桧原湖で活躍するプロガイド高梨洋平さんに表層におけるPEラインの使い方を伺いました。
見切らせず、バラさず、トラブルレスな表層PE操作術をご紹介します。ラインメンディング編
桧原湖で活躍するプロガイド高梨洋平さんに表層におけるPEラインの使い方を伺いました。
この記事はBasser2020年12月号の記事を再編集しています
高梨洋平(たかなし・ようへい)
1990年生まれ。福島県出身・在住。桧原湖で活躍するプロガイド。
高頻度で更新される詳細なガイドブログは、桧原湖釣行をするサンデーアングラーの貴重な情報源となっている。
■高梨ガイドサービスブログ https://takanashi.bassguide.jp/blog.php
目次
- 桧原湖プロガイド高梨洋平さんに訊く 表層ゲームにおけるPEラインのメリットと使い方 その1~ラインメンディング編~
・細いPEを表層で使うメリット
・釣果に差が出るラインメンディング
・風が吹いているときのラインメンディングの方法
・例外:I字の「流し」 - 桧原湖プロガイド高梨洋平さんに訊く 表層ゲームにおけるPEラインのメリットと使い方 その2~リーダー編~
・細いPEに重要なリーダーシステム
・おすすめのリーダーの長さ
・おすすめのラインの太さ
・PEラインとリーダーの結び方
・高梨さんおすすめの愛用ライン+α - 桧原湖プロガイド高梨洋平さんに訊く 表層ゲームにおけるPEラインのメリットと使い方 その3~ルアー・タックル選び編~
・おすすめの表層ルアー5選
・おすすめのフック選び
・おすすめのリール選び
・おすすめのロッド選び
・高梨さん使用タックル
細いPEを表層で使うメリット
バスフィッシングにおいては長らくフロロカーボンラインが主流となっているが、太いPEはフロッグやパンチングなどのパワーゲームにおいて広く使われてきた。それはひとえに、PEがフロロなどのモノフィラメントラインに比べて「同じ号数(太さ)なら圧倒的に強度がある」という理由からだろう。
また、細PEは「同じ強度ならモノフィラメントより圧倒的に細くできる」という理由からも選ばれている。フィールドのハイプレッシャー化やI字系などの表層系フィネスの定着により、「軽いルアーを、より遠くに飛ばしたい」というシチュエーションが増えてきたため、細くかつ強いラインが求められているのだ。
たとえば、フロロの引っ張り強度と太さの比は4Lb=1号(直径約0.165㎜)くらいが一般的。一方、高梨さんが愛用するPE「スーパートラウトエリアインフィニティ」ならば、5.6Lb=0.2号(直径約0.074㎜)。フロロの半分以下の直径にもかかわらず、1.5倍近い強度が出せるわけだ。
高梨「表層ルアーにおいては、PEにはほぼメリットしかありません。強度を持ったままラインを細くできることで飛距離が出せますし、伸びないため離れたところでのバイトがしっかり掛けられ、ルアーアクションも付けやすい。浮くという特性も表層系ルアーには合っています。根ずれに弱い? リーダーを組めば問題なしです。風に流されやすい? それはメリットにもなりうることですし、アングラー側の操作で充分コントロールできます。いずれにせよ、デメリットとされている部分は、正しい知識とライン操作ですべて解消できます」
このように、表層フィネスゲームにおいては、高梨さんのなかに「PEかフロロか」という議論は存在しない。PE一択なのだ。ここからは、そんなPEのメリットを最大化し、デメリットを解消するための方法論を紹介していく。
釣果に差が出るラインメンディング
PEの弱点としてよく挙げられるのが「風に流されやすい」ということ。キャスト後、空中に放出されたラインが風でたわんだ状態で水面に落ちることで、ルアーの操作性が下がってアクションが不自然になったり、フッキングがもたついたりしてしまう。これらを解消することはできるのだろうか。
高梨「ラインメンディングさえできればOKです。着水したルアーと自分の間にあるラインをできるだけ直線状態で水面に落とすこの技術こそが、PEで釣果を出すための最重要課題といっていいでしょう。ガイドで表層の釣りをしていても、釣果が出るお客さんとそうでないお客さんの違いはほとんどがラインメンディング技術の差になります」
簡単にラインメンディングというが、軽量な表層系ルアーにおいては難易度が高いように感じる。重量のあるルアーや巻き抵抗のあるルアーであれば、キャスト後リーリングをするだけで簡単にラインが「ピン」と張るだろう。しかし、たとえばI字系ルアーをキャストした際、空中でたわんだイトを巻き取るとどうなるか。ルアー自体がその場にとどまろうとする力がないため、ラインはたわんだままルアーが手前に動いてしまうだけだ。ルアーを動かすとバスに見切られてしまうような虫パターンやI字系の表層放置などにおいて、ルアーを動かさずにラインメンディングすることはできるのか。
正しくラインメンディングを行なえば、このようにアングラーとルアーの間のラインが一直線になる。表層ルアーを扱ううえで必ず身に付けたいテクニックだ
高梨「まず、そもそも余分なラインが空中に放出されないよう、風のある日は低弾道でのキャストを心掛けましょう。ここから大事なこと言いますよ。『ラインメンディングはルアーが着水する前に完了せよ』です。ラインをまっすぐ水面に落とすには、アングラーだけがラインを張ろうとしてもダメで、ルアーにもラインを引っ張るのを手伝ってもらわなきゃいけないんです。軽量で抵抗のない表層ルアーにそれは期待できないのですが、着水前の飛行中だけはラインを引っ張ってくれているんです。
つまり、ルアーが着水してから慌ててイトふけを取るのではなく、ルアーが飛んでいる最中にフェザリングで軽くラインを張るようにテンションをかけたり、ロッドを風上側に倒して水面に落ちるラインの軌道をコントロールしたりする作業が必要なんですね。ある程度PEに慣れてる人なら自然にできていることでもありますが、これができるようになったら表層ルアーでの釣果がグッと上がりますよ。
ちなみに、細すぎるPEは軽くて風に流されやすいと思われがちですが、僕の感覚では逆です。細いほうが空気抵抗を受けにくいので、シュパッとラインメンディングがしやすいです。0.4号と0.2号で比べてみるとよくわかります」
風が吹いているときのラインメンディングの方法
ルアーが着水するまでが勝負!
スリークオーターキャストなどで、ライナー軌道で鋭くルアーを飛ばす。余計なラインを放出させない
ルアーの飛行中、必要に応じてフェザリングを行ない、飛距離を損ねない範囲でラインにテンションをかける
ロッドを風上方向に倒し、ラインが自分の思い通りのコースに着水するようコントロール
例外:I字の「流し」
高梨「ラインメンディングが基本となるI字系の釣りで、例外的にあえてラインメンディングをしない『流し』と呼んでいるテクニックがあります。これはPEの風への弱さを逆手に取ったもので、PEでないとできない釣りです。
方法は簡単です。キャスト後、空中で風に押されてたわんだラインをそのまま水面に落とし、ゆっくり巻いてきます。この釣りのメリットは2点あります。
まず、バスがルアーをチェイスした視線の先にボートやアングラーがいないため、より警戒させず食わせやすいということ。
ふたつ目は、ルアーの軌道が途中で変わることで食わせのキッカケになるということです」ということは、意図的に「流し」をする場合、ラインが横から風を受けるような方向でキャストをする必要があるのだろうか。反対に、ラインメンディングをしっかりやりたい場合は、風上か風下に向いてラインが横風を受けないようにキャストすべきなのか?
高梨「『流し』をしたいとき、ラインが風を受けるようにキャストするのは正解です。ですが、ルアーをまっすぐ引きたいときも、風が強すぎない限りは同じような方向のキャストをすることが多いです。I字の釣りにおいては、ラインをまっすぐに水面に落とすことよりも優先させたいことがあるからです。それが、『ルアーの側面に波を当てたい』ということです。
ジョーダンなどのI字ルアーを巻くスピードは、基本的にハンドル1回転にかける時間が5秒くらい。やってみるとわかりますが、かなりスローです。クリアレイクということも相まって、バスはよくルアーを観察できる状態です。
そんなとき、ルアーに横波を当ててわずかにロールするようにしてやることで明滅やシルエットの変化が生じ、バスへ効果的にアピールしつつ、違和感なく食わせることができるんです。
風があるとラインメンディングも大変ですが、風によりある程度水面が波立った状態のほうが食わせやすいので、風はウェルカムですね。
ただ、ラインメンディングに慣れるまでは横風を受けにくい風上、風下に投げるのも全然OKですよ。 それで釣果がガクッとなくなることはないと思います。
むしろ、ひとつのスポットをしっかりねらいたいときは、ボートのポジションを変えながらいろいろなコースでルアーを通してやることをお勧めします」
取材を行なったのは10月上旬の桧原湖。写真の良型を含め、高梨さんが操るジョーダンを次々とスモールが襲った。もちろん、この記事で紹介されている理論はほかのフィールドでPEを使用する際にも当てはまる
高梨さんが表層の釣りで多用するルアーがジョーダン。I字、放置、トゥイッチとあらゆるアクションに対応する。ルアーカラーを頻繁に交換するときはスナップを使用
ジョーダンでキャッチしたのは1㎏クラス。この日はアピール系のカラーにバイトが集中した
ルアーを観察されやすいクリアウォーターの表層系は、ちょっとしたカラーやシルエットの違いで反応が劇的に変わることが多いため、さまざまなタイプを用意したい。
「エサっぽく食わせたいのか、ルアーとしてアピールを持たせたいのか。どちらを重視するかでルアーセレクトは変わります。
バスがワカサギに固執していたらワカサギカラーかつサイズ感もワカサギに近いものを選び、バスがそこま
で特定のエサに固執していないときはピンクやチャートなどのアピールカラーを選びます」
次のページでは リーダーについて解説していただきます。
桧原湖プロガイド高梨洋平さんに訊く 表層ゲームにおけるPEラインのメリットと使い方 その2~リーダー編~