいは風が穏やかであれば状況は変わったと川上さんはみている。
「秋のハイシーズンで活性の高いシーバスを釣っていくのであればモニカ125Fから使いますし、それで反応がなかったらフォローとしてワイゾン77S を使ってもらえればいいのかな、と思います。今回も、風が吹いていなかったらベイトは浮き気味になるのでおそらくモニカなどのシャローランナーで釣れていたと思います」
どちらのルアーが優れているというわけではなく、その日の状況に合わせて選ぶことが重要だということ。今回はシンペンに軍配が上がったものの、これからのハイシーズンはシャローランナーの出番が多くなるという。
暑く永い夏を終えてようやくシーバスシーズン本番の秋、これからが楽しい日々の始まりといえる。眠れない夜を存分に楽しみたいものである。
いかにも利根川らしいキャットフィッシュもヒットした
使用したロッドはエクスセンスインフィニティS96ML。リールはエクスセンス3000MHG となる。PEラインはハードブル8+ 0.8 号。リーダーはエクスセンスリーダーEX 16 ポンド(すべてシマノ)
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。