旧江戸川で66cm のクロダイをバイブレーションで釣ったことのある加藤さんは 「ハードルアーを底すれすれに引ければイイ魚に出会えます」と言う。 「根掛かりが怖いです。どうやったら底すれすれに引けるのでしょうか?」 ハードベイトでクロダイを釣るコツを編集部員が教えてもらいました。
流れのある河川ではハードルアーが活躍します!
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2022年6月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
旧江戸川で66cm のクロダイをバイブレーションで釣ったことのある加藤さんは
「ハードルアーを底すれすれに引ければイイ魚に出会えます」と言う。
「根掛かりが怖いです。どうやったら底すれすれに引けるのでしょうか?」
ハードベイトでクロダイを釣るコツを編集部員が教えてもらいました。
Q1.加藤さんはなぜハードルアーを使うんですか?
A.活性の高いクロダイが釣れやすく、大きいサイズもねらえるためです。
クロダイのルアーフィッシングといえばワームを使ったボトム(水底)をねらう釣りが定番ですが、私は5~7cm 台のバイブレーションやシャッドのようなハードルアーを使ってボトム付近を探ります。
強いアピール力で広範囲を探れるハードルアーは、高活性なクロダイを効率よく釣るのに向いています。また、ハードルアーを使うと小型のクロダイが比較的反応しづらく、より大きい魚を選んで釣ることができます。小さい魚を極力反応させないことによって場を荒らさない(大きい魚をスレさせない)メリットがあるからです。
50cm を超えれば年無し(“ 何年生きているかわからないくらい大きい” という意味)と呼ばれるクロダイですが、旧江戸川で釣った66cm や、荒川で釣った64cmはいずれもハードルアーで釣りました。
加藤さんの旧江戸川攻略メインルアー(すべてメガバス製)
(左から)
・X75
・I × I シャッドTYPE Ⅲ
・マーゲイSW
・オニマル
・カットバイブ55
・ビラン70
Q2.どんなシチュエーションでハードルアーを投げますか?
A.根掛かりしやすい、流れのあるカキ瀬やゴロタ場で使います。ハイシーズンの砂地でも有効です。
クロダイはゴロタや石積み、カキ瀬などの硬い底質(ハードボトム)を好みます。カキ瀬はハゼやカニ、エビなどのベイトが豊富なのでクロダイが集まりやすい場所です。
ソフトベイトに比べ根掛かりが多いと思われがちなハードルアーですが、私のホームである旧江戸川にあるそういったゴロタやカキ瀬は、ボトムに当てすぎるとどんなルアーもすぐに根掛かってしまいます。そのためボトムを切ったスイミングが基本になるのですが、その場合はワームよりも沈む速度が遅いハードルアーのほうがスイムレンジの微調整をしやすく、結果根掛かりを回避しやすくなります。
砂地底でハードルアーを使うときはGW ~ 8 月のハイシーズンで、クロダイやベイトの活性が高くなっている時です。バイブレーションやシャッドでボトムに当て続け砂煙を立てながら巻くと反応がよい時があります。
ボトムを引いているとハリにかかったカキ殻。カキ瀬があるエリアはカニやエビ、ハゼなどのベイトが豊富でクロダイのストック量も多い
旧江戸川・見明川合流地点の上流にはフラットなハードボトムが広がっている
Q3.ハードルアーでクロダイを釣りやすい時期とタイミングはいつですか?
A.ベストシーズンは4 ~10 月です。爆発力があるのは前中潮で、タイミングは下げ始め~下げ5 分が釣りやすいです。
年中釣るチャンスがあるクロダイですが、よりハードルアーで釣りやすい時期は、水温の上がる4月末~10月半ばまでです。どの潮周りでも釣ることのできるクロダイですが、爆発力があるのは前中潮だと感じています。
ルアーチェンジで引きたい水深やスピードを調節。根にスレやすい釣りなのでリーダーが傷ついていたら結び変えよう
どの時間帯でも釣ることができるクロダイですが、釣りやすいのは下げ始め~下げ5 分の潮が動いている時間帯です。潮の動きが出ると、潮目や地形変化、流れのヨレなどの一等地に魚が集まりやすく、ねらいどころを定めやすいからだと考えています。潮が緩いと魚が広範囲に散ってしまうのか、釣果が散発になることが多いです。
下げ始め~下げ5分で流れが出ている時間帯が魚の反応を得やすい。岸際に露出する石は濡れているので、スパイクシューズを履くと滑りづらくなる
船が通ると波が出て、石畳を洗って濁りが出る。この濁りは岸際のクロダイの活性を上げることが多い
Q4.どのようにルアーをアプローチすればよいですか?
A.キャストはどの方向にしてもよいですが、ボトム付近をしっかりと引けるように巻きスピードやルアーのウエイトを調整しましょう。
バイブレーションをダウンに投げて早巻きで釣った1 尾。岸すれすれで食った。青みがとてもきれいな魚だ
Q5.バイブレーションの特徴と使い方を教えてください。
A.遠投性能と巻きスピードへの対応幅の広さが魅力。「速く巻く→浮く」「ゆっくり巻く→沈む」と覚えましょう。レンジはボトム付近が鉄則です。
メインに使ったバイブレーションはビラン70 の20gと15g。20gは下げ初めの潮位が高い時に使用して、潮位が下がってからは15gを多用した
特徴
バイブレーションは水中で巻くとボディーがプルプルと振動してアピールします。特徴は遠投しやすいこと、速巻きから遅巻きまで幅広い巻きスピードで使えることです。バイブレーション(シンキングモデルの場合)は、「速く巻けば浮き、ゆっくり巻けば沈む」という意識を必ず持ってください。モデルによって潜行レンジが決まってくるリップ付きルアー(シャッドなど)に比べて、バイブレーションは巻きスピード、ロッドを構える位置、ルアーウエイトなどで泳がせるレンジをアングラー次第で自在に操れますが、そのぶんねらったレンジを泳がせるのには慣れとテクニックが必要。実にマニュアル操作的なルアーです。
ボディー素材は樹脂のインジェクションタイプと、鉄素材のメタルバイブレーション(鉄板バイブ)の2種類があります。樹脂素材は比重が軽く、浅場でゆっくりと巻くときに使いやすいです。鉄板バイブは比重が重いので、樹脂製のバイブレーションよりも速く沈みます。流れが強すぎる場合や深場をスピーディーに探るときに有効です。
使い方
着水したルアーをねらいたい水深まで沈ませてから巻きます。底まで沈めると根掛かってしまうので気を付けましょう。旧江戸川であればメタルバイブレーションは10g、樹脂素材のものは14g を基準にし、どちらも状況に応じて10 ~ 20 gの間でローテーションします。
レンジコントロールの最初の手段はルアーウエイトの調整です。底を全く感じられない(底付近を巻けていない)ときや底付近をより速く巻きたいときには重く、反対にボトムを叩きすぎてしまったり、ボトム付近をもっとゆっくり巻きたいときには軽くします。
バイブレーションの強みは遠投のしやすさ。20m沖にあるブレイクの先まで投げることができる
レンジ調整はリーリングスピードとロッドを構える高さでも行なえます。バイブレーションの速く巻くと浮き上がろうとする性質を利用し、ボトムを叩きすぎている時は、リールを高速で巻きつつサオをあおることによってルアーを底から離します。そのために、ルアーを巻いているときはサオは水平~少し上くらいの角度に保ち、サオをあおれるだけの角度を確保しておくのがポイントです。サオをあおった後は、角度を水平近くに倒しつつ、ルアーが沈みこまないようリールハンドルを素早く巻いてイトのたるみを取り、リーリングを続けます。
リーリングスピードを上げてサオを立てることによって、バイブレーションを浮き上がらせることができる
Q6.シャッドの特徴と使い方を教えてください。
A.リップや浮力による根掛かり回避と、よりスローな誘いが可能です。バイブレーションには出せない左右のダートアクションも効果的です。バイブレーションとは逆に「速く巻く→一気に潜る」「ゆっくり巻く→潜りすぎない」と覚えましょう。
メガバスの「I×Iシャッド TYPE-3」は加藤さんの実績ルアー。2月の厳寒期、6℃という低水温でクロダイに口を使わせた
特徴
長いリップが根掛かりをかわしてくれるシャッドは、バイブレーションよりもスローなリーリングで、よりボトムにルアーを這わせるように引くことができます。スローフローティングタイプを使えば、浮かせることでも根掛かり回避できます。
重要なのは、シャッドはバイブレーションと異なり、レンジのコントロールが難しいところ。リップの長さなどによって潜るレンジが決まっているからです。ただし、これは裏を返せばアングラーが調節しなくともオートマチックにルアーが設定されたレンジを泳いでくれるともいえます。巻きスピードによってルアーが浮いたり沈んだりするバイブレーションとは異なり、シャッドはどんなスピードで巻いても基本的にルアーは潜っていきます。
使い方
着水させたら、サオ先を下げてリールハンドルを巻きルアーをねらったレンジまで一気に潜らせます。底に着く前に巻くスピードを緩めて、ゆっくりと底に当てながらルアーを巻きます。リーリングを止めると、流されたイトにルアーが引っ張られて浮遊するアクションが生まれます。この動きに反応するクロダイも多いです。また、イレギュラーなトゥイッチや障害物を乗り越えたときのヒラ打ちでバイトを誘発することもできます。
基本的に巻けば潜るシャッドですが、巻きスピードを遅めにすれば潜行角度を緩やかにすることはできるので、ボトムを叩きすぎたくないときは巻くのをやめるか、ロッドを上に構えてゆっくり巻くとよいでしょう。
潜らせ過ぎたくない時はサオを立てて巻く
レンジを下げて巻きたい時はサオ先を下に向ける
Q7.レンジコントロールに気を付けても、どうしても根掛かりしてしまいます。
A.思い切ってフロントフックを外しましょう。
まず、正しい根掛かりの外し方を覚えましょう。リーリング中にルアーがスタックしたら、強く引っ張ったり煽ったりするのはNG。よりフックが深く食い込んで回収不能になります。
まずはその場でロッドを高く掲げ、「パンパンパンッ!」とラインを瞬発的に張る←→緩めるを何度か繰り返します。軽い根掛かりなら、ラインのテンションが抜けたはずみでポロっと外れます。
それで取れないときは、ラインをピンと張った状態で、巻いてきた方向と反対側に回り込みます(アップストリームで引いていた場合はルアーの上流側へ、ダウンの場合はルアーの下流側へ)。反対側に回り込んだその位置で、再びラインを弾いて外そうと試みます。
最終手段は、腕にラインを巻いて(肌の上から直接は危険なので絶対にNG)、ラインをまっすぐ強く引きます。切れてしまうことが多いですが、パワーのあるラインを使い、しっかりしたリーダーとのノットが組めていれば、ルアーのフックが伸びて回収できる場合もあります。
また、根掛かりの予防策として最も効果が大きいのが、フックの数を減らすことです。私はどんなクロダイのバイトも逃さずに掛けたいのでフックを外すことはしませんが、その分根掛かりのリスクが高まるのは事実です。初場所で地形変化がつかめない時や、底付近を引く感覚をまずつかみたい場合は、フロントフックを外したり、さらにリアフックをシングルフックにするのもありでしょう。ルアーのボディー自体が挟まってしまう場合もあるので根掛かりゼロとは言えませんが、ロストは激減します。地形がつかめたり、クロダイのバイトがあっても乗らなければリアフックをトレブルフックにしたり、フロントフックを追加してフッキング率を上げましょう。
最初はなかなかうまくいかなかった編集部員クロハも、だんだんとレンジコントロールのコツをつかんできた
Q8.流れの強い河川で必要なクロダイのタックルを教えてください
A.ロッドパワーがあり、ティップも硬めのサオが使いやすいです。
ティップの張りが強いサオを使うと、根に当たったルアーをサオの硬さで弾いて根掛かりしづらくなります。ロックフィッシュ用のサオが使いやすいですが、シーバス用のサオであればML クラスを使うとよいでしょう。
ラインメンディングやファイトのしやすさを考慮すると、レングスは8 フィート6インチ~9フィートの長さが使いやすいです。
リールは2500番のハイギアがおすすめです。ミチイトにはPE の1号、リーダーは根ズレで切れないようにフロロカーボンの20 ポンドを巻くとよいでしょう。
ロングロッドを使えば根に潜ろうとするクロダイの顔を上に向けることができるのでファイトがしやすい
ランディングネットは必携アイテム
クロダイハードルアーは1 日にしてならず。ノーフィッシュのクロハは再稽古(リベンジ)を誓った!
レンジコントロールをできるようになれば、こんなにきれいなクロダイと出会える。流れの中で味わうクロダイのギュンギュンな引きをぜひ楽しんでほしい