「スプレーは風向きを考慮した上で噴射しなければいけません。人が少しでも吸ってしまったら息ができなくなりますし、目に入ったら非常に危ない。私も試してみましたが、皮膚に付着した際に炎症を起こしてしまいました。こうしたデメリットを覚悟の上でなら持って歩くことを否定はしませんが、決して一般的ではないでしょう。また道内において、研究者ではなく一般の人がクマ避けスプレーによってヒグマを追い払ったという報告は1例もありません」
ヒグマ対策を考えよう
この記事は月刊『つり人』2021年11月号に掲載したものを再編集しています
写真と文◎浦 壮一郎
目次
熊よけスプレーはどうなのだろうか
北海道の釣り人はクマ避けスプレーを常備している人も多いが、門崎さんは「推奨しない」と言う。なぜか。「スプレーは風向きを考慮した上で噴射しなければいけません。人が少しでも吸ってしまったら息ができなくなりますし、目に入ったら非常に危ない。私も試してみましたが、皮膚に付着した際に炎症を起こしてしまいました。こうしたデメリットを覚悟の上でなら持って歩くことを否定はしませんが、決して一般的ではないでしょう。また道内において、研究者ではなく一般の人がクマ避けスプレーによってヒグマを追い払ったという報告は1例もありません」
確かに、風向きがヒグマの側から人に向かって吹いている場合、クマ避けスプレーを使用するのはリスクが高い。またスプレーを使用するような緊急時となれば、ヒグマがの『排除』『食害』『戯れ、苛立ち』などによって人に向かってきている場合だろう。そんな時に風向きを確認して……などと悠長なことをいっている余裕はない。安心感を得るために携行する程度のものと考えておくべきだろう
結局のところ
釣り人の我々はホイッスルで人がいることを知らせつつ、クマがこちらに気づく前にクマを見つけるつもりで注意を払いながら遡行するのが賢明だということである。
写真提供:門崎允昭さん
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