未知の釣り場を自分の足で少しずつ開拓していくところに渓流釣りの楽しみはある。幼いころ近所の清津川で始まったヤマメ釣りは、清津川支流や隣の中津川と行動範囲を広げ、ほどなく長野県境を流れる志久見川にも触手が伸びることになった。
断崖の狭間、約1.5km。豪雪が守るパラダイス。今年も行きたいベスト渓谷
写真と文◎高橋宗久
たかはし・むねひさ1976 年生まれ。新潟県十日町市在住。北陸や東北の渓流をメインにヤマメ、サクラマス釣りを楽しむ。未知の渓流を釣り歩くことが大好きで毎夏北海道に遠征釣行をする
この記事は『つり人』2017年3月号に掲載したものを再編集しています。
居着きもいればソ上系も
未知の釣り場を自分の足で少しずつ開拓していくところに渓流釣りの楽しみはある。幼いころ近所の清津川で始まったヤマメ釣りは、清津川支流や隣の中津川と行動範囲を広げ、ほどなく長野県境を流れる志久見川にも触手が伸びることになった。志久見川は清津川や中津川同様に信濃川の支流だが(厳密には信濃川の長野県内での呼称、千曲川の支流)、渓相の点で大きな違いがある。全流程に渡って渓谷状の地形で、両岸は50m以上の断崖だ。地形が流域集落と川を隔絶し、谷底では自然に包まれる心地よさを体感できる。その代わり下降点は少なく、降りたとしても増水時は川通しの移動さえままならない。増減水の激しい雪代期などは無理に徒渉すれば戻れなくなるリスクもある。まさに豪雪地の川であり、かつて積雪深7.85mを記録した栄村を流れる。果たして雪代の増水が落ち着き、夏の渇水期までが最盛期なのだ。
緑が日に日に濃くなるころ、志久見川では居着きの7~8寸のヤマメが活性を高め、やがて信濃川から大型のイワナ、戻りヤマメもソ上してくる。居着きのヤマメをねらうなら左岸雪坪集落にある下降点から入渓するとよい。しばらくは河川改修された荒れた渓相だが、ポツポツとヤマメが顔を出す。下降点周辺はそれなりに入渓者がいるので、拾い釣りをする感じでさっと釣り上がるとよいが、時にソ上した大型魚が掛かることもあり気が抜けない。
改修終了地点からが釣り場の核心部で、やがて左岸から岩沢川が合流し、これを越えると水質がよくなる。ここから前述の堰堤までは約1.5㎞。大場所も多く、雪坪の下降点から堰堤までは丁寧に釣ると1日かかる。帰路は堰堤から一旦右岸の加用集落に上がり、上流にある橋を渡って左岸の車道を入渓点まで下る。一時間ほどの歩きである。年やタイミングにもよるが、七寸~尺までの居着きヤマメを20尾ほどと、尺上の戻りヤマメを数尾釣った日もある。
ソ上系の魚をねらうなら下流部も見逃せない。最下流の志久見橋から入渓し、雪坪で退渓すればじっくりやって半日コース。こちらはタイミングが難しく、当たれば尺を優に超える戻りヤマメの連発もあるが、一方で何も釣れずに終わることもしばしば。増水後に一番乗りできれば有望だ。
サオは6mで充分。イトは0.4号で間に合うが、ソ上の大型ねらいなら太くしたほうがよい。動けない足場で掛かることもあるし、イワナの50㎝クラスを目撃したこともある。仕掛け全長はサオと同程度が使いやすい。エサはキヂで充分だ。
例年3月中旬に解禁を迎えるが、実際は雪代が落ち着く頃にならないと渓魚に会うことは難しい。しかし解禁から本格的な雪代の流入までの間には、通常10日間ほどのラグがある。この期間はまだ冬の渇水期にあり、ベストコンディションとはいえないまでも渓魚をねらうことが可能だ。重めのオモリに長いハリスでエサを1ヵ所に止め、じっくり漂わせるとアタリが出やすい。なお入渓にはカンジキなどの装備や、踏み抜き対策、雪崩への警戒が必要だ。
雪代が収束する少し前は、なんてことのない深瀬が有望。良型魚が育っている
両岸が断崖で隔絶された川辺は谷底で自然に包まれる心地よさを感じる
居着きの尺上を手にする私
緑が濃くなるころからが銀化ヤマメの本番
タックルデータ
サオ:渓流ザオ6m
水中イト:0.4 号5 m
オモリ:B ~4B
ハリ:ヤマメバリ4号
エサ:キヂ、川虫
サオ:渓流ザオ6m
水中イト:0.4 号5 m
オモリ:B ~4B
ハリ:ヤマメバリ4号
エサ:キヂ、川虫
●交通:関越自動車道・塩沢石打IC で降り、県道28 号を経由してR353 に入る。清津川沿いにR353 を十日町方面に進み山崎の交差点を左折。R117 を栄村方面に走って逆巻の交差点を左折すると志久見川
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2018/1/29