「10回行けば9回は釣れますよ!」東京都・荒川に通うウナギフリーク・大川雅治さんの言葉だ。 都市河川のブッコミ釣りでアタリを出す秘訣は、仕掛けを入れる場所の選定にあった!
あえて泥底をねらう理由は…… ?
TOKYOアーバンウナギブッコミ釣り入門
◎つり人編集部
この記事は『つり人』2020年9月号に掲載したものを再編集しています。
「10回行けば9回は釣れますよ!」東京都・荒川に通うウナギフリーク・大川雅治さんの言葉だ。
都市河川のブッコミ釣りでアタリを出す秘訣は、仕掛けを入れる場所の選定にあった!
水深3mの泥底をねらう理由
都市河川でウナギをねらうならブッコミ釣りが王道だ。
電動自転車で荒川に通う大川雅治さんは6~8月、週2~3回の釣行ペースで日没前から21時ごろまでウナギ釣りを楽しんでいる。
「10回行けば9回は釣れますよ!2、3尾釣れることも珍しくありません」と言う。
都市河川にはウナギが思いのほかたくさんいるが、コンスタントに釣るにはコツが必要だ。この記事では打率9割を実現するためのノウハウを教わった。
今年で63 歳になる大川さんはママチャリタイプの電動自転車で荒川の釣りを楽しんでいる。コインパーキングに車を停めて歩くよりも楽だしポイント移動も気軽に行なえる。
前カゴにサオを入れ、後ろの荷台にバッカン( 釣り具一式を収納) を載せている
釣行時、大川さんが釣ったのは江北橋の下。足もとは護岸で岸寄りにはゴロタが広がっており、近くには橋脚がある。ウナギの隠れ場がたくさんありそうだ。
これらの障害物をタイトに探るに違いない……と思いきや、記者の予想は大外れだった!
大川さんは根掛かりのない泥底を選んで仕掛けを入れているのだ。
「たしかにウナギが多いのはゴロタや橋脚の周りかもしれません。けれど、ブッコミで釣れるウナギが多いのは泥底です。隠れているウナギは目の前にエサを落とさないと食ってくれませんが、巣穴を出て泥底を徘徊しているウナギは積極的にエサを捜している。都市河川のブッコミ釣りでねらうのは後者です」
泥底の捜し方は簡単。オモリを引いたときに底の感触がなく根掛かりが少ない場所を釣ればいい。
では泥底ならばどこでもいいのだろうか?
大川さんは流れが緩い場所を重視していた。そのほうがウナギの徘徊率が高いと感じているからだ。たとえばこの日は橋脚裏にある流れのヨレを重点的にねらった。
また、直接ねらうわけではないが、ゴロタや橋脚などの隠れ家が近くにあることは重要。
ウナギの行動起点は近いほうがいい。
流れが橋脚でカットされヨレる部分を集中的にねらった。アタリがなくても5分に一度はサオをもって聞いてみる
仕掛けを多投したのは水深3~4m。
この水深の塩分濃度( 海水のほうが比重が高いため底にきやすい) がウナギにとってちょうどいいのだろうと大川さんは過去の実績から推測している。
まとめると……。
●流れは緩いほうがいい
●隠れる場所が近くにある泥底がブッコミ場
●ウナギ密度が高い水深がある。荒川の場合は3~4m
上記の条件を満たしていればウナギは高確率で釣れるという。適当に投げるのと吟味した地点を射抜くのとでは天と地ほどの差が出る。それがブッコミ釣りだ!
場所編:ブッコミ釣りでねらうのはウナギの隠れ家ではなくエサ場!
●川のどこを釣るか?
ブッコミ釣りではポイント選びが極めて重要。大川さんのような電動自転車スタイルだと釣りができる場所は無限にある。そのなかでポイントをどう決めるのか……?
大川さんが着目するのは流れの当たり方。流れが強く当たる場所( たとえばテトラがある場所やカーブの外側) は避け、流れが緩やかなところにねらいをつけている。
急深な場所よりもなだらかなポイントのほうがウナギのエサ場になりやすいからだ。
そのうえで、近くに橋脚やゴロタなどウナギの隠れ場があればベストだが、そこに仕掛けを入れるわけではないのがミソだ。
足立区側の足もとにはゴロタが入っている(満潮時は水没)。テナガエビが釣れる。ウナギ釣りではゴロタはねらわない
干潮時の護岸を見るとカラスガイが最下部に付着していた。よく見るとどのカラスガイも下に集中している……! これは底近くの水の塩分濃度が高いからだと大川さん。同じようにウナギにも快適な塩分濃度がある。つまり釣れやすい水深があるのだ。荒川では水深3~4mにウナギが多いと大川さんは感じている
●釣り座と投げる場所の選び方
ずばりねらうのは泥底。
ウナギは障害物に隠れる習性があるのでゴロタや障害物があるところをねらいたくなるが、ブッコミ釣りでアタリが出やすいのは根掛かりしない泥底だと大川さん。
エサを食べるモードになっているウナギは巣穴を出て泥底を徘徊することが理由だと考えている。
●この日釣ったポイント詳細図
昼間のポイント( イラスト下側) はゴロタと橋脚がありいかにもウナギが潜んでいそう。
でもねらうのはその沖の泥底だ。「流れが緩い泥底」がエサ場になっているという仮説のもと、橋脚の裏のゾーンにある泥底をねらい打ちした。
あえて流される15 号のジェット天秤を使いオートマチックに広範囲を探ったのもキラリと光るワンプレーだ。
日没後は対岸へ。こちらは泥底の浅瀬が広く、ウナギが徘徊しやすい夜間にマッチしているからだ。
1日を通じて、根掛かりがあればその場所には次は投げなかったことも付け加えておこう。
シンプルかつ待ちのイメージが強いブッコミ釣りだが、だからこそ、漫然と投げていてはなかなか釣れないのだ。アタリを待つ間も頭脳はフル回転させよう。
道具編:「根掛かりは川に申し訳ない」
ハリからリールに至るまで根掛かり対策を徹底!
●サオは軟らかいものが◎
大川さん愛用の釣りザオはリバティクラブショートスイング15号-300。
グラス含有率が高くしなやかなので軽い力で投げやすく、なおかつアタリを弾きにくい。
島のハマフエフキねらいや荒川のコイ、ウナギ、クロダイなど多彩な魚種をこの1本で釣っている。
リールシートはテープで補強
障害物のないオープンな場所ではミニパック10 号-210 などよりライトなサオも使っている。ウナギのブッコミ釣りではサオは2本または3本出している
●ブッコミ釣りのリールにソルティガを使うのはなぜ?
リールはソルティガ3500 または4000を愛用している。
ソルトルアー用のリールをなぜブッコミ釣りに? と思ったがその理由はトルクにあった。
パワーハンドルと相まってとても楽に仕掛けを巻き取れる( ウナギヒット時も同様)。
結果的に回収スピードが速くなりジェット天秤が浮き上がるので手前のゴロタに仕掛けを食われる根掛かりが減るのだ。
「とにかく楽です( 笑)。一度使うと戻れません。ブッコミ釣りでもリールにこだわると面白いですよ」
●オモリはあえて流される重さを選ぶのがキモ
ジェット天秤を使っているのは回収時に浮き上がりやすく根掛かりにくいから。ゴロタなどに対してすり抜けやすい点も気に入っている。
重さは10 ~ 20 号。気持ち流される重さを使うことで自動的に広範囲を探ることができる
●ハリは流線をメインにエサで使い分け
ミミズ使用時のハリは流線( 左) がメインで12・13 号を多用する。
ドバミミズのときはウナギバリ( 中) の13 号を合わせ、ハゼやカニのときは丸セイゴ( 右) の12 か13 号。
「一般的な基準よりも小さめのハリを使っています。ハリが大きいと根掛かりが増えますし、イトが切れる可能性が高くなる。とにかくゴミを残すのは最小限にしたいんです」。
ちなみに結びは内掛け結びで7回と多めに巻き付ける。ハリ掛かりしたウナギはチモトをハムハムするからだ
●太く短いハリスの理由は?
図のようにイトはいずれも太め。これは根掛かり時にできるだけ仕掛けを切りたくないからだ( ゴミを残したくない)。対してハリは小さめ。このバランスであれば流線のハリを伸ばしたり折ったりして仕掛けを回収できる。
ハリスが短めなのは流れがある場所でもエサを底べったりにつけたいから。ハリスが長いとセイゴなど他魚種のアタリが増える印象があるという。同じ理由で比重の高いフロロカーボンを選択している。
●その他の道具
小さなアミはエサ調達用。テナガエビやイナッコをすくう
サオを固定する三脚
サオ立ての先端にLED ライトをロッドベルトで巻き付ける。日没後に穂先を照らすためのひと工夫だ。このライトだけで穂先がハッキリ視認可能
LED ライトは柵などにロッドベルトで縛り付けるだけでもOK
締めで使う小型ナイフ
釣れたウナギはスカリやエアポンプ付きバケツに入れて生かしておく
エサ編:ミミズを中心に現地調達系もグッド!
●ドバミミズの掘り方
ドバミミズは非常に食いのいいエサだ。荒川の近くではなかなかとれないため大川さんは市販のミミズを使っているが、近所で掘れる方はぜひ試してほしい。側溝や雑木林などの柔らかい土をスコップで浅く掘るだけでOK。太陽光が当たりにくく、落ち葉があり湿った土がベスト・オブ・ベスト。ダンゴ状のフンを見つければチャンスだ!
●ミミズは釣具店で簡単に入手するのもOK
メインのエサは釣具店で購入した「ミミズちゃん熊太郎」。3匹を通し刺ししている。この日の2 尾はいずれもミミズで釣った
●小魚はデカウナギ率高し!
アミですくったイナッコもエサにした
●カニも面白い
ゴロタにいるカニをペンチでゲット。アタリを待つ間にエサを調達するのも楽しみのひとつ
カニもいいエサだ。足の付け根にハリを掛ける
●テナガエビは一石二鳥
アタリを待つ間はテナガエビやハゼ釣りを楽しむことも多い。テナガエビは調達が楽しい上によく釣れるエサだ
●ハゼ系は特エサ
マハゼやヨシノボリは特エサだと大川さん。体長5cm 前後がベストで口にハリをチョン掛けする。死んでいても食いは落ちないという
実釣編:14時からの釣りで2尾ゲット!
釣行時の荒川は前日までの雨で濁っていた。本来は日没直前から20時までが最大のチャンスだが、濁っていれば昼間もウナギがお出かけしやすくなるため釣れる確率が高い。
潮回りに関しては大川さんは下げ潮でなおかつ流れが緩いタイミングがチャンスと考えている。上げ潮はセイゴやアカエイなどの他魚種が掛かりやすいのだ。とはいえ、潮回りに関しては気にしすぎなくてOK だという。
14時に釣りをはじめて間もなく30㎝に満たない小型がヒット。大川さんは丁寧にハリを外すとすぐにリリースした。
「小さい1尾ですがウナギが動いているのはいいことです。隠れ家にいるウナギは1尾ずついますが、徘徊しているウナギの近くにはほかの個体もいる確率が高いと感じています。アタリが続くと思いますよ」
そのとおり、30分後にツン……! とアタリが出るとサオに重い手ごたえが乗った。ゴリ巻きで水面を滑ってきたのは45㎝を超える見事なウナギだった。打率9割は伊達ではない。
「1回アタリが出ると続くことが多いです」という言葉のとおり、1尾目の30 分後に2尾目がヒット! ツン、ツンという間隔のあるアタリが出たらウナギ濃厚。手でサオを持ち、再びツンという感触があったらすぐに合わせる。掛かったら一気にゴリ巻きで寄せるとバラしにくい
15 時15 分に釣れたのは40cm 台後半のナイスサイズ! 夜釣りのイメージが強いウナギのブッコミ釣りだが昼間でも充分チャンスがあるのだ。ちなみに荒川のウナギのアベレージは45 ~ 50cm。60cm もねらえる
釣れたウナギはスカリやエアポンプ付きバケツに入れて生かしておく
納竿時に締めるのが大川さんのやり方。このように頭をナイフで切ればOK。泥抜きの必要性は感じていないという。この1尾は自宅で蒲焼きにして美味しく食べた
都市河川ウナギのブッコミ釣りは8月もまだまだ最盛期。ウナギが隠れている場所を捜すのではなく、エサを食べたがっているウナギの動きを追うことが重要。ウナギの気持ちを読めばブッコミ釣りの成功率は急上昇するのである。
空が薄暗くなり始めてから暗くなるまでは潮に関係なく最大のチャンス。ウナギがエサを求めて徘徊しやすいタイミングだ
夜はなだらかな地形の泥底を釣る。ウナギのエサ場になっている可能性が高いからだ
ライトアップされたスカイツリーを眺めながらブッコミ釣り。夏がもっと好きになる遊びだ
東京都/荒川