日本中のルアーロッドの情報を集約することを目指すウェブサイト「Rods.jp」。「ルアーロッドのマッチングアプリを作りたい!」という思いで企画を進める柏瀬巌さんに話を聞いた。
目指すのは国内のルアーロッドを網羅した「ロッドのマッチングアプリ」
編集部=文と写真
この記事はBasser2023年5月号でも読むことができます
日本中のルアーロッドの情報を集約することを目指すウェブサイトが立ち上げ間近だ。
最大の特徴は統一の基準でベンディングカーブを計測していること。
「ルアーロッドのマッチングアプリを作りたい!」という思いで企画を進める柏瀬巌さんに話を聞いた。
柏瀬 巌 (かしわせ・いわお)
1968年5月31日生まれ。群馬県太田市出身・在住。同市のプロショップ・オジーズを営んで25年。「モノではなくコトを売りたい」をモットーにサービスや情報の提供に注力している。日本釣振興会常任理事。
ロッド選びの道しるべ
皆さんはロッドを購入する際何を決め手にしているだろうか。ロッド選びの難しいところはメーカーによってパワーランクやアクションの設定の基準が違うことである。A社のMパワーはB社にとってはLパワーだったりする。パワーやアクションは定量化が難しい分野なので仕方がないことではある。そんな現状を少しでも解消したいと考え、ロッドの情報サイトを作り始めたのが柏瀬巌さん。群馬県の老舗プロショップ・オジーズの店長である。なぜ釣具店の店長がロッドのサイトを作ろうと考えたのか。
柏瀬 「そもそも、私自身がロッド選びに苦労しているんです。今使っているロッドより少し硬くて先調子のサオが欲しいなと思ったとき、現物を手に取って確認できれば一番いいんですが、残念ながらそれは難しい。各メーカーのカタログスペックを見て『これがいいんじゃないか』と取り寄せてみると『何だよ!今のより柔らかい!』みたいな失敗が多い(笑)。釣具屋の私ですらそんな状態なので、一般の皆さんはどうやってサオを選んでるんだろと……」
そんな柏瀬さんがまず考えたのは日本中のルアーロッドを展示したショールームを作ること。これならお客さんがロッドを手にとってニュアンスをたしかめることができる。しかしこれは費用や労力の面で現実的ではなかった。
そこで着手したのがバーチャルショールーム。つまりウェブサイトである。ロッドの基本情報(長さや重さ、メーカー設定のパワーやアクション、解説文)を掲載するのは当然として、定量化しにくいパワーやアクションをメーカーの垣根を越えて比較できる仕組みを考えた。それが統一基準で計測されたベンディングカーブを掲載することである。
統一基準のベンディングカーブ比較
同じ基準のベンディングカーブを計測するということは、同一のウエイトと方法でロッドを曲げる必要があるということだ。カーブの情報を自社のウェブサイトに載せているメーカーはあるが、ロッドの角度やウエイト、計測方法がバラバラなので比較できない。
そこで、なんと柏瀬さんはロッドを曲げる測定器の開発とサイトの作成をスタートさせた。構想から完成が見えるまで5年かかったという。
そのマシン「T.S.K」(愛称は釣り竿測定君)はオジーズの2階にあり、今後、ウェブサイトへの掲載をOKしたメーカーのロッドをすべてここで計測する予定だという。
細部はお見せできないが、これがベンディングカーブ計測のためのマシン「T.S.K」。ロッドを同じ角度で保持し、ウエイトごとにカーブを記録することができる
「軸トルク」や「張力」などをリアルタイムで計測・記録することができる。開発には天才エンジニアと二人三脚で3年を要した。ただし、あまり細かい情報を入れすぎると逆にわかりにくくなるため、ベンディングカーブの掲載をメインとすることに決めたという
100g、200g、300g、400g、500gといった規定のステップごとの負荷をかけた状態でロッドの曲がりをイラスト化し、一枚の図に合成して掲載する。便利なのは複数のモデルの図を重ねて比較できる機能がついていること。「どちらが硬いのか」など気になるポイントをひと目で比較できるのだ。悩んでいる2本のロッドで比べるのもいいし、使い込んでいる手持ちの番手と購入検討中のモデルを重ねてもいい。パワーランクやアクションとして表記されている情報以上の、かなり具体的なニュアンスがつかめるはずである。
そのほか、カタログには載りきらない情報をしっかり入れることにもこだわった。
柏瀬 「自分はロッドを選ぶときにガイドの材質やサイズをかなり気にするんですが、メーカーによってはモデルごとのガイド個数やサイズが表記されていないこともある。Rods.jpではすべてのサオのトップとバットガイドの種類とサイズを明記します。あとリールシートの種類もわかるようにする予定です」
いちロッドフェチとしてガイドの情報は外せないと柏瀬さん。Rods.jpではタイプやサイズを記載する
イメージするのは「ロッドのマッチングアプリ」。日本にあるすべてのルアーロッドを網羅するのが目標だ
2023年3月現在、ウェブサイトの骨組みは完成し、あとはロッドメーカーに話をしてロッドを集める段階に入っている。最後に柏瀬さんに今後の目標を聞いた。
柏瀬 「日本に存在するすべてのルアーロッドをRods.jpに掲載したいですね。メーカーにとっては販売促進になり、我々釣具店にとってはサオがよく売れるキッカケになり、なにより釣り人の皆さんにとってはロッドを選びやすくなる。そんな三方よしのウェブサイトになれば最高ですね。釣りザオのマッチングアプリのようなイメージで使ってもらえれば嬉しいです。また、釣り人の皆さんだけでなく、メーカーや釣具屋さんにも活用していただければいいなと思っています。正直なところ、現在釣具店は流通形態の変化で、なかなかサオを在庫することが厳しいんです。そして、ホントの最終目標は日本中の釣具店がまた元気になってロッドの店内在庫が増えて、こうしたウェブサイトの必要がなくなること。役目を終えるときがきたら一番の成功ですね」