関東エリアの渓流ルアーアングラーにとってメジャー中のメジャーフィールドである桂川。古くからこの川に通うあっちゃんこと中村篤人さんと、地元エキスパートのふもん寺さんこと山崎孝雄さんに、ワンモアフィッシュにつながるアドバイスをうかがった。
関東エリアの渓流ルアーアングラーにとってメジャー中のメジャーフィールドである桂川。古くからこの川に通うあっちゃんこと中村篤人さんと、地元エキスパートのふもん寺さんこと山崎孝雄さんに、ワンモアフィッシュにつながるアドバイスをうかがった。
だから桂川が好き!
「今からちょうど10年前にさがみ縦貫道路、いわゆる圏央道が開通しまして桂川がぐっと身近になりました」
そう語るのは神奈川県大和市在住で都内のサンスイ渋谷店に勤務する中村篤人さんだ。お客さんからは親しみを込めて「あっちゃん」と呼ばれている。若いときから「釣り」と名が付くものはひととおりやり、中でも大好きなのがトラウトとバス釣りという根っからのルアーマンだ。
「うちも含む、いわゆる町田・横浜周辺は東名高速には近いんだけど中央道に出るにはやや不便でした。ところが今や都留市内まで1時間ちょっと。大月市内なら早朝だと1時間かかりません。これがトラウトファンにとってかなりの追い風になりました」
毎年、店のお客さんたちと北海道へイトウやネイティブレインボーを釣りに遠征し、アラスカやロシアなど海外釣行の経験も豊富ながら、そうした釣りと同じくらい好きなのが桂川のトラウト釣りだという。
「都心から近いので大自然という景観ではないけれど、水がめちゃくちゃきれい。基本的に富士の湧水ですから水温も安定していて夏でも涼しい。それになんといっても放流量が多い。北海道民もびっくりのスーパーレインボーもいればスーパーヤマメもいる。イワナだってニッコウ系もいればアメマス系やオショロコマ系もいる。発眼卵や稚魚放流から大きくなった超賢い準天然魚もいれば、漁協が放流していない天然のアマゴもいる。定期放流、臨時放流で魚が追加されるからルアー、フライ、テンカラ、エサとあらゆるジャンルの釣り人を楽しませてくれる。だからワタシはお店でお客さんに、『あっちゃん、どっかいい川ない?』と聞かれたら『桂川』と即答します」
その言葉を聞いて「いやあ、そう言っていただけるとありがたやですよ」と両手を合わせるのは、都留漁協管轄で最大の駐車スペースを釣り人に開放している普門寺(朝にひと声掛けて許可を取れば)の副住職であり、都留漁協の監視員で広報担当でもある山崎孝雄さんだ。もともとサンスイ主催の渓流ルアー釣りのイベントにお手伝いで参加したのを機に、あっちゃんと意気投合したという。
「僕の結婚式の二次会の司会をあっちゃんにやってもらったんです」
「やりました。ビンゴ大会で大盛り上がりしてね。そしたら参列者のひとりから、『来月僕も結婚するんで司会をお願いできませんか?』って(笑)」
「あまりの名司会ぶりにプロのMCだと勘違いされてね。あの人、馴染みの釣具屋の店員さんだよって言ったら『え~!?』って」
思い出話に花が咲きまくりだが、ここからは、あっちゃん+ふもん寺たかおさん(山崎さんのネット上のハンドルネーム)による初夏の桂川ルアー釣り誌上レッスンをお届けしよう。
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着水からの立ち上がりに着目
ふたりが最初に入ったのは普門寺裏と呼ばれる管轄では下流の釣り場。
あ「ここは人工物も少なくて渓相がいいし、駐車スペースも収容人数も多くておすすめです。1~2時間を目安に、半日で2~3ヵ所回るのがおすすめですね。夏場に早朝から日没まで目一杯やるのは体力的にきついですよ」
ふ「ホントにそう。できれば日券ではなく年券を購入して、いつでも来れるという心の余裕をもって、朝夕マヅメなどに集中してねらうといいですよ」
タックルは、大型魚をねらって大きめのルアーを投げるなら6~7ftのロングロッドも選択肢に入るが、小型ミノーを中心に使うなら5ft台半ばのトラウトロッドに、2000番クラスの軽量スピニングロッドが合うという。
ラインは少し悩ましい。先ほども書いたように大小さまざまな魚が混在する川だからだ
あ「ボクはナイロン4ポンドをおすすめします」
ふ「ボクも断然ナイロン派です」
あ「やっぱりトラブルが少ないし水なじみもいいしね」
ふたりで異なる点はラインの色だ。あっちゃんがナチュラルの透明に対して、ふもん寺さんはサイト専用のライムグリーンの直結。魚の大きさを考慮して5ポンドを巻いている。
あ「なるほど直結ね。これならルアーの位置を見失わないし、流れの中できっちり管理できるもんね。でも、食いに影響ない?」
ふ「そんなにないです。桂川に限らずどこの川でもこのラインです」
あ「逆に、管理釣り場では?」
ふ「あ、それは透明にします。だって魚が見ているルアーの数が桁違いに多いから。こんなド派手な色のラインを直結にしたらまず食わないです」
あ「だよね。色付きの先に透明リーダーを結ぶのはありだね」
ふ「はい。ただし、魚から見える見えないも問題ですが、実は人間から見えるか見えないかもとても重要です」
イトが見えると何が違うのか。それは着水からのルアーの立ち上がりの早さが違うという。対岸の岩影や覆いかぶさった木の下の隙間にルアーを送り込んだとして、ラインがよく見えていないとルアーの位置は「あのあたり」になり、ラインがよく見えていれば「接水点の30~50cm後ろ」と明確になるため、巻き始めからルアーの位置と姿勢をしっかり管理下に置ける。
理想はライナーでキャストして、ラインスラックをほとんど出さずにリトリーブすること。ミスキャストした際は山なり軌道のほうがブッシュに突っ込んだり岩に当たって破損するトラブルは起きにくいものの、スラックの回収に時間がかかるためルアーが釣れる姿勢になったときにはポイントを通過してしまうことも多い
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ヘビーすぎないシンキングが◎
1時間半ほどで、普門寺前の流れから数尾のニジマスと数尾のイワナをキャッチしたふたり。
ふ「今日は月曜なんで、ちょっと魚がスレ気味ですね~。土日に釣り人が入れ替わり立ち代わり入りましたから」
あ「それだけのプレッシャーがあっても釣れているのは、木化け石化けという渓流釣りの基本を疎かにしていないからだよね。やっぱり魚に気配を悟られてしまうとルアーを追う距離が短くなるし、最終的には追わなくなるから」
また、立ち位置に気を遣うのはもちろんのこと、根掛かりしたルアーを回収に行く回数を極力減らすことも非常に重要だとふたりは口を揃える。
ふ「その意味でヘビーシンキングミノーの一辺倒というのはおすすめしません」
あ「特に桂川は川底が溶岩の一枚岩という場所が多く、一見すると凹凸がなく掛かりにくく見えるけど、実際は細かな穴だらけで根掛かりしやすい」
ふ「そうすると川の真ん中までバシャバシャ立ち込んでしまうから余計に釣れなくなる。ボクは1cmあたり0.9gまでのミノーを目安にしています」
あ「最近のヘビーシンキングミノーだと5cmで5~6gあるから、5cmで5gを切るシンキングミノーも多用すべきだということだね。浅い一枚岩の釣り場ではちょっとした窪みや穴がねらいめなんで、ヘビーすぎないルアーでスラックを出さずにすぐ釣れる姿勢にして操作することが重要だと」
ふ「まさにそのとおりです! あ、これデカい!」
あ「こっちもヒット!」
溶岩の一枚岩のポケットから飛び出した45cmのキロマス。まだまだデカいニジマスもいる楽しい釣り場だ
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エリアトラウトで手ぶらキャンプのススメ!
足早に3ヵ所の釣り場を探って満足のいく釣果を得たふたりは川から上がり、ふもん寺さんは朝のお勤めに。あっちゃんも余裕で午前中に帰宅……と思いきや。
「今月号は川釣りキャンプの特集なんでしょ? キャンプもいっときます?」
へ? だってキャンプ道具なんて積んでないのでは?
「そ。手ぶら。だってウエーダーやらなんやらで釣り道具だけで相当なのにテントやタープやテーブルやBBQ道具を積んだら大変でしょ」
まあ、たしかに。
「そこでワタシは考えました。奈良子釣りセンターがあるじゃないかと。都留からはちょっと走るけど方角的には帰り道だし」
いや、でも……と異論を挟もうとしたがすぐに論破された。
「そもそもね、今日の釣りだってちゃんと渓流ルアー釣りをしている人からすれば手軽ですけど、じゃあ奥さん、子どもと家族で釣りキャンに来てたらどう? 全員にタックルにウエーダーにウエーディングシューズを用意します? お子さんにもちゃんと釣らせてあげられます? それでテントも張って料理してって大変すぎません?」
たしかに……。
「子どもたちにもたくさん釣らせてあげたい。満天の星空の下で釣りたての魚やお肉を食べさせたい。寝袋に入って語り合ったりしてね。それが手ぶらで可能なのが奈良子釣りセンターのロッジです」
奈良子釣りセンターのご主人である渡辺勲さんにも念のため確認したところ、「HPにも記載していないから、ほとんど知られていませんけど、確かにロッジはあります(笑)。4~5人を目安に2人から利用できます。電源があって冷蔵庫もあってBBQもできます。ほかにも広いテントサイトもあるし貸し出し用のテントもあるんですが、ほとんどの人はこちらのロッジを利用しますね」とのこと。
「ほら、やっぱり手ぶらでキャンプって需要があるんですよ。かといってグランピングでは敷居が高い。釣りセンターでみんな仲よく楽しく釣って、お父さんだけ早起きして桂川で頑張ればいいんですよ」
たしかに!
自然渓流のほかポンドでもルアー釣りが楽しめる。この日も大型のイワナやニジマスがスプーンにコンスタントにヒットして楽しめた
※このページは『つり人 2023年9月号』を再編集したものです。