バッグさえもいらない。超のつくお気軽さ、お手軽さ。デイゲームならヘッドライトさえいらない。水面を炸裂させる超興奮のトップウォーターのナマズ遊戯。
バッグさえもいらない。超のつくお気軽さ、お手軽さ。デイゲームならヘッドライトさえいらない。水面を炸裂させる超興奮のトップウォーターのナマズ遊戯。
写真と文◎松本賢治
散歩スタイルで楽しめる

初夏を思わせる強い日差しになると、いよいよナマズゲーム本格化のサイン。
「最盛期は例年だとGW 明けから10月までかな。本気でナマズ好きな人はこの辺りでも年中やってる人はいますよ。場所にもよるんですがアベレージは65cm。ただし僕の感覚では播磨エリアはお盆過ぎたらサイズが小さくなって30cm台が増えてくる。決してサイズをねらっているわけではないんですけどね」
兵庫在住の廣常さんは元々バスアングラーで、それこそ以前はたまに釣れてくるナマズを外道扱いしていたという。だがある時、ナマズを目当てに本気でねらってみたところ想像以上にエキサイトなバイトシーンとゲーム性の高さに完全にハマってしまって今に至り、現在はデイゲームをメインに楽しんでいる。
「やっぱり、デイの面白さは魚が出るところが丸見えだからです。トップウォーターなんでド派手に出るからむちゃくちゃ面白い。いいときには5本くらい出ます」
廣常さんは遠出をせずに近場で空いているタイミングに1、2時間という短時間超お気軽釣行が常。数投して移動を繰り返すスーパーランガンスタイルで楽しんでいる。
数やサイズに特別なこだわりはない。水面を割って出てきてくれるだけで充分に満足。それが、デイトップナマゲーの魅力だという。
「1本いい出方をしてくれたら満足して帰るときもある。そりゃデカいのが釣れたほうが楽しいけど、それが目的ではない。だから、何時間も粘ってやることはないですね。シーズン中は、ほぼ日課みたいなもんですから(笑)」
装備も超ライト。カバンすら持たず、小型ボックスに数個のナマズルアーを入れてポケットへ。
「小さな川、細い水路……ナマズってホンマどこにでもいる。でも、おってもルアーに反応しないこともある。そんな魚は深追いせず、いい反応をしてくれる魚を探してランガンする。それがイージーに釣るコツですね」
浅い川を覗き込むと泳いでいるナマズを見かけることも少なくない。
「フラフラとニュートラルな状態で泳いでるやつ、それは釣れない。エサを探しているなら岸側を向いている。それなら釣れる可能性がある。たしかにナイトのほうがエサを探して動くんで活性も高いし、広範囲をウロウロしているんでオープンエリアで釣りやすい。でも、デイはデイでピンポイントを絞り込めるから釣りやすくもある。バスよりも貪欲やけどスレると臆病になる。警戒心が強くなって釣りにくくなる。人気ポイントでは1回出たらもう出ないっていうのはあります」
貪欲だからこそ臆病にならないと生き残れない。これもナマズのもつ二面性である。
「一般的にナマズは夜行性って言われていますけど、デイの短時間釣行でも釣れます。ただ、昼間は暗いところで寝てますから、叩き起こす釣りか、流れ込みとかにエサを求めて入ってる食い気のある待ち伏せ型をねらうか。流れてくるものならなんでも食いますからね」
ルアーセレクトは水深で決める
この日も短時間のデイゲームを楽しもうと加古川水系の支流にやって来た。
「デイはシェードに隠れている……という考え方で、ド派手な着水音でたたき起こすつもりでアプローチします。だから勝負は一瞬で決まることも多いので一投一投、即バイトに備えておくことが大事です。ただし即バイトしなくても、その場でシェイクして誘い続けると下からモワっと登場してくることもある」
ねらう水深や水質はどうだろう。
「水深は30cmあれば充分です。人によっては15cmでいいっていう人もいる。とはいえ、浅いところだけがいいわけでもないから水深のあるところも探っていきます。水質はクリアよりも多少の濁りが入ってたほうがいい」
ルアーの使い分けも聞いた。
「水深の浅いところでは、サイズが小さめでアピールも控えめの『仔(こ)でんぐりガエル鯰SP』(50㎜)を使う。対して本流とか流れがある深場や水面が乱れている流れ込みでは、アピールの強い『大どんぐりマウス鯰SP』(70㎜)を選択します」

Viva『仔でんぐりガエル鯰SP』は50mm、12g。アピールを弱くしたいときに使用。カラーは全8色

『大どんぐりマウス鯰SP』は70mm、20g。カラーは全15色。紹介した3つのルアーに共通するのは『ケミホタル25』を縦に刺せる穴とナマズ用ダブルフックの標準装備
ルアー選びの基準は水深に合わせ、次に流れの強さに合わせていく。流れに強いのは羽根モノの『大どんぐりマウス鯰SP』で、流れが強くても泳いでアピールし続けてくれる。
「魚の活性に合わせる考え方もあるんですが、活性が低いからローアピール、高いからハイアピールとは一概に言えません。活性が低いからハイアピールで強引に誘ってスイッチが入ることもありますから。だからアピールの強いほうからやっていきます。アピール力は強い順に『大どんぐりマウス鯰SP』、65㎜の『でんぐりガエル鯰SP』、『仔でんぐりガエル鯰SP』です」

『でんぐりガエル鯰SP』は65㎜、16 g。心地いい音を出すオリジナル幅広カップ。これもダブルリング仕様。カラーは全20 色
GW の合間のタイミングで行なった今回の取材はシーズンとしてはほんの少しだけ早かった。
「反応が一気によくなるのは田んぼの代かきが入ってからですね。濁りが入ると、特にデイではやっぱり騙しやすいんでしょうね。明らかに水面に出るようになる」
ナマズは視力が悪い分、側線が非常に発達しており、音や波動には非常に敏感とされている。羽根モノ、金属カップ系のルアーが効くのも音と撹拌した水流にリアクションバイトを誘発するためだ。食性に訴えるマッチ・ザ・ベイトとは真逆の発想である。
「こんな金属音をガシャガシャ言わしてる生き物って自然界におらんでしょ。でも、ナマズには羽根やペラ、ブレードの金属音がたまらないんやと思います。あとね、意外にもカラーは大きく関係していると思います。特にベリー(腹)の色ね。たとえばド定番のブラックやグローは効きますし、オレンジ系、ピンク系や赤系も認識している気がします。だから、ナマズは目が悪いそうですけど、ホンマなんかなって思います( 笑)」。
ナマズのチェイスがあったものの返っていったその同じコースにカラーを替えて再度トレースするとバイトしてきた経験が何度もあるという。つまり、タイプだけではなくカラーローテーションも必須ということだ。

こだわりたいのはベリーのカラー。カラーローテはこの視線での見え方が重要になる

廣常さんのおすすめの実績カラーはスケルトンのソフトシェル
ミスバイト後はシェイクが効果的

でもやはりナマズは目が悪いのだろう。それはバイトが下手だからだ。
「それがカワイイところでもあるんですが『どこに目を付けてんねん!』ってツッコミたくなるほどありえない出方をします。で、食い損ねてもルアーは止めたらあかん。波動が消えたらルアーを見失うから」
基本的なリトリーブスピードは、そのルアーがアクションできる最低速度で巻く。
「だから、『仔でんぐりガエル鯰SP』も『でんぐりガエル鯰SP』、『大どんぐりマウス鯰SP』も低速でレスポンスよく動くようにしてあります。そのスピードでも食い切れないからといって、それより遅くすることはできないんで、その場でシェイクしてやる。それだと移動距離を抑えてアピールも継続できるんで効果的です」
フッキング率の低いナマゲーだが、フックはダブルフック&バーブレスが定番化している。
「ルアーのみならずフックもナマズ専用のダブルフックを設計しました(鯰SP シリーズには標準装備)。フッキングだけを考えるとトリプルのほうが当然いいんですけど、ナマズへのダメージと外しやすさの安全面を考えるとダブルのバーブレスになる。そして120度に開いた形状にしたのはカンヌキに掛けるためです」
ちなみに廣常さんのラインはフロロカーボンである。
「PEラインを使う方が多いのはわかっているんですが、僕はバスもするからフロロ(20Lb)でやってます。比重が高くて水に沈んでしまうラインなのでトップゲームには不向きと言われますが、足場の高いところからやることが多くて足もとまできっちり引きやすいっていうのはある。だからフロロならではのデメリットを感じたこともない。タックルもバスのクランキングロッドが使いやすくて愛用しています」
廣常さんはデイのみなならずナイトも楽しむ派。『鯰SP』シリーズには、ナイトでの視認性を高めるために発光体を差し込める穴が標準装備されている。その発光体のカラーにも廣常さんはこだわりを持つ。
「基本的に発光体はアングラーからの見やすさを重視しますが、バイトに影響していると感じています。グリーンやブルー、レッドなどのカラーで反応は変わってくるし、発光体の有無でも違ってくる。カラーと有無のローテーションも頭に入れておいたほうがいいですよ」
このようにいろいろと考えることが多いからこそハマってしまう。そして、答えはド派手に出てくれるからやめられないわけだ。

ランガン十数ヵ所目で60cm オーバーを手にした廣常さんは「渋かったから余計に嬉しいですね。さあいよいよ短時間のナマズ散歩がこれからはほぼ日課になります」と語った

つぶらな瞳と大きな口、そして長いヒゲにふっくらお腹というユーモラスな風貌が愛らしい

スプリットリングを2つ設けることで可動域がワイドになる

ブレードはフラッシングというより金属音効果に期待

プロップがあることで足場が高くても足もとまできっちりアピールできる

ウイング根元にあるスペーサーがウイングの低速での立ち上がりを実現
※このページは『つり人 2024年7月号』を再編集したものです。
