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編集部2024年4月3日

徳島県/吉野川水系 マッチ・ザ・ベイトにこだわらないシーバス釣り

全国おすすめ釣り場 徳島

ベイトのサイズにルアーを合わせる。これが一般的なシーバスゲームの考えだろう。だが、田上さんの考えはベイトありきではない。流れありき、というゲーム展開で釣果を叩き出している

ベイトのサイズにルアーを合わせる。これが一般的なシーバスゲームの考えだろう。だが、田上さんの考えはベイトありきではない。流れありき、というゲーム展開で釣果を叩き出している

写真と文◎松本賢治

厳冬期のボラ&フナパターン

厳冬期のボラ&フナパターン

一般的にシーバスゲームといえばマッチ・ザ・ベイトを重視する釣り。シーズンごとに存在するベイトに合わせたルアーをセレクトするという考えだ。それは王道ではあるが、シーバスに口を使わせるメソッドはこれだけではない。反射的に食わせるリアクションもそうだが、今回紹介する「流れの釣り」もそうだ。

そもそもシーバスゲームで流れを意識するのは当然と思うかもしれない。だが、徳島在住の田上明茂さんは「流れさえあれば釣れる」という考えで釣りをしている。極端な話、ベイト不在でも流れがあれば釣れるという考えだ。

「ベイトに依存してしまうと、ベイトがおらんかったら釣れんもんね。そんな時っていっぱいあるでしょ。もちろん、ベイトがいたほうが釣れるに決まってる。でも、いなくても釣れるんでベイトに依存はしない。むしろ僕は流れに依存しています」

田上さんは、このメソッドによって周年コンスタントに釣果を叩き出している。流れは海でも川でも発生するが、常に流れのある川はゲームが成立する確率が高くなることからリバーゲームの頻度が上がる。

「川は常に流れがありますけど、より強い流れが出るタイミングをねらわないと釣れない」

流れが出るタイミングをタイドグラフから読んでランガンするスタイルだが、ベイトを無視しているのかといえばそうではない。流れはあらゆるものを上流から下流へと流している。つまり流れによって何かしらのエサが運ばれている可能性がある。

「シーバスってね、その時期その時期の小魚だけを食っているわけではなくて、虫とか甲殻類とかを食ってる時も普通にあって、思っているより雑食性なんですよ。エサが乏しくなる1月2月の厳寒期なんかは特にそうです」

イワシやコノシロなどへの偏食パターンという言葉が一般化しているが、田上さんはそれに対しても少し否定的な考えもある。

「偏食する時もあるんですけど、ベイトの数によると思います。厳冬期に限らずベイトが少ない時は偏食はしないと思ってる。っていうのも、カタクチが回っててもそれにルアーサイズを合わせんでも普通に釣れるし、実際にカタクチ以外の違うエサを食ってる時があるもんね。そういうのは何回も見てますから」

一般的には、シーバスはベイトがいてこそそこにいる、という考えが普通であるが、田上さんの考えはベイトよりも流れありきというもの。つまり、流れさえあればシーバスはそこにいる、というものだ。なぜならシーバスは流れがあればエサを食えると考え、流れが発生するタイミングで流れの発生する場所へ入ってくるからだ。シーバスが流れの中で何を捕食していようが、田上さんにとっては関係のないこと。そのエサに何か(ルアーサイズなど)を合わせる、という考えもない。釣りあげたシーバスが何かを吐き出しても、それは答えを導くヒントにはなっても答えではない。シーバスは雑食性という考えは周年変わることはないが、エサの種類が少ない1~2月は特にそう思うという。

ルアーセレクトもベイトに合わせるのではなく流れに合わせる。「違和感なくルアーを流せたらシーバスは食ってくれる。実際、1、2月の低水温期は、川にベイトフィッシュはほとんどいない。いるのは20~30cmもあるボラとかフナ。ベイトに合わせるならビッグベイトになるし、実際にビッグベイトで釣れるんですけど効率が悪い。僕は短い時合で何尾も釣りたい数釣り派なんで。そして、ロングキャストして奥の橋脚も探りたいしね。ボラ、フナパターンっていうても、ボラやフナを模しているのではなくて、それらを捕食するために流れに入ったシーバスを釣っているだけ。シーバスも他にいいエサがいたらそれを食ってるはず。60cmくらいのシーバスやったら、デカいベイトもマイクロベイトも食ってますよ。厳寒期に川に入って流れの中でエサを食っているシーバスはコンディションもいいです。釣りあげたシーバスがデカいフナを吐き出すこともあるし、腹の中でまだ(ボラやフナが)動いてるのがわかることもある。まあ、アフターも釣れるからすべていいコンディションとは限りませんけどね。あくまでも徳島県内での話ですが」

1月2月は夜の干満差が大きい。つまり、流れが強く出てゲームが成立しやすいのはナイトゲームとなる。

 

 

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リバーゲーム限定のメソッド

リバーゲーム限定のメソッド

河川へ入ってきているシーバスは、流れが出るタイミングで本能的にフィーディング(捕食)のスイッチが入ると田上さんは考えている。だから、流れが強く出るタイミングを見計らってポイント入りし、流れが弱くなると次の流れが出るポイントへと移動する。そのランガン箇所は短時間で2、3箇所では終わらないケースも多々ある。そう、流れが出るタイミングとポイントを何箇所も知っているからできる釣り方でもある。

「これも徳島の場合ですけど、このエリアだと吉野川、旧吉野川、今切川とかの本流筋、それに支流もあって、撫養川みたいな運河や水路もある。水深や川幅によって潮の動きは違ってくる。だから、下げに入っても、すべてのポイントが一斉に下げ始めるわけではなくタイムラグがある。強く流れるタイミングを知っていたら順番に回って効率よく時合を拾っていけるわけです」

これが「流れを制する」という田上さんのもうひとつの意味でもある。徳島に限らず数河川を短時間で回れる環境は各地にある。この強く流れるタイミングにベイトが絡むと、より釣果は期待できる。流下してくるエサであればサイズは問わない。そのため、大きなベイトを食っていようが、小さなベイトを食っていようが、ルアーのサイズを合わせることはしない。ルアーは目前の流れに対して合わせていくものと考えている。

「流れに対してキレイにルアーを流せられるか、泳がせられるかで釣れる釣れないが決まります。ルアーのサイズは関係ないと思っています」

シーバスは雑食性で、流れてくる食べやすいエサならなんでも捕食している、と考えるからだ。ちなみに、この流れに対する考えは河川限定のものだ。海でも潮は動くし流れも発生するが、海では強い流れで釣れるケースが稀であることからベイトへの依存度が強くなると感じており、田上さんも海ではベイトを意識した釣りを行なっている。

「流れあってのリバーゲームです。僕はその流れの中で弱く泳いでくれるルアーから選んでいきます。低速域でも泳いでくれる高レスポンスのルアー。ただ巻きで充分釣れます」

テクニックとしては、ゆっくりただ巻きをする。ドリフトさせながらのただ巻き。ルアーの存在感を強くアピールするわけではなく、シーバスのポジショニングしているスポットへルアーを自然に流すことに徹している。

「この時期は、まだ抱卵している個体もおるし、アフターであっても結構エサを食ってるコンディションのいいやつが釣れることもある。海ではこの時期はまだ釣れないですね。ベイトがおらん時期なんで厳しい。そこが、流れがあればなんとかなる河川との違いです」

流れのある河口付近で釣れるのは、バチやヒイラギ、ボラ、アミ類など、少なからずベイトがいるからだが、流れの釣りに関しては偏食してないからルアーを何かに寄せる必要がない。

この布陣で表層からボトムまで探った。上からエクスセンスサイレントアサシン140F フラッシュブースト、サイレントアサシン129F フラッシュブースト(ともにシマノ)、X ラップ10、シャッドラップ6(ともにラパラ)、VJ-22(コアマン)

この布陣で表層からボトムまで探った。上からエクスセンスサイレントアサシン140F フラッシュブースト、サイレントアサシン129F フラッシュブースト(ともにシマノ)、X ラップ10、シャッドラップ6(ともにラパラ)、VJ-22(コアマン)

 

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春からはデイゲーム本番

春からはデイゲーム本番

では、これから季節が進んでいく3月にもなり春めいてくると状況はどうなるだろうか?

「ボラの稚魚、ハクが川へ入ってきます。よくいわれるマイクロベイトパターンですね。稚アユにはちょっと早いかな。ハクを食ってるシーバスのほうが釣りやすい。ナイトでも釣れますけど、デイでも釣れるんでそっちのほうが面白いです。春になると昼間のほうが干満差が大きくなるんでデイでも流れの釣りが機能するようになるけど朝夕マヅメは特に強いですね。魚が出そうなところをひたすら通してやる。ウエイクベイトなどの水噛みのいいルアーで表層をテロテロさせたり。ルアーはサイズよりも、水噛みがよくてレスポンスのいいものを選んで自然に泳がせます。やっていることは一緒です」

田上さんが説明するナチュラルな泳ぎやレスポンスのいいルアーとはどのようなことを指しているのだろう。

「ナチュラルな泳ぎっていうのは、警戒していない状態の普段のベイトの泳ぎのイメージ。油断してるベイトだから食わせやすいと感じています。それを演じるために、ゆっくり巻いてもちゃんと泳いでくれるルアーを選ぶ。速く巻いて強く水を攪拌して泳がせると波動が強くなってしまいナチュラルではなくなる」

ゆっくりハンドルを巻いた時に泳ぐルアーはドリフト時にラインが先行した状態でも泳ぐという。

「それくらい高レスポンスのルアーですね。これは、同じ種類のルアーでもサイズによっても違ってくる。僕はベイトのシルエットにルアーサイズを合わせるのではなくて、泳ぎを優先にしているんで、自ずと7~10cmクラスのルアーを使うことが多くなり、遠くの明暗とかをロングキャストでねらう場合は、少しサイズをあげます。感度的には手もとにブルブルを感じるか感じないかの巻き抵抗を目指しています」

まだまだ、低水温期でもありベイトが動き出すとはいえシーバスの活性も不安定な時期でもある。そんな時、田上さんはボトムをねらう。

「ボトムは釣れますよ。これは、低水温期に限ったことではないんです。1年中、上にも下にもいる。だから、上のレンジで出なかったら下のレンジをねらうという感じです。ボトムは根掛かりリスクがあるんで魚が残ってる場合が多く実はよく釣れるんです。僕はボトムねらいでは『VJ』を使いますが、砂や泥で引っ掛かりにくいところならズル引き。そうでないところはリフト&フォールさせて使います」

基本的には流れの釣りを展開する田上さんだが、上のレンジで反応しない渋いときや思うように数が出ない時はある。そんな時は根掛かりリスクがあるもののボトムが有効だ。

当日は撫養川を中心に近隣の今切川など時間差で流れが利くエリアをランガン。その結果、撫養川に架かる橋の常夜灯が形成する明暗部で、流れが強くなるタイミングに複数尾をキャッチすることに成功したのだった。

 

 

 

 

※このページは『つり人2024年4月号』を再編集したものです。

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