日本記録級の大型ヒラマサをねらえる魅力的なフィールドである千葉県の外房・南房エリア。年間をとおして夢のビッグワンを追い続ける清宮康介さんに勘所を聞いた
千葉県の房総半島で日本記録級のヒラマサをねらえる
写真と文◎清宮 康介
外房、南房のポイントの特徴と適切な装備について教えてください
外房エリアは平磯が多く、南房エリアはやや高い磯が多いです。いずれもウエットスーツスタイルがオススメです
今回メインで解説するのは千葉県の外房・南房エリア。二つのエリアの大きな違いは磯の形状です。外房は平磯といって全体的に磯の海抜が低いのが特徴。大潮や中潮の満潮時は磯場そのものが海中に沈んでしまう場合も多いです。潮位やポイントにもよりますが腰より上まで水に浸かりながら磯に渡ることも多いため、年間をとおしてウエットスーツスタイルをオススメします。スーツの種類は季節によって変えており、冬の外気も水温も低い時期は体が濡れにくいセミドライスーツを着用し、外気も水温も高い時期はジャージ素材を使用したスーツを着用しています。
南房は外房に比べ足場が高いポイントが多く、基本的にどの潮位でも磯に立って釣りをすることができます。また、比較的根の荒いポイントが少ないうえに外房に比べヒラマサのサイズも小さいのも特徴です。磯の先端に行くときに跨いで渡れないスリットが多いため、外房と同様にウエットスーツやアユタイツなどの濡れてもよいスタイルで釣りをするのがオススメです。ウエーダーなどでの釣りは外房、南房では非常に危険です。よく誤解されがちなのですが、ウエットスーツは泳ぐためではなく安全のために着用しています。
既製品のウエットスーツはサーフィンなどで使用することを前提に設計されている。腕周りや肩周りなどを体型に合わせてセミオーダーするとキャスト時のストレスが少ない
装備の一覧。スネ当てやニーパッドがあると思わぬケガを防げる
ウエーダーでの釣りは落水時に非常に危険。ウエットスーツは泳ぐためではなく安全のために着用している。また、ヘルメットやグローブも用意するとより安心
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タックルとルアー選びについて教えてください
時期やポイントに合わせてタックルを変えます。ルアーはトップウォータープラグがよいでしょう
まずはポイントの特徴や時期に応じたロッド、リール、ラインの選び方について。
外房で比較的シモリ(沈み瀬)などが多いポイントや春、秋で比較的大型が出やすい時期、ベイトもダツなどの大型ベイトを捕食してるタイミングではPE ライン5 〜6 号を扱えるタックルが好適です。ロッドはアピア「グランデージアトラスブルーランナー100HH」もしくは「105HHH/PS」を使用しています。10000 番、14000 番のリールを組み合わせ、ラインは300 mほど巻くのが基本です。リーダーはメインラインが4 号のときは120lb、5 号のときは140lb、6 号のときは180lb を使用し、いずれも一ヒロくらいの長さをとっています。
南房で釣りをするときや夏に釣りをするときは4号タックルをメインとし、魚の大きさなどの状況に応じて3号まで落とす場合が多いです。
次はルアーについて。遠浅のポイントが多い外房ではダイビングペンシルやポッパーなどのトップウォータープラグを使用した誘い出しが効きます。南房では状況に応じてメタルジグや重めのシンキングペンシルを使用する場合もあります。年間を通して房総半島のメインベイトとなるのはカタクチイワシであるため、ルアーサイズは13 ~19gのプラグがマッチします。
飛距離やアピール力、サイズ感のバランスがよいのが16cmのダイビングペンシル。年間を通して多用している
ロッドはアピア「グランデージアトラスブルーランナー100HH」や「105HHH/PS」、リールはシマノ「ステラ」10000 番または14000 番、ラインはPE3 ~ 6 号、リーダー・ナイロン120 〜 180lbを使用
メインラインとリーダーはFGノットで結束し、ルアーとリーダーはチューブ、ダルマクリップ、スプリットリングを使って結束している
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釣行プランを立てる際の確認事項を教えてください
潮位や波の高さ、波の間隔を事前に把握しておきましょう
釣りをする前に潮見表やインターネットなどを利用して満潮の時間と潮位、ポイントとしている磯はどれくらいの潮位なら釣りができるのかなどの情報を事前に把握することが重要です。
また、外房は波が立ちやすいのも特徴。当日はもちろん前日の波の高さや風向き、風速なども把握しておくとよいでしょう。ヒラマサは少し風があり波っ気があるほうが釣れやすいですが、安全を第一に考えてください。外房、南房は基本的にほとんどの磯が南向きで、南西風が強く吹くと風波からウネリに変わります。安全に釣りができる大まかな基準は南西の風速5m以内で波高1m以内。インターネットなどで波高を確認するときは波の高さだけでなく間隔も見るようにするとよいでしょう。ウネリや波が2 mでも間隔が10 秒台であれば定期的に強い波が岸まで来るため、5秒以内での釣行が安全です。
また、もっとも釣果が出やすいのは朝マヅメです。朝の潮位が100㎝程度で下げ潮のタイミングだと基本的にどの磯でも釣りができるため、そのタイミングをねらって釣行予定を組むのがオススメです。
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ヒラマサを釣りあげるまでの手順とコツを教えてください
ベイトを探すこと、ルアーをローテーションすること、根に潜られないようにファイトすることが大切です
まずはベイトを見つける方法から。ベイトがいるポイントには房総半島に多く棲息しているミズナギドリやウミウなどの海鳥が集まってくるため、その群れを目印にして探すのが最も分かりやすいでしょう。また、房総半島には多くのダイビングショップがあるため、ブログやホームページなどで見えた魚や水の色などを確認するのも一つの手です。
つぎはルアーについて。先ほど述べたとおりメインベイトはカタクチイワシですが、トビウオ、ダツ、カマス、サヨリ、イナッコ、アジ、サバなどを捕食しているパターンもあるため、サイズの違うルアーをいくつか用意しておきましょう。トップウォータールアーを使う上で大切なのはキャストした先でいかに魚を寄せる、またはすでにいる魚をいかに反応させるかという点です。私の場合、朝マヅメの早い段階では多くて10 投基本は5 投程でルアーをローテーションします。理由は同じダイビングペンシルというルアージャンルでも種類により泳ぎや泡の噛み方などがさまざまでその日、その時にどのルアーに反応するかをいち早く見つけるためです。また、1つのルアーでもショートピッチジャークやロングジャークなどのさまざまな誘い方を毎投変えることでより効率よく魚からのコンタクトを得ることができます。
最後はファイトとランディングの方法について。ヒラマサは海のスプリンターと呼ばれるほど短距離での突っ込みが凄まじく、サイズが大きくなればなるほどトルクも増します。根に執着する性質が強いので、フッキングと同時に根に向かって行くのが特徴です。そこで重要なのは魚が根に向かう前に頭をアングラー側に向けさせ、底付近まで潜られないようにすること。言葉で表すのは少し難しいですが、とにかくロッドを煽るのではなく、ひたすら巻けるだけ巻くのがポイントです。ランディングはギャフやタモなどは使わずに波を利用して一気にズリ上げ、ハンドギャフやフィッシュグリップでキャッチするのがオススメです。
※このページは『つり人 2023年11月号』を再編集したものです。