アイデアマン・藤原真一郎さんが仕掛けるライトなアコウゲームは現在進行形で加速中だ。
アイデアマン・藤原真一郎さんが仕掛けるライトなアコウゲームは現在進行形で加速中だ。
写真と文◎編集部
アジとアコウ。何か関係が!?
ロックフィッシュゲームが定着して早10年以上が経過しただろう。数あるターゲットのなかでも特に人気が高いのがキジハタ(アコウ)ではないだろうか。この釣りの黎明期には釣る難易度の高さから幻とさえ言われていた。 そんな高嶺の花も、シーズンインしてしまえばエサ釣りなら出会うことはそれほど難しい魚ではなかった。だが、ルアーとなると一気に難しくなる。それは今も同じことではあるが、タックルやメソッドの進化、そしてもうひとつ、瀬戸内海では放流事業による成果が大きく、ルアーでの釣果が出やすくなった事実がある。
「昔はルアーで50㎝オーバーなんて釣れなかったですよね。でも、今は少し前に稚魚放流されて大きく育った個体数も増えて、釣り方やポイントも開拓されてきて、かなり釣れるようになりましたもんね」
そう話すのは藤原真一郎さん。ロックゲーム黎明期から地元・大阪湾を含め、全国各地を手探りで開拓してきたひとりで、アコウの各地の情報にも詳しい。
どんな魚でもそうでもそうだが、各エリアによるクセや傾向がある。それは、釣れるルアーのご当地カラーなども含むことだが、アコウに関してはもっと大きな傾向がある。それがデイかナイトかという違いだ。同じ魚なのに、釣れる時間帯が異なるのだ。
今でこそ認知されているデイゲームでのシーバスやエギングやアジングもそうだ。ひと昔前なら一般的には夜行性の魚で夜のほうが釣りやすい、とされてきた好例である。
ただ、アコウの場合はエリアによって釣れるのがデイかナイトかどちらか、というところが非常に興味深い。これは、長年アコウゲームをやってきたアングラーたちが口を揃えることではあるが、誰もその原因を語れる人はいない。藤原さんもまた「あくまでも個人の推測ですが」と前置きして語ってくれたのだった。
「日本海側、そして九州南部はデイやマヅメのゲームが成立しやすい。でも、壱岐(長崎県)はデイもナイトも釣れる。で、瀬戸内や大阪湾、そして、太平洋側はナイトが釣りやすい。アコウって釣り方もいろいろあるんですが、海域によって釣れる時間帯が違うっていうもの大きな特徴だと思います。理由はわからないんですが……よくよく考えてみると、アジと似ているところがある。デイにアジングが成立するところはデイでアコウが釣れる。日本海側なんかそうですよね。ナイトアジングが強いところは、アコウもナイトゲームが強い。たとえば、アジの場合、マヅメとデイが強い日本海側なんかは日没後にはアジが抜けちゃって、ピンポイントだけ(ナイトでも)釣れるケースもある。釣れる時間の偏りも(両者が捕食する共通の)ベイトっていう繋がりではないと思っているんですけど、何かが関係しているのかな……とは思っています」
確かに藤原さんが推測するように、言われてみるとアジとアコウ、デイとナイトの釣れ方による時間帯の関係性……何かありそうだ。藤原さんは、その関係性に気付いてから強く意識するようになったものの今も未解決状態。現在も調査中だ。
6月中旬に大三島に行ったときもやはり暗くなって、上浦港の外向きで40㎝オーバーのアコウが釣れた
フックはラグゼ『寧音ロックライズオフセット』の#2〜2/0をワームサイズに合わせる。ガシラねらいには#6も
シンカーはラグゼ『TGアバラシンカー』5.2〜10.5gを多用するが、場合によっては3.5gや14gも使用するためウエイトは幅広く携行している
ワームはケイテック『クレイジーフラッパー』2. 8 〜3. 6i n。同『パドリンビーバー』3.5in(どちらも藤原カラー)。そのほかゲーリーヤマモトのプロトワームも使用
ロッドはラグゼ『寧音B79MH-solid』。『寧音』は全機種トリガーレス、アンサンド、チタントルザイトリングガイドでソリッドモデルと軽量化に徹している。「ロッドが軽いと調子としてではなく操作性としてスローにできる」と藤原さん。リールはダイワ『スティーズCTSVTW700XHL』にラインはサンライン『ソルティメイトインフィニティブ×8』0.8号。FGノット。リーダーは『トルネードVハード』4号を1ヒロ
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ライトウエイトのメリット
ロック黎明期からしばらくは福井県や富山県など日本海側の磯、いわゆるハードロックスタイルでアコウをねらっていた藤原さん。アコウ=磯=丈夫なタックルという図式で釣っていた。だが、現在は手軽に大阪湾沿岸部の波止で釣れるようになり、藤原さんのスタイルも変化していった。
「当時……20年くらい前の大阪湾にはアコウはかなり少なかった。だから、アコウは遠征してねらう魚という意識でした。ロッドも大型アイナメを抜き上げるようなヘビータックルでアコウもやっていました。でも、稚魚放流や海水温の上昇とかいろんな要因で大阪湾でもアコウが釣れるようになってきた。とはいえ釣れる時間帯もそうですが、まだまだわかっていないところの多い興味深い魚ですね」
昔に比べアコウの個体数も増えゲームとして成立しやすくなった大阪湾。当然、藤原さんはポイント開拓も含め通い込む。すると、毎年のように50cmオーバーの大型を手にするようになった。まだまだわからない部分があるとは言いつつも、独自でメソッドを確立している。それが、ライトウエイトロックゲームだ。
これは小型ターゲットをねらうライトゲームとは違う。あくまでもねらう対象魚は大型のままで軽いウエイトのライトリグを使ったゲームを示す。
「その釣りを可能にするロッドがラグゼの『寧音』(ねね)です。基本的に使用ウエイトは3gから重くても14g程度まで。アコウでのメインリグはテキサスリグですが、リールもベイトフィネス寄りのモデルを合わせるんでタックルは総じてかなり軽い。軽いから集中力が途切れにくいし、取り回しがよくてやりたいことがやれる繊細さがある。それでいてロッドパワーは大型アコウに対して何ら問題ない。ライトウエイトにすることによって、この釣りがより面白くなったのは事実です」
ロック=ヘビーのイメージはもう既に過去のものという。タックルが軽ければ自ずと気分も軽くなる。アコウはより身近で釣果を出せるようになった時代。軽さはメリットしかないのは、やってみればすぐにわかるはずだ。
「軽いと言っても使うウエイトが軽いだけ。フックもワームサイズも通常のサイズです。ウエイトが軽い分、スタックしにくい。そして、ヘビーウエイトでは演出できないこともライトウエイトだとできる。それも大きなメリットですね」
軽くなればできることが増える。つまり、アプローチの幅が広がり釣果へダイレクトに繋がる。50㎝オーバーのアコウをキャッチしている。想像しただけでもエキサイトするはず。
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根掛かりリスク抑制と食わせの相乗効果
藤原さんのホームグラウンドは大阪湾ではあるが、今回訪れた瀬戸内海のしまなみ海道も足繁く通うエリアのひとつ。干満差の激しい島部は激流が走り、磯や隣接したサーフに漁港すべてからポイントの香りが漂う。このエリアも古くからアコウゲームが盛んで大型の実績エリアであるが、近年の稚魚放流により格段に身近なターゲットになったという。最初に訪れたのは愛媛県大三島の上浦港。
「瀬戸内は基本、日没後しか釣れないですね。明るいうちは難しいと思います」とゆっくり準備を始める。静かなポイントに聞こえてくるのは島の間を流れる迫力ある激流の音。藤原さんは、その脇の流れが淀んだ場所から釣りをスタート。
もちろんアコウゲームでも潮的なタイミングは確かにあるが、それよりも時間帯のほうが優先。そして、次に優先するのがブレイクやストラクチャーなどの地形だ。そのため、それほど潮に固執する必要はないようす。磯へエントリーするのもいいが、大阪湾沿岸部同様に身近な波止でも釣れるほど魚影が濃くなっていることから、足場のいい漁港などをライトにランガンしたほうがより釣れる確率は上がるはずだ。
リグはテキサスオンリーでいい。この日は3.5inのクロー系ワームにシンカーは7g。着底後、軽く持ち上げてから潮に乗せドリフトさせたり、流れがなければリフト後にフォールさせるボトムバンプを繰り返す。もしくは、大きくリフトさせてから一気にテンションを抜きフリーフォールさせるなど、基本ボトムから大きく離さないアプローチをしていく。こうした釣りをスムーズに展開していく中で藤原さんがこだわるのは根掛かり対策だ。
「ワームは2パターンの刺し方をやっているんです。ひとつは一般的なワームをまっすぐに刺すもの。これは根掛かりの少ないところならいいんですが、引っ掛かりやすいところだとリスクが高い。なので、もうひとつは根掛かり対策としてワームを少し曲がるようにフックを刺す方法。ワームのボディーが外側へ若干アールを描くようにフックを刺してやるんです。そうすることによってハリ先の出を抑える、つまり、根掛かりしにくくなる。フックイントはワームに刺し込まないし、フッキングを妨げるほどではないので問題ないです」
根掛かりリスク軽減メソッド。ワームの頭からではなく、少しボディー寄りのところからフックを差し込み通常の刺し方を行なう。フックを貫通させて完成。フックポイントは剥き出しでOK。ボディーが若干アールを描くことでフックポイントを勝手に抑えつけてくれる。バイトがあると写真のように(指でワームを押す)フックポイントが容易に現われる仕組み
ワームを若干曲げて、その弾力を生かして根掛かりを防ぐ。これによりフォールとドリフト時のスイミングバランスはイレギュラーになると考えるが、それが食いにマイナスに影響しているようすはなく逆にプラスになっていると藤原さんは感じている。
さらにもうひとつ有効なメソッドがある。
「ロッドを大きめにリフトさせてから一気にロッドを前に振り下ろしてやることで、シンカーとワームが離れるのでワームをナチュラルにスローフォールさせることができます。その後、次のアクションをさせるために巻くとワームがシンカーへくっつくでしょ。その時の巻き始めのアクションにもドンッときたりする。タックルが軽いことで、いろいろな小技が使えるのが面白いですよね」
テキサスリグがメインではあるが、藤原さんはバスでも多用されているリーダーレスダウンショットリグなど、あらゆるリグを試している。これもライトタックルだからこそ応用できるもの。つまりライトにすることで攻める幅の思考が広がるということ。実際、藤原さんはライト化することによって釣果が確実に増しているという。
今回は愛媛の大三島と広島の生口島の2島の各ポイントをランガン。潮加減、ポイントの雰囲気は抜群だったがどのポイントも共通してベイトが不在。「この前、来た時は40㎝オーバー含めて3尾釣れたんですけど、その日はベイトフィッシュがいて雰囲気がよかったんです。今日も雰囲気的には釣れそうですけどベイトフィッシュがいない……」
ベイトフィッシュの回遊はアコウの活性を高めるのは間違いないが、不在だからといって釣れないことはないと思うが、この日は反応を得ることができなかった。しかし遠征せずとも近場でも釣れるようになったアコウだけに、チャンスはまた近いうちにあるはずだ
※このページは『つり人 2024年9月号』を再編集したものです。