東京湾の工業地帯は豊穣のメバル釣り場だ。しかしそこは立入禁止の場所ばかり。ボートでアプローチするほかないが、「天国」と言えるくらいイージーにメバルは出る。特にバチ抜けの季節である4月下旬から5月は、遊び心たっぷりのプラッギングが面白い。
東京湾の工業地帯は豊穣のメバル釣り場だ。しかしそこは立入禁止の場所ばかり。ボートでアプローチするほかないが、「天国」と言えるくらいイージーにメバルは出る。特にバチ抜けの季節である4月下旬から5月は、遊び心たっぷりのプラッギングが面白い。
写真と文◎編集部
遊び心を満たせて尺メバルも有望
ルアー専門店「アングラーズショップマニアックス」の駒崎佑典さんは20代前半からメバルに魅せられた人である。「桜が咲くころからワクワクします。メバルはソルトの中でも特に好きな魚です。東京湾各所や伊豆に外房と東京近郊のメバル釣り場に足繁く通って自己レコードは33cm。近年はボートメバルにも熱中しています。最盛期は4人で乗って5時間釣ればトータル100尾のメバルがヒットして中には尺も数尾混じる。それが初夏の東京湾ベイエリアのポテンシャルです」
ボートメバルの面白さを知ったのは「Anglers Staff」の高橋知也船長の影響が大きいという。
「メバルは遊び心を満たせる釣りです。アジングとは違って多様なルアーに反応するのが楽しいですね」
と高橋船長。特に4〜6月はバチを意識したルアーが活躍するのだが、細身のフローティングミノーやシンキングペンシルを2連結、3連結する規格外のルアー使いで釣果を出せるというのだ。
この日の駒崎さんの主力は「エリア10」と「マッチボウ100F」、レンジを入れたい時は「ジョイクロ70」や「アーマジョイント60S」も使う。メバルは口が硬いのでフック交換は大事でがまかつ「トレブルSP-M」がおすすめ。連結にはヤリエ「はちのじスナップ」が便利とのこと
10cmのミノーを3連結して30cmのルアーにします。こうすると小型のメバルは食いきれない。大型が釣れやすい。30cmのルアーで30cmのメバルが釣れる。面白いでしょう(笑)」と駒崎さんが言うと高橋船長が「私は連結ルアーで小さいメバルを釣るのも味わい深い。5年前から連結使いを楽しんでいますが5cmミノーを13連結した65cmのルアーで18cmのメバルを食わせたことがあります(笑)」
4月初旬のこの日は港湾部のバチ抜けが本格化していないタイミング。高橋船長いわく葉桜になってからシーズン到来という。しかしバチが抜けていなくとも港湾部にはアナゴやウナギの幼魚であるノレソレなどのシラウオも多く、細長いルアーを表層に漂わせているだけでバイトする可能性は充分にあるとのこと。
連結ミノーは流されているだけでもアピール度が高い
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
メバル初体験でも連発!
駒崎さんと同船したのは槇悠太郎さん、番場亮太さん、結城翔さん。みな20代半ばである。駒崎さんに誘われてエリアトラウトをはじめマグロ釣りもハマったというマニアックスの常連さんだ。3人ともメバル釣りは初体験だが高橋船長は「メバル釣りは技術のない方も充分に楽しめます」と自信満々で19時に出船した。おもな釣り場は川崎〜横浜にかけての工業地帯のバース周り。
駒崎さんが用意したルアーはすべてシーバス用のフローティングミノーとシンキングペンシルだ。ポイントに着くと通称「エリテン」ことエリア10を全員がセット。シーバスのバチ抜けパターンでは絶大な支持を集める10cmのフローティングミノーである。岸壁際の暗部を通していくとさっそく駒崎さんにファーストヒット。
「いつ見てもメバルはかわいい」
と魚体を愛でて記念撮影。そのうち結城さん、番場さん、槙さんと順番にヒットしていく。いきなり沸いた釣果に「まあこんなもんです(笑)」と
高橋船長。トップにメバルを誘い出す釣りは先頭より2番目、3番目に投げた釣り人にバイトが多くなるという。最初に通したルアーに誘われたメバルが2番手のルアーに食うイメージである。駒崎さんは言う。
「ジグヘッドワームで中層をねらうのは結構難しいんですよね。ワームに変えれば食ってくる魚もいるでしょうが、フローティングミノーのような抵抗感のあるルアーを使ったほうがよりイージーです。時おり魚探を見ていると水深5mラインに並んでいるメバルらしき反応がミノーを通しているうちに勢いよくトップに出ますから」
フローティングミノーにせよシンキングペンシルにせよリトリーブはスローが基本だ。ルアーのアクションは引き波が出るか出ないかという速度で巻くのがよく、風に任せて流すウインドドリフトでもバイトは出やすい。
「エリアトラウトで腕を磨いたアングラーは何を釣らせても上手いですよ」と駒崎さんが言うとおりメバル初体験の3名も次々に釣果を出して「愛らしい魚ですね」と口を揃える。そのうちジーッと甲高いドラグの逆転音が響いて、結城さんのロッドがきれいな孤を描く。水面に上がるバシャッという水しぶきも重量感があり、抜き上げたのは27cmクラス。さらにはその隣の番場さんにも同クラスがヒットした。
「メバルはルアーの前からも食ってきます、前後左右どこから出るかわからない。もう少し海水温が高くなると夜光虫が出ます。穴打ちして暗部の中でもルアー軌道が分かり、魚が出る時の軌跡も見える。どんなアクションがよいのか答え合わせもしやすくて楽しいです。夜光虫が出ている時の幻想的なバイトを私は〝ファンタジーバイト〟と呼んでいます」
と高橋船長。ちなみにこの日はバチを意識した魚が少ないせいかリトリーブは速めにしっかりとルアーを動かしたほうが食いは立った。
番場亮太さんもグッドサイズ
槇悠太郎さんも小気味よい引きとメバルの愛らしさにうっとり
今回の釣行最大の27cmを釣りあげたメバル初体験の結城翔さん
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
連結プラッキングの実力
シーバスが多い、もしくはサイズの上がらない釣り場はテンポよく移動して尺メバルの本命釣り場という本牧エリアにやってきた。
満を持して駒崎さんは水面下5cmを引けるフローティングミノーのパズデザイン「マッチボウ100F」を3連結して投入する。その引き波はまるでムカデの足のようであり、浮かべて流しているだけで連結部分が艶やかに曲がり、微波動が生じているようす。いかにもアピール度が高そうだ。
「メバルは明暗の暗部にいることが大半ですが、活性が上がると明部のオープンにも出てきます。私の経験では明部に出て食ってくる魚は大型であることが多いです」
と駒崎さん。そうして明暗の境目の明部側を打ち続けているとパシャリとライズ。同時に「出た!」と駒崎さんが合わせる。船下まで寄せて抜き上げると3連結の先頭ルアーのフロントフックに掛かっている。20cmクラスではあるが、なかなか衝撃的な光景だ。高橋船長は「長い連結ルアーでも先頭のフロントフックに掛かってくることが大半です」と拍手を送る。
チャーターボートの出船時間は5時間が目安だ。0時を回ったところで「最後のポイントにしましょう」と船長が告げる。結城さんも番場さんも上がりの1尾を掛ける。駒崎さんはここで2連結のエリテンを投じてみる。ストラクチャーのスレスレを通していくと一回り大きなメバルがアタック。27cmを手中にした。
「ボートメバルは船長が案内してくれたポイントでどう釣るかが問題。アジの人はもちろん、エリアトラウトの人も楽しめ、巻き速度にセレクティブなので再現性を見出すのも楽しい。大型になると1㎏クラスもヒットするし、連結ルアーのようなお遊びもできてワームに匹敵する釣果をだせる。いろんなジャンルの釣り人にぜひとも楽しんで欲しいです」
一級ポイントであるバースの角にボートがさしかかると最後は身長190cmの槙さんがこの一等地を攻めた。ドンズバで岸壁スレスレにキャストを決めるとゴンというバイト。大きく首を振る感触が伝わりドラグが一気に逆転していく。ラインはPE0.4号に2号のリーダーだ。寄せてはラインを出される攻防の果てに浮上したのはシーバスだ。タモに収めて計測すると81cm。このランカーを最後にお開きとなった。
ラスト一投で81cmのランカーシーバスを釣りあげた槙さんは「自己記録です!うれしい」と喜びを爆発。メバルの釣り場はシーバスもたくさんいて、使うルアーはシーバス用。となればこんな大型がヒットすることも珍しくない
メバルと一口に言っても3 種に分かれる。ヒレの軟条数などを数えないと正確な同定はできないが、駒崎さんは内湾的な環境を好むシロメバルが多いのではないかと推測
Anglers Staff の高橋知也船長はアジにメバルにタコやマゴチまで東京湾の多彩なルアーフィッシングを楽しませてくれる。今回の連結プラグのメバル釣りのようなマニアックな釣り方を模索するのが大好き
※このページは『つり人 2024年6月号』を再編集したものです。