Basserで連載されていた荻野貴生さんと沖田護さんの連載「オギタ式」。この連載でふたりが数多くのバスをキャッチしたのが「チェリーリグ」。撃ってよし、ズル引いてよしのこのリグの特徴をふたりが改めて紹介します。
不得意を知って得意を活かす
Basser編集部=写真と文Basserで連載されていた荻野貴生さんと沖田護さんの連載「オギタ式」。この連載でふたりが数多くのバスをキャッチしたのが「チェリーリグ」だ。撃ってよし、ズル引いてよしのこのリグの特徴をふたりが改めて紹介します。
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姿勢、スリ抜け、フッキング率のよさ
前回解説してもらったように、感度のよさはふたりとって想定内のメリットであった。最初は釣れる理由もそこにあると思っていたが、それだけじゃない、というか、ほかのメリットのほうが大きいことに気付いていく。
荻野(以下、荻) 「ヨレないことや感度もそうですが、本質は姿勢、スリ抜け、そしてフッキング率の高さです」
沖田(以下、沖) 「本来、この3つのメリットが同居するリグは考えにくい。だって相反する要素でしょ」
チェリーリグを解説する荻野貴生さん(左)と沖田護さん(右)
荻 「そう! フッキングがいいってことはフックがルアーの中心にあって常に上を向いているということですから、イコール、ルアーの姿勢がいいってことです」
沖 「近いのがジグヘッドリグでありダウンショットリグですよね」
荻 「そう。ジグヘッドもそうだしラバージグもそうだけどフックの軸を背骨のように貫通させればワームの姿勢は安定するし、フックも常に上を向いている。引っ張ったりスイミングさせればワームの動きも悪くない。フックポイントもむき出しだからフッキング率だって高いよね」
沖 「でもそれはスリ抜けが悪いことの裏返しでもあるから根掛かりはしやすい。込み入ったカバーにたとえガード付きでもジグヘッドリグを投入する気にはならないですから」
荻 「フッキングのよさとカバーのスリ抜けのよさを同居させたのがラバージグだけど、着底後のワームの動きはそこまでじゃない。背骨が入っているから姿勢はいいけれど腹側にきれいに水が流れないし動きも抑制される」
沖 「だから動くラバーが必要なわけで、あれはリグではなくラバージグというひとつのルアーですからね。そして、止めたりシェイクで細かく誘うならダウンショットリグのほうがワーム本来の持ち味を出せるけど、ダウンショットはヨレるし、やっぱり込み入ったカバーに撃てるほどのスリ抜けのよさは持ち合わせていない。ヨリモドシなど付けたらいよいよスリ抜けが悪いから出しどころが減ってしまいます」
ラバージグに近いダイレクトな操作性で、ラバージグにはないワームの自由度が得られる。ダウンショットリグ並みの姿勢のよさとフッキングのよさがありながらダウンショットリグでは躊躇してしまうカバーへ大胆に撃ち込んでいける
ラインを弛ませるとワイヤーが立っていることもあれば倒れ込むこともある。いずれにしても姿勢は保ったまま若干浮いているから各パーツが動いて誘ってくれる。ここから数mm動かすつもりでラインを張ればバレットシンカーが斜め立ちするため感度が高まり、そして簡単にボトム立ちする
荻 「ボクらもオッサンですから、まあまあ長いことバス釣りをしてきているわけなのに、使うたびに新発見に遭遇してしまうリグなんです。現にマモちゃんの十八番だったヘビダンだってかなり出番が減ったよね。いわば釣りのスタイルを変えさせてしまう力があるリグだと思うな」
沖 「ショートリーダーに関してはほぼ出番がなくなりました。ただ、ロングリーダーの釣りがなくなることはないです。アニキだってあんなに多投していたテキサスリグの出番が減ったでしょ」
荻 「まあね。テキサスリグのカバーへの入れ込みやすさは魅力ですけど入れ込んでしまえばチェリーリグに軍配が上がってしまうからね。まず止めている状態がまるで違う。強制的に浮かされていることでワームの背中側だけではなくて腹側にもきれいに水が流れるからワーム本来の動きが損なわれない。それは何か引っかけて外したりほぐしたりするときもそうですからバイトチャンスが増えますよね」
ボトムを這わせるように操作してもほんのわずかにワームが底を切っているためワームの腹側にも水がきれいに流れる。だからワーム本来のアクションが損なわれない。「ただし、バスの目線がそこまで下ではないときなどはロングリーダーのヘビダンが今も活躍しています」と沖田さん
沖 「テキサスリグの場合、シンカーにワームが追随してしまうから腹側に水は流れにくいし、そもそも背中が上で腹が下かどうかすら怪しい。ひっくり返っているかもしれないし横倒しになっているかもしれない。チェリーリグはそうならないからフッキング率が高いし、上アゴのド真ん中を貫通している頻度の高さがそれを証明しています」
荻 「ただ、テキサスリグの出番は減ってもなくなることはない。シンカーロックを使わないテキサスの動きって独特で、ワームがシンカーにくっつこうとしたり離れようとするあの動き、レスポンスはチェリーリグでは出せません」
沖 「マットカバーもシンカーの先端でラインがふたつ折りになるテキサスリグより、まずシンカーでカバーを貫通してスイングして直線状になったフック(ワーム)があとから導かれるチェリーリグのほうが入りやすい」
荻 「とはいえ、琵琶湖などによくある分厚いマットカバーに対してはシンカーとフックが完全に一直線になるパンチングに特化したリグのほうが効果的だし、ボクも琵琶湖ガイドでは完全に使い分けています」
沖 「ウエッピングやパンチングはシンカーからフックまでの距離が短いほどいい。重いシンカーから直接フックが出ているような形状なほどズボって入っていく。チェリーリグはシンカーがズボッと入ったあとワイヤーが入ってからフック(ワーム)が来るからズボズボっとなる。ワイヤーを短くすればズボボって入るんだけど、フックの自由度が高くなる関節(スプリットリング)が入っていないから完全な一直線にはならない」
あまりに分厚いマットカバーはパンチングに特化したリグのほうがストレスなく扱える。とはいえこの程度の薄さのカバーならスルスルと入れられる。入りにくいときはワイヤーを短くすると入りやすくなる
根掛かりの恐怖と隣り合わせだった厄介な巾着も大胆に撃ってズル引ける
荻 「そうだね。餅は餅屋だもん。ちょっと薄めで、着底後に少しでもズル引けるスペースがあるならチェリーリグを入れるってことだよ」
沖 「あと、濃いウイードも苦手といえば苦手。どうしてもバレットシンカーの上から延びるワイヤーにウイードがまとわりつくから。外せるんだけど、外そうとすれば大きく動かしてしまう。大きく動かさないでもワームの動きをよくすることができるリグだから、ここはワイヤーを使わない細長い棒状のシンカーを使ったリグのほうがいい」
荻 「万能ではないからね」
沖 「そういうことですよ」
荻 「フック交換はできないし、シンカーも交換できなくはないけどワイヤーが短くなっているから現実的ではない」
沖 「うん。使ってみて苦手なシチュエーションや短所も見えてきたね。でも、それらを補って余りある長所があるとボクらは実感している」
シンカーにワイヤーを通したらペンチで曲げ、曲がった部分をほんの少し残してペンチでカット。そのわずかな曲がりをシンカーの底の凹みに押し込んでセットする。シンカー交換は不可能ではないが、フックと同様、交換できないものと考えるべきだろう
……次回、オギタコンビが愛用する「チェリーリグ」のひみつ :第3回
「メリットのまとめとふたりの愛用ワーム」
2017年3月25日発売のBasser5月号で特集するのはテキサスリグ。リーダーレスダウンショットというカバー攻略のライバルが世に定着した今、それでもなお青木大介さんと小森嗣彦さんという国内最強を争うふたりがテキサスリグにこだわるのはナゼなのか? その理由と活用術を紹介します。そのほかにも、このリグの魅力を100%以上引き出している多数のアングラーの技を掘り下げていきます。
荻野貴生さん&沖田護さんコンビが映像でも活躍
2017/03/23