渓流釣りの楽しみは大ものを釣ること? 数を釣ること? 私の楽しみ方はずばり「秘渓」捜しである。2日間の旅路であれば初日は必ず新規開拓。結果が芳しくなければ翌日はお気に入りの渓へというように、ひっそりと隠れた渓谷を見つけてサオをだしたい。
釣り場を新規開拓するコツ
文◎戸門 剛 写真◎編集部
渓流釣りの楽しみは大ものを釣ること? 数を釣ること? 私の楽しみ方はずばり「秘渓」捜しである。2日間の旅路であれば初日は必ず新規開拓。結果が芳しくなければ翌日はお気に入りの渓へというように、ひっそりと隠れた渓谷を見つけてサオをだしたい。
この記事は月刊『つり人』2020年6月号に掲載したものを再編集しています
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現地情報を活用
渓流釣りが好きなのは人と会わないから、というタイプも多いのではないか。かくいう私もそのひとり。人嫌いではないが、釣りの間ぐらいせめて自然とだけ対峙したい。渓のせせらぎ、木漏れ日を揺らす葉々のざわめき、慌てて飛び立つカワガラスの羽音、侵入者を認めたニホンジカの甲高い鳴き声……。
「釣れますかァー?」
そんな声が頭上から聞こえたら興醒めする。しかし、待って欲しい。多くの場合、我々釣り人は余所者である。川は誰のものでもないが、そこに住む人にとってはオラが庭ならぬオラが川。挨拶や会話こそが円満の秘訣だ。「……ところで○×沢って知ってるかい?」とでも始まればしめたもの。そして不思議と釣りに興味のない人の情報ほど脚色されていないことが多い。真摯に耳を傾けていれば、きっとネットにはない目から鱗の情報を知ることもあるだろう。
捜し当てた谷は透き通った水。岩陰からたまらずエサに食いついたのは白みの強いヤマトイワナだ
戸門剛さんは小誌おなじみの若き渓流マン。「郷土料理ともん」の料理人
河川名に注目してみる
平成の大合併を経て市区町村名までもが変わった今日だが、ほとんど変化のないものもある。河川名だ。さてどれだけの釣り人がそこまで注意しているだろう。私の師匠で父でもある秀雄から「河川名の『色』を意識しているか」と言われたことがある。
いわく「赤や白の付く川は概して魚影が薄く、黒と付く川にはよい思い出が多い」と。赤と名の付く川は噴出する温泉等により水質が酸性およびアルカリ性が強いためか、川石が変色した渓相をよく目にした。一方黒と名の付く川は森閑としたあるいは苔生した渓相のことが多かった。私が20代の時に繰り返したのは、魚影が薄いはずの赤と名の付く河川縛りの旅。そんな所にこそ穴場が存在するのではと考えたのである。
探索行はほとんど返り討ちに終わったものの、驚くほどの魚影が走る渓を知ることもできた。河川名から渓のようすに思いを馳せる、そんな旅もぜひおすすめしたい。
新規開拓で見つけた落差のある小渓流。魚を育む水量と付き場があった
地形図には夢が隠れている
最近登山用GPSアプリを愛用する釣り人が多い。私も実際に使っているが山中や谷間で自身の現在地が分かるこの安心感たるや。しかし危険の伴う渓流釣りでは地形図を読めるようになって損はない。滝、堰堤、ゴルジュ等だけでなく木々の植生にも目を向けよう。等高線の間隔が狭いのは急峻な斜面の証だが、木々が生い茂っていればそれを伝って意外なほど楽に上り下りができる。また針葉樹林よりも広葉樹林の山のほうがエサとなる昆虫の落下が多く狭間を流れる渓も魚影が濃い。
ゴルジュの区間は労の多いわりに魚影が薄い。ゴルジュの前後がねらいめ
取水堰の下流部には砂れき地が生まれやすい
取水堰は堰から水色の破線が伸びている
針葉樹林よりも広葉樹林に囲まれた渓のほうが魚影は濃い
特に着目してほしいのが取水堰である。取水堰の下流部は水量が乏しいため、通い慣れた釣り人以外には素通りされがちだ。グーグル・アースなどの立体地図で頭に描きにくい地形変化を可視化するのも有用である。しかし今は地形を一変させる災害規模の豪雨が毎年のように起こる。地形図にのみ頼り過ぎてはいけないというのも覚えておこう。
それでは実際にとある渓の取水堰上流へ隠れ渓谷を捜しに行った時の話をしたい。
後編「河原砂漠の先には……」へ続く……
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