高校3年で名作HMKLを生み出した泉和摩さんにジャークベイトについて教えてもらいました。 バス釣りの専門誌バサーが、バス釣りのテクニックから道具、試合の最新情報、初心者のバス釣り入門までバスフィッシングのすべてを公開しています。
「ラパラF」+「ダートアクション」がHMKLの出発点
Basser編集部=写真と文
低水温期にアドバンテージを発揮するルアーのひとつがジャークベイトだ。高校3年生にときにオリジナルHMKLを完成させた泉和摩さんはこのルアーの第一人者。
津久井湖で拾ったラパラF7に「ある性能」を付加したことが、日本のバスフィッシング史に残るミノー誕生のきっかけとなった。
それ以来名作ルアーを生み出し続ける泉さんに、ジャークベイトについて教えてもらいました。
解説=泉 和摩(いずみ・かずま)
1955年福島県生まれ、東京都在住のプロフェッショナル・ルアービルダー。1987年から1990年までの4年間、B.A.S.S.インビテーショナルに日本人として初めてフル参戦を果たす。JBではJBTA時代から優勝、入賞多数。1997年にトップカテゴリーが少数精鋭化されてワールドシリーズがスタートすると、その第1戦の生野銀山湖で、ワンオフのHMKLを駆使して優勝。2000年にはW.B.S.スーパースリーデイズを勝っている。
◎HMKL
ショールーム:東京都小平市御幸町123-1
営業は月~土曜日の9:00~17:00。
日・祭日は定休
この記事は2012年12月号に掲載されたものを再編集しています。
ラパラFの泳ぎを崩す
「あのときは本当にボコボコに釣れましたねぇ」と、泉和摩さんは振り返る。
1972年、当時から気難しいバスが多いフィールドとして知られていた神奈川県の津久井湖で、泉さんはF7(通称フローティングラパラ7cm)を拾い、そのルアーで入れ食いを体験した。
「ラパラというのは凄いものなんですねぇ、と驚きましたねぇ。具体的には、小気味のいいローリングアクションと、それに伴うチカチカと明滅するようなフラッシングです。それと、すでにルアービルディングにのめり込んでいた私が感心したのは、泳ぎのバランスが非常にいいことです。意図的に崩そうとしても崩れない、それくらい安定して泳ぐのがラパラの凄さです。構造はシンプルですが、あの動きを再現するのは難しいんですよ。ふふふ」
泉さんはこの出会いからインスピレーションを得て、HMKL第1号の試作品を作った。しかし、そのミノープラグに持たせた機能のなかでもとくに重要な部分は、F7と真逆だったという。つまり、その違いがラパラFとHMKLの違いと言っていい。
「リトリーブには、スローからファストまで対応して安定して泳いでほしかったのですが、ロッドワークを加えたときは、ただ前につんのめるのではなく、ヒラヒラッ、キラキラッといわゆるダートアクションをしてくれたらF7はもっと釣れると思いました。そこがHMKLの出発点でしたねぇ」
K-Iミノーシリーズはバルサ製のオリジナルHMKLをプラスチック素材で量産化したモデル。写真はK-Iミノー85
ふたつの疑問
なぜ、ジャークベイトにはリップが付いているのか。
このルアーの性能を語るうえで欠かせないとされるダートアクション。そのキレを増し、ダートの距離を伸ばすことを優先するなら、水の抵抗を受けてしまうリップは明らかにジャマな存在だ。事実、ソフトスティックベイトのほうが、スライドダート性能は明らかに高いことを考えれば、リップ付きのミノープラグをしんどい思いをしながらジャークすることには意味がないように思えてしまう。
そして「ジャークベイト」には実体がないのではないか、とも思う。
ただ巻きで使うならともかく、ジャークしたときに、ミノープラグの性能差で釣果に大きな違いなど出るのだろうか。それこそしんどい釣りにはなってしまうが、バンバン、バシバシとジャークして無理やりダートさせてしまえば、何を使ってもいっしょなのではないか。
たとえばラトリンログ(スミスウィック)とロングA(ボーマー)はどちらもジャークベイトの名作とされるルアーだが、これらの使用感には共通点が少ない。つまり、「ジャークベイト」は実体がないルアーで、ミノープラグをそのように使ったときだけの呼称なのではないか、と……。
しかし、泉さんによれば名作と呼ばれるジャークベイトは、ある特徴を備えており、そこにリップの必要性があるのだという。その答えは次回。