敷居が高いと思うボートの釣りも乗ってみれば発見がたくさん。スキルアップにも最適という駒崎佑典さんのボート釣行に密着
敷居が高いと思うボートの釣りも乗ってみれば発見がたくさん。スキルアップにも最適という駒崎佑典さんのボート釣行に密着
写真と文◎編集部
青潮のタフコンディション
「ボートのシーバス釣りは勉強になりますよ。技術向上の一番の近道じゃないですかね」
そう話すのは駒崎佑典さん(40)。エリアトラウトをはじめブラックバスやナマズ、アジング&メバリング、マグロもねらえばアユルアーも楽しむマルチルアーアングラーである。シーバスはオカッパリ、ウエーディング、ボートとあらゆるスタイルに精通し、お店のシーバス用品も充実している。入手困難なレアルアーの取り扱いも多い。
「ボートは船長のアドバイスを受けることができるし、さまざまなルアーで釣果も出しやすい。まずは数を釣らないとルアーの操作もローテーションも答え合わせができません」
10月1日、大潮4日目。例年なら秋の盛期に突入する潮回りである。駒崎さんは釣友の金子修さん、槇悠太郎さんと東京湾マリーナのガイドボート「With」に乗り込んだ。創業20年、シーバスねらいのガイド船としては老舗の部類に入る。百戦錬磨の優れた操船技術をもつ高見誠船長のファンは多く、駒崎さんもお店の常連さんたちを、たくさん紹介している。その高見船長が開口一番「今年は夏が長すぎです」と嘆いた。9月最終週になっても真夏日が続き台風や雨も少ない。秋らしくない釣況という。
15時に河岸払い。夕マヅメには羽田周辺のトップゲーム、夜は川に入ってストリームの釣りをする。東京湾マリーナは荒川河口の右岸埋立地にある。ボートは新砂水門をくぐり河口から羽田方面に南下。すると、いきなり鳥山に遭遇した。鳥山やナブラに向かう時、ルアーマンは格別な高揚感が湧くものだ。
「もしかすると祭りになるかもしれません(笑)」
駒崎さんはビッグベイトを装着したロッドを手にトップゲームからスタート。主力ルアーは「メガドッグ220」。全長220mm、130gのペンシルを派手な水しぶきを上げて着水させ、ドッグウォークを繰り返す。深場の魚も水面に誘い出せるアピール度満点のルアーだが、バイトは出ない。
高見船長は魚探を見ながら言う。
「残念ながらコノシロやベイトはいませんね。湾奥にコノシロが大量に接岸し始めたのは5、6年前。最近のことです。ビッグベイト便が急速に増えたのも2018年くらい。例年ならコノシロだらけになるタイミングですけど、今年はどこのボートも苦戦しています」
魚が突き上げてこない状況に見切りをつけて羽田空港周りに舵を切る。そのうちセイゴクラスがボイルするポイントを見つけた。ベイトがイナッコであることから10cm以下のシンペンやバイブレーションを投げるも反応は得られない。船長は「青潮が出ています」と言う。確かに海が乳白色をしている。
さらに沖に出るとまた鳥山ができていおり続々とボートが集結している。どうやら青物が湧いているようすだ。シーバスの雰囲気がよくないことから駒崎さんが言った。
「サワラをねらってみましょう」
全員ブレードジグの「メタルマジック」40gを付けた。この釣りは着底からの高速リトリーブが基本である。最初に「ヒット!」と声をあげたのは金子さん。スピード感溢れるファイトからサワラと思しき魚だがバラしてしまう。太陽が沈みかけると潮目周辺には水面から1mほどジャンプをするサワラが各所に見られる。そして、駒崎さんが「食った!」と声を張った。一気に足もとまで寄せ、水面まで浮上したのはサワラである。しかし、タモ入れ直前というところで、痛恨のフックアウト。一行は再びシーバスねらいに切り替えた。
サワラを掛けた駒崎さん。スピードのある引きを受け止めて足もとまで寄せたが……
サワラをねらって早々にヒットさせた金子修さん。しかし無念のフックアウト
ドリフトよりもリフト&フォール
下げ潮に変わるタイミングで高見船長が向かったのは旧江戸川の舞浜大橋だ。今度は通称「ストリームゲーム」と呼ばれる川の流れを利用した釣りをする。主に橋の明暗や橋脚周りを撃つが、流心のど真ん中からダウンでルアーを入れ込むことができるのは、ボートならではの攻め口である。ルアーを先行させて流すか、ラインを先行させて流すか、さまざまなドリフト技術が試せるのも勉強になる。明暗の境目にルアーを出し入れする際も操作しやすい位置にボートを定位してくれる。ルアーの種類によっては、流れの真下のダウンに送り込んでステイさせるだけで食ってくることもある。
秋は引き波が強く出るウエイク系と呼ばれるミノーが威力を発揮しやすい。駒崎さんはダイワ「モンスターウェイク」を使用。金子さんも槇さんもロンジン「ウェイキーブー」など、ファットボディーのミノーをぶりぶりとさせて表層付近を探っていく。ファーストヒットは槙さんだ。しかし身長193cm槙さんにはあまりにも愛らしいサイズのフッコである。川面を照らしてみてもイナッコなどのベイトが全く浮いていない。
夜になり川のストリームゲームを始めるとファーストヒットさせたのは槇悠太郎さん
高見船長は旧江戸川の水況が悪いとにらんで荒川に移動し、最下流に架かる荒川河口橋周辺にねらいを定めた。首都高湾岸線、R357、京葉線といくつもの橋脚が絡むポイントである。下げ潮が強くなり橋脚にぶち当たる激流によって橋脚の裏には大きなヨレが生じている。このヨレにルアーを通せばショートバイトが連発するが、乗ってもすぐにバレるか、フッコクラスばかり当たる。ウエイク系ミノーで駒崎さんが50cmクラスを1尾掛けたが、その後は乗り切らないバイトばかり。
橋脚裏のヨレで何度もヒットさせた金子さんだが食いが浅いのかバラシを多発
「もはや底からひねり出すしかない状況ですね」
駒崎さんがセットしたルアーは「ローリングベイト88」。表層では魚を出せないと判断して橋脚裏のヨレのボトム付近をリフト&フォールで誘うという。ダウンでキャストして橋脚裏に入れ込むとロッドを弾くように跳ね上げてはフォールさせる。細かいピッチのロールアクションが特徴的なローリングベイト88は24gと重く、激流でも底層まで沈めやすい。
ルアーを替えて一投目。跳ね上げて2回目のフォールの最中にバイトの手応え。合わせるとまずまずの重量感でバットがしなった。ドラグを利かせて寄せ、高見船長がすくい取る。65cmほどの良型を駒崎さんは抱いた。
「やっぱり魚が浮いてない。底を感じるくらいまでルアーを入れないとサイズを上げられませんね」
そう言ってまた違う橋脚周りを打ってヒットを量産していく。「ロリべ(ローリングベイト)は僕の中でエサみたいなもんです。ワームよりも強い状況がある」と話す。
時刻は22時を回った。そしてフォール中にバイトしたのはこの日一番の重量感。流れに乗る魚を落ち着いていなすと黒ずんだ居着きと思しきスズキサイズが浮上。計測すると70cmジャストである。
「10月末以降はこのサイズが連発しますよ(笑)」
駒崎さんはこの1尾に満足して槇さんにリフト&フォールの釣り方をレクチャー。すると、瞬く間にヒットさせた。金子さんもシンペンで連発させてボートならではの数釣りを堪能した。
沖上がり間際になると全員連発するようになり金子さんと槇さんのダブルヒットの一幕も
クロダイもヒットさせた駒崎さん
※このページは『つり人 2023年12月号』を再編集したものです。