根掛かりが避けられない釣りではない。根掛かりを避けてはいけない釣りだ。シンカーを通じて、ラインを通じて、ティップを通じて伝わる地形の情報。そんなボトムとの対話をじっくり楽しむのがマダコ釣りであり、その醍醐味を味わえるのが冬の横浜沖堤だ。
今こそオカッパリマダコ!静けさの中で楽しむボトムとの対話
写真と文◎編集部
この記事は月刊つり人2021年2月号の記事を再編集しています
根掛かりが避けられない釣りではない。根掛かりを避けてはいけない釣りだ。シンカーを通じて、ラインを通じて、ティップを通じて伝わる地形の情報。そんなボトムとの対話をじっくり楽しむのがマダコ釣りであり、その醍醐味を味わえるのが冬の横浜沖堤だ。
釣り方解説!~すべては根掛かりから始まる~
遠藤さんのリグは、タコ用の餌木がふたつ、イカ釣り用の4号の浮きスッテがひとつ、20号のオモリをセットした、かなりド派手で、そしてタコが触れればフッキングしそうなものの海底のあらゆるものに根掛かりしそうなものだった。
遠藤さんが多用するリグ。タコーレシェイク90 を2個付けして、その間に4号の浮きスッテをセット。シンカーは20 号。根掛かりでラインブレイクしてしまえば一気にこれらを失うのでショックも出費も環境へのインパクトも大きい。しかし、根掛かりロストはほぼゼロだった。ちなみに60 ポンドのリーダーはナイロン。フロロカーボンよりも根ズレに強いという
根掛かりさせたルアーを強引に回収し続ける釣りともいえるのでPE ラインは5 号と太い。リーダーとの接続はMID ノット(改)。ここのノットを強く、小さく締めることでキャスティング時のガイドの抜けがよくなり、ラインブレイク時もリーダーの先端から切れるようになる
「餌木をひとつにしてオモリも軽くすれば根掛かりは減りますが、アピール力が弱まり手返しも遅くなるので結果的に釣果はダウンすると思います」
目と耳のいいタコには視覚と聴覚に訴えるこのリグが効くという。真ん中にセットした浮きスッテはほぼ垂直立ちすることで、ふたつの餌木を若干上に引っ張るのか、根掛かりが重症化してしまう率が大きく低下するという。
この釣りは根掛かりが避けられない。というか、まず根掛かりさせることから始まる釣りだと覚えておきたい。
ボトムをズルズル、あるいはリフト&フォールで探りながら、軽くリグをスタックさせる、つまり立ち往生させる釣りだ。
スタックさせたら、「これは根掛かりか、タコか」と想像しながら、それまでのような大胆なズル引きから小刻みなシェイクに変えて様子見する。こうすることで岩などに挟まったりフックが刺さった状態であればスタックが解消されて無事にルアーは窮地を脱出、つまり軽くなる。もしもタコであれば、餌木が動くことで逃がすまいとより強く抱き着く。
スタックしたら誘い続けながらロッドを立てていく。重みが抜けるか、乗るか、それともガッチリと止まってしまうか。ここがこの釣りで一番ドキドキするタイミングだ
重みが抜けず、いよいよこれはタコだと思ったらティップを大きく曲げてみる。この状態で重みがついてくればタコだと確信して、スラックを巻いて本アワセを入れる。
乗った! しつこいようだが、引きらしい引きはなく、ただ重いだけだ。だがその重さがこの上なく心地いい
重いけれど浮いてこない場合は根掛かりだ。スタックからの脱出法は大きく2種類ある。左手でグリップエンドをつかんで右手はリールをパーミングしたままロッドを頭上に掲げ、ティップを前に倒してスラックを作ってからグリップエンドを引いてパンっと外す方法。ラインを張った状態でゆっくりロッドを曲げると根掛かりが重症化するので勢いで重症化する前に外すイメージだ。
もうひとつは、ロッドを高く掲げながら左手でラインを摘まんでピンと張った状態からパッと緩めてみる。張りつめたラインが一気に緩むと、その衝撃でルアーが反対側に動いて根から外れることが多い。
いずれにしても、操作していたルアーが動かなくなる状態を作ることからこの釣りは始まるので、根掛かりはむしろウエルカム。もちろん根掛かりの十中八九はタコではなく本当に根である。それにしても、大きなハリが付いた餌木が3つも付いているリグでひたすらスタックするように操作する釣りなのに根掛かりロストがほとんどない。
その理由はまず柔軟に曲がるティップを持つロッドを使うことにある。いきなり根にフッキングさせず、軽く刺さってもほぐすような操作で解消させられるため。
遠藤さんは「僕自身、この釣りを始めた頃は、とにかくボトムに張り付いた大型のタコを引きはがすパワーが必要だと思ってライギョロッドやジギングロッドを使っていましたが、今では快適さが違います」と柔軟なマダコ専用ザオの調子にぞっこんのようす。
そして根掛かりロストが少ないもうひとつの理由は、マダコ専用餌木のフックが非常に強いためだ。
「根掛かりを外す際はロッド操作に勢いも必要。となるとフックが頑丈じゃないと、折れたり、カンナが丸ごと抜け落ちます。その点、愛用しているタコーレシリーズはハリだけじゃなくチモト部分も非常に強いので補強せずともガンガンとタフに使えます」
タコーレシリーズのフックはフッキング率が高く、バラしにくく、折れにくく、根元から抜けにくい。これは非常に大切な要素である
ボトムとの対話を楽しむなら今
「堤防と並行して潮がよく流れているときは、こうして潮上にキャストしてラインを出してフリーフォールさせます……ほら乗った!」
潮の抵抗を受けてドリフトさせやすいタコーレにヒットした当日の最大。目測800g
遠藤さんいわく、目のいいタコは上から落ちてくる獲物を見ている。そして潮で流れ着く先で待ち構えていて、着底と同時に覆いかぶさることが多いという。
こうして3バイ目をキャッチしたところで、ふ頭から第一新堤に向かって伸びるD堤防を探る。最も時間をかけて探ったのは堤防付け根の角。
「堤防の角はいずれも好ポイントですが、マダコの場合は沖側よりも内側の角、それも陸地とつながっている角は絶好です。さらにスロープや階段周りなど変化のあるところも見逃せません。ちなみに水深1mもないような浅場でもよく釣れますし、夏に釣れた浅場は水温が下がってもよく釣れます」
「堤防付け根の角はいると思って探るべき激アツポイントです」と遠藤さん
角では乗らなかったが、沖に投げて潮に乗せてドリフトさせると着底と同時に抱いた
最後に横浜沖堤の感想を聞いた。
「初めての釣り場なので予想はできませんが、思ったよりも根掛かりが少ないのでやりにくさはありませんでした。ただ、潮位が高い時間帯はバタバタと乗ったけど潮位が低くなってからアタリが止まったので時合ははっきり決まっているのかもしれません。年末年始に釣れるか釣れないかはエサ次第だと思います。タコは本当に大食漢なので、木更津でもガザミやイシガニなどのワタリガニがたくさん接岸するとマダコもよく釣れます。カニ以外にも内房ではホンビノスガイもよく食べています。こうしたエサが多いところはタコも多い。釣れたタコが貝やカニなどをたくさん吸盤に付けて上がってくるような状況はチャンスです」
カニや貝が多いとよく釣れる傾向にあるのもクロダイ釣りと似たところだ。
マダコはほぼ周年ねらえるが、水温は高いほうが活性も高い傾向にある。冬場のマダコ釣りは夏のような大釣りは少ないが、それでも思った以上にコンスタントに釣れる。もちろん年末年始はオフシーズンではない。むしろ人けの少ない堤防で気兼ねなくボトムと対話できる絶好機だ。
「粂丸」(くめまる)
神奈川県横浜市中区新山下1-4-1(☎045・622・0997)
●営業時間:渡船1便は6 時、最終迎えは16 時(4~10月は最終20 時半)
●定休日:木曜日
●渡船料金 大人3000円、18歳未満2000円(横浜沖堤は予約不要。川崎新堤は要予約。5 名から渡船)
●交通:車は首都高速・本牧ふ頭IC、新山下IC、三渓園ICからそれぞれ約5分。電車はみなとみらい線「元町・中華街駅」から徒歩5分。
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