新たなアジングの聖地となるのか。ジグヘッドのみでデカアジに挑んだ宇久島。巨アジの聖地の片鱗を見て、本気モードに突入した藤原真一郎さんは果たして
新たなアジングの聖地となるのか。ジグヘッドのみでデカアジに挑んだ宇久島。巨アジの聖地の片鱗を見て、本気モードに突入した藤原真一郎さんは果たして
写真と文◎編集部
藤原さんが秘密にしたいとっておきの島
今回、藤原真一郎さんが取材先に挙げたのは、アジングではあまり耳にしない島の名前だった。
「実は5、6年前から行くようになりまして。ショアからジグ単でデカアジがねらえる貴重な場所で、本当はまだ教えたくなかったんですけど(笑)」
その釣り場は長崎県五島列島で最も北側にある宇久島だ。壇ノ浦の戦いに敗れた平家の落人伝説が残る島で、釣りではヒラスズキやアオリイカの好釣り場としてよく知られるがアジはどうなのだろう。
あるメーカーの方からデカアジの噂を聞いて初めて行ったときは、島に着くと一からポイント探しを始め、フェリー乗り場のある広い港のあちこちに多彩なリグを通して回ったそうだ。ところがカマスは入っているが噂のデカアジが釣れる感じではない。その晩、宿泊施設のご主人から有力な情報を仕入れて別の港へ朝マヅメに行ってみたところ40㎝オーバーのアジがポンポン釣れ、すぐに宇久島に魅了されてしまったとのことだ。
佐世保港からフェリーいのりで宇久島入り
意外とアクセスしやすい宇久島
宇久島へは福岡の博多発の野母商船と長崎県佐世保発の九州商船の2種類の航路がある。今回は佐世保からフェリーを利用して13時過ぎに宇久平港に到着。まずは宿に向かい、レンタカーを借りてから目的の場所へ向かった。午後の陽の高い時間帯なのだが、藤原さんはタックルを用意しながら意外なことを言った。
「夕マヅメが本番ですが、昼間でもいいサイズのアジが釣れたりします。アジングは夜がメインと思われがちですが、ここでは朝夕のマヅメがメインであり、むしろ明るい時間に釣るといった感じです」
入った港には朝と夕のマヅメの時間帯に外海からアジの群れが入って、夜には湾内から外海に魚は抜けるというからアジの回遊魚としての性格が強く出ているようだ。
「入ってきたアジが、どんなコースを通るのか、どこで止まるのかが釣り場選びでは重要になります」
五島列島の離島ということで、ダイナミックな釣り場を想像していたが、藤原さんが選んだのは水路のような雰囲気の奥まった港内だった
今回のロッドセレクト
港の規模は中規模以上あるため遠投が必要になるのかと思っていたが、藤原さんが選んだロッドは6ft4in(193㎝)のロッドだった。
「回遊性のデカアジはカケアガリに沿って移動します。外洋でも港湾でも同様でアジ探しのポイントのひとつです。ここの場合、岸寄りにカケアガリがあるので遠投は必要ありません。それよりも操作感や感度を重視してこの長さのロッドとジグ単を選んでいます」
港の入り口にあたる場所から港の奥へと探っていく。少々風が強く、ティップが風でブレるのを抑えるためロッドパワーはLを選択。
最終的に使用したロッドは接近戦ライトリグのバーサタイルモデルであるラグゼ宵姫華弐S64L-solid。
●ロッド:宵姫華弐 S64L-solid(ラグゼ)
●リール:エアリティST SF2000SS-H(ダイワ)
●ライン:ソルティメイト鯵の糸エステルワンモア0.5 号(サンライン)
●リーダー:トルネードV ハード1.5 号(サンライン)
ジグヘッドへのこだわり
この日は風が強く、バーサタイルモデルであればスプリットやキャロライナといったリグを使ったほうが釣りやすいと思える状況だったが、藤原さんは終始ジグ単で釣りをしていた。
「タングステンの3gを使っていますが、シルエットも小さくて強風でもリグを沈ませやすい。エステルラインと組み合わせれば風の影響も受けにくく、目的のレンジにしっかり入っているので問題ありません」
藤原さんは時折、急にリールのハンドルを速く巻き上げていたが、それはレンジの確認作業だった。斜めに巻き上げていくことでハンドルの回転数によりレンジを確認していたのだ。
鉛のジグヘッドからタングステンのジグヘッドを使うことによって同じグラム数であれば体積的に小さくなるので沈みやすい。そこにPEラインよりも沈みがよいエステルラインを使うことで、強風時でも望むレンジにしっかりとリグを送り込めるようになり、フロロカーボンよりも伸び率が低いことで小さなアタリも取れるようになったということらしい。
宵姫AJ カスタムTG ラウンドタイプ。タングステンのシンカーは比重が大きく体積が小さいため沈みが速い。鉛の上位互換と考えればいい
ジグヘッドにノレソレ1.8in をセットしたところ。まずワームの頭部分を貫通させてボディー下部に抜いて再度ボディー上へ貫通させている
「タングステンは鉛の上位互換だと思います。1g以下であればそこまで差は出ないでしょうが、2gや3gとなるとその差はとても大きくなります」
AJカスタムTGシリーズはフックにもこだわりがある。グラム数に関係なく同一のサイズの少し硬めのフックを採用し、ナノアルファコーティングが施されている。このコーティングのすごいところは数を釣ってもハリ先が鈍らないところだ。実際に藤原さんは十数尾のアジを同一ジグヘッドで釣りあげていた。不意の大物に伸ばされることもなく、この日も若魚とはいえクエを掛けても余裕で抜き上げた。さらにマイクロバーブのため必要以上に魚を傷つけず、そしてバレにくい。
港内を探っているとヒットしたのはクエの若魚
「ジグ単の釣りで意外と見逃されているのが最初のフォールです。フリーフォールさせるとスパイラルにフォールするものがあります。それが集魚効果を出す場合もありますが、実は群れを散らすケースが多いです。そのため、最初のフォールは一旦ラインを張りシンカー部分をこちらに向けてからテンションを軽くかけながら丁寧に落としてあげると魚に警戒されず目的のレンジに入れることができます」
この効果はてきめんで、同じ時間帯にフリーフォールさせたときとテンションフォールさせたときの結果は1尾対7尾という大差だった。もちろん、いつもそうとは限らないが、こんなところで釣果に差が出るとは目からウロコであった。
ちなみに今回は期待の夕マヅメは顕著な回遊が見られなかったものの、翌朝マヅメに25㎝以上の群れが港内に入り、最大は朝マヅメに釣れた32㎝。
「今回は満足いくサイズは出ませんでしたが、それでもエサ釣りで40㎝どころか50㎝オーバーが釣れていて、闘志をまた掻き立てられました」
藤原さんの宇久島詣ではまだ続きそうだ
●交通:長崎県佐世保港から九州商船のフェリーまたは高速船を利用して宇久平港へ。福岡県博多港から野母商船のフェリーも運航している。(※2024年11月上旬のデータです)
※このページは『つり人 2024年1月号』を再編集したものです。