パコンッという小気味よい音でルアーが吸い込まれる魅惑のトップゲーム。なぜトップウォーターなのか。そしてどうすれば多くのバイトを引き出し、フッキングに持ち込めるのか。そのA to Z をキャスティング新大宮バイパス店の石川さんに教えてもらった。
掛かったウナギを抜き出すまではスピード勝負!
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2020年9月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
伊豆国市在住のアユ釣り名手、三嶋英明さんはウナギ釣りも大好きだ。ブッコミ、置きバリもするが「釣り応えが一番ある」と言うのが穴釣りである。アユ釣りの合間もウナギの雰囲気があれば、スリル満点の穴に仕掛けを差し込む。
目次
- その1
- はるか南方の海から極東の川へ
- その2
- イトは極太ハリは太軸
- エサの付け方
- その3
- ウナギの雰囲気がある場所とは?
- アワセとともに抜き出すべし!
ウナギの雰囲気がある場所とは?
この日、三嶋さんが探ったのは「狩野ドーム」前の瀬と宮田橋上流「飯田オトリ店」の前の瀬だ。特によいというのが瀬肩の周辺。
「注目するのは安定した石です。高水でも流されにくくアカが残りやすい石の周り小砂利があると理想的です。こんもり盛り上がった丘になって、水を受けているとウナの雰囲気があります。私の経験では浮き石の下には少ないです」
アユ釣り名手は川の流れを読んで釣る。ウナギも同じと三嶋さんは言い、有望ポイントのひとつとして瀬肩や馬の背付近の小砂利が絡んだ石周りを挙げる。まずは浅場の穴からリサーチを開始!
大型のウナギほど入口が小さく奥が深い穴に潜み、場所によっては1mのサオがすっぽりと入ってしまうくらいの奥行があるという。
浮き石の下にウナギはいない。どっしりと安定した岩の下に潜みやすい
注意点として、流れが強すぎるのはよくない。サオが水流を受けてブルブルと震えてしまうとウナギは違和感を抱きエサを食い込みにくくなる。水深でいえば腿も も以上になると探りにくい。「見逃せないのがオトリ店の前です。アユ釣りの人が川から上がって腰かけて、一休みするような石の下には、いいウナギが潜んでいることがあります。死んでしまったアユを流すような場所は特にねらいめですよ」
もうひとつが両岸にあるアシなどのボサ周り。特に瀬肩のアシ下にいい横穴があれば必ず探るスポットと話す。
オトリ店の前などアユ釣りファンが一休みするような石周り。死んだアユを捨てるような場所はウナギのエサ場になっていることも
アワセとともに抜き出すべし!
釣り方は単純だ。サオ先にハリを掛けて穴に差し込むのみである。ウナギがいれば答えは早く、アタリがでれば次のような手順になる。
1 「ガツ!」と最初の一噛みがある。ウナギはついばむようにしてエサを取る。
2 サオを抜き、仕掛けおよびエサを穴の中に残す。
4 本アタリがきたところで合わせて一気に引っ張り出す。
掛かったウナギを抜き出すまではスピード勝負!
アワセが遅れるとウナギが穴の中でとぐろを巻いて出てこなくなります。掛けたら即座に抜かないと取れません。全く取れない時は手で穴を掘り起こすこともあるほどです」
なお抜き上げた瞬間にハリが外れることも多い。タモを魚の下に添えておくと万全である。取ったウナギは玉ねぎ袋に入れておくと脱走しにくい。
「ガツガツきてます」とアワセのタイミングを計る三嶋さん
穴の前でアユのはらわたを出すと香りに誘われたウナギがピョコッと顔をのぞかせることも
ウナギの嗅覚は鋭い。匂いで誘い出すのも作戦のひとつで、内臓を出したアユを手にし穴の前にかざしてみると、顔をひょっこりのぞかせるウナギもいる。
「匂いをふりまきながら釣り探ると反応の早さが違います。釣り下っているなら、下流の穴に匂いが効いて穴の入口でいきなりガツガツ食ってきます。穴の奥で掛けるより当然取れる確率は高まります」
ウナギのほか頻繁に当たるのがモクズガニだ。まずサオをハサミでつかむ感触があり、さらに仕掛けを引っ張るとギシギシ、ギリギリと硬質な手応えを感じる。引っ張っても出てくることはまれで大抵は外れてしまう。
最後にこの日のようすを駆け足でレポートすると、三嶋さんは朝一でエサのアユを釣った。名手の鮮やかな泳がせ釣りは好循環でオトリが回る。2時間半ほどで20尾をキャッチし、それをエサにウナギ釣りを始める。昨夏の台風で実績の高い穴が埋まったと言い、まさに手探り状態。そしておよそ1時間後には岸際にある段々瀬の穴でウナギらしい反応が出た。
「当たりましたよ」
と笑みを浮かべ本アタリを待つ。やがてきたグンという力強い引き込みを思い切り合わせれば、にょろりと水面から舞い上がったのは50㎝ほどの本命だった。
三嶋さんは狩野川に限らず河津川、戸田大川、興津川、藁科川でもウナギを釣っていて、アユ釣り遠征に出かけるたび各地の穴を探っている。穴釣りは老若男女問わずにできる。ぜひ、天然ウナギのスリルと美味を味わっていただきたい。