チニングの中でも人気なのがフリーリグを使ったボトムの釣り。見えない水底をイメージするためにはロッドの助けが必要だ。チューブラーティップがその手助けをしてくれる
チニングの中でも人気なのがフリーリグを使ったボトムの釣り。見えない水底をイメージするためにはロッドの助けが必要だ。チューブラーティップがその手助けをしてくれる
写真と文◎編集部
熊本でもチニングが定着
都市河川ではシーバスと肩を並べるほどルアーフィッシングの人気ターゲットになっているクロダイ。年々新しいテクニックやアイテムが生まれ、日進月歩で進化し続けている。その火付け役であり、一番手軽にチニングを楽しめるのはフリーリグを使ったボトムの釣りだろう。
そんなフリーリグでチニングを熊本で楽しんでいるのが山本釣り具センター宇土店のスタッフ、山田秀樹さん。もともとハードなシーバス釣りが好きで、ウエーディングスポットやヒラスズキのポイントに足繁く通ってきた。今までシーバスのポイントまで歩く道中がチニングの好ポイントになることが判明すると、チニングが自身の釣りスケジュールに組み込まれたという。
5月中旬、山田さんが足を運んだのは天草エリアの入り口に位置する戸馳島。温暖な気候を利用した花かき 卉栽培が盛んで、近年はクルマエビの養殖でも注目されている。島ではあるものの、三角半島から橋が架かっており車でアクセスできる
戸馳島は天草の入り口である三角半島近くにある島。快晴の中、ワンタックル片手にニーブーツで手軽に釣り歩く
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チューブラーでこそ鮮明になる底質やアタリ
小さな砂浜に到着し、タックルを準備していく。底を取る釣りは感度がいいベイトタックルがおすすめと話す山田さん。この日使っていたロッドはボトム攻略を想定して作られたブルーカレントⅢ78B(ヤマガブランクス)。ボトムを探る釣りに特化したロッドは全体的に硬く、ティップをソリッドにすることでバイトを弾かない柔軟性を持たせているものが多い。しかし、このロッドはリグを操作するために必要なだけの張りはあるものの、全体的にしなやかでティップもチューブラーだ。
「感度という点ではチューブラーのほうがよく伝わるように感じます。ソリッドティップはちょっとわかりにくい時がありますね。ボトムを探る釣りはアタリ以外にも底質など得られる情報が多いほど釣りが楽しくなります」
硬い=高感度というのはよくある間違いだと山田さんは言う。ブルーカレントⅢ78Bはまさにそれを体感できるロッドで、しなやかなのにボトムの感触が手もとまでよく伝わってくる。また、適度な張りと8フィートを切る長さはリグの操作に限らずトップウォータープラグの操作も軽快で、小さくドッグウォークさせるなど細かいアクションも入力しやすい。もちろんブルーカレントの系譜ならではのバットパワーも備えているので、想定外の大物が掛かっても安心して引きを受け止められる。
この日のセッティングは、リールがタトゥーラTW80XHでラインはPE0.8号。リーダーはフロロカーボンの10ポンドを半ヒロほどにしていた。
ブルーカレントⅢ78Bはボトムを探る釣りを意識したロッドでフリーリグによるチニングも得意
トップの釣りなどプラグを多用するなら同じレングスでスピニングモデルのブルーカレントⅢ78がおすすめ
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触覚フックで根掛かり激減
リグはチニングでは一般的なペグを使って遊動幅をほぼゼロにしたフリーリグだ。山田さんがよく行くポイントでは7gのシンカーが主体になるという。初場所でシンカーを頻繁に交換する場合はエイトスナップにリーダーを通してシンカーを取り付けると毎度結び替えなくて済む。
「フリーリグは根掛かりしにくいバイブレーションだと思っています。同じ重さのシンカーを使ったとしてもテキサスリグより根掛かりしにくいですね」
フリーリグのシンカーには同じ重量でもシルエットを小さくできるタングステン製を愛用する人が多いが、山田さんはこれでも充分釣れるから、とスリム形状の鉛製シンカーを使っている。
シンカーは7g前後を使うことが多く、鉛製のスリムタイプを愛用。もちろんタングステンでもよい
ワームはチニングで定番のクレイジーフラッパーを愛用。カラーはグリパンチャートからスタートした。
使用するフックはオフセットフックではなくストレートフックだ。それもアイから2本のガードが飛び出している。
「今話題の触覚フックです。これを使うようになってから根掛かりが激減しました」
触覚フックとはフリーリグチニングの先端を走る大阪エリアを中心に話題となっているフックで、昆虫の触覚のようにワームからガードが飛び出すようすからそう呼ばれるようになった。山田さんはラバージグなどに使われるブラシガードとタチウオのエサ釣り用のハリを使って自作している。リトリーブ中はハリ先が上を向くと思いがちだが、実際は下を向いているという。2本の触角が障害物は弾くように回避しつつ、掛かりやすいストレートフックによってバイトを拾っていくのだ。
触覚フックはハリ先が下になる。触覚が障害物を弾いて根掛かりを回避してくれる。シンカーが触覚の間に来るのが正しい状態なのでズレていないか毎投チェックするのが大事だそう
山田さんはブラシガードとタチウオ用のハリを使って自作しているが、近々がまかつからリリースされる予定
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熊本のチヌは緩い流れを好む
釣り方はシンプルで着底したらズルズルとリトリーブするだけ。山田さんの感覚ではチヌは潮が走る場所よりも流れの緩い場所のほうが反応はいいそうだ。底質も岩盤では釣れず、石が大きすぎると根掛かりが増えてしまうため、小砂利や砂のほうが期待値は高いとのこと。ボトムの感触は常に意識して変化に気付けるようにしたいところだ。
この日のパターンを探るためにワンドを中心にいろいろな場所へキャストしていくものの反応がない。ワームカラーを大粒のラメ入りに変更するとすぐにアタリがあったが回収するとワームが千切られている
「フグの嚙み切るアタリはなかなか気付けないものなんですが、このロッドはアタリとして手もとに伝わってくるんです。今のアタリもしっかり分かりましたよ、フグですが。ラメは集魚効果大なんですが、フグも飛んで来ます。熊本チニングの敵はフグです」
と笑い、ラメが小さいカラーにチェンジした。
ラメは集魚効果大。ただしフグも呼ぶので用量用法は見極めが大切
フグの猛攻に合うとワンキャストでこうなる。一方でクロダイの活性が高いと最初の着底までのフォールでヒットすることもあるとか
フグから逃げるようにテンポよくランガンしていくと小砂利のワンドで何度か疑わしいアタリがあった。アタリがあるのに掛からない場合はリトリーブスピード、カラー、タイミングなど何かしらの要素がズレていて魚が気に食わない状態なのだそうだ。リトリーブスピードをややスローに落として探りなおすとティップが引き込まれる大きいアタリが出た。山田さんがすかさずアワセを入れるとクロダイ特有の力強い首振りやダッシュで暴れる。それでもブルーカレントⅢをしっかり曲げ込むことでさほどドラグを出すこともなく寄せてきた。砂浜にずり上げてランディングしたのは40㎝ほどのいぶし銀。
控えめのラメがはいったワームとややスローなリトリーブで待望のヒット
「チヌの群れは大きく移動しないので周辺を丁寧に探って連発をねらいましょう」
優しくリリースしてからヒットしたワンドを同じリトリーブ速度で細かく探っていく。すると宣言通りに3尾を立て続けにキャッチ成功。山田さんも満足気だ。その後は潮止まりということもあってかフグの猛攻が続いたため、納竿となった。
フリーリグでのチニングはアタリや底のようすを感じ取ったり、掛からないアタリに一喜一憂するのが面白いところで、何より手軽にできるのがいいと山田さん。小紙発売の頃には水温も高くなりクロダイはルアーをますます追うようになる。熊本ではトップウォーターにもよく反応してくるようになり、一層チニングが楽しくなる季節だそうだ。フリーリグにもトップウォーターにも対応できるワンタックルを用意して最寄りのフィールドへ足を運んでみてはいかがだろうか。
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。