関東在住の釣り人が大型青物をねらうなら伊豆諸島が近くて熱い。ダイナミックな潮流がはしる雄壮な磯は、カンパチ、ヒラマサ、キハダも回遊する。中でも下田から直行便が出ている神津島は大人気の夢舞台である
関東在住の釣り人が大型青物をねらうのなら伊豆諸島が近くてアツい
レポート◎大澤大介
青物フィールドとしての伊豆諸島
相模湾から南に大小さまざまな島が連なる伊豆諸島。北は大島から利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、有人島以外にもいくつかの島が連なり、その島々ではルアーマンが憧れるターゲットが泳いでいる。中でも私が釣行を重ねるのは神津島だ。関東圏から比較的アクセスがよく堤防のライトショアジギング、そして沖磯からねらう大型青物まで多彩な魚種やサイズが釣れる。
神津島へのアクセスはいつくかの船で渡ることができる。都心は竹芝桟橋から出船する東海汽船、下田港から出船の神新汽船その他ジェットフォイル等がある(季節により航路変更有)。なかでも私がよく利用するのは、下田港から出船する渡船宿「賀寿丸」さんだ。この船は下田港から神津島の沖磯に瀬渡しをするのでフェリーを使っていくよりは、荷物の移動が少なく便利だ。神津島では本島周りと祇苗島と恩馳島に渡船してくれる。またなかなか渡礁することができない銭洲やイナンバへも渡船してくれ、歯が立たないほどの大物にもチャレンジすることができる
釣行計画の立て方
神津島は東京から170km以上も南にある島だ。低気圧が近づくと海はすぐにシケてしまい、フェリーでのアクセスは寄港場所が変わる可能性がある。また渡船を利用する人は希望の釣り座に乗れるとは限らない。船長の指示に従い安全第一で釣り座についてほしい。おおよその目安は日本列島に低気圧の等高線数がほとんどない状態の場合にしか沖磯には乗れないと考えたほうがよい。また、堤防で釣りをする場合は外洋に面した堤防なので大きな波が入る場合は釣りを断念すること。台風発生時はもちろん、冬の時期は北西風が吹き付けると概ね島にはアクセスできない。釣行時の天気予報はこまめにチェックすることだ。渡島できても波高が2m近くある場合は釣りにならないので日程を改めたほうがよい。青物の盛期は春から初冬、特にゴールデンウィーク前後から7月頃が海況も安定し、カンパチやキハダの回遊も多い。そして春秋はヒラマサが接岸しやすい。基本的に各シーズンとも朝は魚の活性が高い。このほかにも潮止まりと動き始めは、日中でも高確率でチャンスがある。潮向きにも注意したい。特に沖磯では南から入ってくる潮が磯の横を流れる時間はキハダも寄るので集中的に投げ続けること。反応が乏しくても突然ルアーにアタックしてくるので気を抜かないこと
タックルは2セットあると効果的
ヒラマサやカンパチで使うタックルは2本。プラグ用とジギング用を揃える。朝や大物の気配がある時間帯はトップウォータープラグをセットした10フィート前後のロッドにPE5号から6号に大型リール。ジグを扱うロッドも10フィート前後でPEラインは4号から5号、ジグの重さは100gから150gを使用する。
渡礁してから注目すべき要素
魚がヒットした時にどこで取り込みをするかを見る。ハエ根がないか、ある場合はどこに魚を誘導するとランディングできるのかを考える。これを怠ると魚とのファイト中に頭が回らず、根にラインが触れて切られる。魚を取り込む際にバラしてしまいがちだ。また荷物を置く位置も充分に注意すること。外洋では突然大きなウネリが来て荷物が流されやすい。絶対に濡れないと思えるくらいの高台に置くのが肝要である。
魚を探す際に注視したいのが潮目だ。鳥山は目視できる分かりやすい注目ポイントだが、鳥山はいつできるか分からない。潮目は潮の動きが変化している所。たとえば手前側は海面が鏡のようで、沖は少しザワザワして、その境目が筋になっているところが潮目である。また下から流れが沸き上がっている場所も「沸き潮」と呼ばれる注目スポット。こうした海中変化にベイトは溜まりやすい。小魚は潮目の壁に沿って泳ぎ、それを捕食にくる青物の回遊ルートにもなる
ルアーローテーション
カンパチの遭遇率は高い。根に潜るため手強い
まずはトップウォータールアーを優先して投げる。ヤル気のある大型青物の反応が出やすいルアーだからだ。具体的にはダイビングペンシルを数投してからポッパーに変更。その後はミノーの速い動きで広範囲を探り、無反応であればメタルジグを投げる。こうして海底から中層までを幅広く探ってから、再度ダイビングペンシルに戻る。こうして居着きの魚および回遊してくる青物を待つようにしている。
ヘビータックルでルアーを投げ続けるには根性と体力は不可欠だが、釣れていない時は集中力が続かない。上記のルアーローテーションで気分を変えることが投げ続ける一番の対策だ。それでも続かない人は食事をとったり携帯を見たりして15分おきくらいのペースでルアーを投げるとよい。投げ続けることで魚に出会えることもあるが、魚がスレてルアーに反応が悪くなる場合もある。適度な休憩をいれるのも一日釣りを続けるコツだ。
ファイトの注意点
メタルジグやミノーにもアタックするハマフエフキは定番ゲスト
水面に浮くトップウォータールアーには、派手に青物がアタックしてくる。水面が炸裂した途端にアワセを入れる人もいるがこれはNG。ルアーを魚が咥えて反転し、ロッドに魚の重さを感じてから合わせる。びっくりアワセは青物がハリにしっかり乗っていない状態なので合わせてもルアーが海面を転がってしまう。そうするとせっかく追ってきた青物も追尾を止め、海中に沈んでしまう。グッとこらえてゆっくり合わせることだ。さて、ファイトだがアワセが決まったらロッドを大きく煽り、海中に逃げる青物を海面に素早く寄せる。モタモタしていると足もとや沖の沈み根にイトが巻かれる。ヒラマサやカンパチは根に執着する。行ってほしくない方向に泳ぐ。リールが巻ける時はできるだけ巻き取り距離を詰めておく。キハダやシイラは根に向かって走ることはそうはない。比較的ゆっくりファイトができる。ただし、サイズが小さいと案外すんなりと寄ってきて足もとで大暴れをする。これがバラシの原因になるため、ファイトを充分楽しんだあとでランディングすることをおすすめしたい。なお魚が5kg以上になるとロッドで抜き上げるのは破損につながる。充分に弱らせてから、リーダーを掴んでずり上げるかギャフを使用してほしい。10 kgを超えるサイズは単独ではランディングが難しい。同行者や友人に手伝ってもらうとよい。超大型を掛けた時はネットではなくギャフが安心。ランディング時が最も事故が発生しやすい。魚とのファイトに集中していると高波にさらわれたり落水の確率も高まる。
2023年、春の神津島
今年の神津島は冬の終わりごろから大型キハダが釣れていた。最初にあったのは50kgオーバー。このサイズが釣れたという情報は過去にはなかった。行けば誰でも釣れる状況ではないがヒットは頻繁にあったそうである。海況をチェックしながらタイミングがあれば乗礁したいと考え、3月の1週目に釣行した。釣友に8時ころヒットしたがフックオフ、私には一度も反応はなかった。翌週に2度目の釣行をすると誰も反応がない。今回も諦めていたところ渡船回収の30分前に足もとでキハダが飛び出した。大型らしいヒレの長い魚体に感動し、無我夢中でロッドを煽った。同行者いわくファイトに15分は経っていたそうだが、思い返せばルアーを襲った魚は一直線に70mほど走り、リールを巻いてはまた走りを繰り返し手前に寄せたときにはもうかなり弱った状態だった。同磯になった方にも手伝ってもらいギャフを2本掛けて3人がかりで磯に乗せた。
この時はタックルもかなり強めのものを選んで挑んだ。春先にヒットが頻繁にあったと書いたが、ラインが切られたり磯に巻かれたりとタックルがライトすぎて太刀打ちできないという人が多かった。もう少し強めのタックルであれば釣果が増えていたと思う。それくらい今年の神津島は普段では考えられない数のキハダが入っていた。伊豆諸島は釣れない時も多いが、とんでもない大物がヒットする夢舞台。タックルは強いものとライトなものと複数持ち込むと対処がしやすい。当日の使用タックルを記載するので、皆さんによい釣果が出ることをお祈りいたします。
使用タックル
【ロッド】
・プラグ用 パワーマスター1002S-HP 天龍
・ジグ用 パワーマスター1002S-HH 天龍
【リール】
・プラグ用 ステラSW14000XG シマノ
・ジグ用 ステラSW10000HG シマノ
【ライン】
・プラグ用 PE ジギング8 5 号 ファメル
・ジグ用 PE ジギング8 4 号 ファメル
【リーダー】
・プラグ用 耐摩耗ショックリーダー130lb ファメル
・ジグ用 スーパーショックリーダー100lb ファメル
青物のキャスティングが流行し、ロッド1本で挑む方が多いなか、ジグでしか反応がない場面で瞬時にジグを付け替えるのは難しい。チャンスを逃さないためにもタックルは2本用意することをおすすめしたい。
ルアー選びと操作法
プラグは18cm 前後のダイビングペンシル、ポッパー、ミノー。メタルジグは100 ~ 150 gを用意する。ダイビングペンシルやポッパーに釣れてくる魚は比較的大型が多く、視覚的にも楽しみやすい。カンパチやキハダにはアピール力の高いポッパーが魚を引き付けやすく、ダイビングペンシルは左右にボディを動かしヒラマサの捕食スイッチを入れやすい。ただし海面が少し荒れ気味な状況下では浮力のあるダイビングペンシルは操作が難しくなる。浮力の弱いルアーにするか、ポッパーを使用すると水面を滑るミスダイブを防ぐことができバイトにもつながる。ジグは表層に魚の反応がなくボトム付近を泳いでいる魚をねらうのに重宝する。ジグは一度海底まで沈め、ラインスラックを取り、ロッドを動かす。ジグのシャクリ方はロッドを1シャクリにハンドル1回転のワンピッチジャークやシャクリながらリールを巻き続けるジャカジャカ巻きなどその時々で使い分ける。最後にミノーだが朝一の時合や波が高くトップが使いづらい場合に役立つ。投げてただ巻くだけで簡単にヒットする時もあるので必ずルアーケースには入れておきたいアイテムだ。
大型のカマスサワラ(沖ザワラ)も回遊してくる。全長2m にもなるスピードファイターだ
ミノーで手にした良型のヒレナガカンパチ
祇苗島は水深が足もとから50 m近くある
紺碧の海は潮通しも素晴らしい。潮流変化を観察することが釣果に結びつく
限られた条件で渡礁できる銭州の大ダルマ。青物の宝島だ
※このページは『つり人 2023年11月号』を再編集したものです。