これからの時期にチョイ投げの主役といえば最盛期を迎えるシロギス(キス)。本格的な投げ釣りタックルを使わずともライトなスピニングタックルでねらえる手軽さと、小さな大ものと称される奥深い釣り味が魅力の人気ターゲットだ。
愛知県/常滑市 りんくう釣り護岸「シロギス&ギマのチョイ投げ」
伊勢湾奥の海釣り公園で魚信堪能
レポート◎伊藤 巧
この記事は『つり人』2020年9月号に掲載したものを再編集しています。レポート◎伊藤 巧
昭和44年生まれ。愛知県在住。美味い魚を求めて東奔西走。クロダイのカカリ釣りとアオリイカのヤエン釣り、ビワマスのレイクトロウリングが大好き。今年はサーフの尺アジ釣りに燃える予定。下手釣り集団チーム白馬車&江戸前なめろう隊所属
これからの時期にチョイ投げの主役といえば最盛期を迎えるシロギス(キス)。本格的な投げ釣りタックルを使わずともライトなスピニングタックルでねらえる手軽さと、小さな大ものと称される奥深い釣り味が魅力の人気ターゲットだ。家族で楽しめる!常滑市のりんくう釣り護岸でキス釣り
夏を迎えると東海地区に点在する海釣り公園は、どこも朝から大勢のファミリーで賑わう。その多くはサビキ釣りで小サバをねらっているようだが、ファミリー向けの堤防釣りは何もサビキ釣りだけではない。目先を変えてチョイっと軽く仕掛けを投げて底を探れば、いつもと違った小ものたちが心地よい魚信を送ってくれる。
1投目から食ってきた。りんくう釣り護岸では、日和に恵まれれば短時間でツ抜けできる。梅雨明けして海から濁りが取れたらチャンスだ
これからの時期にチョイ投げの主役といえば最盛期を迎えるシロギス(キス)。本格的な投げ釣りタックルを使わずともライトなスピニングタックルでねらえる手軽さと、小さな大ものと称される奥深い釣り味が魅力の人気ターゲットだ。パールピンクの魚体は美しく食味も抜群。キスのフライや天ぷらを食しながら流し込む生ビールは格別。これぞ夏のご褒美だ。
そんなキスの数釣りが楽しめる海釣り公園が、愛知県常滑市のりんくう釣り護岸。潮が入れ替わりにくい伊勢湾奥だけに投げ釣りフィールドのイメージが薄く、キスの魚信が堪能できるにもかかわらず知られていない超穴場だ。足もとから敷石が張り出しているのでサビキ釣りが難しく、釣り公園ながら訪れる人は少ない。対岸のセントレアを離発着する航空機を眺めながら、のんびりとチョイ投げが楽しめる。
このりんくう釣り護岸に足しげく通い、チョイ投げで好釣果を上げている釣り人がイシグロ鳴海店の高取宏多さん。スタッフの伊藤彰さんを誘い「大きくても20cmぐらいですが、海況に恵まれれば投げるたびにアタリが出ますよ。こんなにキスが釣れる場所も名古屋近郊では貴重です」と、雨が降り続く2020年7月上旬にライトなルアー用タックルを片手にエントリーした。
りんくう釣り護岸はチョイ投げ向きの岸壁。シロギスを釣りながらギマの回遊を待つスタイルがおすすめ
愛知県でキスといえば遠州灘に面した渥美半島の情報が多く、閉鎖的水域の伊勢湾や三河湾に関しては皆無に等しい。そんな不毛な知多半島にありながら、りんくう釣り護岸のある常滑一帯は木曽三川から流れ出たミネラルを豊富に含んだ川水がぶつかることでプランクトンのわきがよく、キスやアジをはじめクロダイやマゴチなどの大型魚も多い。常滑沖はマダイの産卵場にもなっている。まさに砂漠のオアシスのような存在なのだ。
高取さんが釣り座を構えたのはセントレアに架かる鉄道橋の下。りんくう釣り護岸の上には連絡道路橋と鉄道橋が渡っているので、多少の雨ならかわすことができる。
満潮前後は岸際をねらおう
実釣開始は午前6時。30分後の満潮を前に流れは緩かった。すぐ前の橋脚の潮下に反転流が生じていたので、エサが溜まってキスも寄っていると考え、橋脚の奥にキャストして潮がヨレている中に仕掛けを通した。高取さんの読みは的中して1投目から小ぶりながらも本命が食ってきた。
潮が変化している場所にエサが溜まりやすいので魚が寄ってくる。この日は橋脚の潮下に仕掛けを通すと何かしら食ってきた
「キスは潮の満ち引きに合わせて動いており、満潮前後は岸際まで寄っていますから遠投の必要はありません。遠くに投げるほど釣れそうな気になりますが、まさしくチョイ投げで釣れますよ」とのこと。なお、チョイ投げでアタリを多く引き出す秘訣は、ねらうポイントからプラス10mの飛距離。釣り護岸は全体に浅いのでポイントを直撃するとキスが驚いて散ってしまう。そこでポイントより少し奥に投げ込み、静かにサビいてポイントに仕掛けを入れるように探っていた。
流れが緩まる満潮の潮止まりを挟んでチョイ投げを展開。高取さんは7号のテンビンオモリで通した。極力軽いオモリを使うほうがおもしろい
この日は海況が厳しいこともあって ポツポツと顔を出す程度。「今日は雨 と濁りの影響で食いが渋いですが、本 調子なら良型まじりで20 尾ほどの釣果 が期待できますよ」とのこと。とはいえ豊饒な常滑の海らしく、キスの他に チャリコやホウボウ、キュウセン、アジなど多彩な魚が間断なく食ってきた。エサをくわえて走る手応えが魚ごとに異なり、「1尾ずつ釣り味の違いが分かるチョイ投げって本当におもしろいですよね」と盛り上がりながら釣果を伸ばした。
この日に釣れたのはどれも小振りだったが、状況さえよくなれば20cm級の良型が食ってくる
チョイ投げにアジも食ってくる。サビキで釣れるサイズより一回り大きいので大切に持ち帰りたい
仕掛けを変えるだけ!ギマがねらえる
チョイ投げのタックルは8号前後のテンビンオモリがストレスなくキャストできれば何でもよい。安価なパックロッドでも充分楽しめる。そして注目すべきが仕掛け。実は知多半島の堤防では3年ほど前からギマのチョイ投げが流行っており、2人ともギマ用の仕掛けをセットしていた。
イシグロ『ギマ専用投げ釣り仕掛』
歯の丈夫なギマに対応するためハリス部分をパイプでガードした投げ釣り2本バリ仕掛け。折られにくいキツネバリを採用。ギマ専用とうたってはいるが遜色なくキスも釣れるので、魚種の多い伊勢湾や三河湾、浜名湖で重宝する。仕掛け全長は90cmでチョイ投げにベストマッチ
以前は奥浜名湖や三河湾の一部で釣れる魚だったが、海が変わってきたのか伊勢湾でも比較的簡単に釣れるようになった。最近ではスーパーの鮮魚コーナーに並ぶこともあるのでやはり増えてきているようだ。カワハギのように煮たりキモ和えにして食べると美味しいと評判もよい。姿が似ているカワハギよりも食い方が大胆なのでハリに掛かりやすく引きもそこそこ強いとあって、今やキスと肩を並べるほど人気の高いターゲットなのだ。
ここ数年で伊勢湾のターゲットとして人気が高まってきたギマ。ねらって釣るならイワムシを持参したい
ギマは浅い砂泥底を群れで回遊する魚で、りんくう釣り護岸でもツボにハマれば連続ヒットとなるのだが、細いキス仕掛けではハリスが切られるのでなかなか取り込めないという。そこで高取さんがチモト上をパイプで補強したギマ用の仕掛けをプロデュースした。「思っていた以上に苦汁をなめている人が多かったようで、この仕掛けがよく売れて驚きました。これならギマが食ってきても安心です」とのことだ。
「乗った!」と遠藤さんの声が響く細いキス仕掛けにギマが掛かるとハリスに傷が入りやすく、抜き上げる際にバラすことが多い。ギマ仕掛けなら安心だ
この日はキスとギマを数釣る目論みだったが、残念ながらギマのアタリは遠かった。ちなみにギマの釣り方はキスと同じ。仕掛けを投げて着底したら、ゆっくり手前にサビきながら探ってくるだけ。アタリは明確。口が硬いのでしっかり合わせ、仕掛けを緩めないよう一定のスピードで巻き上げる。連掛けをねらう魚ではないので1尾ずつ確実に取り込むこと。
潮位が潮位が下がってきた午前9時半、高取さんに鋭いアタリがあってサオがキレイな弧を描いたものの、巻き取りの途中で痛恨のハリ外れ。「しっかりアワセを入れるべきでした。絶対に今のはギマでした!」と悔しがる。その直後に伊藤さんのサオがひと際大きく曲がり、待望のギマが顔を出した。やはりギマは群れで行動しているようだ。それらしいアタリがあったら集中して打ち返すことが好釣果の鍵を握る。
橋脚の手前を丁寧に探って見事にギマを食わせた。ギマは群れで動いているので、手早く仕掛けを入れれば複数釣果が得られる
こうしてシロギスをメインに五目釣りを楽しみ、ギマで10目を達成したところで雨粒が落ちてきたので午前10時を前に納竿とした。りんくう釣り護岸でのチョイ投げ五目は釣り入門にもってこい。繊細なアタリのキスに引きの強いギマを柱にいろいろな魚が拝めるので子どもも喜ぶはず。ぜひ、夏休みを利用して出掛けていただきたい。
最近のパックロッドは安価ながら高品質。中級者でも使えるPEラインを巻いたスピニングリールがセットになって8000円台もある。実に財布に優しい
シロギスを散らさないようポイントの奥にキャストして、刺激しないように仕掛けを潮上から入れていく
高取さんが持参したエサは定番のイシゴカイと濁りに強いゴールドイソメ。梅雨期のシロギス釣りにはゴールドイソメやアオイソメが外せない
イシグロ鳴海店
住所=愛知県名古屋市緑区鳴海町字山下52-1
問合せ=052・895・7666
営業時間=10〜23時
交通●知多横断道路・りんくうIC を出て道なりに 走るとりんくう釣り護岸の駐車場